こんにちは。指導歴20年中学受験国語専門プロ家庭教師のヨッシーです。
今日は一日雨。東京はいよいよ梅雨入りのようです。
オンライン家庭教師を本業とするようになってから、「通勤」というものに無縁になったため、極度の運動不足に陥り、腹のふくらみが・・・笑
そこでコロナ前まで続けていたランニングを再開(外で会話なしであればノーマスクOKとのことでしたので)して運動不足解消を図っていたのですが、これから雨が多くなると別の方法を考えなくてはいけませんね。
さて、今回は早稲アカさんの早大学院オープンです。
早速みていきましょう。
2017年に刊行された本です。2018年入試では大ヒット。女子学院、海城、東邦大東邦、開智、甲陽学院などで出題された注目作品です。
架空のお掃除ロボット「ルンル」を例に、その健気さから感じられる特別な感情に関する考察をまとめた文章です。
テーマは身近な題材でありながらも、筆者の思いに理解が及ぶかどうかは丁寧な読み込みができるかどうかにかかっています。
筆者の意見、感想に関わる部分に線引きをしながら丁寧に読み進めましょう。
P3
この気ままなお掃除ぶりは果たして【2】なものなのか。
→問いかけ、疑問の表現は線を引きましょう。また「果たして〜か」という表現は【反語】の意味を含む可能性を考えておくべきです。つまり「【2】ではない」という意味がここには含まれている可能性があるとみておくべきなんですね。
同じところをいったり来たりと重複も多そうだ。多分取りこぼしているところもあるにちがいない。
→この表現からあまり効率よく掃除していないというニュアンスが伝わりますね。ここから【2】に入る言葉が「効率」に関係する言葉が入ると想像できそうです。
P4
いったい誰がこの部屋を片づけたというのか(問いかけ)
一緒に片づけていた、あるいはロボットはわたしたちを味方につけながら、ちゃっかり部屋をきれいにしていたといえないだろうか。(答え)
→「誰が片づけたのか」という問いかけに「ロボットと協力して片づけた」という解釈で答える。この問いかけ→答え の形には注目しておきましょう。
このロボットの<弱さ>は、わたしたちにお掃除に参加するよち(C)を残してくれている。あるいは一緒に掃除をするという共同性のようなものを引きだしている。くわえて、「部屋のなかをすっきり片づけられた」という達成感をも与えてくれる。
→本文の出典タイトルにも重なる「ロボットの<弱さ>」という表現、さらに傍線⑤の直前ということもあり、必ず注目しておきたい部分です。
このロボットを体育館のような、もう少し広い部屋で走らせてみらたどうか。(問いかけ)
甲斐甲斐しさも薄れるのである。(答え)
これはどうしてなのか(問いかけ)
このロボットは部屋の壁や椅子、テーブルなどを上手に味方につけつつ、部屋のなかをまんべんなくお掃除していたのである。(答え)
→このように筆者は「問いかけ」→「答え」を繰り返し思考を深めていく形をとっています。読みながら「問いかけ」に対して「答え」がどこに書かれているのかを意識することが大切です。
P5
前者はちょっとゆきあたりばったりで、あまり深く考え込むことのない行動派タイプだろうか。後者はやや慎重に行動を選ぶけれど、なかなか臨機応変に振る舞えない熟考派タイプ。
→ここまで述べてきた2つのタイプを対比的に述べて考えを深めようとしている重要表現です。
けれども、前者の行きあたりばったりの行動様式にも学ぶところはありそうだ。その一つは「とりあえず動いてみよう」という姿勢だろう。いい加減にも思えるけれど、そのことで周りにあるモノや成約を活かしつつ、一つの物事を成し遂げてもいた。それと「偶然の出会いを一つの価値に変えている」というような側面もある。
→ここまで読んで分かる通り筆者はお掃除ロボットの「とりあえず動こう」とする行動派タイプに肯定的な意見を持っているようです。その理由を詳しく述べている部分ですので大変重要な部分と言えるでしょう。
問五 傍線③「健気」とありますが、筆者は「ルンル」をどのようにとらえていると考えられますか。(記号選択)
選択肢の前半と後半部分に分解して考えます。前半部分では「エ」の「たとえ障害物があったとしてもおかまいなし」の表現が本文と異なるため✗。それ以外の選択肢は特に問題ありませんね。
そこで後半の表現を比較します。
ア:かわいさを感じている イ:たよりなさを感じている ウ:ひたむきさを感じている
この中では「イ」のみが否定的な見方になっています。筆者の立場を考えると「イ」はふさわしくないことがわかりますね。
最後に「ア」か「ウ」の判断ですがこれは「健気」という言葉の意味から判断します。
「健気」・・・(子供など弱い者が)懸命に努めるさま(広辞苑)
とありますので「ウ」が正しいと判断できます。
問七 傍線⑤「なんとも不思議な存在なのである」とありますが、筆者が「<ルンル>」を「不思議な存在」だと考えるのはなぜですか。三十六字以上四十五字以内で説明しなさい。
記述問題は「問いの中心」をとらえ、それに対して「一言で答える」ことから着手します。
【問いの中心】不思議だと考えるのはなぜ?
【解答指針】「不思議」という言葉の意味をよく考える。「通常考えられない、意外な状態である。または理解できない状態、怪しい状態であること」などを指します。
つまりお掃除ロボットが掃除をこなす【意外性】について書けばよいということになります。
【答えの核】
・お掃除ロボットには欠点がある
「が」(逆接)
・わたしたちに掃除に参加させ、共同性を引きだし、達成感をも与えてくれる。(傍線⑤の直前表現)
このように「欠点があるのにうまくいく」という構造にすることで意外性=不思議であると感じる理由が説明できるわけですね。
いかがだったでしょうか?
文章内容そのものは身近なテーマで難しくありませんが、選択肢、記述ともに答えづらいと感じた生徒さんも多いのではないでしょうか。
日常的に使う言葉(「健気」や「不思議」など)について十分吟味して本来の意味を考えてから答えを導くようにしていく必要があります。日常目にする言葉だからこそ、感覚的に処理してしまいがちです。特に抽象的な言葉はお子さんが正しい意味を理解しているのかどうか、ときに立ち止まって考えさせてみることが大切です。