2026年度 聖光学院中第1回国語入試問題解説
聖光学院中学校(第1回)
国語 完全解説
大問三「ヒカリノオト」(河邊徹)・大問四「文化財の未来図」(村上隆)
物語文・論説文ともに「表面と本質のズレ」を読み取る力が試された一年でした。図解も使いながら、丁寧に解説していきます!
大問一:漢字問題
カタカナ→漢字(書き問題)
| 問 | 解答 |
|---|---|
| ① | 行進 |
| ② | 観戦 |
| ③ | 任期 |
| ④ | 温度 |
| ⑤ | 選考 |
漢字→読み(読み問題)
| 問 | 漢字 | 解答 |
|---|---|---|
| ① | 気高い | きだか〔い〕 |
| ② | 周知 | しゅうち |
| ③ | 委ねる | ゆだ〔ねる〕 |
| ④ | 無下 | むげ |
| ⑤ | 構想 | こうそう |
大問二:言葉遊び
掛け言葉(かけことば)に関する問題です。一つの語に二つの意味を持たせる言葉遊びで、和歌でも多用されます。
選択肢を確認するときは「音(おと)は同じで、意味が異なる二語がどう重なっているか」を一つひとつ確認しましょう。
大問三:物語文「ヒカリノオト」
📖 文章の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | 「ヒカリノオト」 |
| 著者 | 河邊 徹(かわべ とおる) |
| 内容 | 芸能事務所マネージャー「寺井(僕)」が、担当アーティスト「染谷」の成長と変化を見届ける物語 |
👥 登場人物と人物像
| 人物 | 立場 | 人物像 |
|---|---|---|
| 寺井(僕) | マネージャー・語り手 | 染谷の音楽の本質的価値を信じる。現実と信念の狭間で揺れる。 |
| 染谷 | 音楽アーティスト | デビュー4年、人気に伸び悩む。「自分のための音楽」を作っていたが終盤に変化。 |
| 北川 | 同僚マネージャー | 人気・会社利益を優先する現実主義。染谷を切り捨てようとする。 |
| MIRAI | 新進気鋭アーティスト | 20代前半・人気急上昇中。染谷と対比的に描かれる。 |
特に寺井 vs 北川の「染谷の音楽への評価」の違いがこの物語の中心的な対立です。
🗺️ 図解①:人物相関図
🔄 場面の変化
✓ 場面①「北川との食事」
北川が染谷の価値を否定する発言。寺井がとっさに擁護するが、自分でも理由が整理できていない。→ 寺井の迷いと葛藤が始まる
✓ 場面②「染谷との面談①:キャリアプランの話」
寺井が「この先どうしたいか」を問う。染谷は具体的な計画ではなく漠然とした夢を語る。→ 【問一】の場面
✓ 場面③「面談②:ビールのタイミング」
厳しい事実を告げる直前、寺井がビールに手が伸びる。→ 【問二】の場面
✓ 場面④「カフェでの対話」
染谷が音楽への本音を語る。寺井が染谷本来の魅力を再発見。→ 【問五】の場面
✓ 場面⑤「最終対話・染谷の変化」
寺井が「誰のために音楽を作るのか」と問いかける。染谷に変化が訪れる。→ 【問六・問七】の場面
💭 心情変化表
📝 設問解説
問一(記述)
寺井が染谷に「この先どうしていきたいか」という具体的なキャリアの話を振ったのに対し、染谷は現実的な計画ではなく「音楽で多くの人を感動させたい」という漠然とした夢を答えました。
問二(記述)
寺井がビールに手を伸ばしたのは、これから染谷に言わなければならない「今の時代に求められていない」という厳しい現実を伝えることへのためらい・気持ちの重さを乗り越えるための動作です。
直接心情が書かれていない場合でも「行動の理由=心情」として問われます。「なぜ〜したのか」という問いには「〜というためらい(迷い・決意)があったから」という形で答えましょう。
問三(選択)
問四(記述)
寺井が染谷を擁護する発言をした背景には、北川への反発があります。北川は「人気がない=価値がない」という商業主義的価値観を持っています。それに反発する形で、寺井はとっさに「染谷の音楽には価値がある」と言ってしまいました。
問五(選択)
問六(選択)
問七(記述)★★★ 最重要問題
この問いは「染谷の変化」を問うもので、物語全体の主題に直結する最重要問題です。
| タイミング | 染谷の考え方 |
|---|---|
| 変化前 | 「自分のために、自分が納得する音楽を作る」 |
| 変化のきっかけ | 寺井の「周りを思いやる力が足りない」という言葉 |
| 変化後 | 「多くの人々のために音楽を作るべきだ」という思いが芽生え始める |
🎯 物語文の主題
「自分のための音楽」から「人々のための音楽」へ——染谷の変化を通して、本物のアーティストの成長が描かれます。マネージャー・寺井の目線から「才能を信じること」と「現実と向き合うこと」の葛藤も丁寧に描かれた作品です。
⭐ 比喩表現・重要表現
| 表現 | 解説 |
|---|---|
| 「ヒカリノオト」(タイトル) | 「光」の視覚的輝きと「音」の聴覚的響きを重ねた表現。どちらも「人の心を動かす力」を持つものとして、染谷の音楽の本質的な価値を象徴している。 |
大問四:説明的文章「文化財の未来図」
📖 文章の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | 「文化財の未来図」 |
| 著者 | 村上 隆(むらかみ りゅう) |
| 内容 | 文化財保存科学の観点から「修理と修復の違い」「活用と保存の両立」「科学的アプローチの役割」を論じた論説文 |
💡 筆者の主張
姿かたちを維持するだけでなく、腐食・劣化のメカニズムを科学的に理解した上で、伝統的な技術・材料を用いてオリジナルに近い形を次世代に継承していくこと。
🔄 対比的な表現
この文章の核心は「修理」と「修復」の対比です。
| 修理 | 修復 | |
|---|---|---|
| 目的 | 機能性の回復 | 次世代への継承 |
| 対象 | 壊れた・使えなくなったもの | 機能性をなくしたもの(文化財) |
| 手法 | 使える状態に戻す | 形を整えて保存する |
また「活用(公開・展示)」と「保存(収蔵・保管)」の対比も重要な軸です。博物館はこの二つを同時に担うという「二律背反」の役割を持ちます。
🗺️ 図解③:段落構成図
📝 設問解説
問一(選択)
問二(選択)
問三(選択)
問四(記述)
「ドクターストップ」という比喩表現の言い換え問題です。
| 元の意味 | 本文での意味 |
|---|---|
| 医師が選手の出場を禁止する | 保存科学者が文化財の公開・展示を禁止するよう意見・勧告する |
問五(記述)
「修復」の定義を本文に即してまとめる問題です。
- 「機能性をなくしたもの」(もう実用品ではなく文化財になったもの)
- 「形を整え」(劣化・腐食からオリジナルに近い形に)
- 「次の世代に伝える」(継承という目的)
この3要素を盛り込めば完答です。
問六(選択)
問七(記述・80字)★★★ 最重要問題
筆者の主張の核心を80字程度でまとめる、論説文の総仕上げ問題です。
記述の構造:「〜するだけでなく、〜した上で、〜という形で〜していくもの」という逆接(だけでなく)+付加(上で)+目的(継承)の構造が理想的です。
- 「姿かたちを維持するだけでなく」(単なる外見保持ではない)
- 「腐食・劣化を理解した上で」(科学的分析の重要性)
- 「伝統的な技術・材料を用いて」(伝統技術の重要性)
- 「オリジナルに近い形で保存」(修復の本質)
- 「次世代への継承」(目的)
80字という字数指定の中で上記5要素を盛り込む練習は、難関校対策として非常に有効です。
重要語句・表現まとめ
| 語句 | 意味・解説 |
|---|---|
| 無下(むげ) | 粗略に扱うこと。「無下にする」の形で使う慣用表現。 |
| 気高い(きだかい) | 品位が高く、けがれがない様子。 |
| 委ねる(ゆだねる) | 任せること。結果や判断を他に任せるさま。 |
| ドクターストップ(比喩) | 医師が選手の出場禁止を命じること → 専門家が活動中止を勧告すること。 |
| 二律背反(にりつはいはん) | 二つの命題が同時に成り立たないこと(アンチノミー)。 |
| 保存科学 | 文化財の材質・劣化・保存方法を科学的に研究する学問分野。 |
| サンプリング | 試料採取。文化財の一部を採取して成分等を分析する手法。 |
読み取りづらいポイント・補足
大問三について
寺井が「なぜ染谷を擁護したのか(問四)」は、物語を表面的に読むだけでは見えにくいポイントです。北川の言動への反発という「きっかけ」と、染谷の音楽の価値を信じているという「土台」の両方をセットで理解することが大切です。
大問四について
「修理」と「修復」の違いは一見わかりにくいですが、「機能性の回復か、継承のための形の整えか」という目的の違いで整理すると明確になります。中学受験生には馴染みのない概念なので、本文の定義を丁寧に押さえることが最優先です。
まとめのメッセージ
2026年度の聖光学院の国語は、物語文・論説文ともに「表面と本質のズレ」を読み取る力が問われました。
染谷の変化(問七)は「自分のため→人々のため」というズレ。
文化財の維持(問七)は「姿かたちを守るだけ→科学的理解と継承」というズレ。
「なんとなく読める」から「本質を読める」へ——このジャンプができた受験生が、聖光学院の求める力を持つ生徒です。
今日の解説が、みなさんの読解力アップに少しでも役立てば嬉しいです。引き続き一緒に頑張りましょう!📚







