大問1 説明文
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要約
都市の定義と特徴、特に都市と自然の関係について論じています。筆者は都市を「四角の中に人が住むところ」と定義し、都市空間では自然が排除され、すべてが人の意識でコントロールされる世界であると説明しています。一方で、都市の外には自然が存在し、完全にコントロールできない世界があることを指摘しています。また、人間の身体という避けられない自然が都市空間に存在することで生じる課題にも触れています。
筆者の主張・意見
- 都市は自然を排除し、人工物で構成された空間である。
- 都市空間では全てが意識的、意図的に置かれており、予期せぬ出来事は起こらないことになっている。
- 人間の身体は都市空間に存在する避けられない自然であり、特に死に対する扱いが都市では困難である。
- 中世と近世(江戸以降)で日本人の自然観に大きな変化があった。
段落構成
- 都市の定義と基本的特徴
- 都市空間における自然の排除と人工物の配置
- 都市空間で起こる予期せぬ自然現象(不祥事)
- 都市と自然の境界
- 人間の身体という避けられない自然
- 中世と近世の自然観の違い
- 『平家物語』を例にした中世と近世の感性の違い
対比的な表現
- 都市空間 vs 自然空間
- 中世の人々 vs 近世以降の人々
- 古代の宮廷人 vs 中世の武士
例示をまとめる表現
- 「つまり私たちが考え出したものです。」
- 「要するに、意識されないものはそこには置いてはいけない、ということです。」
比喩表現
- 「都市という四角の中」:都市を四角い空間として表現
- 「頭の中そのもの」:建物を設計者の思考の具現化として表現
注意すべき言葉・表現
- 「城郭」(じょうかく):城を守るための囲い。昔の都市を囲む壁のこと。
- 「貫徹」(かんてつ):最後まで徹底すること。
- 「不祥事」(ふしょうじ):望ましくない出来事、スキャンダル。
- 「賢明」(けんめい):賢くて道理をわきまえていること。
- 「漸次に」(ぜんじに):だんだんと、少しずつ。
- 「折り合う」(おりあう):互いに譲歩して関係を良好にすること。
- 「公達」(きんだち):身分の高い人々。
その他読み取りづらい部分の解説
- 「吉野ヶ里」について: 吉野ヶ里遺跡は、佐賀県にある弥生時代の大規模な集落跡です。ここでは、堀で囲まれた空間が初期の都市の形態を示しています。
- 中世と近世の違いについて: 筆者は、中世の人々がまだ自然と密接に関わっていたのに対し、近世(江戸時代以降)の人々は完全に都市的な感覚を持つようになったと指摘しています。これは、自然との関わり方や死生観の変化を示唆しています。
- 『平家物語』の例について: 筆者は、『平家物語』に登場する人物の行動や考え方を通じて、中世の人々と古代の宮廷人(そして現代の私たち)の感性の違いを説明しています。特に、死や自然に対する態度の違いが強調されています。
大問2 物語文
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あらすじ
高校入学式の日に出会った荒谷伊澄と車いすの少女渡辺六花。クラスメイトとなった二人は、学級委員選出の場面で互いの考えや立場を知る。その後の駅のホームでの会話を通じて、障がいに対する理解や「個性」という言葉の使い方について深い気づきを得る。
登場人物と人物像
- 荒谷伊澄(主人公):
- 元短距離走者で中学生記録保持者
- 大けがをして競技から離れている
- 「本気にならない」ことを高校生活の目標にしている
- 正義感が強く、困っている人を助けようとする
- 言葉で表現するのが苦手だが、人の気持ちを理解しようとする
- 渡辺六花:
- 車いすユーザー(中学2年時に脊髄腫瘍が原因)
- 新入生代表挨拶を務めるほど優秀
- 自立心が強く、自分のできることは自分でやりたい
- 率直に自分の考えを伝える
- 障がいについて深い洞察を持っている
- 矢地めぐみ(担任教師):
- クラスをまとめようと努力する
- 六花の能力を認めつつも、負担を心配している
- 武井彩香:
- 長谷川さん:
場面の変化
- 入学式の日(荒谷と六花の出会い)
- 最初のホームルーム(自己紹介と学級委員選出)
- 放課後の駅のホーム(荒谷と六花の会話)
心情表現とその変化
- 伊澄:
- 最初は「本気にならない」と決意 → 六花に影響され、積極的に行動
- 六花の立候補に対する教師の態度に違和感 → 六花を支援しようとする
- 六花の考えを聞いて驚き、理解を深める
- 六花:
- 学級委員立候補時の積極的な態度 → 武井に譲る際の冷静さ
- 伊澄の支援に対する感謝と自己反省
- 障がいに対する複雑な思いの吐露
比喩表現とその解説
- 「グーリングダウンのジョグみたいに」:何も本気にならず、気ままに過ごすことの比喩
- 「トラックに立ってスタートを切ったら、あとは何があっても走り抜くしかない」:決意したことは最後までやり遂げる決意の表現
- 「百点のテストに花丸をつけるみたいに」:完璧な回答に対する肯定的な評価の比喩
主題
- 障がいに対する理解と向き合い方
- 個性と障がいの捉え方
- 他者理解の重要性
- 自己成長と価値観の変化
理解しづらい言葉・表現とその解説
- 脊髄の神経に腫瘍:背骨の中にある神経の束(脊髄)に、異常な細胞の塊(腫瘍)ができること
- 車いすユーザー:車いすを使う人のこと。「障がい者」という言葉を避け、より中立的な表現
- 潔い:すっきりしていて気持ちがいい様子
- 実力主義:能力や実績を重視しその他の要素を軽視する考え方
- 「はしごを外す」:最初は協力的な態度を示しながら、途中で支援を取り下げること
- 六花の「障がいは個性ではない」という主張:障がいを単純に個性と呼ぶことで、その人が抱える困難や葛藤を軽視してしまう可能性があることを指摘している
まとめ
正しく読めていたか、誤読や理解不足があったとすればどこか、課題を明確にしておきましょう。
特に物語の終盤「障がいは個性」という言葉は一般論としてお子さんも学校などで耳にしたことがあるかもしれません。近年の文章ではこういった「一般論」に一石を投じることがよくあります。世間で言われていることが全ての人にとって正解とは限らない。そういった多面的な見方ができるようになることも中学受験生として求められてきています。
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