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概要
眞島めいり著『バスを降りたら』は、峰森高校附属中学校の受験に失敗した律の心情と彼のその後の進路選択について描いた物語です。律は夢に向かって努力するものの、結果は伴わず、次のステップに進むために葛藤しながらも新たな決意を固めていきます。
登場人物と特徴
- 律(りつ): 小学五年生から中学受験を目指した少年。目標があると一層努力する性格。失敗の後も前向きに次の目標に向かう強い意志を持つ。
- お父さん: 峰森高校の卒業生で、律の受験を応援する。息子の進路についても積極的にアドバイスをする。
- お母さん: お父さんと同じく峰森高校の卒業生。律の受験を支え、進路について温かく見守る。
比喩表現の分析
- 「全身がさあっと冷たくなる」: 極度の緊張や不安が一気に襲ってくる感覚を生々しく描写しています。
- 「どろっとした膜にくるまれたまま」:大きなショックを受けて現実を現実として受け止められない感覚を表現しています。
- 「身体じゅうの血がぐらっと逆流するのを感じた」:逆上と言う言葉があるように血が逆流するのは強い怒りや苛立ちを表しています。
- 「亀裂がどこまでも走っていくようだった」: 律の心の中に広がる不安や失望感を表現しています。
重要問題解説
問3「どろっとした膜にくるまれた」とありますが、このときの律の様子の説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
正解は エ 。
エ の選択肢「不合格になったという事実を突きつけられ、動揺のあまり現実感を持てずにいる」は、本文にある「どろっとした膜にくるまれた」という表現と一致しています。この表現は、現実感が失われ、夢の中にいるかのような不確かな感覚を意味しています。律は、不合格という現実を受け入れることができず、現実感を失っている状態です。
他の選択肢が間違っている理由
ア 合格する自信があったのに、現実は厳しく不合格になったが、理由がわからずにいる。
- この選択肢は、律が不合格の理由を理解できないことに焦点を当てています。しかし、本文の記述からは、律が不合格の理由について考えている様子は描かれておらず、理由がわからないことが主要な原因ではありません。
イ 努力したのに不合格になった理不尽な現実を受け入れられず、怒りを感じている。
- この選択肢は、律が不合格に対して怒りを感じていることを示しています。しかし、本文では律の感情は主に動揺と現実感の喪失であり、怒りについての描写はありません。
ウ 志望校に進学できなくなったので、これからどうすればいいかわからずに混乱している。
- この選択肢は、律がこれからどうすればいいかわからずに混乱していることを示しています。しかし、本文の描写は、律が具体的な行動に対する混乱というよりも、不合格という事実そのものに対する動揺を強調しています。
問4「だったら選択肢はひとつしかない」とありますが、律が公立中ではなく私立中の清英学園に進学しようと思ったのはなぜですか。
正解は ウ 。
本文では、律が公立中に進学した場合、受験に失敗したことで周囲からあわれみや侮蔑の目で見られることを恐れている様子が描かれています。そのため、知り合いのいない私立中に進学して新しいスタートを切ることを選んだと説明されています。
他の選択肢が間違っている理由
ア 公立中に進学しても、受験勉強のせいでそれまで仲の良かった友人とも疎遠になってしまったので、いっそのこと誰も知らない私立中に通って新しい人間関係を作りたいと思ったから。
- この選択肢は友人関係の変化に焦点を当てていますが、本文では律が受験に失敗したことによる周囲の目を避けたいということが主な理由として描かれており、人間関係が疎遠になったことを主な理由とはしていません。
イ 公立中に通って、受験に失敗したことを意識しながらみじめな気持ちで過ごすよりも、私立中で必死に勉強して高校受験に挑戦し、今度こそ志望の学校に合格したいと思ったから。
- この選択肢は将来の高校受験に向けた意欲を強調していますが、本文の焦点は現在の公立中学での生活に対する不安と、それを避けるための私立中学への進学という選択にあります。
エ 公立中に通って、受験に失敗した古橋律としてみんなに馬鹿にされるくらいなら、とくに好きではなくても私立中に通って、充実した学生生活が過ごせるように努力したいと思ったから。
- この選択肢は、公立中で馬鹿にされることを避けるために私立中で充実した生活を送りたいという点を述べていますが、本文では主に周囲のあわれみや侮蔑の目から逃れることが重要視されています。
問五「峰森高校を受験する」とありますが、律が「峰森高校」にこだわるのはなぜだと考えられますか。
正解は ウ 。
本文では、律が受験に失敗したことによる敗北感や周囲からの同情の目を気にしている様子が描かれています。彼はその敗北感を払拭するために、峰森高校に合格することを強く望んでいます。
他の選択肢が間違っている理由
ア 中学入試は思うような結果にならなかったが、目標を大事にするという両親に言われたことばを信じ、峰森高校に入学することで三年越しの目標を達成し、努力すれば望んだ結果が得られると実感したかったから。
- この選択肢は、両親の言葉を信じて目標を達成したいという点に焦点を当てていますが、本文では律の主な動機は周囲の目や自身の敗北感を払拭することにあります。両親の言葉よりも、自身の感情と周囲の反応に対する対応が強調されています。
イ 自分が志望校に落ちた際に見せた両親の残念がる顔を見たときの申し訳なさを忘れられないので、峰森高校に受かることで今までずっと自分を応援してくれて来た両親の思いに、今度こそ報いたいと考えているから。
- この選択肢は、両親への申し訳なさが動機となっている点に焦点を当てていますが、本文では主に律自身の敗北感や周囲の目に対する意識が描かれています。両親の思いに応えたいという気持ちもあるかもしれませんが、明記されておらずそれが主要な理由ではありません。
エ 受験に失敗したことで周囲の人々から馬鹿にされていると感じ、劣等感を抱くようになったので、峰森高校に合格することで、自分のことを馬鹿にしてきた人を見返して、優越感を味わいたいと切に願っているから。
- この選択肢は、劣等感を抱いていることや、優越感を味わいたいという点が強調されすぎています。本文では、律の動機は主に敗北感を払拭し、自分に誇れる存在になることにあります。優越感を味わうことが主要な目的ではありません。
問六「淡々とした口調でお母さんが言った」とありますが、このときの話の様子の説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
正解は イ 。
本文では、お母さんが淡々とした口調で律に対して過去に囚われることなく、今を大切に生きることの重要性を伝えようとしている様子が描かれています。感情を抑えて淡々と話すことで、律に冷静に伝えたいという意図が読み取れます
他の選択肢が間違っている理由
ア 今を否定している律の姿に心を痛めているので、一日一日を大切に過ごすように何としても説得しようとしている。
- この選択肢は、説得しようとしている点に焦点を当てていますが、「淡々とした口調」という表現からは、強い説得というよりも冷静に伝えようとしている様子が強調されています。お母さんの態度は説得よりも冷静な伝達に近いです。
ウ 受験の失敗にこだわり、今を楽しめない律をかわいそうだと思ったが、同情して傷つけることのないようにしている。
- この選択肢は、同情しないようにしている点を強調していますが、本文では同情というよりも、過去にとらわれず今を大切にすることを伝えようとしている点が強調されています。同情の有無は主要なテーマではありません。
エ 律が過去のこだわりから抜け出せないのは、受験を強くすすめた親にも責任があるので、申し訳なく思っている。
- この選択肢は、親の責任や申し訳なさに焦点を当てていますが、本文ではお母さんの伝えたいメッセージは今を大切にすることであり、親の責任や申し訳なさについては述べられていません。
問9「同じところをぐるぐる回ってるだけ」とありますが、律のどのような様子を表していますか。説明しなさい。
解答プロセスの解説
- 本文の該当箇所を確認
- まず、「同じところをぐるぐる回ってるだけ」の一文が出てくる前後の文脈をよく読みます。この箇所が律のどのような心情や状態を表しているのかを理解します。
- 比ゆ表現の分析
- 「同じところをぐるぐる回ってるだけ」という表現は、物理的な行動ではなく、心理的・感情的な状態を比ゆ的に表していると考えます。ここでは、律の気持ちが前進せず、過去の失敗にとらわれ続けていることを示しています。
- ー線部前後の状況の分析
- 本文から、律が中学受験に失敗した後、その失敗を引きずり続けていることがわかります。彼はその失敗から目を背けるために新たな目標を立てましたが、実際には過去の失敗に対する執着から抜け出せていません。
- 律は両親や友人の言葉によって、自分が過去に囚われていることに気づかされますが、それでもそのこだわりを捨てきれない様子が描かれています。
- 具体的な説明の構築
- 同じところから抜け出せない様子を「律」の状況と当てはめて複数考えます。
以下2点をまとめるとよいでしょう。
- 中学受験に失敗して高校入試を目指すが、失敗そのものを引きずり続けていること
- 両親や友達の発言や態度から失敗など気にしなくて良いと気づくが結局、失敗にとらわれてしまっていること
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