- ホーム
- 模試・塾テキスト解説
- 2026.4.5実施 日能研 4月全国公開模試 国語解説
2026.4.5実施 日能研 4月全国公開模試 国語解説
日能研 4月全国公開模試
6年 国語 徹底解説
テスト概要
2026年4月実施の日能研・4月全国公開模試(6年・国語)の解説です。共通問題100点・応用問題50点の計150点満点、制限時間40分で実施されました。
出題構成は以下のとおりです。
- 二:漢字・語句(本記事では割愛)
- 三:説明文(日本の食文化とカレーライス)+漢字書き取り
- 四(共通):物語文 ── 浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』
- 五(応用):説明文 ── 黒田玲子『科学を育む』(セレンディピティ)
今回の添付資料にはNo.3以降のページのみ含まれており、三の説明文本文(No.1〜2)は未収録のため、四・五を中心に解説します。三の漢字書き取り(共通問題)の模範解答は最後に掲載しています。
四(共通)浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』
作品・あらすじ
浅田次郎の直木賞受賞作『鉄道員(ぽっぽや)』(集英社)からの出題です。北海道の小さな終着駅「幌舞駅」の駅長・佐藤乙松を主人公にした物語で、1999年には高倉健主演で映画化もされた名作です。
試験に出題された場面は、クリスマスの深夜に駅に現れた不思議な少女と乙松の交流を描いた部分です。乙松は生まれてまもなく亡くなった一人娘のユッコと、その後に病死した妻を失いながらも、一日も休まず鉄道の仕事を続けてきた人物です。深夜に駅を訪れる少女は、成長した姿で現れるユッコの幻影であり、乙松の人生と「仕事に生きること」への問いかけが重層的に描かれます。
登場人物
場面構成 ── 時間と場所の変化
午前零時。乙松が出札口で人の気配を感じて目覚める。赤いマフラーをまいた少女が立っている。「ゆうべ」来た赤ちゃんより大きく、目元がよく似ている少女にセルロイドの人形を渡す。
乙松の人生が回想される。ユッコは生後まもなく風邪をこじらせて亡くなった。医者にも連れて行けず、すさまじい風の吹く事務室で息を引き取った。妻もその後、三ヵ月で亡くなった。それでも乙松は一日も仕事を休まなかった。
少女は「十二、まだ中学生」と名乗る。乙松は少女がユッコに似ていることに気づきながらも、鉄道員としての職務を全うしようとする。少女はやがて雪のホームへ消えていく。
秀男が乙松を訪ね、乙松は妻やユッコのことを思い出す。自分が仕事を優先し続けた人生を振り返り、重い感情を抱く。転轍機(ポイント切り替え装置)の雪かき作業に向かう乙松の姿で場面が閉じる。
心情変化 ── ±のポイント
深夜に現れた少女に対し、乙松は「やさしい声」に驚きつつ、ゆうべの赤ちゃんとの類似に戸惑う。セルロイドの人形を渡すと少女は「にっこりと笑った」。温かさと不思議さが混在する場面です。
→ 温かさと困惑が同時にある複雑な心情。入試でよく問われるパターンです。
ユッコの死、妻の死という二重の喪失が語られます。「医者にしてやれなかった」「三ヵ月で終わる暮らし」など、乙松の後悔と悲しみが滲みます。それでも仕事を休まなかった乙松の姿勢は、強さなのか、逃避なのか。
→ 悲しみ・後悔・自責の念。問六の記述ではこの部分の理解が問われます。
少女がユッコの成長した姿だと悟りながらも、現実の職務に向き合い続ける乙松。「辛い思い出を綿入れにして」という比ゆ表現は、乙松が悲しみを身にまとって生きてきたことを意味します。
→ 仕事への誇りと家族への未練の葛藤。物語の主題に直結します。
物語文では、現在の場面の間に〈回想〉が挟まれるパターンが頻出です。回想シーンが「今の主人公の行動の理由」を説明する役割を果たします。『鉄道員』では、ユッコと妻の死の回想が、乙松が「なぜ休まず働き続けたのか」の答えになっています。時間の切り替わりに注目しましょう。
比ゆ表現
綿入れ(わたいれ)は中に綿を詰めた防寒着のこと。辛い記憶をまるで衣服のように身にまとい、それを脱ぐことなく生きてきた乙松の人生を表す比ゆ表現です。悲しみが体の一部になっているという意味で、重く切ない表現です。
主題
『鉄道員』は「仕事に人生を捧げること」と「家族への愛情」の間で揺れる人間の姿を描いた作品です。乙松は家族を失っても駅を守り続けましたが、それは使命感であると同時に、悲しみから目を背ける手段でもありました。少女(ユッコの幻影)の訪れは、乙松に「もう一つの人生」を思い出させる存在として描かれます。
設問解説
本文中で、乙松が少女の外見から受けた印象を述べた箇所から最初の五字を抜き出します。少女の知的な雰囲気を捉えた描写を見つけることがポイントです。
問三は「やりきれない」の感情の原因を正しく特定する問題。多くの受験生は表面的な「悲しみ」だけで判断しましたが、乙松の感情は「悲しみ+後悔+自責」の複合です。心情問題では、一つの感情だけでなく複数の感情が混じっているケースに注意しましょう。
乙松が仕事に生きてきた人生において、家族の死さえも職務の前では後回しにされてきたことへの重圧を答えます。記述では「子供の死」と「仕事の優先」の二つの要素を盛り込むことが必要です。配点は9点(内容7+表記2)と大きいので、丁寧に書きましょう。
五(応用)黒田玲子『科学を育む』── セレンディピティ
筆者の主張
黒田玲子氏(中央公論新社『科学を育む』)は、科学研究における重要な資質として「セレンディピティ」を挙げています。セレンディピティとは、偶然の出来事から価値ある発見をする能力のことで、単なる「運の良さ」ではなく、柔軟な思考と鋭い観察力に裏打ちされた能力であると筆者は主張しています。
セレンディピティとは
セレンディピティ(serendipity)は、イギリスの作家ホレス・ウォルポール(1717〜1797)が作った造語です。スリランカの古い名前「セレンディップ」(Serendip)の三人の王子の物語に由来します。
物語の中で三人の王子はそれぞれ宝石探しの旅に出ますが、目的の宝石そのものではなく、旅の途中で予想外の発見をしていきます。第一王子は休息中に落ちていた石に価値を見いだし、第二王子は足元の石を拾い上げ、第三王子は観察眼を活かして石の違いを見分けます。計画通りに進まなくても、注意深い観察と柔軟な発想で重要な成果を得られることを示す物語です。
段落構成
科学上の偉大な発見にはセレンディピティが関わっていることが多いと提起。ウォルポールの造語であること、三人の王子の物語が由来であることを説明。
三人の王子それぞれの宝石探しの旅を具体例として紹介。偶然の発見が計画的な探索よりも価値ある結果をもたらす場合があることを示す。
白川英樹博士の例など、実際の科学研究におけるセレンディピティの事例を紹介。温度や濃度を間違えた実験から導電性高分子の発見につながったエピソードなど、失敗や偶然が重要な発見の端緒になることを説明。
セレンディピティは単なる偶然ではなく、基礎知識の習得、計画的な観察力、そして柔軟な思考力が揃って初めて発揮される能力であると結論。科学研究に必要な資質は、偶然を逃さず自分に引きつける力であると主張。
対比構造
筆者は「計画通りに物事を進めること」と「偶然の発見を活かすこと」を対比しています。科学研究においては、計画性だけでなく偶然を受け入れる柔軟さが重要であり、この両方を備えた人が優れた科学者だという主張です。本質的ではない部分にこだわらず、重要な変化や偶然を逃さない心でいることが大切だと述べています。
設問解説
①「柔軟な思考と生きた心で」── 固定観念にとらわれないこと
②「重要な変化や偶然を逃さず」── 注意深い観察
③「成功を収めたこと」── 偶然から価値ある成果を得ること
この3要素を盛り込んで記述することが求められます。正答率39%と難問であり、本文の要点を自分の言葉でまとめる力が試されました。
問三の記述は11点と配点が大きく、内容は①〜③の3項目に分かれています。部分点をもらうためにも、3つの要素をすべて盛り込むことが重要です。「柔軟な思考」「偶然を逃さない観察力」「成果につなげる力」のどれか一つが欠けると大きく減点されます。
文章全体を通して筆者が論じているテーマを一言でまとめます。セレンディピティそのものではなく、「科学研究に必要な資質」という大きな枠組みで答えることがポイントです。6点の配点に対して正答率76%と、応用問題の中では比較的解きやすい問題でした。
共通問題 三 ── 漢字書き取り 模範解答
1. 開放(かいほう) 2. 沿線(えんせん) 3. 厳(きびしい) 4. 熟練(じゅくれん) 5. 対策(たいさく) 6. 週刊誌(しゅうかんし) 7. 朗読(ろうどく) 8. 敬(うやまう) 9. 立候補(りっこうほ) 10. 均等(きんとう)
まとめ ── 今回のテストのポイント
四の物語文『鉄道員』は、回想シーンと現在の交錯を正しく追い、乙松の複合的な心情(悲しみ+後悔+使命感)を理解することが求められました。特に問三(正答率39%)・問五(34%)・問六記述(41%)は、心情の「複雑さ」を読み取れたかどうかで差がつきました。
五のセレンディピティの文章は、具体例(三人の王子・科学者の発見)から抽象的な主張(科学研究に必要な資質)を導く構成を理解できたかがポイント。問三の記述(39%)は、3要素を漏れなく盛り込む力が試されました。
物語文は「±混在の心情」、説明文は「具体→抽象の構成」を意識して読む習慣をつけていきましょう!
日能研国語のサポートをご希望の方はこちら👇




