- ホーム
- 模試・塾テキスト解説
- 2025.6.8実施 小6第2回サピックスオープンA 国語読解問題解説
2025.6.8実施 小6第2回サピックスオープンA 国語読解問題解説
文章の基本情報
◆大問1:物語文
- 題名:「ありえないほどうるさいオルゴール店」(抜粋)
- 筆者名:瀧羽麻子
- 要約:耳の不自由な息子・悠人への罪悪感を抱く母親・美咲が、オルゴールから流れる子守唄を通して、自分の愛情が息子に確実に届いていたことを知り、救われる物語。
リンク
◆大問2:随筆文
- 題名:「記憶のジェネレーション」(抜粋)
- 筆者名:中上紀
- 要約:熊野の祖父母の家での幼い頃の思い出を通して、祖母を中心とした親族の絆を描き、祖父母の死後に失われたにぎやかさが、新しい命の誕生によって再び希望の光を見出す随筆。
◆大問1:物語文の詳細分析
登場人物と人物像
- 美咲(母親):息子への深い愛情を持ちながらも、息子の障害への罪悪感に苦しむ繊細な母親
- 悠人(息子):耳は不自由だが、思いやりのある優しい子ども。母親の心境を敏感に察する
- 母娘:歌いながら歩く健聴の親子。悠人との対比的存在
- 店員:オルゴール店の店員

心情表現とその変化
- 美咲の心情:罪悪感 → 絶望感 → 驚き → 感動・救い
- 悠人の心情:達観した受容 → 母への気遣い → 安らぎ

比喻表現とその解説
- 「のどをふさいでいたかたまり」:美咲の息苦しい罪悪感や自責の念を具体的に表現
主題
母子間の真の愛情とコミュニケーション。言葉では伝わらなくても、心は確実につながっているという普遍的なテーマ。
大問1の設問解法
問四「美咲は返事ができなかった」理由
- 解法ポイント:直後の文脈を確認する
- 「目礼するのがせいいっぱいだった」→余裕がない状態
- 「抱きあげようとした」「ぶつかってしまう」→息子を守ることに必死
- 正解:ウ 心配と必死さで挨拶どころではなかった
問五「達観した笑み」の意味
- 解法ポイント:「その事実を粛々と受けとめている」に注目
- 「その事実」=「あの女の子と自分の違い」
- 「達観」=冷静に現実を受け入れること
- 正解:イ 耳が聞こえないという事実を冷静に受けとめている
問九 美咲が泣いた理由
- 解法ポイント:オルゴールから流れた「子守唄」の意味
- 問六で確認した「わたしの声は、この子に届いていた」という気づき
- 正解:ウ 自分の愛情が声を通して伝わっていたことへの感動
◆大問2:随筆文の詳細分析
筆者の主張・意見
- 記憶は単なる過去の出来事ではなく、現在の自分を形作る重要な要素
- 人と場所とのつながりは、特別な人(祖母)によって生まれる
- 失われたもの(死)があっても、新しい命によって希望は再生される

対比的な表現
- 過去のにぎやかさ vs 現在の静寂
- 祖母の存在 vs 祖母の不在
- 子どもたちの声で溢れた家 vs がらんどうのような家
- 悲しげな家 vs 新鮮な光で包まれた家
重要語句・表現
- 「磁場」:特別な引力を持つ場所
- 「拍車をかけ」:進行を早める
- 「がらんどう」:うつろで何もない状態
- 「養生」:体力を回復させること
その他読み取りづらい部分
- 「磁場」の概念:物理的な場所が持つ精神的な引力
- 時間軸の複雑さ:過去の記憶と現在の感情の入り組み
- 「物語」の多重的意味:人生そのものと語り継がれる話の両方
大問2の設問解法
問三 抜き出し問題
- Xの解法:「祖父母の家と『私』とを繫いでいた」の前文から同意表現を探す
- 11ページ1行目「熊野の磁場そのものであった」が該当
- Yの解法:「人生を振り返って」の文脈から「最初の記憶」を探す
問四「呪文のような〝熊野〟」の意味
- 解法ポイント:比喩表現は「~のような」の前後を確認
- 「五感のすべてに…刻み込まれており」「敏感に反応する」
- 正解:ウ 鮮やかな記憶による不思議な反応力
問八 「熊野に繫ぎとめる」理由
- 解法ポイント:「赤ん坊は新しい物語である」に注目
- 「違った色の、新鮮な光」→新たな希望
- 正解:イ 子どもを中心とした楽しい時間への期待
まとめ
今回の6月8日実施サピックスオープンAの国語問題は、「人と人とのつながり」という共通テーマを持つ2つの文章で構成されています。
大問1の物語文では、言葉では伝わらないと思っていた母の愛情が、実は子守唄として確実に息子に届いていたという感動的な気づきが描かれています。障害があっても、愛情は必ず伝わるという普遍的なメッセージが込められており、心情変化の読み取りと比喩表現の理解が重要なポイントとなります。
大問2の随筆文では、祖母を中心とした家族の絆が、死によって一度は失われたように見えても、新しい命の誕生によって再び希望として蘇るという、生命の連続性と記憶の力が描かれています。段落構成の把握と、体験と感想の区別が読解のカギとなります。
どちらの大問も、見た目には分からない深いつながりを主題としており、中学受験生には、表面的な理解だけでなく、人物の心の動きや感情の変化を丁寧に追うことの大切さを教えてくれる良問です。
心情変化の把握、比喩表現の理解、文脈から適切な語句を抜き出す技術など、国語読解の基本的な力が総合的に問われる問題構成になっています。
サピックス国語のフォローについては👇

