女子学院中 2025年度過去問 国語 文章解説
大問1「オオカミのこと」星野道夫 〈随筆文〉
文章概要
- 要約:アラスカに住む筆者がオオカミとの出会いを通して、人間とオオカミの対立の歴史や、野生動物が減少した原因について考察し、生物の多様性の大切さを訴える随筆文です。
説明的文章(随筆文)の特徴
筆者の主張・意見
- 私たちの生活の中で一つの大切なことは、人間をとりまく生物の多様性である
- どこかにオオカミの世界があるということを意識できることは大切である
- 生物の多様性は私たち自身をほっとさせ、私たちが誰なのかを教え続けてくれる
- 多様性は生物の世界にとどまらず、人間社会における文化の多様性にも当てはまる

対比的な表現
- オオカミについての架空のイメージと実在するオオカミの対比
- オオカミが「悪者」とされる歴史と、実際にはグリズリーがムースの個体数減少の原因だったという事実の対比
- 人間の経済的利益とオオカミの生存の対立
比喩的表現
- ③「土足で踏みこんでいた」:オオカミの生活圏に無遠慮に侵入してしまったことを表現
- ⑨「袋小路へと追いつめられてゆく」:行き詰まり、解決策のない状態になることを表現
段落構成

重要語句や表現とその解説
- 稜線(りょうせん):山の尾根の線、山の上部の線
- もぬけの殻(もぬけのから):中身がいなくなって空っぽになった状態
- 交錯(こうさく):入り混じること、交わること
- 白夜(びゃくや):夏の極地方で太陽が沈まず、夜も明るい現象
- 残照(ざんしょう):日が沈んだ後も残る明るさ
- ポピュレーション:生物の個体群、特定の場所に生息する同じ種の集団
- 袋小路(ふくろこうじ):行き止まりの道、解決策のない状況の比喩
その他読み取りづらい部分
- オオカミの表現について: 筆者はオオカミを物語の中の架空の生き物として認識していましたが、実際に出会ったことで認識が変わっていきます。最初は「苦い思い出」として語られていますが、最後には「まなざしが語りかけ、教えてくれた」と変化しています。
- オオカミの迫害の歴史: アメリカの開拓史の中で、バイソン(野牛)が乱獲により減少し、食物を失ったオオカミが家畜を襲うようになったことが、オオカミが「悪者」とされるきっかけになりました。
- アラスカの行政とハンターの関係: アラスカ野生生物局は狩猟のライセンス料で予算が成り立っているため、ハンターの要望(ムースを増やすこと)に応える必要があり、オオカミを殺すという判断をしたことが読み取れます。
- 多様性の重要性: 筆者は生物の多様性が人間にとって重要であることを訴えており、それは生物だけでなく文化や考え方にも通じるものだと主張しています。
大問2『桜の木が見守るキャフェ』標野凪〈物語文〉
文章概要
- カフェを営む緋桜と、手作りバッグを制作する可奈との交流を描いた物語。「モノづくり」における人とのつながりや想いの大切さをテーマとしている。
登場人物と人物像
- 緋桜: カフェを営む女性。季節の和菓子を探すのが楽しみで、手間よりも喜びを大切にする。おもてなしの心を持っている。
- 可奈: 手作りバッグを制作する女性。効率よりも一人ひとりに合わせた細やかな対応を大切にする。熟練の職人のような目を持つ。
- 都子: 登場はしないが、緋桜に可奈のポーチをプレゼントした人物。
- 語り手の桜の木: 文中で「わたくし」と表現され、季節の移り変わりを見守りながら緋桜たちを見守っている。

場面の変化
✓ カフェでの緋桜と可奈の会話
✓ 桜の木(「わたくし」)による季節の変化についての独白
✓ 緋桜が都子からポーチをもらう場面 ★回想である点に注意❗
心情表現とその変化

- 「可奈は効率よりも大切にしたいものがあるようだ」(+可奈の仕事への姿勢に共感)
- 「季節ごとのお菓子を探すのが楽しみなんです。労力よりも、嬉しさが上回ってしまって」(+自分の価値観を素直に表現)
- 「果たしてそこまで考えて接客しているだろうか、と緋桜は不安そう」(-自分の接客に対する不安)
- 「その人だけの作品、と思って作ってはいます」(+自分の仕事に対する誇りと想い)
緋桜は自分のカフェ経営と可奈のバッグづくりに共通点を見出し、自分の価値観に自信を持つようになりますが、最後には「果たしてそこまで考えて接客しているだろうか」と不安になります。しかし、それに対して桜の木が「大丈夫、ちゃんと出来ていますよ」と見守っていることで、読者は緋桜の取り組みが正しいものであると理解できるようになっています。
比ゆ表現とその解説
★ 「熟練の職人のようだな」→可奈の真剣なまなざしを職人の目に例えている
★ 「和菓子って小さな芸術ですね」→和菓子の繊細さや美しさを芸術作品に例えている
主題
この物語の主題は、「効率や生産性よりも、人とのつながりや想いを大切にするものづくりの価値」である。緋桜も可奈も、効率より大切にしたいものがあり、その「想い」を込めることで価値が生まれることを描いている。物語全体を通して、贈り物やモノづくりには「人の想い」が込められていることの大切さが強調されている。

読み取りづらい部分の解説
- 文中に「わたくし」という一人称が登場するが、これは桜の木の視点からの語りである。物語のタイトル「桜の木が見守るキャフェ」から、この桜の木が語り手として場面を見守っていることがわかる。
- 「麦の季節は他の植物と逆だ」という部分は、通常の植物は春に芽吹くが、麦は冬に芽を出すという特性を説明している。これは登場人物たちの「周りと違う価値観を持つこと」と重なる。
見逃しがちなポイント
語り手「わたくし」について
この物語の特徴的な点は、桜の木が「わたくし」として語り手になっていることです。「わたくしは見ていますから」という最後の一文から、物語全体が桜の木の視点から語られていることがわかります。桜の木は季節の移り変わりを語りながら、カフェでの人々の交流を見守っています。
登場人物の価値観の共通点
緋桜と可奈は「効率よりも大切にしたいものがある」という共通の価値観を持っています。
- 緋桜:季節の和菓子を探す楽しさ、お客様へのおもてなし
- 可奈:一人ひとりに合わせたバッグづくり、対面での販売へのこだわり
このように二人とも、効率や簡便さよりも「想い」を大切にしています。その共通点により、二人は会話の中で深く共感し合っています。
贈り物の意味
物語の中で重要なテーマとなっているのが「贈り物の意味」です。可奈は「贈り物として選ばれる方は、自分が使うもの以上にあれこれ悩まれる」と語り、「選んで贈る、その行為が贈り物なのだ」という緋桜の気づきにつながっています。これは物語全体を通して、モノに込められた「想い」こそが価値であるというメッセージを伝えています。
特に押さえておきたいポイント
- 物語の語り手が「桜の木」であることを理解する
- 「麦の季節は他の植物と逆だ」という表現が、登場人物たちの「周りと違う価値観」を象徴していることを読み取る
- 効率や生産性よりも「人とのつながり」や「想い」を大切にすることが物語のテーマであることを理解する
- 「プレゼントは品物そのものの奥に、贈り主の想いが詰まっている」という文が物語の主題を表していることを押さえる
読解のための重要表現のチェックポイント
①「麦の季節は他の植物と逆だ」について
この表現は単なる植物の知識ではなく、主人公たちが「一般的な価値観とは違う大切にしているもの」があることを象徴しています。多くの人が効率や便利さを求める中で、緋桜と可奈は「想い」や「つながり」を大切にしているという「逆」の価値観を持っていることを暗示しています。
②「驚かれたが」について
緋桜が季節の和菓子を自分で買いに行ったことに可奈が驚いたという表現です。この「驚き」は、多くの人が効率を優先する中で、緋桜が手間をかけて和菓子を探す行動に対するものです。この反応から、緋桜の価値観が一般的ではないことが読み取れます。
③「静かではあるけれど、はっきりといい切った」について
可奈が自分の作品に対する想いを表現した場面です。「静か」でありながら「はっきり」という一見矛盾する表現から、可奈の内面に強い信念があることがわかります。この表現は可奈の職人としての誇りや芯の強さを表しています。
④「相手のことを理解した上で選んでくださっている」について
贈り物の意味について可奈が語る重要な場面です。「モノ」そのものよりも、それを選んだ人の「想い」や「理解」が大切だという物語の主題につながる表現です。
⑤「選んで贈る、その行為が贈り物なのだ」について
この表現は物語の核心を表しています。物理的な「モノ」だけでなく、そこに込められた「想い」や「行為」こそが本当の価値であるという物語のメッセージが集約されています。
⑥「わたくしは見ていますから」について
桜の木からの語りであることを明確にする表現です。「わたくし」の正体が桜の木であること、そして人々の交流を見守っている存在であることがわかります。
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