YS中学受験国語力研究室 中学受験国語専門の家庭教師|個別指導・個人契約・オンライン全国対応

2026.9.20実施 5年生第1回志望校判定テスト 国語 大問1 徹底解説

2026年9月20日(日)に実施された四谷大塚 5年生第1回志望校判定テストの国語から、大問1の物語文を全問解説します。出典は辻貴司さんの『ぼくたちの歌』(佼成出版社)。ベース初心者の一翔と、ドラムを叩く岳。公園での演奏にこだわる岳の本当の理由は、学校に来なくなった親友・明日音にありました。この記事では、登場人物の関係と一翔の心の動きを、情景アニメ入りの図解動画で整理してから、問一から問十までを根拠つきで解きます。65字以内の記述が二問(各10点)あり、ここをどこまで書けたかで大問1の得点が大きく変わります。

出題構成と大問1の講評

  • 大問1は物語文(辻貴司『ぼくたちの歌』)、大問2は説明文(大場裕一『恐竜はホタルを見たか 発光生物が照らす進化の謎』岩波書店)、大問3が言葉の知識、大問4が漢字の書き取りと読みという構成です。この記事では大問1を扱います。
  • 大問1の設問は十問。記号選択が問一・問三・問四のB・問六・問七・問八・問十、抜き出しが問四のA(九字)と問九(十四字)、記述が問二と問五(ともに65字以内・各10点)です。
  • 配点は、問一・問三・問四が各4点、問二・問五が各10点、問六から問十が各5点です。記述二問の20点が一番の山場です。
  • 問六と問八は「適切ではないもの」を選ぶ問題です。二問続けて出ているので、問題文の「適切ではない」を読み落とすと二問まとめて落とします。
今回のポイント
この物語は、前半の「一翔の失敗と落ちこみ」、中盤の「岳の告白」、後半の「再出発と窓が開く場面」の三つに分かれます。設問もこの流れに沿って並んでいます。とくに中盤で明かされる「岳が公園での演奏にこだわった理由」(明日音のため)をつかむと、前半の岳のため息の意味も、後半の岳の涙の意味も、一本の線でつながります。

大問1 物語文 辻貴司『ぼくたちの歌』

あらすじ 閉ざされた窓を、音楽で開けたい

六年生の一翔(ぼく)はベースの初心者です。いつも公園でドラムを一人で練習している岳に誘われ、二週間いっしょに練習してきました。ところが、外で演奏した日、一翔は緊張して途中で弾けなくなってしまいます。岳は「ふーっと長いため息」をつき、うつむいたまま。そこへ、さっき見かけた中学生のお姉さんたちが通りかかり、立ち去ったあとで大きな笑い声が聞こえてきます。一翔は「ぼくのことを笑ってるんだ」と思い、「ぼく、帰るよ。ベースももうやめる」と言って歩き出してしまいます。

その後、岳の家で、一翔は岳から「ちょっとばかり、つらい話」を聞きます。公園のそばの家には、岳の親友でピアノの天才の明日音が住んでいること。明日音はからかわれたことがきっかけで学校に来なくなり、ピアノも弾かなくなったこと。岳は「友だちとしても、音楽仲間としても、明日音をささえられなかった」と苦しんでいたこと。一翔を誘ったのも、ベースがいれば明日音が元気を出してまたピアノを弾くかもしれないと思ったからでした。

「いろんな理由が重なって、ぼく、だったんだね」と納得した一翔は、「でも、もうやめる。バンドもあきらめる」と言う岳に、「ベースは、まだ返すのやめるよ」と答えます。二人はたがいに頭を下げ、再出発を決めます。次の火曜日、どんよりくもった風の強い日。二人が公園で演奏していると、グレー屋根の家の二階の窓がいきおいよく開き、ピアノのメロディが重なりました。岳は泣きながらスティックをふり回し、一翔は「ぼくたちの音楽が明日音くんの心を動かしたんだ」と感じます。

図解動画① 登場人物の関係(約20秒・音声なし)
図1 2026年 5年生第1回志望校判定テスト 大問1 人物相関図
一翔(ぼく)
語り手・六年生
ベース初心者。岳に誘われて仲間になる
ドラム担当・一翔の「師匠」
将来はライブハウスの人になりたい
明日音
岳の親友・ピアノの天才
学校に来なくなり、ピアノも弾いていない
中学生のお姉さんたち
通りがかりの四人組
一翔は「笑われた」と感じる
一翔バンドに誘い、二週間練習につきあう。「もっとできるはず」と欲が出る
明日音親友なのに「ささえられなかった」と自分を責めている
一翔怒り→さみしさ→「その夢は、岳とかなえたい」
一翔・岳明日音音楽の力で、とざしてしまった窓を開けたい

次に、一翔の気持ちが場面ごとにどう動くかを確かめます。前半は落ちこむ一方ですが、岳の告白を境に上向き、最後は「指の先までドキドキしている」ところまで上がります。設問はこの曲線の上に並んでいます。

図解動画② 一翔の心の動き(約29秒・音声なし)
図2 2026年 5年生第1回志望校判定テスト 大問1 一翔の心情変化
1
演奏が止まる
岳が「ふーっと長いため息」。うつむいたまま首をふる
一翔 - 「ぼくも、自分にがっかりした」
対応する設問:問一
2
お姉さんたちの笑い声
「ああ、見られちゃった……」。立ち去ったあとに大きな笑い声
一翔 - 恥ずかしさ、みじめさ。「なんてかっこ悪いんだろう」
対応する設問:問二
3
「ベースももうやめる」と歩き出す
岳が引き止めても無視して歩き続ける。夢を自分から放り投げた
一翔 - すぐに後悔。でも、どうしてもふり返れない(とまどい)
対応する設問:問三・問四(★特に重要:行動と気持ちが食い違う場面)
4
岳のつらい告白
明日音のこと、公園で演奏した理由、一翔を誘った理由を知る
一翔 ± 怒りが「するすると消えていく」。代わりにさみしい気持ち(★特に重要:心情の転換点)
対応する設問:問五・問六・問七
5
「ベースは、まだ返すのやめるよ」
あきらめようとする岳を止め、二人で頭を下げて再出発
一翔 + 「その夢は、岳とかなえたい」
対応する設問:問八
6
二階の窓が開く
ピアノのメロディが重なり、岳は泣きながら叩き続ける
一翔 + 「ぼくたちの音楽が明日音くんの心を動かしたんだ」
対応する設問:問九・問十

設問解説

問一 傍線部①「岳がふーっと長いため息をついた」ときの岳の気持ち4点

一翔が緊張して途中で弾けなくなった直後の岳の反応です。ここだけ読むと「がっかり」「失望」が浮かびますが、それだけでは選択肢をしぼりきれません。岳の気持ちは、本文のずっと後ろで、岳自身の口から語られています。96・97行めの「ほんと、悪かった。なんか、もっとできるはずだって、欲が出た」です。

岳は二週間、一翔の練習につきあってきました。一翔もまじめに練習してきた。だからこそ「もっとできるはず」と期待していて、それがかなわなかったので落ちこんだ。このつながりをそのまま書いたウが正解です。

アの「自分も笑われた気分になり腹を立てている」は、一翔の「おこってる?」に岳が「いや……」と首をふっていることと合いません。イの「上達させられなかった自分に責任を感じている」は、後半で岳が明日音に対して感じている「責任」と混ぜた選択肢です。この場面の岳が一翔に対して責任を感じている根拠はありません。エの「焦ってはいけないと自分に言い聞かせている」も本文にありません。

解答

問二 傍線部②「ぼく、帰るよ。ベースももうやめる」と思うようになった一翔の気持ち(65字以内)10点

「ベースをやめる」と言い出すまでに、一翔の中には落ちこむ理由がいくつも重なっています。一つずつ拾います。

  • 自分へのがっかり 10行め「ぼくも、自分にがっかりした」。問一で見た岳の気持ちと同じです。
  • 人に見られ、笑われたみじめさ 12行めから、中学生のお姉さんたちが登場します。「ああ、見られちゃった……」「ぼくのみじめな気持ちが伝わったのかな」。そのあと笑い声を聞いて「ぼくのことを笑ってるんだ」と思います。
  • いい気になっていた自分への恥ずかしさ 傍線部の直前に「きのう、ちょっとほめられて、いい気になった自分が恥ずかしい。ミスして、どうにも修正できなくて、あきらめたところを見られちゃった。なんてかっこ悪いんだろう」とあります。

いちばん大事なのは三つめの直前の部分です。ここに「恥ずかしい」「修正できずにあきらめた」「見られた」「かっこ悪い」がそろっています。これに二つめの「みじめ」を合わせて、65字に収めます。

記述の組み立て
ほめられていい気になった自分が恥ずかしい
ミスを修正できずにあきらめた、かっこ悪いところ
それをお姉さんたちに見られて、みじめな気持ち
①から③を「〜が恥ずかしく、〜を〜に見られてみじめな気持ち。」の一文にまとめます。「気持ちを説明しなさい」なので、文末は「気持ち」で結びます。
解答例ほめられていい気になった自分が恥ずかしく、ミスを修正できずにあきらめたかっこ悪いところをお姉さんたちに見られてみじめな気持ち。

問三 空欄③にあてはまる言葉4点

空欄の前後は「ぼくは無視して歩き続けた。でも、歩きながら、すぐに③した」です。「でも」は逆接なので、空欄には「無視して歩き続けた」と反対向きの気持ちが入ります。一生懸命に引き止めてくれている岳を無視したことを悔やむ、つまり「後悔」です。

直後の「せっかく、岳がぼくを見つけてくれたのに……。あんなに練習もつきあってくれたのに……」「ぼくはなんてバカなんだろう」も、後悔の中身そのものです。アの「絶望」は強すぎ、ウの「否定」とエの「動揺」は、岳を無視した自分を悔やむ気持ちを表していません。

解答

問四 傍線部④「ぼく、どうしちゃったんだろう」を説明した文の空欄A(九字)とB各4点

説明文は「本当は岳と夢をかなえたいのに、それをAようなことをしている自分にBしている」です。

A は傍線部の後、40〜44行めにあります。「ぼくだって、がんばった。がんばって、せっかく楽器ができるようになったんだ。バンドを組む夢。ライブをする夢。それを、自分から放り投げるなんて、ぼくはなんてバカなんだろう」。「夢を」に続く九字は「自分から放り投げる」です。

B はその後の「頭ではわかっているのに、どうしても岳のほうをふり返ることはできなかった」から考えます。わかっているのに、体が言うことをきかない。自分の気持ちと反対の行動をとってしまう自分に、一翔自身がとまどっています。これを表す心情語は「困惑」です。イの「葛藤」は二つの気持ちの間で迷う状態で、ここでは「なぜこんなことをしているのか」というとまどいのほうが中心です。心情語は、どんなときに使う言葉かを一つずつ確かめておきましょう。

解答A 自分から放り投げる  B ア
図解動画③ 岳が一翔を誘った「いろんな理由」(約17秒・音声なし)

問五 傍線部⑤「岳の顔が苦しそうにゆがんだ」ときの岳の気持ち(65字以内)10点

後半のキーパーソンは明日音です。岳の顔がゆがんだのは、明日音のことを考えているからです。明日音について本文には「小学六年の同級生」「めちゃくちゃピアノがうまい」「学校に来なくなって」いることが書かれています。

そのうえで、根拠になるのは次の二か所です。

  • 74〜76行め(岳のセリフ) 「おれの前から、親友とピアノの天才がいっぺんにいなくなった。おれは、友だちとしても、音楽仲間としても、明日音をささえられなかったんだ……」
  • 78・79行め(一翔の受けとめ) 「明日音くんが不登校になって、ピアノも弾かなくなったことを、岳は自分の責任のように感じていたんだ」
記述の組み立て
明日音を親友としても音楽仲間としてもささえられなかった
明日音が不登校になり、ピアノも弾かなくなった
そのことを自分の責任のように感じる
「苦しい」の中身は③の「責任」です。①と②だけで「くやしい気持ち」と書くと、いちばん大事な要素が抜けます。
解答例明日音を親友としても音楽仲間としてもささえられなくて、彼が不登校になりピアノも弾かなくなったことを自分の責任のように感じる気持ち。

問六 「いろんな理由」として適切ではないもの5点

「いろんな理由」なので、岳が一翔を誘った理由を本文から一つずつ拾い、選択肢と対応させます。

  • 81〜83行め「最初は、ベースがいたら、明日音の元気が出るかなって。あいつも、バンドやりたがってたから、前みたいに、ピアノ弾くかもって」→イ
  • 89行め「ベース弾いたらうまくなりそうって思ったのは、ほんと」→ア
  • 90・91行め「CDを自転車で買いに行ったのもおもしれーって思ったし」→ウ

対応する文がないのはエの「公園に遊びに来ている人のためにもっといい演奏をしたかったから」です。本文には「よく公園に遊びに来る人のために、窓を開けて演奏したりもしてたんだ」とありますが、これは明日音が以前していたことで、岳が一翔を誘った理由ではありません。本文の言葉を使ったひっかけなので注意しましょう。

解答

問七 傍線部⑦「でも、もうやめる。バンドもあきらめる。ありがとな」のときの岳の気持ち5点

岳はいろいろな希望を持って一翔を誘い、一生懸命練習してきました。けれども明日音は不登校のまま、一翔も演奏に失敗して「やめる」と言いました。「ありがとな」と言う岳はさっぱりしているように見えますが、直前の「ほんと、悪かった」や、このあと一翔に言われて「ぐっとくちびるをかみしめた」ようすから、内心は心残りで残念でしかたがないはずです。「残念だが断念するしかない」としたエが正解です。

アの「精一杯やりきったのでさっぱりしている」は、表面だけを見た選択肢です。イの「イライラがつのっている」、ウの「満足している」も岳の本心と合いません。

解答

問八 一翔が「ベースは、まだ返すのやめるよ」と言った理由として適切ではないもの5点

前半で「やめる」と宣言した一翔が、ここでは「続けよう」と気持ちを変えています。その理由を本文から拾います。

  • 107行め「ぼくのベースは、きっと、もっとよくなる」→ウ
  • 108・109行め「バンドを組んで、ライブをする夢。その夢は、岳とかなえたい」→イ
  • 115・116行め「天才の、しかも親友のピアニストを救う可能性があるのに、それを途中でやめちゃうなんて、ありえないよ!」→エ

本文に書かれていないのはアの「将来は自分が才能あるミュージシャンになって岳に応援してもらいたいから」です。「ライブハウスの人になって、才能あるミュージシャンを応援する」のは岳の夢で、一翔が自分を応援してほしいと思っている記述はありません。問六と同じく「適切ではないもの」を選ぶ問題です。

解答
図解動画④ クライマックスの情景(約22秒・音声なし)

問九 傍線部⑨「泣きながらスティックをふり回していた」ときの岳の気持ち(十四字の抜き出し)5点

二人が演奏していると、グレー屋根の家の二階の窓がいきおいよく開き、ピアノのメロディが聞こえてきます。弾いているのは明日音です。明日音のピアノは曲の最後までつきあってくれ、岳は顔をぐしゃぐしゃにぬらして泣いています。

空欄をふくむ文は「ぼくたちの音楽が明日音くんの心を動かして、〔十四字〕ことに感激している」です。167〜169行めに「きっと、ぼくたちの楽しさが伝わって、明日音くんをピアノに向かう気持ちにさせたんだ。ぼくたちの音楽が明日音くんの心を動かしたんだ」とあります。「明日音くんを」に続く「ピアノに向かう気持ちにさせた」がちょうど十四字です。

解答ピアノに向かう気持ちにさせた

問十 本文を通して作者が伝えようとしていること5点

主題は本文に書かれていないので、主人公の気持ちの変化、人物像、結末から考えます。岳に誘われて仲間になった一翔は、一度はくじけますが、明日音に対する岳の気持ちを聞いて立ち直ります。137〜139行めには「自分のことはどうでもいい。明日音くんのために弾くんだ。ぼくたちの演奏で、音楽の力で、明日音くんがとざしてしまった窓を開けるんだ」とあり、二人は明日音を救おうと演奏し、明日音の心を動かしました。

一言でいえば「友情」です。選択肢ではウの「おたがいを思いやり困難を乗り越え強くなっていく、友だちとの絆」があてはまります。一翔と岳がたがいに頭を下げて再出発したことも「おたがいを思いやり」に重なります。

まよいやすいのはイの「人の心を揺さぶり、動かすことのできる音楽のすばらしさ」です。たしかに音楽は明日音の心を動かしました。けれども物語の中心は、一翔と岳、岳と明日音の関係の変化で、音楽はその関係を結び直すための手段として描かれています。アの「奉仕の精神」、エの「意志の強さ」は、話の一部分しか見ていません。

解答

大問1の解答一覧

  • 問一 ウ
  • 問二 (解答例)ほめられていい気になった自分が恥ずかしく、ミスを修正できずにあきらめたかっこ悪いところをお姉さんたちに見られてみじめな気持ち。
  • 問三 イ
  • 問四 A 自分から放り投げる  B ア
  • 問五 (解答例)明日音を親友としても音楽仲間としてもささえられなくて、彼が不登校になりピアノも弾かなくなったことを自分の責任のように感じる気持ち。
  • 問六 エ
  • 問七 エ
  • 問八 ア
  • 問九 ピアノに向かう気持ちにさせた
  • 問十 ウ

この回から持ち帰るべき3つのこと

  • 人物の気持ちは、離れた場所の本人のセリフで確かめる 問一の岳のため息は、96・97行めの「もっとできるはずだって、欲が出た」で意味が決まります。傍線部のまわりだけで決めず、その人物があとで自分の気持ちを語っている場所がないかを探しましょう。
  • 「適切ではないもの」は、選択肢と本文を一対一で対応させる 問六と問八は、正しい選択肢三つにそれぞれ本文の行があります。行と結びつかない一つが答えです。問六のエのように、本文の言葉を使っていても「だれの、いつの話か」がずれている選択肢に注意します。
  • 記述は要素を三つに分けてから書く 問二は「恥ずかしさ」「かっこ悪さ」「見られたみじめさ」、問五は「ささえられなかった」「不登校とピアノ」「責任」。書き始める前に要素を書き出し、全部入っているかを確かめてから一文にまとめると、65字の中で要素の抜けを防げます。