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2026.3.20実施第1回 NN武蔵中オープン 早稲アカ 国語解説
国語 徹底解説
試験の概要
今回取り上げるのは、早稲田アカデミー主催の第1回 NN武蔵中オープン模試(国語)です。武蔵中の入試傾向を忠実に再現した模試で、大問一は物語文の長文読解、大問二は漢字の書き取りという構成です。
大問一(物語文):84点 ― 問一 2点×3、問二〜問七 各13点×6
大問二(漢字):16点 ― 2点×8
合計:100点
武蔵中の国語は長い記述問題が連続するのが最大の特徴です。問二〜問七はすべて13点の記述問題であり、本文の内容を正確に読み取り、自分の言葉で丁寧にまとめ上げる力が問われます。「本文の表現をそのまま書き写す」のではなく、自分の言葉に書き換えて高い評価を得ることが武蔵中攻略のカギです。
大問一:文章解説
出典情報
井伏鱒二「屋根の上のサワン」
ジャンル:物語文(私小説的な作品)
井伏鱒二(いぶせ ますじ)は、日本を代表する小説家のひとりです。代表作に『山椒魚』『黒い雨』などがあり、ユーモアの中に深い哀しみをたたえる独特の作風で知られています。
あらすじ
語り手の「わたし」は、がん(雁=野鳥の一種)の「サワン」を自宅で飼っています。サワンの翼の羽を短く切って飛べないようにし、家で放し飼いにしていました。サワンは近くの沼池で水浴びをするのが大好きで、「わたし」は毎日サワンを沼池へ連れていきます。
ある夜、空を飛ぶ三羽のがん(サワンの仲間)が現れ、サワンは屋根の上から必死に鳴き声を上げて「自分も連れていってくれ」と訴えます。「わたし」はサワンを引き留めたい気持ちと、自由を与えるべきだという気持ちの間で葛藤します。結局、翌朝にはサワンの翼に薬品を塗って飛べるようにし、仲間のもとへ送り出そうと決意しますが、翌朝サワンの姿はすでになく、別れを告げることも、詫びることもできないまま、悔しさと悲しみだけが残ります。
登場人物
わたし(語り手) ― サワンの飼い主。サワンへの愛情は深いが、翼を切って自由を奪っていることへの罪悪感も抱えている。サワンが仲間と飛び立ちたがる姿を見て、「引き留める」のか「解放する」のかで激しく葛藤する人物。
サワン ― がん(雁)の一種。「わたし」に飼われ、翼を短く切られて飛べない状態。水浴びを好み、沼池での時間を楽しんでいるが、空を飛ぶ仲間の姿を見て自由への強い憧れを示す。
三羽のがん(サワンの仲間) ― 夜更けに空を飛んできた野生の雁。サワンにとっては「自由」の象徴であり、この出現が物語の大きな転換点となる。
愛情と罪悪感の葛藤
水浴び好き
自由への憧れ
自由の象徴
場面の変化
心情表現とその変化
「わたし」の心情は、サワンへの愛着から、罪悪感、葛藤、決意、そして喪失の悲しみへと大きく変化していきます。特に注目すべきはプラスとマイナスが混在する場面で、入試でも頻出のポイントです。
(沼池)
→ 散歩に出かけているような気持ち
(放し飼い)
→ 愛情と罪悪感が混在
(屋根の上)
→ 自由を奪ってきたことへの自責
やり
→ 引き留めの手段としてのえさ
夜
→ 悲しみの中にある覚悟
(別れ)
→ 反省と喪失感が同時に押し寄せる
この物語では、+と-が入り混じった「±混在」の場面が非常に多いのが特徴です。「サワンを引き留めたい」気持ちと「自由を与えるべきだ」という気持ちが常にせめぎ合っており、武蔵中の記述問題ではこの両面を過不足なく書き分けることが求められます。
比喩表現 ★
本文には印象的な比喩表現が登場します。
「遠い離れ島に漂流した老人の哲学者が、十年ぶりにようやく沖を通りすがった船を見つけたときの有様」
これはサワンが三羽のがんを見つけたときの様子をたとえた表現です。模範解答の解説によれば、この比喩は以下のように書き換えられます。
「遠い離れ島」→ わたしの家(保護され、飼われている場所)
「漂流した」→ 保護された、つかまっている
「老人の哲学者」→ サワン
「十年ぶり」→ 長い時間(時間経過が明示されていないので「長い時間」)
「沖を通りすがった船」→ 夜更けの空を飛ぶ三羽のがん
「見つけたときの有様」→ 屋根の上から鳴きすがる様子
→ なぜ「老人の哲学者」なのか?若い漂流者なら海を泳いだり脱出を試みることもできるが、老人はそうもいかない。同様に、翼を切られたサワンも飛ぶことも仲間を呼ぶこともできない。行動が制限されているからこそ、「深く考察する学問=哲学」という記載にもつながっている、と解説されています。
主題
この物語の主題は、「自由を奪うことの罪と、手放すことの痛み」です。「わたし」はサワンを愛するがゆえに翼を切って手元に置きましたが、それはサワンの自由を奪う行為でもありました。自分の都合で相手の自由を奪ってしまったことへの反省と、それに気づいたときにはもう遅かったという後悔が、物語全体を貫いています。
大問一:設問解説
問一(語句の意味 ― 2点×3)
二重傍線部A〜Cの語句の意味を選ぶ問題です。
A(ア) B(イ) C(ウ)
A「目方」
「目方」とは重さ、重量を意味する言葉です。答えは(ア)。
B「うっちゃっておく」
「うっちゃっておく」は「放っておく、そのままにしておく」という意味です。古語の「うっちゃる」が変化したもので、主に関東地方の方言としても使われます。答えは(イ)。
C「ならわし」
「ならわし」とは「習慣、しきたり、風習」を意味する言葉です。答えは(ウ)。
近年の武蔵中の入試問題では語彙の選択肢問題の出題率が高くなっています。知らない言葉は辞書を引く習慣をつけましょう。
問二(記述 ― 13点)
「わたしはこの鳥の両方の翼を羽だけ短く切って、家で放し飼いにすることにしました」とあるが、なぜわたしは「両方の翼を羽だけ短く切って、家で放し飼いにすることにし」たのか、という問題です。
羽を短く切ることでサワンが飛んで逃げないようにしたが、その分家の中では自由を与えてあげるべきだと考えたから。
この問題は、「羽を短く切って」と「家で放し飼いにする」の2つの行動をセットで記述する必要があります。
本文を確認すると、「サワンがふたたび屋根などに飛び上がらないようにするためには、かれの足をひもで結んで、ひもの一端を柱にくくりつけておかなければならないはずでした」という記述と、「わたしはかれの翼の羽を、それ以上に短くすれば傷つくほどに短く切っていたのです」という記述が見つかります。
ここから「サワンが飛んで逃げないようにする」目的がわかります。さらに「あまりかれを苛酷に取り扱うことをわたしは好みませんでした」という記述から、「苛酷な扱いを嫌った → 家の中では自由に行動させた」という方向性でまとめましょう。
武蔵中の入試問題では、本文の表現をそのまま書くのではなく、自分の言葉に書き換えることで高い評価が得られます。「苛酷に扱う」→「被を苛酷に扱うことを嫌ったから」ではなく、「その分、家の中では自由を与えてあげるべきだと考えた」のように言い換えましょう。
問三(記述 ― 13点)
「わたしはサワンの水浴を見守るために沼池へ出かけたのではなく、わたしのくったくした思想を追いはらうために散歩に出かけたのです」とあるが、これはどういうことか、という問題です。
わたしがいくら呼んでもサワンは水浴に飽きるまで水から上がってこないので、サワンを待つためにわたしは草むらに寝転んで常に私自身の考えにふけった。しかし、その間の自分のくよくよした思いを追いはらうための時間が思いのほか良い気分転換になったので、まるで自分のために散歩に出かけているような気持ちになっていたということ。
今回注目すべきは「くったくした思想」という表現です。「くったく」は「屈託」と書き、「あることが気になってくよくよすること」を意味します。「くったくした思想」とはマイナスの言葉であり、たとえ「くったく」の意味がわからなくても「追いはらう」という表現から、マイナスの言葉であることは推理できます。
つまり、サワンの水浴びのためではなく、くよくよした思いを追いはらうために散歩に出かけたという方向性の記述です。本文には「わたしがいくら呼んでもサワンは水浴に飽きるまで水から上がってきませんでした」「わたしは草むらに寝ころんで常にわたし自身の考えにふけるのがならわしでした」とあり、さらに「気分転換」という言葉も添えると、より完成度の高い解答になります。
問四(記述 ― 13点)
「遠い離れ島に漂流した老人の哲学者が、十年ぶりにようやく沖を通りすがった船を見つけたときの有様」とあるが、これはどういうことか、という問題です。
わたしの家に長い時間保護され飛ぶ力を奪われていたサワンが、夜更けの空を飛ぶ三羽のがんを見つけ、屋根の上から自分も連れていってくれと頼むように鳴きすがっていたということ。
この問題は比喩表現の書き換えです。武蔵中では頻出の形式で、比喩を「分解して」「言い換える」ことが重要です。
「遠い離れ島」は「わたしの家」、「漂流した」は「保護された、飼われている」、「老人の哲学者」は「サワン」、「十年ぶり」は「長い時間」、「沖を通りすがった船」は「三羽のがん」、「見つけたときの有様」は「屋根の上から鳴きすがる様子」です。
なぜサワンが鳴きすがっているのかがベースとなる記述からは読み取りにくいため、解説では「なぜ『老人の哲学者』なのか」まで掘り下げて説明しています。行動が制限されているという点でサワンと老人が共通しており、考える時間が増える=「哲学者」という記載にもつながっています。
近年の武蔵中では、ある問題で確認した内容が別の問題のヒントになっている「誘導問題」が出題されています。問四で確認したサワンの様子が、問五のヒントにつながっています。問題間のつながりを意識して解くことが攻略のカギです。
問五(記述 ― 13点)
「わたしはサワンに、かれが三日かかっても食べきれないほど多量のえさを与えました」とあるが、なぜわたしは「多量のえさを与え」たのか、という問題です。
仲間に連れていってもらうことを望んでいるかのようなサワンを、ひもでくくりつけるなどの苛酷な扱いをせずに自分のもとに引き留めておくために、多量のえさを与えることでサワンの心をつかもうと思ったから。
「多量のえさを与えた理由」は様々なことが考えられます。サワンがとてもおなかをすかせていた、外泊するためえさをまとめて与えた、などが挙げられるかもしれません。しかし、どれも根拠はありません。武蔵中は根拠のない「作文」を高く評価しません。必ず本文に戻り根拠を探しましょう。
本文を確認すると、問四で見たように三羽のがんに自分も連れていってほしいと鳴きすがるサワンの様子が描かれています。このサワンを自分のもとに引き留めておきたいが、ひもで縛りつけたりする苛酷な方法は取りたくない。そこで、えさをたくさん与えることでサワンの心をつなぎ留めようとした、という流れです。
問六(記述 ― 13点)
「わたしは決心しました」とあるが、このときのわたしの気持ちを説明する問題です。
サワンが仲間とともに飛ぶことをあきらめるよう願ったり、あすからはかれの羽を切らないことにして出発の自由を与えてやらねばなるまいと考えたりして迷っていたが、あすの朝になったら、サワンの翼に羽の早く生じる薬品を塗ってやり、サワンを解放し仲間のもとへ送ろうと決心したサワンとの別れを覚悟した気持ち。
この問題のポイントは「決心」の内容を具体的に記述することです。本文を確認すると、「早くかれの鳴き声がやんでくれればいいと願ったり、あすからはかれの羽を切らないことにして出発の自由を与えてやらねばなるまいと考えたりしていた」という迷いの記述と、「あすの朝になったら、サワンの翼に羽の早く生じる薬品を塗ってやろう」という決心の記述が確認できます。
解説では、「かれの鳴き声がやむ」=「仲間とともに飛ぶことをあきらめる」という「意味づけ」が重要だと指摘しています。また「サワンの翼に羽の早く生じる薬品を塗る」=「サワンを解放し仲間のもとへ送る」ことを意味します。単に決意や決心だけでなく、覚悟やさみしさなども書けるとさらに良いでしょう。
問七(記述 ― 13点)
「サワン、サワンいないか。いるならば、出てきてくれ!どうか頼む、出てこい!」とあるが、このときのわたしの気持ちを説明する問題です。
これまでサワンを自分のもとに縛りつけていたことを反省し、自由を与えようと決意し、別れの準備をしようとしていた。しかし、サワンがいなくなってしまったことに気がつき、羽を切るというひどいことをしたことを詫びる間もなく、サワンを解放してあげようという気持ちを伝えることも別れを告げることもできないまま、サワンとの別れを迎えてしまったことに悔しさと悲しみを覚えている。
気持ちを尋ねられている問題です。「反応」と「きっかけ」に注目しましょう。「反応」は問題文にある通り「サワンに出てくるよう呼び掛ける」こと。「きっかけ」は「わたしはサワンの姿が見えないのに気がつきました」「サワンがいなくなってしまった」ことです。
ここで攻略の鍵を握るのは問六です。問六で「わたし」はサワンを仲間のもとへ送ろうと決意しました。さらには羽を生やし薬を塗り、別れの品を渡すことまで考えていました。しかしサワンは突然いなくなってしまった。別れの準備をしていたにもかかわらず、別れを告げることも、羽を切った詫びをすることもできないまま別れを迎えてしまった悲しみと悔しさを記述します。
ベースとなる記述だけでは十分な評価を得ることはできません。近年の武蔵中学で用いられている「誘導問題」を意識しましょう。問六までの流れ(反省→決意→準備)を踏まえて問七を解くことで、記述に深みと厚みが加わります。
大問二:漢字の書き取り
① 刷新(さっしん)
② 無断(むだん)
③ 市井(しせい)
④ 看過(かんか)
⑤ 素質(そしつ)
⑥ 精進(しょうじん)
⑦ 裏側(うらがわ)
⑧ 浴びる(あびる)
配点は2点×8で計16点です。確実に得点しておきたいパートです。
重要語句・表現
まとめ
この模試のポイント
第1回NN武蔵中オープンは、井伏鱒二「屋根の上のサワン」を題材に、主人公の複雑な心情変化を読み取る力が試される良問でした。
特に重要なのは以下の3点です。
- 比喩表現の書き換え(問四):比喩を「分解して」「言い換える」作業が必要
- ±混在の心情把握(問二・五・六):愛情と罪悪感、引き留めと解放の葛藤を両面から記述
- 誘導問題への対応(問六→問七):前の設問の解答が次の設問のヒントになっている
武蔵中の国語は「本文の表現をそのまま書き写す」だけでは高得点が取れません。内容を正確に読み取ったうえで、自分の言葉で丁寧に書き換えることを意識して練習していきましょう。
武蔵中の記述は「量より質」。一つひとつの設問に丁寧に向き合い、
本文の根拠と自分の言葉で解答を組み立てる力を磨いていこう!
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