武蔵中 2025年度 過去問 国語 文章解説
大問1:幸田文の文章〈随筆文〉
- 要約:筆者が動物園の類人猿舎を訪れ、ゴリラ・チンパンジー・オランウータンと、それらを飼育する係員たちとの交流の様子を観察し、動物と人間の理解の難しさや、長年の飼育で生まれる信頼関係について記した随筆文です。
登場人物と人物像
- 「私」(筆者):類人猿舎を訪れ、飼育係と類人猿の交流を観察し考察する人物
- 飼育係:類人猿を長年世話している人たち。動物への深い理解と愛情を持ち、謙虚な態度で接している
- ベテラン飼育員:長年の経験を持つ飼育係。ゴリラに指を噛みちぎられた経験を持つ
- ゴリラ(ビル):飼育されているゴリラ。力強く怖さもあるが、飼育係に対して素直さも見せる
- チンパンジー:飼育されている類人猿。つばきやおしっこを吐きかける行為をする
- オランウータン:おとなしく食べ物を吟味する様子が描かれている

場面の変化
- ✓ 類人猿舎の観察:「私」が動物園の類人猿舎を訪れる
- ✓ チンパンジーとの出会い:つばきやおしっこをかけられる場面
- ✓ 給食場面:類人猿の食事の様子と飼育係の対応
- ✓ ベテラン飼育員の話:指を失った経験談
- ✓ ビル(ゴリラ)の脱走エピソード:飼育係の対応と信頼関係
心情表現とその変化
- 「私」の心情:
- 最初は観察者として客観的 → チンパにつばきをかけられて「はなはだ心たいらかでない」(動揺)
- ゴリラの手を見て「かなしい」と感じる(同情)
- ビルの淋しさを思い「涙が出そうになった」(共感)
- 飼育係の心情:
- チンパのつばきに「大はにかみ」(恥ずかしがる)
- ビルの脱走時は「戦慄」から「かわいそうだ!」という気持ち(恐怖→同情)

比喩表現とその解説
- ★「君子は庖厨に遠く住んでいる」:台所(動物のエサを作る場所)が飼育場所から離れていることを、中国の古典を引用して表現
- ★「かわいそうな手」:ゴリラの手を擬人化し、その境遇への同情を表現
- ★「飼育のなじみが花になって咲いた」:長年の飼育によって生まれた信頼関係が重要な場面で発揮されたことを花にたとえている
筆者の主張・意見
- 「動物はまったく人とは異種のものであり、理解の届かないふしがたくさんあって、馴れもするし察しもつくが、いつもかならず不用意で相対してはいけない」
- 飼育係が「と思う」と断定を避ける謙虚な態度は、動物との適切な関わり方を示している
- 長年の飼育で生まれる信頼関係は、時に命を左右する重要なものである
段落構成
- 導入:類人猿舎と飼育係の一般的な説明
- 飼育係の態度:「と思う」と「である」の使い分け
- チンパンジーとの遭遇:つばきとおしっこのエピソード
- 給食時間:ゴリラの食事と飼育係との交流
- ベテラン飼育員の指の事故:動物との接し方の教訓
- ビルの脱走事件:飼育係との信頼関係
- まとめ:人と動物の理解の難しさと大切さ
小6にとって難しいであろう言葉・表現とその解説
難しい言葉・表現 | 解説 |
---|---|
期せずして | 計画や意図なしに、自然と |
あらん | 「それはそうだろう」という意味の古い言い回し |
哀切 | 深い悲しみ |
意味深長 | 深い意味がありそうなさま |
同胞 | 同じ仲間。ここでは人間のこと |
辟易して | たじろいで、うんざりして |
君子は庖厨に遠く住んでいる | 中国の古典に基づく表現で、調理場(動物園の台所)が別の場所にあることを表現 |
さしもの | さすがの、とても強いはずの |
暫時 | 短い時間、しばらくの間 |
戦慄 | 恐怖で体が震えること |
もんどりうつ | 空中で体を回転させること、宙返り |
読み取りづらい部分
- 「と思う」と「である」の対比: 飼育係が動物について話すとき、断定的な「である」ではなく「と思う」という控えめな表現を使うことは、動物に対する理解の限界を認識している謙虚さの表れです。筆者はこれを学問をする人の態度に似ていると評価しています。
- チンパンジーのつばきエピソード: チンパンジーが「私」につばきを吐きかけた行為は、実は人間の来園者からそうされて覚えた行動だったという点が重要です。「私」は人間から学んだ行為で攻撃されたことに「心たいらかでない」(心が穏やかでない)感情を抱いています。
- ベテラン飼育員の指のエピソード: ベテラン飼育員が不機嫌な状態で動物に接したために指を噛みちぎられた話は、動物は人間の感情に敏感に反応し、人間の立腹を自分への攻撃と誤解して防御行動を取る可能性があることを示しています。
- ビルの脱走エピソード: ゴリラのビルが脱走したとき、観客は「散歩に出している」と錯覚して騒がなかったことが幸いでした。ビルが淋しさから素直に飼育係の元に戻ってきたことは、長年の信頼関係があったからこそでした。
解説のまとめ
この文章は、人間と動物の関係について深く考察した随筆です。筆者は類人猿舎を訪れ、飼育係と類人猿の交流を通して、異種間のコミュニケーションの難しさと可能性を探ります。
文章の特徴として、飼育係の「と思う」という謙虚な態度が印象的です。これは、動物の内面を完全に理解することは不可能だという認識を示しています。同時に、長年の交流によって生まれる信頼関係の重要性も強調されています。
ビルの脱走エピソードは、文章のクライマックスとして機能し、飼育係とゴリラの間に築かれた信頼関係が命を救うほど重要であることを示しています。
この文章から学べることは、異なる存在への謙虚な姿勢と、長期的な関わりが生み出す絆の素晴らしさです。中学受験では、「と思う」と「である」の使い分け、心情表現の読み取り、対比表現の理解などが問われそうな文章です。
私たちは類人猿と直接交流することはできませんが、飼育係のようにその理解に努め、敬意を持って接することの大切さを教えてくれる文章だと言えるでしょう。
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