「常識」を疑う中村修二と、世界的アーティストの姉に揺れる小5の妹
読解の核と設問のとき方を完全解説
SAPIX 5年生 4月度マンスリー確認テスト(国語)の徹底解説です。 今回の読解は 大問3が論説文(中村修二)、大問4が物語文(嘉成晴香) の2題構成。 論説文は「常識」と「非常識」の対比、物語文は「特別な姉」を持つ妹のコンプレックスがほどけていく心情の流れがポイントになります。 人物相関図・段落構成図・対比図・心情変化表をふんだんに使って、設問のとき方まで一気に整理していきましょう。
出典・テストの基本情報
大問3 出典
大問4 出典
大問3 論説文 ─ 中村修二『大好きなことを「仕事」にしよう』
文章のテーマと構成をつかむ
今回の文章で筆者が言いたいことは、ひとことで言えば 「『常識』を疑い、『非常識』に挑戦することから、画期的な発明や仕事が生まれる」ということです。 中村修二さんは、世界中の研究者が成功を信じていなかった青色LEDの開発に挑み、ノーベル物理学賞を受賞した工学者。 この体験から、「みんなが当たり前だと思っていることに疑問を持つ姿勢」の大切さを語っています。
文章は身近な例(中学高校時代のスキー部での「水を飲むな」という指導)から始まります。 この話は、当時の「常識」が今では完全に否定されているという具体例です。 そこから話題を「研究開発」「発明」へと広げ、日本の研究環境が抱える問題にまで踏み込んでいきます。
青色LED開発も「世界中の研究者ができないと思っていた」分野への挑戦だった。
学問・仕事の場での「非常識」と、日常生活での非常識を混同しないこと。
- みんなが当たり前と思っていること
- 学校で教わること
- 時代によって中身が変わる
- 強すぎると新しい発想を生めない
- 常識を疑う発想
- 世界中の人が「できない」と思う分野への挑戦
- 勇気が必要(失敗のリスクが大きい)
- 画期的な発明を生むエネルギー源
重要語句のチェック
→ どうにでもなれと、すべてを投げ出すような気持ちになっている状態。 「もうダメだ、好きにしろ」というあきらめ+開き直りのニュアンス。
→ もともとは囲碁・将棋の用語で、「昔から受け継がれてきた、最善とされる決まった打ち方・やり方」のこと。 そこから転じて、「物事を進めるときの、いちばん安全で効果的な定番のやり方」を指す。
→ 今までになかったような新しさを生み出すこと。「時代を区切るほどすごい」という意味。 本文の「画期的な発明」とは、これまでの常識をくつがえして時代を変える発明のこと。
設問のとき方
問1 接続詞補充
1〜3の空欄に入る接続詞を選ぶ問題。前後の文の関係を見て決めるのが鉄則です。 逆接(前後で内容が反対)なら「ところが」「しかし」、 添加(前にプラスして並べる)なら「さらに」「また」、 言い換え・結論導入なら「つまり」「だから」。 身近な「常識」の話から「非常識」の重要性へと話題が転換していくため、逆接や添加・結論の接続詞が交互に使われます。
問2 ことばの意味(A・B)
A「やぶれかぶれ」 → ア(どうにでもなれと投げやりになっている状態)
B「定石」 → エ(多くの人がうまくいくとされている方法)
「定石」は将棋・囲碁を知っていれば即答できるので、SAPIXの語彙学習で盤上ゲームのことばはまとめて覚えておくことをおすすめします。
問3 線①「『常識』って、本当にそうでしょうか?」と筆者が問いかける理由
→ その時代正しいと信じられていることでも、何かのきっかけで変化するので、絶対的なものとは言えないから。
直前のスキー部の「水を飲むな」エピソードが根拠です。 当時は「絶対」と思われていたものが、今では完全に否定されている。 つまり「常識は時代によって書き換わる」というのが筆者の立場。 ここを読み落として「常識を否定すること自体が大事」というイ以外の選択肢に飛びつかないように注意しましょう。
問4 抜き出し(30字以上40字以内)
抜き出しの中心は 「画期的な発明」 をめぐる本文中の表現。 最初の3字と最後の3字を抜き出す指示なので、本文中で「画期的〜発明」のまとまりを丁寧に探しましょう。
問5 線③ 「『非常識』に挑戦するのは勇気がいる」のはなぜか
→ 失敗の可能性が大きい中で、周りの評価を気にせず常識を疑うのはむずかしいから。
直後の本文に 「成功する確率は低いけれど、当たった時は大きい」 という主旨の記述があります。 イ(利益性)、ウ(からかわれる)、エ(怒られる)はいずれも本文の根拠が薄いので除外します。
問6 線④「この場合の『非常識』」の例として最もふさわしいもの
→ 地球は平面だと信じられていたのに、水平線の丸みを見て「本当はちがうのでは」と考える。
ここでの「非常識」は、本文に明示されている通り 「学問・仕事における非常識」 のこと。 日常生活でルールを破ることではないので、「ア(先生の話を無視)」「イ(電車内で大声)」「ウ(信号無視)」はすべて「日常での非常識」にあたり×。 エだけが 「みんなが信じている常識(地球は平面)に科学的な疑問を持つ」 という、まさに学問の話なので正解です。
問7 線⑤ 「面白い発明」を実現するために必要なもの(記述)
「直感やひらめき」と、それを長い時間かけてじっくり育てる「集中できる時間」と「夢を追える環境」。 この2つを軸に説明できれば得点になります。
問8 線⑥「いまでも残念なことです」の理由
→ 世界中の研究者は失敗を恐れずに研究すべきなのに、十分に時間が割かれていないことで、多くの画期的な発明が生まれる可能性を逃しているから。
問9 線⑦「『すかさずミライコンタクト』あらかじめ手にとれることもまましていとか」の理由
→ 研究が成功するかどうかは、時間の使い方や運、直感が関係するため、環境や金銭が不十分でも、わかりたいから時間をかければ成功する可能性はあるから。
ここは選択肢の判別が難しいですが、本文の 「研究開発の面白さは、運やタイミングも含めた要素にある」 という主旨に最も近いウが正解。 イ(環境がよい方が機会が多い)も一見もっともらしいですが、筆者は「環境にすべてを左右されるわけではない」と書いているので除外します。
大問4 物語文 ─ 嘉成晴香『迷子のトウモロコシ』
文章のテーマと登場人物
小学5年生の 「わたし」(理名/リーナ) が主人公。 中学生でありながら世界的アーティスト「エミー」として活躍する姉を持つ「わたし」は、 「特別な才能」がない自分にコンプレックスを抱えています。
物語は、姉の将来の夢を聞いたことをきっかけに、「わたし」の中で揺れ動く感情を細やかに描いていきます。 姉のスケッチブックに描かれた飛行機、お風呂屋さんへの帰り道、図書館の話──。 姉に対する うらやましさ・ねたましさ・申し訳なさ が混ざり合った思いが、 やがて「特別な姉も将来が不安なんだ」という気づきによって、ふっと軽くなっていきます。
場面と「わたし」の心情変化
物語は時系列に沿って、おおよそ次の4つの場面で進みます。 それぞれの場面で「わたし」の気持ちがプラス/マイナス/混在のどれかに動いているかを見抜くのが、設問を解く鍵になります。
姉の夢
自分の部屋で
姉と外出
姉の本音
比喩・印象的な表現のチェック
→ 主人公・理名のくせ毛のたとえ。タイトル『迷子のトウモロコシ』の象徴になっている重要なメタファー。 「迷子」は「自分の居場所がわからない理名」そのものを表しています。
→ 姉が深いため息をつく動作のたとえ。姉の本音が出る直前の合図として使われていて、ここから物語が大きく動き出します。
主題
「特別」とは決まった誰かのものではなく、自分の中にある「楽しいと思えること」を大切にしていけば、それで十分── そんなメッセージが、姉妹の何気ない会話の中にやさしく溶けこんでいます。
設問のとき方
問1 慣用句(A・B)
(1) 「(手間)が省ける」
(2) 「(虫)が好かない」 → エ
慣用句の知識問題。「虫が好かない」=なんとなく気に入らない・好きになれない、という意味。 体の感覚で「気持ちがわるい」と感じるニュアンスです。
問2 線①「興奮しているね、ターポプタ」と言ったときの「わたし」の気持ち
→ ターポプタにあこがれているはずなのに、姉が冗談で「パイロット」と言ってきて本気で答えてくれない不思議な気持ち。
問3 線② 「名前のわからない黒い気持ち」とは何か(記述)
「特別」な姉に対するうらやましさ・ねたましさと、それを抱いてしまうことへの申し訳なさ。 この2つが混ざりあって、自分でも名前がつけられないでいる気持ち。
キーワードは「混在した感情」。心情変化表の場面②に対応します。
問4 線③ 「最近お姉ちゃんの様子を見て心配」のときの「わたし」の行動
→ お姉ちゃんの様子がいつもとちがうことが気になり、わたしは何があったのか聞きたくなっている。
問5 線④ 「今、試行錯誤する時間」を抜き出し
「できる〜られる」
(最初と最後の3字をそれぞれ抜き出す形式)
「試行錯誤」とは、いろいろなやり方を試して、失敗しながら答えに近づいていくこと。 本文中で 「できることをくり返しながら、何度もやり直して答えに近づけられる時間」 のような表現が抜き出しの対象です。
問6 線⑤ 「二人だけの秘密の場所」だと思っていた図書館に姉が来たとき、なぜ「わたし」は不安になったのか
→ 「わたし」が隠れていられる居場所がなくなり、自分の居場所が知られてしまうから。
ここは「自分だけの逃げ場が消える」恐怖がポイント。 姉と仲がわるいわけではないからこそ、共有したくない場所もあるという小学生の繊細な感情です。
問7 線⑥ 「雨は、もうすぐ降り始めるからね」が表していること
→ 「わたし」の不安な気持ちが、お姉ちゃんの行動と言葉によって変わったこと。
情景描写(雨)と「わたし」の心情がリンクするタイプの設問。 雨は単なる天気の説明ではなく、「気持ちがほどけていく合図」として使われています。
問8 線⑦「なんだか楽しくなった」のはなぜか
→ 絵の才能があり特別な存在のお姉ちゃんが、新しい挑戦に対して将来不安を感じていると知り、自分も同じように悩んでいるのを共有できた気持ちが楽になったから。
問9 「わたし」自身の人物像(30字以内の記述)
「他人と関わることが苦手で、大人しく引っ込み思案な人物。」
記述問題のコツは「行動・反応から性格を逆算する」こと。 店員さんに気を使われると返事を返せない、姉が来たら逃げる、図書館に隠れる──こうした行動から 内向的・控えめな人物像を読み取ります。
テスト全体のまとめ
大問3 中村修二『大好きなことを「仕事」にしよう』
- 「常識」VS「非常識」の対比をきちんと見抜けたかが鍵。
- 「非常識」は学問・仕事の場での発想であって、日常のルール破りではない(問6で問われる)。
- 具体例(青色LED開発・スキーで水を飲むな)と、それを通して伝えたい主張を結びつけて読む練習を。
大問4 嘉成晴香『迷子のトウモロコシ』
- 主人公の「うらやましさ・ねたみ・申し訳なさ」の混ざった心情を読み取れたか。
- 場面③の「秘密の場所」の話は、±混在の心情として特に重要(問6)。
- 場面④で姉の本音を聞いて「特別な人も悩んでいる」と気づくことが、主題の中心。
学習アドバイス
論説文では「対比」と「具体例→主張」の構造を意識して読み、物語文では「±が動いた瞬間」を必ず線で囲む練習を続けてみてください。 心情の変化と、そのきっかけになった出来事を1セットでとらえることが、SAPIX5年生の物語文では特に重要です。