YS中学受験国語力研究室
5月 13, 2026  · 模試・塾テキスト解説

2026.5.10 四谷系小5第2回 公開組分けテスト 国語徹底解説

四谷大塚 5年生 第2回 公開組分けテスト 国語 徹底解説|2026年5月実施
2026年5月10日実施
四谷大塚 5年生

第2回 公開組分けテスト

国語 徹底解説

今回のテストの全体像

2026年5月10日に実施された四谷大塚 小学5年生 第2回 公開組分けテストの国語を、模範解答に基づいて全問解説します。試験時間は50分・150点満点で、予習シリーズ5年(上)第10回までの範囲です。

大問1は漢字の書き取り、大問2は語句・文法(同じ用法の単語、慣用句、同音異義語・同訓異字、四字熟語など)の知識問題でした。本記事では、配点が大きく差がつきやすい大問3(物語文)と大問4(説明的文章)の読解問題を中心に詳しく解説していきます。

本記事で扱う2つの文章
大問3(物語文)
高田由紀子『ポジション!』(岩崎書店)
主人公・結人と父との関係を描く成長物語
大問4(説明的文章)
中西友子『地球を救う植物のすごい知恵』(日経サイエンス)
植物を利用した金鉱脈探しの研究を紹介
採点データから見る今回の特徴

大問3の問4(記述問題・12点)の正答率は55.7パーセント、大問4の問3(記述問題・10点)の正答率は19.8パーセントでした。大問4の記述は今回の最重要差がつき問題です。また、大問4は「データ・グラフを読み取る問題」が多く、説明的文章としては難度の高い構成になっています。

大問3|物語文|高田由紀子『ポジション!』

出典:高田由紀子『ポジション!』(岩崎書店、2025年10月刊)
ミニバスチームに誘われた小学6年生の芽吹を主人公に、車いすバスケで努力するルイの姿に鼓舞されながら成長していく物語。第72回青少年読書感想文コンクール(高学年の部)課題図書に選定された注目作。今回のテストでは主人公・結人の視点で描かれる章から出題されています。

あらすじと場面設定

主人公は小学6年生の結人(ゆうと)。両親は離婚していて、結人は母と二人で暮らしています。父とは2ヶ月に1度会う関係で、結人は「できれば父とも一緒に暮らしたい」と思っています

結人は現在、ミニバスケットボールクラブ「末広サンライズ」に所属していますが、4年生のときまでは強豪チーム「サンダーボーイズ」にいました。両親の離婚にともなって弱小チーム「末広サンライズ」に移らざるをえなかったという事情があります。

今回出題された場面は、結人が秋の大会でチームメイトをミスについて責めたことから1人で食事をしている場面から始まり、父と一緒に車いすバスケの試合観戦に行く場面、そして父とのレストランでの対話を経て、結人の気持ちが大きく動く場面へと展開していきます。

人物相関図|『ポジション!』結人をめぐる人物関係
結人(ゆうと)
小6・主人公
末広サンライズ所属
本当は父と暮らしたい
父さん
離婚後、車いす製造会社に転職
車いすバスケに打ち込む
母さん
結人と二人暮らし
川合京(かわい・きょう)
車いすバスケ選手
父が応援する存在
ルイ君・貴島君
父の作る車いすのユーザー
結人の好きなバスケ選手たち
主な関係性
結人 父さん 「自分のことを見ていない」と感じて怒り → 本心を知って和解
父さん 結人 推しタオル・アクキーを手作り(応援したい思い)
父さん 川合選手 プレーぶりが結人に似ているので応援
結人 サンダーボーイズ 戻りたいが戻れない(過去の所属チーム)
主人公
家族
応援対象
父の車いすユーザー

結人の心情変化を整理しよう

本文は結人の心情が大きく揺れ動く場面です。父との関係をめぐってマイナス感情から始まり、爆発し、父の本心を知ってプラスに変わっていく流れを丁寧に追いましょう。

心情変化表|結人の気持ちの動き
場面1
帰宅後
サンダーボーイズの動画を観る。「ダブルクラッチのほうがおれのほうがうまいよな……?」と思う
サンダーボーイズへの未練 → 自分の境遇への不満が募っている
問一
場面2
車いすバスケ観戦後
父が「いいことを言っているはずなのに、なぜか気持ちがどんどん冷めていく」
父への違和感・距離感 → 「見せかけてる人」(偽善者)と感じる
問二
場面3
レストランで
父が「希望や力」と語る。「なにが希望だよ!」と怒りが爆発
−−
怒り・激しい憤り → 自分の家族(息子)を見ていないという憤り
問三
場面4
父が紙袋を取り出す
父が結人の推しタオル・アクキーを手作りしていたことを知る
±
おどろき+少しずつ気持ちがほぐれる ★特に重要 → 父が自分を大事に思っていたと知る
問四・問五
場面5
父の本音を聞く
「ずっとイライラしてたんだろ?さみしい思いをさせてごめんな」と父が言う
±
さびしさを認める+わだかまりが和らぐ ★特に重要 → 父が自分の気持ちを分かっていたと知る
問六・問七
場面6
会話の終盤
「今度、おれの試合も観にきていいって言ってんの」とそっけなく言える
照れながらも、父を受け入れる → 父との関係を前向きに修復したい気持ち
問八・問九
+プラス心情
−マイナス心情
±混在(★特に重要)
マイナスからプラスへの変化を生んだ「きっかけ」を必ず押さえる

本文のキーポイントは、父が手作りした推しタオル・アクキーを取り出した瞬間です。ここで結人は「父は自分のことを見ていない」という思い込みが間違いだったと気づきます。心情変化問題(問五・問六・問七)はすべてこの場面を起点にしています。

【最重要ポイント】言動と心情の「裏腹」を見抜く

なぜここが今回のテストで最も差がつくのか

『ポジション!』後半の結人は、本当の気持ちと反対の言動をとる場面が連続します。「さみしくない」と言いながら本当はさびしい、「まあ、いいんじゃね」と言いながら本当はうれしくてたまらない——。表面の言葉や行動の裏側にある本心を読み取れるかどうかが、問六・問八・問九の正解に直結します。これは結人が「照れ屋」で「素直に自分の気持ちを伝えられない」性格だからこそ生まれる構造です。中学受験の物語文で何度も問われる重要パターンなので、必ず押さえましょう。

裏腹の構造図|結人の「表面の言動」と「本当の気持ち」
126行目
表面の言動
「さみしくなんか(ない)」
父が「さみしい思いをさせてごめんな」と言ったことに対し、自分の中で否定したい気持ちで強がっている。
本心
隠れた本当の気持ち
本当はずっとさびしかった
父が車いすバスケに打ち込んで自分から離れていく気がして「取り残されたさびしさ」を感じていた。強がりの否定形として「さみしくなんかない」と言っている。
問六の解答根拠
145〜147行目(問八☆)
表面の言動
「おれの推しタオルとアクキー、おれが使ったら完全にやばいヤツじゃん」
茶化すような言い方で会話を和ませる。「やばい」と笑いに変える。
本心
隠れた本当の気持ち
父からのプレゼントが本当にうれしい
父が自分のために手作りしてくれたことに胸が熱くなっている。素直に「ありがとう」「うれしい」と言えない照れ隠しとして軽口に変えている。
問八の解答根拠
153〜155行目
表面の言動
父さんが顔をのぞきこんだとき、とっさにタオルで顔をおおう
「ずっと言いたかったこと」を口にしようとして、なぜか顔を隠してしまう動作。
本心
隠れた本当の気持ち
感情が高ぶって父に見られたくない
父の本心が分かって心がふるえている。涙ぐむような顔を父に見せたくないので、無意識にタオルで隠す。感情を直接表に出せない結人の不器用さがよくあらわれた動作。
158行目
表面の言動
「今度、おれの試合も観にきていいって言ってんの」
つっけんどんな言い方。「観にきていい」と許可するような偉そうな口調。
本心
隠れた本当の気持ち
ずっと父に試合を観に来てほしかった
これは結人が「ずっと言いたかったこと」(153行め)。本当は「観に来てほしい」と素直にお願いしたかった願い。それを照れ隠しでつっけんどんな言い方に変えている。
問九1・問九2の根拠(Cさんが「結人は照れ屋だから言えなかった」と話す理由)
「照れ屋の主人公」を読み解く3つの視点
  1. 強がりの否定=「〜なんかない」「別に〜」のような否定形は、多くの場合その反対が本心です。
  2. 茶化し・冗談=感情が高ぶった場面で軽口を叩く描写は、素直に気持ちを言えない照れ隠しのサインです。
  3. 隠す動作=顔をそむける、タオルで隠す、目をそらすなどは、相手に本心を見せたくない気持ちのあらわれ。涙や赤面など感情の高まりを伴うことが多いです。
表面の言動だけを読んで誤読しないために

結人の「まあ、いいんじゃね」を「父に対して冷たい態度をとっている」と読んでしまうと、問九が全滅します。表面の言葉だけを追わず、「この言葉の前後で結人がどんな状況にいるか」「直前にどんな出来事があったか」を必ず確認してから心情を判断してください。

設問解説|大問3

問一|サンダーボーイズの試合動画を観ていた結人の気持ち(5点)

傍線①「気づくとミニバスの試合を観ていた」とき、結人がサンダーボーイズに対してどう思っていたかを問う問題です。

模範解答

できればサンダーボーイズに戻りたいが、それは無理なので、不本意だが末広サンライズに身を置いてミニバスを頑張っていこうと思っている。

解答の根拠(本文15〜20行め)

「おれだって、あのままサンダーボーイズにいられたら、レントより上達していたかもしれない〜だけどもう〜サンダーボーイズにも戻れない。末広サンライズは弱いけど、おれがミニバスを続けられるのはあそこしかなかったんだからしかたない」とあります。

ポイントは「戻りたい気持ち」と「戻れない事実」の両方が描かれていること。アは「投げやり」が言い過ぎ、イは「無理やり弱いチームに入れられ」が違い、エは「自分の希望で末広サンライズに入った」が誤りです。

問二|空欄に入る言葉(3点)

「父さんはいいことを言ってるはずなのに、なぜか気持ちがどんどん冷めていく ★っぽいっていうか」「★っていうのは、いかにも正しい行いをしている人」という前後関係から、空欄★に入る言葉を選びます。

模範解答

偽善者(ぎぜんしゃ)

語彙チェック:偽善者とは?

偽善者=「うわべをいかにも善人らしく見せかけようとしている人」のこと。結人は、父の言葉が正しい内容なのに「上っ面だけで実感がない」と感じています。アの「口達者」、イの「第三者」、ウの「当事者」、オの「傍観者」では本文の文脈に合いません。

問三|傍線②「なにが希望だよ!」のときの結人の気持ち(6点)

父が「希望や力」を語った直後、結人が怒りを爆発させる場面です。なぜこんなに激しく反発したのか、本文を広く読み取ります。

模範解答

両親が離婚したために自分はいろんなことをあきらめて耐えてきたのに、父が仕事や車いすに乗っている人ばかりを大事にして、息子のことを全然見ていないことに憤っている。

本文の根拠(傍線前後36〜75行め)
  • 「(父は)自分の世界だけを大事にして、こっちを見ているようで見ていない」(49・50行め)
  • 「おれは父さんと母さんが離婚して、いろんなことあきらめたよ? しかたないって飲みこんで、ずっとがまんして、慣れたふりをしてきたんだよ?」(63〜65行め)
  • 「車いすに乗っている人だけがつらくて大変で希望や力を用意してあげないといけないわけ? ばかじゃないの? 自分の家族のことはほったらかしてたくせに!」(68〜71行め)
  • 「おれは怒ってんだ」(74行め)
他の選択肢が誤りな理由

アは「家族と過ごす時間をあまり設けてくれないこと」が中心ではないので×。ウは「口先だけで自分の希望を大事にする父の軽薄さ」とまでは言えず×。エは「父が様々なことを断念して新しい環境で苦労している」と父をかわいそうがる方向で読み取っているので×。結人の怒りの中心は「自分(息子)を見ていない」ことへの憤りです。

問四|記述問題(12点)|父が推しタオルとキーホルダーを作った理由

今回の物語文で最重要の記述問題です。配点12点で、正答率は55.7パーセント。本文107〜109行めに直接的な根拠があります。

模範解答(55字以内)

結人のミニバスの応援に行ったら迷惑だろうから、せめて結人のタオルやキーホルダーを作って励ましたいという思い。

記述のポイント(3要素)
  1. 応援に行きたかった気持ち=結人のミニバスの応援に行きたかった
  2. 行けない理由=行ったら迷惑だろうと考えた
  3. 代わりの行動の意図=タオル・キーホルダーを作って励ましたい

この3要素のうち、特に「迷惑だろうから」という父の遠慮の気持ちと「励ましたい」という思いが両方書けていることが必須です。「父は結人を応援したかった」だけでは不十分で、なぜ直接応援に行かずに作る形にしたのかの理由を明示することが得点の決め手になります。

減点されやすいパターン
  • 「行きたかったけど行けなかった」と書くだけで、行けない理由(迷惑だろうから)を書かない
  • 「励ましたい」「応援したい」という気持ちの言葉が抜ける
  • 「タオルやキーホルダーを作った」とだけ書いて理由を書かない

問五|「あてはまらないもの」を二つ選ぶ(6点)

傍線④「さっきまでの怒りやイライラがすーっと消えていくのを感じた」理由について、あてはまらないものを選択肢から2つ選ぶ問題です。「あてはまるもの」ではなく「あてはまらないもの」を選ぶ点に注意。

模範解答(順不同)

あてはまるもの(選んではいけない選択肢)
  • =父がずっと自分のことを気にかけ、応援してくれていたと知った(107〜112行め)
  • =父が川合選手を応援し始めたのはプレーぶりが自分に似ているからだと知った(113〜116行め)
  • =大会を観に来てくれていた父が、末広サンライズでの自分の頑張りを理解してくれていると思えた
なぜア・エが「あてはまらない」のか
  • =「これ以上父と話し合っても父の考えを変えることはできないと悟ったから」は本文に書かれておらず、結人が「あきらめた」のではなく「父の本心がわかった」から怒りが消えたので×
  • =「父が自分を川合選手と同等に大事に思っている」は本文と異なる。父にとって一番の希望は息子(=結人)であり(135〜137行め)、川合選手と「同等」ではなく結人が一番大事だと描かれているので×

問六|傍線⑤「ようやくわかった」が指す内容(6点)

傍線⑤の直後122〜130行めで結人が気づいた内容を読み取る問題です。

模範解答

自分はつらい状況を打開できずにいるのに、父ばかり楽しいことを見つけていることを知り、少し取り残された気がしてさびしかったから。

解答のポイント

126〜129行めの「さみしくなんか(ない)」は結人の本音の裏返しです。本当はさびしく思っているのに、認めたくないから「さみしくなんかない」と強がっていた。それを父が見抜いて「ずっとさみしい思いをさせてごめんな」と言ったために、結人は自分の本心を「ようやくわかった」のです。

問七|空欄A・Bに入る表現(4点×2)

傍線⑥の前後にある父の言葉を読み取って、空欄を埋める問題です。問九の文章とも対応しています。

模範解答

A → 家族と別れて前に進めずにいる自分を励ます

B → 家族を離れて暮らしている人の希望や力になる

理解のポイント

父は「車いすに乗っている人」を応援する理由として、自分が家族を離れて暮らしていることや、家族と別れて前に進めずにいる自分自身を励ますためでもあると語っています。父も結人と同じような苦しみを抱えていて、それを乗り越えるために車いすバスケに打ち込んでいる、という構造が見えてきます。

問八|空欄☆に入る表現(4点)

父が「使うかな」と言ったことに対し、結人が「自分が使うのはかなりやばい」と感じる場面の空欄を埋める問題です。

模範解答

おれの推しタオルとアクキー、おれが使ったら完全にやばいヤツじゃん

解答の根拠

150・151行めの「じゃあやっぱり、父さんが使うかな」「それ(=父が使うこと)もかなりやばいから」とのつながりから、空欄☆には「自分が(結人が)使うのもやばい」という内容が入ると判断します。父も結人も同じタオル・アクキーを「使うのはやばい」と笑い合っている、和やかな空気の場面です。

問九|会話文の空欄補充(4点×3)

三人の生徒の会話を完成させる総合問題です。本文全体の理解が問われます。

模範解答

1 → もっとたくさんミニバスの試合を観に来てほしい

2 → Ⅱ=息子、Ⅲ=好きでい続けてくれた、Ⅳ=父は自分と同じような苦しさを抱えている

3 → 不満①は弱くなったが、不満②や苛立ちのようなものはなくなって、少し気持ちが軽くなっている

問九1の解説

本文158行めの「今度、おれの試合も観にきていいって言ってんの」が結人が「ずっと言いたかった」内容です。それまで結人は「父が応援に行ったら迷惑だろう」と考えて遠慮していた(107〜112行め)。それをつっけんどんな言い方で伝えるのが結人らしい照れた表現になっています。

問九2の解説(最も差がつく問題)
  • Ⅱ=息子:父にとって一番の希望は息子(結人)であり、自分の試合も観に行きたいと父が思っていたことを知った(143・144行め)
  • Ⅲ=好きでい続けてくれた:結人が末広サンライズで頑張っていることや、さびしい気持ちを父が理解してくれていた(112〜114行め、124行め)
  • Ⅳ=父は自分と同じような苦しみを抱えている:父も家族と離れて暮らしている苦しみを抱えていて、それを乗り越えようとしていると分かった(130行め、135〜137行め)
問九3の解説(変化した後の気持ち)

「不満①=父たちの都合によって生活環境の変化を受け入れざるを得ないことへの不満」は、父の本当の思いが分かっても環境自体はそのままなので完全に消えるわけではなく「弱くなった」のが正解です。「不満②=父の自分に対する関わり方への不満」と「苛立ちのようなもの」は、父の本心を知って解消されたのでなくなったと読み取ります。

大問3全体のテーマと主題

「ポジション!」というタイトル通り、本作は自分の居場所(ポジション)を探す物語です。結人は両親の離婚で自分のポジションを失い、新しいチームでも居場所を見いだせずにいました。父との対話を通じて、父も同じように「家族のポジション」を失った苦しみの中で前に進もうとしていると知り、結人は父との関係に新しいポジションを見つけ始める——という「親子の関係を結び直す」テーマが描かれています。

大問4|説明的文章|中西友子『地球を救う植物のすごい知恵』

出典:中西友子『地球を救う植物のすごい知恵』(日経サイエンス、2025年12月刊)
著者の中西友子氏は東京大学名誉教授で、専門は放射線植物生理学。植物が持つ驚きの能力を、最先端のイメージング技術で可視化する研究の成果をまとめた本です。今回の出題は「第2章 植物が持つ秘められた能力」の「植物を手がかりに金を探せ」のあたりからの抜粋です。

文章の構成と要旨

この文章は17段落構成で、植物を利用して金鉱脈を探す研究について論じています。データやグラフも掲載されており、説明的文章としては難度の高い構成です。

大きな流れは以下の通りです。

  • 第1〜2段落:1900年、英国の植物学者ラングウィッツが「植物中の金含有量を測定すれば金鉱脈の存在を推定できる」と指摘したが、当時の分析技術では植物中のごく微量の金を測定できなかった
  • 第3〜11段落:日本の旧金属鉱業事業団が行った「植物地下探査」プロジェクトと、放射化分析法の紹介。鹿児島県・菱刈鉱山付近での調査でヤブムラサキが特に金を多く含むことが判明
  • 第12〜14段落:植物中の金濃度の季節変化や部位による違いに関する調査(米国・カナダでの研究)
  • 第15〜17段落:植物がなぜ金を蓄積するのかについての説明と、ヤブムラサキを用いた金採取の可能性に関する補足
段落構成図|『地球を救う植物のすごい知恵』の論の展開
問題提起 第1〜2段落
1900年、英国人ラングウィッツが植物による金鉱脈探しを提唱。しかし当時の技術では実現できなかった。
具体例① 第3〜11段落(中心部)
日本の旧金属鉱業事業団による「植物地下探査」プロジェクト。放射化分析法で植物中の金含有量を測定し、菱刈鉱山付近でヤブムラサキが特に多くの金を含むことを発見。
具体例② 第12〜14段落
米国・カナダでの調査。植物の部位(小枝など)や採取の季節によって金含有量が変動することが判明。同じ条件でサンプリングする必要がある。
結論・補足 第15〜17段落
植物がなぜ金を蓄積するかは未解明。しかしヤブムラサキは金鉱脈探しの優れた指標となることが確認された。植物を利用した金採取の可能性も示唆。

「土壌」と「植物(ヤブムラサキ)」の対比を整理

この文章の核心は、金鉱脈を探す指標として「土壌」と「ヤブムラサキ」を比較している点です。問四・問五で問われる内容なので、対比をきちんと押さえておきましょう。

対比構造図|金鉱脈探しの指標としての土壌 vs ヤブムラサキ
土壌(つちじょう)
・鉱脈付近では金の濃度が高い
・しかし鉱脈から離れると急激に金濃度が低下する
・約100m〜300m程度の範囲でしか変化が見られない
金鉱脈の指標としては範囲が狭い
VS
ヤブムラサキ(植物)
・鉱脈付近で金の含有量が最も高い
1〜2km離れた場所でも金の含有量に変化が見られる
・土壌よりも広い範囲で金鉱脈を推測できる
・金鉱脈探しの指標としてより優れている
筆者の主張 → ヤブムラサキは土壌よりも広範囲で金鉱脈の位置を推測できる優れた指標である

設問解説|大問4

問一|傍線①「これ以降」の説明として最も適切なもの(6点)

第1〜2段落の「植物を手がかりにした金脈探し」がなぜ実現しなかったのかを問う問題です。

模範解答

植物中のごく微量の金を測定する技術がなかったため、植物を金脈探しに利用することはできなかった。

解答の根拠(第1〜2段落)

ラングウィッツ博士の指摘は「特定の地域に自生する植物の金含有量が高ければ、その付近に金鉱脈が存在する可能性が高い」というものでしたが、当時の分析技術では植物中に含まれるごく微量の金を測定することができなかったため、植物を金鉱脈探しに利用することはできませんでした。

他の選択肢が誤りな理由
  • ア=「科学的な根拠がない方法」ではないので×(ラングウィッツの指摘には科学的根拠があった)
  • イ=「金を識別して分析する技術」と書いてあるが、技術の問題は「植物中の微量の金」を測定できないこと
  • エ=「植物に含まれる金を金脈探しに利用するのは手間がかかる」とは本文に書かれていない

問二|「植物地下探査」プロジェクトの手順(5点×2+5点)

プロジェクトの具体的な手順を、本文から指定字数で抜き出す問題です。

模範解答

1の答え
A → 金鉱脈候補地(6字)(第8段落・40行め)
B → 放射化分析法(6字)(第9段落・46行め)

2の答え
鉱脈に〜く植物」(鉱脈に近づくにつれて金の含有量が際立って上がっていく植物)

プロジェクトの手順を整理
  1. 全国各地の金鉱脈や金鉱脈候補地で植物を採取する
  2. 採取した植物を洗浄して乾燥させ、粉末にした試料を用意する
  3. 放射化分析法によって試料中の金の含有量を測定する

2の問いでは「鉱脈に近づくにつれて金の含有量が際立って上がっていく植物」が見つかれば、それが金脈探しの指標になると予想されていたことを読み取ります(28〜32行め)。

問三|記述問題(10点)|「植物試料〜ほどです」の例で何を言いたいか

大問4で最も差がついた問題(正答率19.8パーセント)。記述問題です。

模範解答(28字以内・はじめと終わりの3字)

放射化分析法による金の検出感度が極めて高いということ。
抜き出す部分(28字):「放射化〜こと。」

解答のポイント

設問は「例を通じて筆者は何を言いたいか」を聞いています。例の前後を見ることで何を言いたいかを読み取る、というのは説明的文章を読むうえでの大切な技術です。58〜65行めに「放射化分析法による金の検出感度が極めて高い」という内容が見つかります。例(試料が汚染されたら測定値が不正確になるほど)は、検出感度が極めて高いことを示すために挙げられているのです。

「具体例の働き」を理解する力

説明的文章では、具体例は何かを説明するために挙げられるものです。具体例の前後にある「抽象的な記述」を探すと、筆者が言いたいことが必ず見つかります。今回の例は「金のネックレスや指輪などの蒸気で試料が汚染され測定値が不正確になる」というものでした。これは「装飾品レベルの微量の金でさえ感度に影響する=それだけ感度が高い」ことを示しています。

問四|グラフ読み取り(6点×2)

菱刈鉱山付近の土壌とヤブムラサキ中の金濃度変化を表すグラフを読み取る問題です。

模範解答

1(適切でないもの)→

2(最も適切なもの)→

問四1の解説(適切でないものを選ぶ)

「土壌中では、鉱脈から100m以上離れた地点でも10ppb以上の金濃度が測定される」は適切ではない。グラフを見ると、土壌の金濃度は鉱脈から100m離れた付近では低い値になっています。土壌中でも、鉱脈から「+300m」付近までは金濃度の変化が見られますが、100m以上で10ppb以上というのはグラフの読み取りとして誤りです。

問四2の解説(最も適切なものを選ぶ)

「ヤブムラサキの方が鉱脈から遠い場所でも金の濃度の変化が見られるので、土壌よりヤブムラサキの方が金鉱脈の位置を推測するときの指標として優れていると言えること」
これが正解。86〜90行めに「土壌よりヤブムラサキの方が鉱脈から遠い場所でも金の濃度の変化が見られるので、土壌よりヤブムラサキの方が遠い場所から金鉱脈の位置を推測できる」と明記されています。

問五|傍線⑤「植物中の金濃度の季節変化〜」(6点)

米国とカナダでの調査で行われたこととして、最も適切なデータを選ぶ問題です。

模範解答

ヘムロ鉱山付近で春の同じ日に採取されたヤマモミジの小枝に含まれる金の量の変化についてのデータ

解答のポイント

95〜106行めから読み取れる重要な事実は2つ:

  • 米国(ロイヤル・タイガー鉱脈)の調査:小枝の部分に最も金が蓄積され、9月に含有量が高くなることが分かった
  • カナダ(ヘムロ鉱山地域)の調査:金の含有量は春の方が秋より高くなる傾向があることが分かった

季節や部位によって金の含有量は大きく変動するので、データとして利用するためには「同じ時期・同じ部位」で採取された植物を比較する必要があります。これが「ヤマモミジの小枝(部位)」「春の同じ日(時期)」「ヘムロ鉱山(場所)」と条件が揃っている選択肢エが正解になる理由です。

問六|段落構成(6点)

文章を4つのまとまりに分ける問題です。

模範解答

4つの意味段落と各まとまりの内容
  1. 第1のまとまり(前半):近代的な分析技術が発達するまでの金鉱脈探しの限界(問題提起)
  2. 第2のまとまり(中心部):日本の鉱山についてと、旧金属鉱業事業団が行った植物を利用した金鉱脈探し(具体例①)
  3. 第3のまとまり:植物中の金濃度の季節や部位による違いに関する調査(具体例②)
  4. 第4のまとまり(後半):植物がなぜ金を蓄積するかについてと補足説明(結論・補足)

話題の切り替わりに注目しましょう。「日本の話 → 海外の話」「単発の調査 → 季節・部位の変動の研究」「実用の話 → なぜ植物が金を集めるかという基礎的な疑問」と、3回の話題転換があります。これが4つのまとまりに対応しています。

大問4全体のテーマ

この文章のテーマは「植物が持つ秘められた能力を利用する」こと。1900年に提唱されながら長く実現できなかった「植物を使った金鉱脈探し」が、近代的な分析技術(放射化分析法)の発達によって実現可能になったという科学技術の発展の物語でもあります。さらに、ヤブムラサキを利用すれば金の採取まで経済的に成り立つ可能性があるという、植物の意外な実用性が示されています。

まとめ|今回のテストで身につけたい3つの力

5年生のうちに固めたい読解の柱

今回のテストは、物語文と説明的文章の両方で「変化と対比を読み取る力」が問われました。
大問3では結人の心情変化の「マイナス→±混在→プラス」という大きな流れを、
大問4では「土壌 vs ヤブムラサキ」という対比構造を押さえることが正解への近道です。
記述問題でも「3要素を埋める」「例の前後にある主張を探す」という基本動作が決め手になりました。

今回得るべき3つの学び

  1. 物語文では「心情変化のきっかけ」を必ず押さえる──結人の場合は「父が手作りした推しタオル」が転換点でした。マイナスからプラスへ変わる瞬間を見つけることが心情問題の鍵です。
  2. 説明的文章では「具体例の前後」に筆者の主張がある──大問4の問三(記述)はまさにこれを試す問題でした。具体例を読みながら「結局何が言いたいのか」を常に意識して読みましょう。
  3. 記述問題は「要素を分解してから書く」──大問3問四は「行きたい気持ち+行けない理由+代わりの行動」の3要素、大問4問三は「例から導かれる結論を本文から抜き出す」と、それぞれ書く順番が決まっています。
次回(第3回)に向けて

第3回組分けテストでは、今回と同様に記述問題の比重が増していくと予想されます。日々の演習では「記述の3要素を意識して書く」「説明的文章では段落のまとまりを意識して読む」「物語文では心情変化のグラフを頭の中で描く」という3つを意識して取り組んでみてください。

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