千葉の雄、市川中です。
1/10埼玉の栄東中同様に1/20市川も他県からの受験が多い人気校です。
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使用されている言葉は比較的優しく読みやすいですが、扱われているテーマが「親から見た反抗期の子供」ですので中学受験生にはやや理解しづらい面があるかもしれません。
親子関係を大人の視点、第三者の視点で俯瞰して見ることができるかがポイント。文章に書かれている一つひとつの事例を自分や自分の親に当てはめて考えると混乱する子もいるでしょう。
思春期の一般的な親子関係という客観的な視点で文章を読むこと。このような客観的姿勢で読み、本問で高得点を取るにはどうしても豊富な読解問題演習や読書経験が必要になります。
「中学生ぐらいになると、親に何か言われるたびに鬱陶しく感じ、反発したくなる」とあるが、それはなぜか。
傍線1の後ろに、中学生になってからの親への反発に関する記述が続きます。
・心の発達という観点からすれば、これはむしろ歓迎すべき~
・親の価値観とは異なる自分なりの価値観ができつつある
・心の中に主体性が育ってきている
このような筆者の「反抗期に入った中学生」に対する捉え方を頭に入れて選択肢を吟味します。なお、選択肢が長めなので意味内容ごとスラッシュ(/)を入れて区切り、部分ごとに正誤を判定していくことをお勧めします。
ア:心と身体が急に成長すると、心身のバランスを保つ言葉難しく・・・本文に記述なく×
イ:自分の意志だけが正しいと思い込み・・・自分の意志だけは限定しすぎ。そこまでは言っていないので×(※内容が極端な選択肢は間違いが多いので気を付けましょう)
ウ:○
エ:親よりも優位な立場にいたいと考える・・・本文に記述なく×
オ:親に任せていたことも自分で行わなければ不安・・・本文に記述なく×
【A】~【C】に入る文章として最も適当なものを次の中から選びそれぞれ記号で答えなさい。
かなり長めの脱文挿入問題。出題形式としては珍しい部類。ただし挿入すべき場所が3か所と場所が限られていることと、脱文内容にかなりわかりやすいヒントが隠されているために難しくないですね。
ア:「そんな親子関係の間で起こっていること~」とあります。「そんな」は直前を指すことが予想されますんので直前に「親子関係の間で起きていること」に関する記述がある部分を探します。
また、「亀井はつぎのように言及~」とあります。のちの選択肢を見ればわかりますが「亀井」と人物の名前が出てくるのは唐突な感じがします。その前にこの「亀井」なる人物の説明が入ると予想すべきです。
イ:「精神科医神谷美恵子は~」と人物の肩書を含めた記述から選択肢「ア」の「亀井は次のように言及~」の唐突感がはっきりします。
さらに「反抗期を経ずに成長することは、必ずしも喜ぶべきことではなく~」との記述から反抗期を経ない状態に関する記述が近くにあるであろうことが予想されます。
ウ:「評論家の亀井勝一郎は~」の記述があることで選択肢ウ⇒アの順番に並べ先ほどの「唐突感」を解消できることになります。
さらに「考えるということは、すでに何者かから己を隠すことであるらしい」との記述から「隠す」「秘密」といった内容に近いところになることが予想されます。
【A】の一行あと「心の中で何を考えているかは外から分からない」等から「ウ」が適切。
【B】前述の検証から「ウ」のあとに「ア」を入れたい。「自分にはコントロールできない存在になりつつある子とのあいだに、見えない壁があるのを感じるのだろう」との記述が選択肢「ア」の「親子関係の間で起きていること」に合致するので「ア」で確定。
【C】の4行あと、「反抗しない者は~」の記述が選択肢「イ」の内容と合うため「イ」で確定。
「見えない壁があるのを感じるのだろう」とあるが、そのように感じるのはなぜか。
こちらも選択肢が長いので分解して部分ごとに吟味をしましょう。
ア:「わが子の認知能力が発達~気が付くが」の部分、本文では「認知能力の発達~親にもうかがい知れない自分独自の世界」とある・・・内容にズレがあるため×
イ:「価値観の違い~その違いを親に気付かれないようにしようとする」の部分、本文では「親の言いなりになることに抵抗を示し、自分の思うようにしたい~」とある・・・内容にズレがあるため×
ウ:「いうことを聞かせることが難しくなる」・・・筆者は親が言うことを聞かせるかどうかについては記述していないため×
エ:○
オ:「親の心を理解しながらも、親のことを遠ざけようとする」・・・記述なし×
【D】にあてはまる最も適当なものを次の中から選び、記号で答えなさい。
空欄補充は空欄を含む一文と前後の文を精読します。
「たしかに親と怒鳴り合ったり、取っ組み合いになったりするような激しい犯行をしたという者もいる。だが多くの場合、そこまで激しいものではなく、もっと【D】的な反抗の形をとるものである。僕の場合も、『うるさいなぁ』と言うようなことはあっても、あからさまに親に激しく反抗した覚えはない。」
「たしかに」【対立見解】⇒「逆接(しかし、だが、ところが等)」【本当に言いたいこと】の構文が使われている場所は「逆接」のあと【本当に言いたいこと】に注目。
したがって「【D】的な反抗の形をとる」ということが筆者の主張したい内容であることがわかります。
筆者は「あからさまに親に激しく反抗した覚えはない」ということを強調したいのですね。
あからさまで強くない反抗・・・つまり「間接」的な反抗が正解になりそうです。
次のア~カは、中学一年生の太郎くんと花子さんが本文の内容について話したものである。本文の内容と合致していない発言を次の中から一つ選び記号で答えなさい。
子ども同士の会話から誤りを探す系の問題は選択肢文が平易である代わりに巧妙に「あっさりと」誤りが隠されているので一字一句読み飛ばすことが無いように、かつ「本当に正しいか?」という批判的思考で読む訓練が必要です。
オ:花子の両親は「あなたのことを一番分かっているのは親」という考えの持ち主であるので選択に内の「世代間境界の設定がうまくいっている」とは思っていないはずなので×
※世代間境界が設定された場合は、子の持つ独自の世界・秘密を許容することになるため。
21年中学入試で非常に多数の出題がありました寺地はるなさんの「水を縫う」が出典。
内容は離婚をし、女手一つで2人の子どもを育てる母親像を描いた作品。自分の道を自分の意志で歩み始めた高1の息子との関係に悩む母親の視点から描かれたシーンです。
離婚の経験から失敗を極端に恐れるようになった母の葛藤がどこまで理解できるか。
中学入試定番の「家族もの」ではありますが「親」の視点で描かれた内容であることと母の苦悩や葛藤の中身の十分な理解が求められるため難易度はやや高めになります。
省略。辞書的に正確な意味合いを知らなくても、前後関係から十分正解を狙えます。あきらめずに空欄前後を分かるまで丁寧に読み込みましょう。
「お母さんはさ、昔からすぐ『好きにしなさい』って言うやろ」とあるが、ここで「私」はこの「母」のことばをどのように感じているのか。
文章を通して思春期の子供への親の関与の在り方について「母」と「私」のやり取りを通じて「私」が変化していく様子が描かれています。
傍線を含む一文とその前後文をしっかり読みます。
・「もう少し心配してくれても良かったんちゃう?子供に関心ないの?」
・「ありがたいなって思う時もあったけど、私は自分の子供にはそういうふうに接したくない」
・「空手を習わせたい、と言っていた竹下さんのほうが、実の母よりよほど私に近しい。」
この3つの表現から「私」の「母」に対する心理を読み取りましょう。
ア:甘やかしすぎるのは良くない・・・もっと心配して口出しすべきという考えなので甘やかしとはズレる×
イ:子供に気をつかう姿を情けなく・・・「関心ない」というぐらいなので「私」は「母」が子どもに気をつかっているとは思っていないのでズレており×
ウ:自分の人生を選び取って・・・ここでいう自分は「母」を指すが、母がどのうな人生を歩んできたかについての記述がないため×
エ:○
オ:失敗ばかりの人生・・・傍線3にあるとおり「私の人生、失敗でもなかったんかなぁ」と述べている通り、「失敗ばかり」は言い過ぎなため×
「食べていかれへん、ってなんでわかるの、きつ子に」とあるが、なぜ「私」には清澄が食べていけないとわかるのか、その理由を80字以内で説明しなさい。
80字というやや多めの字数を求められるものの、「私」の想いを正しく汲み取れていれば解答に使える表現が本文中に多く書かれているのでまとめるのにさほど苦労はしないと思われます。
ポイントは「私」の想いを正しく汲み取れるかどうか、につきます。
本文の中から「私(=きつ子)」が清澄に対してデザイン関係の仕事では失敗する(=食べていけない)だろうと考える根拠にが示されている部分を探します。すると「母」とのやり取りの後の表現がそれに該当することがわかります。
①だって清澄は、私と全の子どもだ。何の取り柄もない私たちの。全がなし得なかったことを、どうして清澄なら可能だなんて言えるのだろう。
文末が「どうして~だろう。」とあるのは反語。つまり「私」は「全がなし得なかったのだから清澄もなし得ないないだろう」と考えています。
この内容だけだと80字よりかなり少なくなることから何らか説明を加える必要があることを察してほしいところ。
明らかに足りないのは「全がなし得なかった」ことに関する内容。これは本文冒頭の
②全には衣服のデザイナーを志しながらも失敗したという過去がある
という表現を使えます。
全に関する記述がほとんどないので冒頭のこの部分に意識が向くかと思いますが、傍線部からはかなり離れた個所にあたるため、迷った子も多いように思います。
ここで意識したいのは「記述問題で使う本文の表現を探すには、探すべき内容を明確にしてから探す」とうことです。
今回は「『全がなし得なかったこと』を説明している部分を探そう」と明確に目的を持って探すことが重要です。
解答例「清澄は何の取り柄もない自分と全の子どもであり、服のデザイナーを志して失敗をした父親の全と同じようにデザインの仕事で成功する力はないだろうと考えられるから。」(77字)
「私の人生、失敗でもなかったんかなぁ」とあるが、ここでの「私」の気持ちはどのようなものか。
中学入試定番のテーマ「葛藤」が「私」の中で生まれる瞬間です。
自分がデザイナーを志し失敗した夫と離婚をすることになり、自身の人生が失敗だったと思い込み、自分の息子を決して同じような失敗をさせまいと思う「私」に変化が訪れる瞬間です。
「私」の母親から投げかけられて「あんた自身の人生は、失敗やったのかしら?」という問いかけ、
そしてそれを受けて一人しみじみこれまでの家族とのクラスを振り返る記述
「何回も何回もみんなでご飯を食べた、この茶碗で、この食卓で、この家で」
さらに加えて
「もし過去に戻れたとしても、私はまた全と結婚するんだろう。」
ここまで読んで「私」は自分の人生を悪くもないと思い始めていることを読み取りましょう。
ア:「他人より恵まれた人生」・・・「他人から見たら失敗だとしても、いい」とあり、他人より良いかどうかは「私」は関心がなく、ズレているので×
イ:○
ウ:「全との結婚は~失敗」・・・失敗なら過去に戻ってもう一度結婚することなないはずで、ズレているので× 「誰から見ても幸せ」の表現も「他人から見たら失敗でもいい」の部分と合わないので×
エ:子どもたちを無事に成長させることができた・・・子どもたちが成長できたかどうかよりも「うれしいことや楽しいことも、いっぱいあった」が幸せの源であるのでズレており×
オ:間違った選択ばかり・・・それほど多くの間違った選択をしてきた記述ななく言い過ぎ。全との結婚も失敗に思えたがそうでもないと考え始めているため×。
この文章全体を通して、清澄に対する「私」の考えはどのように変わったか。
問4で考えた「私」の心の中の葛藤。
問4では「自分の人生が失敗ではない」と考えるに至った様子をとらえましたが、問5ではそこからさらに清澄への想いの変化をとらえます。
「無造作に瓶を振る手つき。全もああやっていた。どうしてそんな変なところが似るのだろう。一緒に暮らしていたのは、赤ちゃんの時だけだというのに。」
この表現から清澄が先天的に遺伝子レベルで全と似ていることが強調されます。
なぜこれを強調するのか?
以前の「私」ならそれだけ全に似ている清澄が同じ道をたどって失敗することをより明確に察し取り、全力でデザインの道をあきらめさせようとするでしょう。
しかし、全との結婚生活も悪くはなかった、という思いが芽生えた今、清澄の考えにも理解を示そうとします。
これらを踏まえて選択肢を検証しましょう。
ア:○
イ:「清澄が全と同様才能がないとは限らない」・・・かなり似ていることが強調されており×
ウ:「自分が子どものころ自由にさせてくれた『母』の意図」・・・もっともらしい雰囲気だが「私」の子どものころのことははっきりと記述がないので×
エ:「手芸に興味を持つことに不満」・・・「不満」は言い過ぎ。「不安」を感じていた。「失敗する人生でよい」・・・他人から見て失敗でも自分にとっては失敗ではないという考えに至っているためズレており×
オ:「あえて失敗を経験させる」・・・「エ」同様に多少の挫折は「失敗ではない」と感じているためズレている。「これからは清澄の判断に対して意見は言わない」・・・後ろ向き差を感じさせる表現で×清澄への愛情あふれる表現が近くに描かれている。
この文章についての説明として適切でないものを次の中から二つ選び記号で答えなさい。
イ:「母」との口論により「私」が強い怒りを感じ・・・「口論」にまでなっていない。「母」は常に穏やかに話しているため「口論」はズレている。「強い怒り」も言い過ぎのため×
エ:「私」が「母」と子どものころの思い出話をしたことで・・・子どものころの思い出話はしていない、また「母」から親としての助言をもらったのであって「甘えた」わけではないのでズレており×
大問1と大問2を関連付けて答えさせる珍しい問題。
問の中身をよく吟味することが第一歩。
A:清澄の成長段階で何が起きているか(2⃣の文章)
B:青年期の特徴とは何か(1⃣の文章)
この2点を整理して箇条書きにしてからまとめ始めるとよいでしょう。
A:清澄が自分の目指したい手芸の道という親の考えとは離れた自分の価値観を持っている
B:認知能力の発達により抽象思考が活発になり、自分独自の世界ができる
この2つを組み合わせて解答を作成しましょう。
いかがだったでしょうか?
この年出典として扱われた2冊の本は2021年度中学入試では両作品とも大ヒット(?)で多数の中学で出典として扱われました。
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そして解き直しも忘れずに!
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