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2025.11.16実施 小6第5回合不合判定テスト国語 読解問題解説
今回は四谷大塚「第5回合不合判定テスト(6年国語)」の解説をお届けします。物語文と論説文の2題構成で、どちらも中学受験の典型的な良問が揃っています。特に**「隠された本音の読み取り」と「論理展開の整理」**がポイントとなる問題でした。
【大問一】物語文:『あたたかな手 なのはな整骨院物語』濱野京子
📚 作品情報
- 題名:『あたたかな手 なのはな整骨院物語』
- 筆者:濱野京子
- 文章の要約: 病気の姉(愛美)への遠慮から、ずっと「いい子」を演じ続けてきた主人公・美桜。友人ひかりの家に泊まった夜、迎えに来た父親との対峙を通じて、初めて本音を爆発させ、自分の感情を解放していく物語。
👥 登場人物と人物像
◆美桜(主人公)
- しっかり者で「いい子」を演じている
- 病気の姉・愛美への遠慮から、自分の欲求を我慢してきた
- 本当は猫を飼いたい、わがままも言いたい
- 父親への不信感を抱えている
◆美桜の父
- 美桜を迎えに来て叱責する
- 愛美には優しいが、美桜には厳しい態度
- 美桜の本音を聞いて言葉を失う
◆ひかり(友人)
- 美桜の苦しみを理解している
- 美桜が父親に立ち向かう時、手を握って支える
◆愛美(美桜の姉)
- 病気のため、家族から特別な配慮を受けている
🌊 場面の変化
✅ 序盤:ひかりの家での楽しい時間
✅ 中盤:父が迎えに来て気まずい雰囲気に
✅ 転機:美桜が父に本音をぶつける(クライマックス)
✅ 結末:花火を見ながら、ひかりと手をつなぐ
💭 心情表現とその変化
美桜の心情は大きく4段階で変化しています:


🎭 比ゆ表現とその解説
本文中に直接的な比喩表現は多くありませんが、象徴的な表現に注目:
★ 「かわいた声で笑う」
- 潤いのない、心からの笑いではないことを表現
- 気まずさを誤魔化す自嘲的な笑い
★ 「不敵ともいえる目つき」
- 挑戦的で開き直ったような表情
- 抑圧から解放される直前の決意を表す
★ 「花火」
- 美桜の心の爆発と解放を象徴
- 暗闇に輝く光=新しい始まりの暗示
🎯 主題
「いい子を演じることからの解放と、本音を言える関係性の大切さ」
- 病気の姉への遠慮から自分を抑え続けてきた美桜
- 父親との対峙で初めて本音を吐露
- 友人ひかりの支えによって自分を受け入れてもらえる安心感
- 心の成長:「いい子」という仮面を脱ぎ始める勇気
📝 重要問題解説
問二:「かわいた声で笑いました」の心情
【解説】
この笑いは「楽しさ」ではありません!
ポイント:
- 直前に「だまって、出てきた」とある
- 父親が迎えに来て、友人たちの前で気まずい状況に
- 隠していた「家出(無断外泊)」が露見
- その気まずさを誤魔化すための自嘲的な笑い
💡 指導のヒント: 「笑い=楽しい」という単純な図式ではなく、照れ隠しや誤魔化しの笑いがあることを理解させましょう。
問五:父の心情「言葉を口にすることはありませんでした」
【解説】
なぜ父は黙ったのか?
美桜の痛烈な言葉が図星だったからです:
- 「愛美ちゃんには絶対手を出さなかった」
- 「我慢するのが当然だと思ってるんでしょ」
父の心情:
- 美桜に「我慢」させていたことに気づかされた
- これ以上、美桜を責めることはできないと悟った
正解:イ(これ以上美桜を責めることはできない)
問六:ひかりの行動(手を握る)の理由
【解説】
ひかりは美桜の苦しみを理解しています。
今まさに父親に対して勇気を出して戦っている美桜を:
- 守りたい
- 支えたい
- 一人じゃないと伝えたい
正解:ウ(必死に戦っている美桜を励まし、力になりたい)
❌ アが誤りな理由:美桜は「不敵な目つき」で反論しており、単に弱気になっているわけではありません。
【大問二】論説文:『自己決定の落とし穴』石田光規
📚 作品情報
- 題名:『自己決定の落とし穴』
- 筆者:石田光規
- 文章の要約: 現代社会では、物質的な豊かさと個人尊重の思想により、人間関係を「選べる自由」が生まれた。しかし、人間関係にまで「コスパ(効率)」重視の考え方が持ち込まれることで、①選ばれない不安、②可能性の切り捨て、という二つの「落とし穴」が生じていると警告する文章。



💡 筆者の主張・意見
【筆者の主張】
- 背景認識:
- 物質的に豊かになり、共同しなくても生きていける
- 個人を尊重する思想が広まった
- 現状分析:
- 人間関係を「選べる自由」が生まれた
- 人間関係にも「コスパ・合理性」が持ち込まれている
- 問題提起(二つの落とし穴):
- 落とし穴①:自分も「コスト」として切り捨てられる不安
- 落とし穴②:無駄を省くことで、可能性や耐久力を失う
- 警告:
- 合理性だけで判断すると、想定外のリスクに対応できない社会になる
📝 重要問題解説
問二:「物的条件と思想的条件が整う」とは?
【解説】
本文中の対比を整理して記述する必要があります。
物的条件:
- 物質的に豊かになった
- 共同しなくても生きていける
思想的条件:
- 個人を尊重する思想が広まった
- 誰かに何かを押し付けることが難しくなった
記述の核: これらが整うことで「つき合う人を選ぶ自由」が得られ、人間関係に「合理的で選別的な論理」が入るようになった。
問四:グラフの読み取り
【解説】
図表(アンケート結果)の読み取り問題です。
ポイント:
- 筆者の予想:利点がなくても付き合う人が多いはず
- 実際の結果:「目的や利点がなければ付き合う必要はない(A)」と考える人が過半数(51.2%)
正解:ウ(筆者の予測とは異なり、合理的に考える人がわずかに多かった)
問六:「落とし穴」の内容理解
<一点め> 記述(穴埋め)
合理的思考は、自分自身も:
- a:コスト(切り捨てられる対象)
- b:魅力(選ばれるために必要なもの)
- c:緊張感(常に選ばれるかどうかの不安)
- d:重苦しいもの(その結果生まれる社会)
<二点め> 選択肢
解説:無駄を省きすぎるとどうなるか?
正解:イ(無駄に見えるものの中に可能性があることに気づかず、想定外への耐久力を養えない)
💡 本文のキーワード:「耐久力を低下させる」「もろさを抱える」とリンク
💡 その他読み取りづらい部分
物語文
Q:なぜ美桜は友人の家に行ったのか? → 家にいたくない、姉への遠慮から逃げ出したかった
Q:父はなぜ黙ったのか? → 美桜の言葉が図星で、これ以上責められなくなった
論説文
Q:「無駄」とは何か? → 一見役に立たないように見えるものだが、実は可能性や価値を含んでいる
Q:筆者は「合理的思考」を全否定しているのか? → いいえ。合理性も大切だが、それだけで人間関係を判断することの危険性を指摘している
📊 設問解法のポイント
物語文の解き方
- 心情問題:
- 表面的な行動と内面の感情を区別する
- 「笑い」が必ずしも「楽しい」ではないことに注意
- 理由問題:
- 「なぜ○○したのか」→直前の出来事や心情を確認
- 「結果」から「原因」を逆算する
- 人物関係:
- 登場人物同士の立場や関係性を整理
- 誰が誰に対してどう思っているかを図にする
論説文の解き方
- 筆者の主張:
- 「〜べきだ」「〜ではないか」などの文末表現に注目
- 逆接(しかし、だが)の後に重要な内容
- 対比問題:
- 「一方」「それに対して」などの接続詞をチェック
- 対立する概念を表にまとめる
- 記述問題:
- 本文中の言葉を使って答える
- 「原因→結果」の流れを明確に
📚 大問三・四:知識問題
文学史(大問三・問一)
主要な作家と作品の組み合わせは必須知識:
- 宮沢賢治=『よだかの星』
- 夏目漱石=『坊っちゃん』
- 芥川龍之介=『羅生門』
品詞の識別(大問三・問二)
指示語の識別:
- 「その」「あちら」などの指示語
- 「こそあど言葉」の使い分け
同音・同訓異字(大問四)
問題正解ポイントたいしょう対象/対照対象=ターゲット、対照=比較すいい推移変化していく様子こうがんむち厚顔無恥恥知らずな様子(四字熟語)
💡 「厚顔無恥」は難度が高い四字熟語由来の語彙ですが、難関校では狙われやすいので要注意!
🎯 学習アドバイス
物語文は「ギャップ」に注目!
今回の美桜のように:
- 普段の様子(いい子)
- 爆発した瞬間(不敵な目)
このギャップに最大の主題があります。
なぜ変わったのか? その引き金(トリガー)は何か?
を探す読み方を意識してください。
論説文は「副作用」を探す!
現代社会のテーマでは:
- 便利になった(プラス面)
- 失われたもの・弊害(マイナス面)
が必ず論じられます。
今回の「落とし穴」がまさにそれ!
筆者が何を警告しているかをつかむ練習が有効です。
まとめ
今回のテストは、「本音と建前」というテーマで物語文と論説文がつながっていました。
美桜は「いい子」という建前を捨てて本音を言えるようになり、論説文では「コスパ重視」という建前の裏にある不安や弱さが指摘されました。
中学受験の国語では、「表面」と「本質」の違いを見抜く力が問われます。
言葉の裏にある本当の意味を読み取る練習を続けていきましょう!





