2026年度 開成中 国語 全問解説

2026年度の開成中学校の国語入試問題を徹底解説します。今年度は石井美保さんの随筆「石畳の小径」が出題されました。沖縄の土地を案内人とともに歩きながら、戦争の記憶、言葉の限界、そして「祈り」としての執筆について深く思索するこの文章は、開成らしい骨太な読解力と記述力を要求する良問ぞろいでした。


文章の概要

題名:「石畳の小径」

https://www.mishimaga.com/books/shimanosoko/006506.html

筆者:石井美保

ジャンル:随筆文(エッセイ)

要約:

筆者は沖縄の集落を、案内人の「湧上さん」とともに石畳の小径を歩いている。サトウキビ畑や水田など穏やかな風景が広がる中、湧上さんが語る戦争の記憶によって目の前の景色が一変する体験をする。筆者はその体験を通じて、場所に刻まれた記憶を「書き留めたい」と願うようになるが、同時に出来事をすべて言葉にすることの「限界」も自覚する。それでも、出逢った人たちのために書き、まだ見ぬ誰かに届くことを願う ―― その行為を筆者は「宛先のない祈り」と呼んでいる。


随筆文の読み方ポイント

この文章は「随筆文」です。随筆文を読むときは、次の二つの要素を見分けることが大切です。

(1)体験部分 =「いつ・どこで・だれが・どのように」を意識して読む

前半では、筆者が湧上さんの案内で沖縄の集落を歩き、戦争体験の語りを聞く場面が描かれています。この「体験」をしっかり整理することが、後半の「思索」を理解するカギになります。

(2)感想・意見部分 = 筆者の考え方・価値観を見つけ出す

後半では、体験を通じて筆者が考えたこと、つまり「言葉の限界」と「それでも書き留めたい」「書きとどめたものを誰に届けるのか」という思索が展開されます。体験と意見がどこで切り替わるかに注目しましょう。


段落構成の分析

本文は全20の形式段落から成り、以下の4つの意味段落に分けられます。

意味段落一(形式段落①〜⑧)…石畳の小径を歩く ―― 風景の描写と湧上さんの案内

意味段落二(形式段落⑨〜⑪)…戦争の記憶 ―― 景色の一変と語りの力

意味段落三(形式段落⑫〜⑭)…「書き留めたい」という思い ―― 言葉の限界と可能性

意味段落四(形式段落⑮〜⑳)…「書き留めたものの届け先」 ―― 祈りとしての執筆

前半(意味段落一・二)は「湧上さんの体験を聞く場面」、後半(意味段落三・四)は「それをふまえた筆者の思索」です。


筆者の思考の流れ

この文章の大きなテーマは、「場所に刻まれた記憶を言葉で残す」ということです。筆者の思考は次のように展開します。

STEP 1:穏やかな風景の中を歩く(①〜⑧)

石畳の道を歩き、サトウキビ畑・水田・泉・フクギの並木など、沖縄の風景を体感する。湧上さんがかつての暮らしや子どもたちの遊びを語る。

STEP 2:景色が一変する衝撃(⑨〜⑪)

湧上さんの語りが戦争の記憶に移ると、穏やかだった風景が「この土地に刻まれたもうひとつの歴史と時空間の層が、不意にあわらになることがある。」という表現から一変します。そして「硝煙がたなびき、地面が焼け焦げた戦場」が目の前に浮かび上がる。声やまなざしを通して、過去の時空間が現在に重なっていく。

STEP 3:「書き留めたい」という衝動(⑫〜⑬)

その体験を通じて筆者は、消えゆくイメージを言葉で残したいと強く感じる。風景と出来事の痕跡、そこに生きた人たちの存在を書き留めたいという思い。

STEP 4:言葉の「限界」の自覚(⑭)

しかし同時に、出来事をめぐる事実は部分的にしかわからず、語り手の経験のすべてを言葉にすることは不可能だと自覚している。

STEP 5:出逢った人たちのために書く(⑮〜⑰)

案内人、そしてその土地で語られる亡くなった人たちのために書く。彼らの痕跡を通して「私にとっての愛おしく懐かしい人たち」の存在に向き合う。

STEP 6:「宛先のない祈り」としての執筆(⑱〜⑳)

書き留めた言葉が時空を超え、まだ見ぬ誰かに届き、さまざまな声で歌い継がれることを願う。その願いは「祈り」のようなものである。


重要語句・表現

「声とまなざし」

言葉の「中身(内容)」だけではなく、声の力強さやまなざしの真剣さなど、言葉以外の表現が持つ力を示しています。言葉の情報だけでは伝わらない、語り手の実体験に基づく「雰囲気」や「重み」が、聞く者に出来事の実在感を伝えるのです。

「目の前の景色がその色を一変させる」

物理的に景色が変わったのではなく、湧上さんの語りを通じて、筆者の認識が変化したことを表しています。現在の穏やかな風景に、過去の戦場の景色が重なって見えるようになった、という「記憶の重層化」を描いた比喩的表現です。

「泡のように儚く不確かなもの」

風景・声・イメージなど、語りを通して浮かび上がった記憶が、すぐに消えてしまいそうな不安定さを持つことを比喩で表しています。だからこそ「書き留めたい」のです。

「宛先のない祈りのように」

筆者の執筆行為を「祈り」にたとえた重要な比喩です。書き留めた言葉の届け先は、特定の誰かではなく、時空を超えたまだ見ぬ誰かです。届くかどうかもわからないが、届くことを願い続ける ―― それは祈りに似ている、ということです。

「彼岸と此岸を往き来しながら」

「彼岸」はあの世・死者の世界、「此岸」はこの世・生きている世界を指します。筆者の執筆行為が、生者と死者の世界をつなぐ営みであることを象徴する表現です。


設問解説

問一 ― 意味段落の区切り

問題:この文章を意味段落一〜四に分けたとき、意味段落二、三、四の最初の形式段落の番号を答えなさい。

模範解答:二 ⑨ 三 ⑫ 四 ⑮

解説:

問題文で「前半は話題の変化で二つに分けられ」「後半は『書き留めたいという思い』と『書き留めたものの届け先について』の二つに分けられる」と手がかりが示されています。

前半の話題の変化を探すと、①〜⑧は穏やかな風景描写と湧上さんの案内、⑨から戦争の記憶と景色の一変という話題に切り替わります。後半は、⑫から「書き留めてみたい」という筆者の思いが展開し、⑮からはその言葉の「届け先」についての思索に移ります。

このように、形式段落の内容をていねいに追いつつ、全体を「俯瞰する」スキルは開成国語にと重要になります。

特に前半は設問に手がかりがないので湧上さんの体験談の中でも「何を基準に分けるべきか」を感がて読めば話題の切れ目を見つけることができます。


問二 ― 「声とまなざし」の表現の理由(記号選択)

問題:「語る人の声とまなざし」とあるが、なぜ「言葉」ではなく、「声とまなざし」という表現が用いられているのか。

解答:

解説:「声とまなざし」は、言葉の「内容(情報)」だけではなく、語る人の声の力強さや表情、雰囲気といった「言葉以外の要素」が重要であることを比ゆ的に示しています。

本文⑫段落では「声とまなざし」という表現のあとに、語りを通じて過去の出来事が現前する様子が描かれています。つまり、情報の中身だけではなく、声の力や雰囲気から「実際にあったこと」が強く伝わるのです。

他の選択肢について確認すると、ア「嘘をつけないから」は本文の趣旨と異なりますし、ウの「方言で不確か」も本文に根拠がありません。エは「信じがたい内容」にも根拠が薄く、オも部分的には合っていますが「身ぶり」が不適切。

「言葉ではなく声とまなざし」の理由としてもっとも的確なのはイです。


問三 ― 景色の変化(記述)

問題:「目の前の景色がその色を一変させる」とあるが、湧上さんの話によって、どのような景色がどのような景色に変わったのか。A〜Cの空らんを埋めなさい。

模範解答:

A:青々と風にそよぐ水田(の景色)

B:少年たちが木によじ登っては飛び降りて遊ぶ(光景)

C:硝煙がたなびき、地面が焼け焦げた戦場(の景色)

解説:

この問題は、湧上さんの語りによって筆者の目に映る景色がどう変わっていったかを整理する問題です。

Aは意味段落一に登場する「現在の穏やかな風景」の中心。③で「青々と風にそよぐ水田の景色」とあります。

Bは④で語られた「かつての集落の子どもたちの姿」。裸足で木に登り、飛び降りて遊んでいた少年たちの光景です。

Cは⑩〜⑪で語られた戦争の場面。「硝煙」「焼け焦げた地面」といった描写から、戦場の景色だとわかります。

このように、時間の層が3つ重なっていることがこの文章の特徴です。「現在の穏やかな風景」→「かつての子どもたちの遊び」→「戦場」という三重の景色の変化を読み取ることがポイントです。


問四 ― 「書き留めてみたい」と思う理由(記述)

問題:「書き留めてみたい」と筆者が思うのはなぜか。⑫〜⑬の内容をもとに五〇字程度で説明しなさい。

模範解答:記憶の一端を語る人の声や仕草を通して、過去の出来事が現在の風景と重なり現れた、鮮やかだが消えそうなイメージを残したいと感じたから。

解説:まずは結論を最初に考えましょう。「なぜ書き留めたいか」→簡単に要約すれば「残しておきたいから」ですね。このよな結論から考えるクセが付いているかどうかまずは確認してください。「消えてしまいだから」「不確かだから」などは間接的で「書き留める」原因としては不十分です。

その上で、⑫〜⑬の内容に根拠を求めます。⑫では、場所に立ち、出来事について思いをめぐらせ、それを言葉にしていくことについて述べられています。⑬では「それらは泡のように儚く不確かなもの」という表現があり、このイメージが消えてしまう前に残しておきたいという動機が読み取れます。

記述のポイントは二つです。

(1)「なぜ書き留めたいのか」=(消えてしまいそうなイメージを)残したいから

(2)「そのイメージとは何か」=語り手の声や仕草を通して、過去の出来事が現在の風景と重なって現れたもの

この二つを盛り込んで、まとめましょう。


問五 ― 「限界」の内容(抜き出し)

問題:「その限界」とあるが、「限界」があるとはどういうことか。「〜ということ。」につながる七〇字程度の表現を⑫〜⑭から抜き出し、そのはじめとおわりの四字を答えなさい。

模範解答:はじめ「出来事を」 おわり「不可能だ」

解説:「限界」の具体的内容を⑫〜⑭から抜き出す問題です。

「〜ということ。」という形につなげる必要があるので、述語が「〜だ」で終わる箇所を探します。「不可能だ」で終わる部分がぴったり当てはまります。

指定字数が10文字以上の抜き出し問題のコツは「末尾の形」を手がかりにして範囲を絞り込むことです。今回は「限界」に関連が深い⑭段落の表現「〜言葉にすることは不可能だ」が末尾にくることに気づけるかどうかが勝負でした。


問六 ― 「あなた方」が指す人々(記述)

問題:「あなた方」とは誰のことを指すか。二種類の人々をそれぞれ三〇字程度でまとめなさい。

模範解答:

(1)この土地で生き、直接私に体験を伝えてくれた案内人たち。

(2)この土地の人たちに語られることで存在が想起された多くの死者たち。

解説:⑱〜⑲のあたりで「あなた方」が登場します。筆者が「あなた方に恥じないものを、どうか書くことができますように」と述べる相手です。

⑲では「いま生きている…語り手たち」「私を導いてくれた案内者たち」「私のまだ出逢っていない誰か」「彼らの背後にいる大勢の死者たち」が列挙されています。

この中から「二種類」にまとめると次のようになります。

(1)「生きている案内人たち」=直接体験を語ってくれた湧上さんのような人たち

(2)「もう亡くなった人たち」=案内人たちの語りを通じて存在が思い起こされた死者たち

「二種類」と指定されているので、「生者」と「死者」の二つに大きく分けるのがポイントです。


問七 ― 「宛先のない祈りのように」に込められた思い(記述・自分の考え)

問題:「宛先のない祈りのように」には筆者のどのような思いが込められていると考えられるか。本文をふまえて、自分の考えを五〇字程度で述べなさい。

模範解答:自分の書き留めた思いが、時間や空間を超えて様々な人びとに届き、また少しずつ形を変えつつもさらに広がっていくことを願っている。

解説:

「宛先のない祈り」という比喩の意味を考える問題です。⑳段落に「少しずつかたちを変えながら…風にのって広がっていく」「さまざまな声や言葉とつながっていくだろう」という記述があります。

「宛先のない」= 特定の誰かに向けたものではない
「祈り」= 届くかどうかわからないが、届くことを願い続ける行為

これらを合わせると、「書き留めた言葉が時空を超えて、まだ見ぬ誰かに届き、その人の思いによって変化しながらも受け継がれてほしい」という筆者の願いが浮かび上がります。

「自分の考え」を述べる問題ですが、本文の内容をふまえた上で、筆者の思いを自分の言葉でまとめることが求められています。本文から大きく離れた自由な意見を書く問題ではありません。


問八 ― 漢字

問題:a〜dのカタカナを漢字にしなさい。

模範解答:

a ソって → 沿って

b キュウ家 →

c ノゾむ →

d オり →

解説:

a「沿って」は「小径に沿って歩く」で、道に沿う意味。「沿」は「沿岸」「沿線」などの熟語でもおなじみです。

b「旧」は「旧家」「旧友」などで使われる漢字。「キュウ」の音読みは多くの漢字がありますが、「屋敷」「家」という文脈から「旧」と判断します。

c「臨む」は「海を臨む」のように「目の前に見渡す・面する」の意味。「臨海」「臨時」などの熟語も押さえておきましょう。

d「織り」は「織り込む」で「入り混じる・組み込む」の意味。「織」は「組織」「紡織」などの熟語でも登場します。


この文章で身につけたい読解スキル

1. 「風景の変化」から心情・テーマを読み取る力

この文章では、風景が「物理的に変わった」のではなく、語りを通じて「見え方が変わった」ことが核心です。中学入試の物語文や随筆文では、風景や情景の変化がそのまま心情やテーマの変化を象徴していることがよくあります。

2. 「比喩表現」の意味をていねいに考える力

「泡のように儚い」「宛先のない祈り」など、直接的には言い表しにくい筆者の思いが比喩で表現されています。比喩を見つけたら「何をたとえているのか」「なぜその比喩なのか」をしっかり考えましょう。

3. 「抜き出し問題」の解法テクニック

問五のような抜き出し問題では、結論としての文末の形を手がかりにして範囲を絞り込むことが重要です。「〜ということ。」につながるなら、述語が「〜だ」「〜である」で終わる箇所を探します。


まとめ

2026年度の開成中の国語は、石井美保「石畳の小径」という随筆文一題の構成でした。沖縄の土地を歩きながら戦争の記憶と向き合い、「言葉で書き留めること」の意味を深く問う文章です。

開成の国語は記述問題の比重が大きく、本文の内容を正確に読み取った上で自分の言葉でまとめる力が問われます。特に問四・問六・問七のような記述問題では、「何を聞かれているのか」を正確に把握し、本文の根拠を明確にしながら答えることが大切です。

この文章のテーマである「表面の風景」と「その奥にある記憶」の対比は、中学受験の国語でよく出題されるパターンです。目に見えるものだけでなく、その奥に隠された意味を読み取る力を、日頃の学習で磨いていきましょう。


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