中西進「日本人の忘れもの3」
中西進の『日本人の忘れもの3』は、日本人の美意識や価値観に焦点を当て、不完全なものにこそ美が宿るという考え方を紹介しています。これは単なる個人の趣味ではなく、歴史的・文化的背景に根ざしたものです。
確認しておきたい表現
- 楽焼(らくやき): 手作りの茶碗の一種で、形がいびつで素朴な美しさがある。
- 有田焼(ありたやき): 精巧で均整の取れた磁器。
- 名器(めいき): 名高い器物。特に価値が高いとされる茶碗など。
- 風格(ふうかく): 人や物が持つ品格や趣。
重要なことわざ・熟語
- 「判で押したような」: 決まりきっていて面白みがない様子を表す。
- 「絵にかいたような」: 非常に美しいが、現実感がないことを示す。
筆者の主張と意見
筆者は、完全で均整の取れた美しさではなく、どこか不完全で自然な形こそが本当の美であると考えています。彼は、左右対称ではない器や、あえて形を不完全にすることで生まれる美しさに注目しています。
背景説明
日本の茶道や庭園の歴史について知っておくと、本随筆の理解が深まります。茶道では、茶碗の形や質感が重要視され、不完全な形にこそ美があるとされます。また、日本庭園は自然をそのまま再現することを重視しており、西洋の幾何学的な庭園とは対照的です。
読み解きのテクニック
- 指示語の内容を確認する
- 随筆内では「それ」「この」などの指示語が多用されています。例えば、「それでは、なぜ世間からほめられ、もてはやされるのか」という問いかけは、前文で述べられた不完全な美しさについての説明を受けています。
- 比喩表現に注目する
- 「絵にかいたような」「判で押したような」といった比喩表現が使われており、これらは完全さや均整を皮肉っています。
- 筆者の意見と具体例を関連付ける
- 筆者の意見である「不完全な形こそ美しい」という主張は、具体例としての楽焼や有田焼、自然庭園と幾何学庭園の対比で補強されています。
- 対比表現を見つける
- 「しかし」「ところが」といった対比表現が随所に見られ、楽焼と有田焼の対比、日本庭園と西洋庭園の対比が強調されています。
- 問いかけとその答え
- 「それでは、なぜ世間からほめられ、もてはやされるのか」という問いかけに対し、筆者は「不完全であることが自然であり、物の命を引き立てるからだ」と答えています。
これらのポイントを意識して読み解くことで、全体を把握しやすくなるでしょう。
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