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4・5 月の大手塾国語の出典を読み解く ―今年の出典リストが語る「3つの流れ」
4〜5月にかけて大手塾(サピックス・早稲アカ・四谷大塚・日能研・グノーブル・浜学園)テキスト・模試で採用された 51 作品を精査すると、科学エッセイの台頭・社会哲学系の充実・現代青春物語の細やかな感情描写という3本柱が浮き彫りになりました。以下では具体例を挙げつつ、その背景と学習への活かし方をまとめます。
出典リストから読み取れる3つのトレンド
1. 生命科学・環境系
- 小林武彦『寿命はなぜ決まっているのか』は「老化・遺伝子」を平易に説く人気新書
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- 本川達雄『生物学的文明論』は「生物時計」から文明を俯瞰する一冊で、中学理科を超えた視点を提示します
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- 稲垣栄洋『生きものの死にざま』は死に方から命の多様性を考えさせるエッセイ。
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⇒ 狙い:単なる知識ではなく「概念→具体例→再抽象化」という論理操作を読ませる設問が増える見込み。
2. 「個人と社会」を問う哲学・社会学テキスト
- 菅野仁『友だち幻想』は人間関係の距離感を問い直す定番書。
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- 富永杏子『みんなの「わがまま」入門』は自己主張と公共性のバランスを高校生向けに説く講義録
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- 永井玲衣『世界の適切な保存』は「見ること」を切り口に社会と自然の関係を再考させる最新作
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⇒ 狙い:抽象語(公共性・承認・自己責任など)の定義を段落レベルで追えるかを試す。
3. 多様な価値観の中で生きる少年・少女
- 辻村深月「ロードムービー」は小学生の小さな家出を通して孤立と再生を描く短編。
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- 重松清「ドロップスはかみさまの涙」や宮下奈都「よろこびの歌」など、「自分の居場所探し」 が共通テーマ。
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- 古典枠として新美南吉「おじいさんのランプ」が入り、価値観ギャップを意識させる配置
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⇒ 狙い:社会と自身の価値観ギャップに悩む人物、やがて自身の生き方、居場所に価値を見いだしていく。多様な人びとの生き様、価値観がどこまで深く理解できるか。
なぜこのラインアップなのか?──出題側の意図を推測
- 私立中高一貫校が推進するSTEAM型学習との接続
理科的題材を国語で扱い、教科横断の思考を促す。 - 多角的思考力の養成
哲学・社会学系で肯定/否定の二項対立を超える思考プロセスを訓練。 - 他者理解と共感力の両立
物語文で“他者の痛み”を体感させ、説明文で“社会的文脈”を論理的に捉え直す二段構え。
まとめ
今年春の出典テーマは 「科学リテラシー」×「社会性」×「自他の価値観の対比」 をといったラインアップでした。
当座国語の読解学習で意識したいこと
- 概念―具体例―再抽象化の流れを掴む
- 抽象語の定義と言い換えをマスター
- 心情変化と多様な人物像の理解、相関の整理能力
これからの出題にも注目して入試トレンドの分析に生かしていきたいと思います。

