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2025.4.28実施 サピックス 小5 4月度マンスリー確認テスト 国語 大問3・4 読解問題解説
大問3 説明文「『走る』のなぞをさぐる」高野進
走ることの意味や特徴について考察し、歩きとの違い、歴史的な変遷、現代社会における走ることの意義などを解説した説明文です。走りと歩きの基本的な違いを説明し、人類の進化における走ることの役割や目的の変化について論じています。
筆者の主張・意見

- 走ることは人間にとって根源的で重要な行為である
- 現代の走る目的は昔と変わり、必要性より個人の意思による「走りたいから走る」が増えた
- 現代の生活様式が変化しても、人間の体は依然として走ることを必要としている
- 走ることは人間にとって「切っても切れないもの」である

対比的な表現
- 走りと歩きの違い:
- 「走り」は両足が同時に地面から離れる瞬間がある
- 「歩き」は常にどちらかの足が地面についている
- 昔と今の走る目的の違い:
- 昔: 「生きるために必要な走り」「仕事としての走り」
- 今: 「走りたいから走る」「趣味や健康のための走り」
- 現代と未来の人間の関係:
- 現在: 人の体はまだ走ることや動くことを必要としている
- 未来の可能性: 遠い未来には人の進化の形が変わっていく可能性

設問解説
問一:接続語の選択
A〜Dにあてはまる接続詞を考えます。
- A:文章の冒頭で走りと歩きの違いについて問いかけた後、最初にスピードの違いに触れています → エ「まず」
- B:スピードの違いに加えてさらに別の違いがあると続けています → ウ「そして」
- C:走りと歩きの違いについて説明した後、対比的に歩きの特徴を述べています → イ「でも」
- D:走りの原因を述べた後その結果を述べています → オ「だから」
問二:競歩の例を挙げた理由の理解
筆者が「競歩」の話をしている理由は、走りと歩きの違いを明確に示すためです。特に両足が同時に地面から離れないという歩きの特徴を競技のルールとして示すことで、走りと歩きには明確な区別があることを説明しています。したがって、正解はウ「歩きのルールを定めた競技が存在していることを示し、歩きと走りに明確なちがいがあることを説明するため。」です。
問四:空欄に当てはまる文の選択
原始時代と現代を対比した文脈で、「今でも人は危険をさけるために走ることはあるかもしれませんが、③……なんてことはありませんよね。」という文があります。この空欄には、現代では起こらないような状況が入ります。そのため、「都会で突然肉食動物に追われる」が最も適切です。
問五:走ることの意味や価値の変化
江戸時代には走る仕事があり、現代のように車などの交通手段がなかったため、走ることは速く移動する重要な手段でした。筆者は「走る」ことの価値が、今と昔では異なると説明しています。正解はア「交通や通信の手段がかぎられていたので、走ることは速く移動する方法として今より貴重であり、走って人や物を運ぶ職業は生活に不可欠だったから。」です。
問六:走ることの昔と今の違い
昔は生きるため、仕事のためなど必要性から走っていましたが、現代では趣味や健康、気分転換など個人の欲求から走ることが増えています。したがって、正解はウ「昔は速く移動する必要がある場合に走ることがほとんどだったが、今は必要性にかかわらず、個人の欲求から走ることが多くなった。」です。
問七:人の進化の形の変化の可能性
本文では「インターネットがあれば、あまり動かなくても机の上ですべての情報を集められる、という時代になりつつあります。そう考えると、遠い未来には人の進化の形が変わっていく可能性はあります。」と述べています。これは、動かなくても生活できる環境に人間の体が適応していく可能性を示唆しています。したがって、正解はイ「人々の生活の発展が移動の必要性を減らしていくなかで、動かなくても生活できる環境に人間の体が適応していく。」です。
問八:走ることが「切っても切れない」理由
筆者は、現代では走る必要性が昔ほどなくなっているにもかかわらず、人々は走り続けていると述べています。それは、走ることが人間の本質的な活動であり、体が走ることや動くことを必要としているためです。
1:問の中心:「なぜ、走ることは人にとって切っても切れないものだと言えるのか?」
2:答えの中心:「必要が無くても、自分の意志で走ろうとするから」→文末におく
3:説明:現在は走る必要性がそれほどないのに
4:対比:昔は生存や仕事のために貼らなくてはならなかった
4→3→2の順番に書いていきます。
この文章で学べる重要なポイント
- 説明文の構造の把握:
- 問いかけから始まり、対比や具体例を用いて説明し、最後に筆者の考えで締めくくる構成
- 「まず」「そして」「でも」などの接続詞に注目すると文章の流れがわかりやすい
- 筆者の主張の見つけ方:
- 文末表現「〜と思います」に注目
- 結論部分にある「走ることは人にとって、切っても切れないものなのだと思います」が筆者の主張
- 対比表現の理解:
- 「走り」と「歩き」の違い
- 「昔」と「今」の走る目的の違い
- これらの対比から筆者の主張を読み取る力が重要
- 歴史的な流れの理解:
- 原始時代→江戸時代→現代という時間的な流れに沿った説明
- 各時代における走ることの意味や価値の変化を理解する
中学受験の国語では、説明文の構造を理解し、筆者の主張を正確に読み取る力が求められます。この文章は、身近な「走る」という行為について深く考察されており、対比表現や時間的な流れを理解することで筆者の主張を読み取るよい練習になります。
大問4 物語文 「心が広くて強い人」(「Ultramarine ぼくらの種」所収)次良丸忍
六年一組で江古田のノートに落書きがされた事件で、「ぼく」(安達)は犯人ではないのに犯人と疑われ、自ら罪をかぶります。友人の村上から「心が広くて強い人」と評価され、「ぼく」はその言葉に励まされます。しかし、友人の朝倉から村上が真犯人かもしれないと告げられ、「ぼく」は悩みます。結局、村上も犯人ではなく、本当の犯人は森里あかねでしたが、村上と「ぼく」の間には疑いの溝ができてしまいました。
登場人物と人物像

- 「ぼく」(安達): 主人公。江古田のノートの落書き事件で犯人ではないのに罪をかぶる。村上の言葉に励まされるが、彼女を疑ってしまう。正義感があるが、人の言葉に影響されやすい。
- 村上れい子: 「ぼく」を「心が広くて強い人」と評価する女子。短い髪で、明るく積極的な性格。
- 江古田: ノートに落書きされた被害者。がんこで、一度決めつけたら絶対に曲げない性格。
- 朝倉: 「ぼく」の友人。村上が真犯人ではないかと疑いの種をまく。
- 森里あかね: 実際の犯人。江古田に何らかの恨みを持っていた。
心情表現とその変化

比ゆ表現とその解説
- 「かたい種になっていた」: 村上の言葉「心が広くて強い人」が「ぼく」の心の中で確かな存在として根付いたことを表す
- 「あたたかな力がみなぎる」: 村上の言葉を思い出すと自信や勇気が湧いてくることを表す
- 「どんな芽が出て、どんな葉がしげり、どんな花がさくのか」: 村上の言葉から生まれる自信や成長の可能性を植物の成長に例えている
- 「くさってしまった」: 村上を疑ったことで、「心が広くて強い人」という自己肯定感が失われたことを表す
主題
この物語の主題は「信頼と疑いの狭間での人間関係の脆さ」です。「ぼく」は村上の言葉に励まされ自信を持ちますが、第三者の言葉によって簡単に疑いを持ち、その結果関係が壊れてしまいます。人を信じる大切さと同時に、一度生まれた疑いがもたらす心の傷の深さが描かれています。
設問解説
問一:空欄に入る言葉の選択
- а: 「あれこれいいわけをしながら」の後の助動詞 → イ「ごにょごにょ」
- b: 「自分の席にすわっている村上に目をむけた」の様子 → エ「ちらり」
- c: 「村上の少しつりあがった目に」涙が盛りあがる様子 → オ「うるうる」
- d: 「朝倉が、ぼくの頭を」こづく様子 → ア「こん」
問二:「ぼくは不思議と腹が立たないのだった」理由
「ぼく」が腹を立てないのは、村上から「心が広くて強い人」と評価されたことで自信を得たからです。また、江古田の言葉に腹を立てると、村上からの評価と矛盾してしまうため、受け流すようになりました。正解はエ「自分の行動を村上にほめられたことで自信が生まれ、江古田に不快な態度をとられても、広くて強い心で受け流すことができたから。」です。
問三:「どんな芽が出て、どんな葉がしげり、どんな花がさくのかはわからない」の心情
この表現は、村上の言葉「心が広くて強い人」という評価を種に例え、それがどのように成長していくか、つまり自分がどのように成長していくかわからないが期待しているというポジティブな心情を表しています。正解はア「これからの自分の心の成長に期待している。」です。
問四:「そんなぼくの気持ち」の内容
朝倉から村上が真犯人かもしれないと聞かされた「ぼく」は心が落ち着かなくなりました。そして登校時に偶然村上に会うと、どう接すればよいかわからずとまどっている状態です。正解はア「村上のことでなやみ、心の整理がつかないまま本人と会ってしまい、どう接すればよいかわからずとまどう気持ち。」です。
問五:「まったく失敗だった」の内容
「まったく失敗だった」という表現は、「ぼく」が村上への対応を後悔していることを示しています。具体的には、村上が「スターウォーズ」の監督についての冗談めかした指摘に対して、「ぼく」が思いがけず声を荒らげて怒ってしまったことを指しています。朝倉の言葉で村上を疑っていたことが影響し、不適切な態度をとってしまったことを「失敗」だと感じています。
①問の中心:「どのようなこと」が失敗だったのか?
②答えの中心:「声を荒らげてしまったこと」「いら立ってきつく言い返したこと」など
③説明:(理由)村上が犯人だと考え悩んでいたため
※③→②の順に書きます
問六:「きのう」の村上への思い
「きのう」の「ぼく」の村上に対する思いは、好意的なものでした。本文から該当する部分を探すと「照れくさくこて目をそらしたい気持ちと、ずっと見つめていたい思いが、胸の中でうず巻く。」という表現があります。指定された形式では「照れくさく」となります。
問七:村上の気持ちの理解
村上の「そんな……どうしてそんなこと……」という言葉は、「ぼく」から落書きの犯人ではないかと疑われたことへの驚きと悲しみを表しています。村上は「ぼく」を「心が広くて強い人」と評価し、親しみを持って接してきたのに、突然犯人と疑われて衝撃を受けています。正解はイ「心が広い人だと感じてから、親しみを持って「ぼく」に接してきたつもりが、とつぜん自分が落書きの犯人と疑われてしまい、衝撃を受けている。」です。
問八:「かたい種は、花どころか芽を出すことすらなく、くさってしまった」の意味
この比喩表現は、村上の言葉「心が広くて強い人」が「ぼく」の心の中で希望や自信(種)となっていたのに、村上を疑い、傷つけてしまったことで、その言葉の効力が完全に失われてしまったことを表しています。「ぼく」は村上を疑うことで、「心が広くて強い人」という評価に反する行動をとってしまい、自己肯定感や成長の可能性(種の芽吹き)が失われてしまったのです。
①問の中心:この表現から「どのようなこと」がわかるか?※比喩の一般化
②答えの中心:自信が「ぼく」から失われたこと、「ぼく」が自信を持てなくなったこと、など
③説明:(理由)村上を信じられなかったこと、村上を傷つけてしまったこと、などを書きます
③→②の順でまとめます
この物語文で学べる重要なポイント
- 比喩表現の理解:
- 「種」「芽」「花」などの植物の成長を用いた比喩表現が重要
- 抽象的な心情が具体的なイメージで表されている点に注目
- 心情の変化の読み取り:
- 主人公の心情がポジティブからネガティブへと変化する過程
- 第三者の言葉が主人公の心情に与える影響
- 直接的な心情表現だけでなく、しぐさや情景描写から心情を読み取る
- 登場人物の関係性の分析:
- 「ぼく」と村上、江古田、朝倉などの関係性
- 信頼と疑いのテーマがどのように描かれているか
- 主題の読み取り:
- 人間関係における信頼の大切さと疑いの危うさ
- 「心が広くて強い人」という言葉が持つ意味とその変化
受験対策として特に注意すべき点
- 心情表現の多様さを理解する:直接的な表現、比喩表現、行動描写から心情を読み取る練習をしましょう。
- 物語の構造を把握する:「きっかけ→展開→クライマックス→結末」という流れを意識し、各場面での登場人物の心情変化を追いましょう。
- 複雑な心情を読み取る力を養う:特に主人公の葛藤や矛盾する感情(村上への好意と疑い)などの複雑な心情を読み取る練習が重要です。
- 比喩表現を自分の言葉で説明できるようにする:「種」「芽」「花」などの比喩が何を表しているのか、自分の言葉で説明できるようにしましょう。
物語文の読解では、表面的な出来事だけでなく、心情の変化や人間関係の機微、そして作者が伝えたいメッセージを読み取ることが大切です。この物語では特に、他者からの評価と自己認識の関係性、そして疑いが人間関係にもたらす影響について考えることができます。
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