2025.5.15実施 小6サピックス マンスリー確認テスト 国語文章読解問題解説

大問3:説明文『問うとはどういうことか―人間的に生きるための思考のレッスンー』梶谷真司

この文章は「知ること」と「問うこと」の意義について論じています。筆者は知らないことを恥じて隠すのではなく、積極的に新しいことを知ろうとすることで世界が広がり、より良い人生を送れると説いています。また、自分の興味関心だけに閉じこもらず、時に不快でもつらくても知るべきことがあると主張しています。

筆者の主張・意見

  • 「無知は恥ではなく、新たな知識を得るチャンスである」
  • 「新しいことを知れば世界が広がり、楽しみも増える」
  • 「自ら問うことで物事をより深く知り、よりよい行動がとれる」
  • 「不快でつらくても知るべきことがあり、それは人生を豊かにする」

対比的な表現

この文章には多くの対比表現が用いられており、筆者の主張を際立たせています:

  1. 「知りたいことだけを知る」 vs 「自分と異なる価値観も知る」
  2. 「楽しいこと」 vs 「楽しくないが知るべきこと」
  3. 「ノーテンキに生きる」 vs 「現実と深く複雑な関わりをもつ」
  4. 「平面的で単純な関わり」 vs 「深く複雑な関わり」

重要語句・表現

  • 「知らないということは、けっして悪いことではない」
  • 「カスタマイズされた情報」「異なる世界との接点」
  • 「埋めがたい溝」「知らぬが仏」
  • 「ノーテンキに生きる」「裸の王様」

読み取りづらい部分の解釈

  • 「裸の王様」の比喩(自分の実態を知らずに満足している滑稽な状態をあらわす
  • 「問い」と「知る」の関係性

説明的文章の読み解きのポイント

「問うとはどういうことか」の読解において、以下の点に特に注目して問題に取り組むとよいでしょう:

  1. 筆者の主張を示す文末表現: 文章中の「~である」「~だ」などの断定的な表現に注目しましょう。特に段落の最後に来ることが多いです。例えば「つらくても新しいことを知るのは、現実とより深く複雑な関わりをもつことであり、それは絶対的に豊かである」という最後の文は、筆者の主張を端的に表しています。
  2. 具体例と抽象表現のまとまり: ケーキ屋や育児書の例、大学選びの例は具体例です。その後に「そうやって新しい世界が広がるのは、楽しいことだろう」などの抽象的なまとめが続きます。この組み合わせに注意しましょう。
  3. 対比表現: 「知りたいことだけを知る」vs「自分と異なる価値観も知る」など、対比表現は筆者の考えを浮き彫りにします。「他方」「しかし」などの接続詞に注目しましょう。
  4. 繰り返し使われるキーワード: 「新しいこと」「知る」「問う」などの繰り返されるキーワードは、文章全体のテーマを示します。

大問3設問解説

問二 線①「同じようなこと」の内容

答え: エ(知らなかったことを調べ、知識を増やしてよりよい人生を送るということ)

解説:

  • 「ケーキ屋や昔の育児書」の例で「知ることで世界が広がる楽しさ」を説明し、「同じようなことは、大学進学や就職のような、人生の重要な決断においても起こる」と続いています。
  • これは、知らないことを調べて知り、それによって人生をより豊かにするという共通点があることを示しています。
  • 選択肢エが「知識を増やしてよりよい人生を送る」と述べており、本文の趣旨に最も合致しています。

問三 線②「入学した後に……なりかねない」の理由

答え: ア(興味をもった大学について深く知ろうとせずに、表面的なことしか分からないまま進学先を決めてしまったから)

解説:

  • 直前に「いろいろ疑問をもって調べずに、大学の知名度と偏差値だけを頼りに受験すると」と書かれています。
  • つまり、大学について表面的な情報(知名度・偏差値)だけで判断し、深く調べなかったことが原因です。
  • 選択肢アが「表面的なことしか分からないまま進学先を決めてしまった」と述べており、最も適切です。

問四 線③「このような傾向」の内容(50字以内)

答え例: 「自分好みの情報だけに触れ、異なる考えに触れず、自分の知識だけで十分だと思い込むこと。」(42字)

解説:

  • 直前の段落に「インターネットでは、自分用にカスタマイズされた情報ばかりが集まる」「自分とは異なる考え方や価値観…出会うこともない」「自分は十分知っている、自分が知っていることだけがすべてだと思ってしまう」と書かれています。
  • これらを要約し、50字以内でまとめる必要があります。
  • 重要なポイントは「自分好みの情報だけに触れる」「異なる意見に触れない」「自分の知識で十分と思い込む」の3点です。

問五 線④「異なる世界との接点が〝意外に〟少なく」の意味

答え: イ(インターネットから多くの情報を集めることができても、知識を偏りなく増やし見識を広めるような機会は予想に反して増えていないということ)

解説:

  • 本文には「今日では、そうしたネットワークや知識の範囲が途方もなく拡大し量的にも増えた」「少なくとも技術的にはいくらでもできる」と書かれており、技術的には多様な情報にアクセスできるはずなのに、実際には「異なる世界との接点が〝意外に〟少なく」なっていると述べています。
  • 選択肢イが「予想に反して増えていない」と述べており、「意外に」のニュアンスを最も適切に表現しています。

問七 線⑥「〝裸の王様〟のようになる」理由

答え: イ(周囲の出来事を自分の視点からでしか見られず、問題のある人と思われていることを自分だけが分かっていないから)

解説:

  • 本文では「本当は恨まれたり、バカにされたり、憐れまれたり、気の利かない鈍感な人間だと思われているのに、それを知らずにいる」と説明されています。
  • 「裸の王様」とは、自分だけが真実(自分が裸であること)に気づいていない状態を指します。
  • 選択肢イが「問題のある人と思われていることを自分だけが分かっていない」と述べており、最も適切です。

問八 「新しいことを知る」ことの「いいこと」に合致しない例

答え:

解説:

  • 筆者は「新しいことを知る」ことで「世界が広がる」「より良い行動ができる」「自分を守ることになる」などの利点を挙げています。
  • 選択肢エでは、算数が重要だという情報を得ながら、深く調べることなく仲の良い先輩の言葉を鵜呑みにしています。これは「自ら問う」姿勢ではなく、新たな知識を得ることの価値を活かしていません。
  • 他の選択肢はいずれも「知ることで行動や状況が改善された」例となっています。

問九 空欄補充文の位置

答え: B

解説:

  • 「要するに、楽しくないことでも、新しいこと、知らないことは知りたいと思うのだ。」という文は、前の内容をまとめる「要するに」で始まっています。
  • 【B】の前には「知れば苦しむことが分かっても、知らずにはいられない」「楽しいことよりも、苦しいことのほうが気になって仕方ない」と、知りたくないはずのことを知りたくなるという矛盾した心理が描かれています。
  • この内容を「要するに楽しくないことでも知りたいと思う」とまとめる文が続くのが自然です。

説明的文章の解き方のポイント

  1. 文脈を意識して読む: 例えば問一のA・Bに当てはまる語句では、前後の流れから「対比転換」には「ところが」、新しい話題への転換には「さて」が適切と判断できます。接続詞の働きをしっかり理解しておきましょう。
  2. キーワードの繰り返しに注目: 問二の「同じようなこと」や問四の「このような傾向」は、直前の段落のキーワードを見つけることがポイントです。筆者が繰り返し使う表現をマークしておくと解きやすくなります。
  3. 比喩表現の意図を考える: 問七の「裸の王様」のような比喩には、筆者の主張が凝縮されています。この場合、周囲の状況を客観的に把握できていない状態を表しています。
  4. 筆者の主張を総合的に捉える: 問八の「新しいことを知る」ことの「いいこと」を問う設問では、文章全体を通して筆者が強調している「自ら問う姿勢」「深く知る」という点から判断する必要があります。

大問4:物語文:『遠い町できみは』高遠ちとせ

母を亡くした小学6年生の翔が、精神的に不安定になった父・英一と離れて、母方の実家がある八重浜町で暮らすことになる物語。翔は寂しさを抱えながらも父との再会を楽しみにしていたが、英一は体調を崩して約束を果たせず、代わりに来た父方の祖母の言葉に傷つき、家を飛び出すまでが描かれている。

登場人物と人物像

  • :主人公。小学6年生。母の死後、父と別れて母方の実家で暮らすことになった少年。父親と共に母の闘病を支え、家事も手伝っていた。寂しさを抱えながらも父を心配し、気遣う優しさがある。
  • 英一:翔の父親。妻の闘病中は必死に支え、死後は精神的に不安定になる。翔を大切に思っているが、精神状態が悪化して約束を守ることができない。
  • 公子:母方の祖母。八重浜町での翔の生活を支える。温かく翔を迎え入れる。
  • 香夏子:母方の叔母。八重浜町での翔の保護者。
  • 父方の祖母:英一の母親。英一の病状を心配し、翔に我慢を強いる。
  • 大也・美波:八重浜町での翔の友人。サーフィンを教えてくれる。

心情表現とその変化

比ゆ表現とその解説

  • 「祖母の言葉が鋭い棘のように突き刺さる」:翔も父と一緒に頑張ってきた自負があるのに、祖母の言葉が翔の心を深く傷つけたこと
  • 「たまるで ① みたいだ」:文中では空欄ですが、場面から「芝居」や「演技」のように見えるということを表現していると考えられる

主題

この物語の主題は「家族の絆と別離の悲しみ」「子どもの視点から見た大人の世界の理不尽さ」「互いを思いやりながらも、理解し合えない悲しみ」などが考えられます。特に「翔が父も母も失ったような孤独感と、それでも前に進もうとする強さ」が作品全体を貫いています。

2. 物語文『遠い町できみは』の設問解説

問二 線②「そんな想像をしてふっと笑ってしまった」の心情

答え: イ(生活の大きな変化への不安があり、遠くへ行くことを思いついたが、すでに遠い町へ向かっていることを思い出し、自分の考えの浅はかさを自嘲している)

解説:

  • 翔は「このままどこかに行ってしまっても、誰も困らないんじゃないかな」「このままどこか遠くへ行ってしまおうか」と考えていました。
  • しかし、「これから翔が行こうとしている場所こそ、まさに遠い町だ」と気づき、「ふっと笑ってしまった」のです。
  • これは自分の考えの滑稽さに気づいて自嘲的に笑った場面といえます。
  • 選択肢イが「遠くへ行くことを思いついたが、すでに遠い町へ向かっていること」という状況と「自分の考えの浅はかさを自嘲している」という心情を的確に捉えています。

問三 線③「英一の声が沈むのを食い止めるように、翔は声を張り上げた」の心情

答え: エ(英一が父としての務めを果たせず落ち込んでいることを察し、明るい話題に変えて責任を感じないよう気遣っている)

解説:

  • 英一は「本当だったら八重浜まで一緒に行くべきだったんだ。いや、そもそも……」と言って責任を感じ、落ち込んでいます。
  • これに対し翔は「あのね、海がびっくりするくらいきれいなんだ」と明るい話題へ意識的に転換しています。
  • この行動は、英一の責任感や後悔の念を和らげようという気遣いの表れです。
  • 選択肢エが「父としての務めを果たせず落ち込んでいることを察し、明るい話題に変えて責任を感じないよう気遣っている」と最も適切に表現しています。

問四 線④「問われて、うん、と、ううんの狭間で曖昧に答える」の理由

答え: ウ(香夏子の質問を肯定して、見送りに来なかった英一が悪く思われるのは嫌だが、堂々と噓を言うこともできなかったから)

解説:

  • 香夏子の「もしかして英一さん、今朝見送ってくれなかったの?」という質問に対して、翔は曖昧に答えています。
  • この曖昧さは、事実(英一が見送りに来なかった)を認めたくないが、嘘も言えないという板挟み状態から生まれています。
  • 選択肢ウが「見送りに来なかった英一が悪く思われるのは嫌だが、堂々と噓を言うこともできなかった」という翔の心理を的確に表現しています。

問五 線⑤「淡く霞んだ水平線に目を凝らし、冷たい潮風が瞼を乾かしてくれるのをじっと待った」の様子

解答例: 「風邪を引きそうになっているのに海に留まり、英一のことを思って涙が出たが、涙をみられないように隠しながら気持ちが落ち着くのを待っている様子。」

解説:

  • この場面で翔は風邪を引きそうになり「早く家の中に入ったほうがいい」と分かっていながら「動けなかった」状態です。
  • 「瞼を乾かしてくれるのをじっと待った」という表現から、涙が出ていたか出そうになっていたことがわかります。
  • その後の展開から、英一への思いから涙が出たと推測できます。
  • 潮風で「瞼を乾かす」というのは、涙を隠そうとする行為と読み取れます。

問六 線⑥「何かを嚙みしめるように英一は繰り返した」の様子

解答例: 「体調が不安定な状態であり迷っているが、翔につらい思いをさせていることに罪悪感を感じ、翔との約束を必ず守ろうと自分に言い聞かせ、翔に会いに行く決意を固めている様子。」

解説:

  • 「何かを嚙みしめる」という表現は決意を固める様子を表します。→結論部分を最初に考える
  • 英一は「約束したよな。そうだ、約束した」と繰り返し、「行くよ、八重浜町に」と約束しています。
  • ただし、「ためらっている気配」という描写や、結局英一は来られなかったという後の展開から、精神的に不安定ながらも必死に約束を守ろうとしている様子がうかがえます。
  • 【対比的(決意と反対の気持ち)内容】→【原因(翔にさびしい思いをさせた)】→【結論()】

問七 線⑦「一人で頑張りすぎちゃったの」に対する翔の考え(16字)

答え: 「これまでず」(「これまでずっと二人で頑張ってきたのだ」の最初の5字)

解説:

  • 祖母は英一が「一人で頑張りすぎちゃった」と言いますが、翔はそれに対して反発しています。
  • 本文中で「英一が頑張っていた姿は、翔が一番よくわかっている。だけど。だけど、翔だって頑張った。」と続き、翔も家事を手伝うなど様々な役割を担ってきたことが書かれています。
  • そして「これまでずっと二人で頑張ってきたのだ。」という16字の部分が、祖母の考えに対する翔の考えを表しています。

問八 線⑧「祖母の言葉が鋭い棘のように突き刺さる」の意味

答え: イ(翔が支えてきたことも知らずに英一が抱える苦労ばかりを語る祖母の発言が、父を気遣ってきた翔の気持ちを傷つけたということ)

解説:

  • 「鋭い棘のように突き刺さる」とは、祖母の言葉が翔の心を深く傷つけたということです。
  • 祖母は「お父さんが大変なの、わかる年齢よね?」と言い、英一の苦労ばかりを強調しています。
  • しかし翔は英一と共に母の闘病を支え、家事も手伝ってきました。その努力や気遣いを祖母は認めていません。
  • 選択肢イが「翔が支えてきたことも知らずに英一が抱える苦労ばかりを語る祖母の発言が、父を気遣ってきた翔の気持ちを傷つけた」と最も適切に表現しています。

問九 線⑨「奥歯をぐっと嚙み締めて立ち上がった」の心情

答え: ア(英一の病状や苦労は理解しているが、共に支えあってきた父と離れたさびしさから生まれた「会いたい」という願いの切実さを考えてもらえず、自分が苦しめているかのように祖母に言われ、腹を立てながらも自分の置かれた状況に耐えられなくなっている)

解説:

  • 祖母は「翔ちゃんはこっちで楽しく遊んで暮らしてるかもしれないけど」「わがまま言って困らせないで」と翔の気持ちを理解せずに批判しています。
  • 「奥歯をぐっと嚙み締める」という表現は、怒りや反発の感情を抑えようとする様子です。
  • 翔が「わがままってなんだろう。いい子ってなんだろう」と考えるように、祖母の言葉に強い反発を感じています。
  • 選択肢アが「英一の病状や苦労は理解しているが」「会いたいという願いの切実さを考えてもらえず」「自分が苦しめているかのように祖母に言われ」「自分の置かれた状況に耐えられなくなっている」と、翔の複雑な心情を最も包括的に表現しています。

物語文の解き方のポイント

  1. 登場人物の心情の変化を追う: 問一〜問三では、翔の心情が「複雑な別れの気持ち」→「自嘲的な笑い」→「父への気遣い」と変化しています。その変化の理由を場面ごとに理解することが大切です。
  2. 描写から心情を読み取る: 問五・問六のような記述問題では、「淡く霞んだ水平線に目を凝らし」「何かを嚙みしめるように」といった描写から心情を読み取る必要があります。比喩表現や動作描写に注目しましょう。
  3. 対立する考えを整理する: 問七・問八では、祖母の「英一が一人で頑張った」という考えと翔の「二人で頑張ってきた」という考えの対立があります。それぞれの立場を整理すると解答しやすくなります。
  4. 複雑な心情を総合的に理解する: 問九は翔の複雑な心情を問う問題です。「英一の病状理解」「会いたいという願い」「祖母の批判」「耐えられない状況」など、複数の要素を含む選択肢を選ぶ必要があります。

まとめ

中学受験の国語問題では、文章の構造をつかみながら、筆者の主張や登場人物の心情を正確に読み取ることが重要です。特に以下の点に注意して解答しましょう:

  1. 文章のキーワードや接続詞に注目する
  2. 直接的な表現だけでなく、比喩や描写から心情を読み取る
  3. 文脈を追いながら「問われていること」に的確に答える
  4. 記述問題では指定字数内で要点をまとめる練習をする

このような解き方のコツを身につけることで、さまざまな文章に対応できる読解力が身につきます。日頃から「なぜそう思うのか」「どういう気持ちなのか」を考えながら文章を読む習慣をつけると、より深い理解につながります。

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