「塾のテストで国語だけが安定しない」「解説を聞くとわかるのに、次のテストではまた解けない」。国語のご相談でいちばん多いのが、この読解の悩みです。
算数なら、答案を見ればどの単元でつまずいているかがわかります。ところが国語は、点数が低いという結果は見えても、どこで読めなくなっているのかが見えません。そのため「とにかく問題集を増やす」「読書をさせる」といった、原因と関係のない対策に時間を使ってしまいがちです。
これまで2000名以上を指導してきた経験から言うと、読解が苦手な理由は大きく4つに分かれます。この記事では、4つの原因の中身、家庭で15分あればできる見分け方、原因ごとの練習メニュー、学年ごとの進め方を順にご紹介します。
読解力は「4段の積み重ね」でできている
読解力は一つの力ではありません。下から順に「文字を目で追う力」「言葉の意味がわかる力」「文と文のつながりをつかむ力」「書かれている世界を自分の経験と結びつける力」が積み重なってできています。下の段が欠けていると、上の段はうまく働きません。まずは図解動画で全体像をつかんでください。
大切なのは、いちばん下の欠けている段から手をつけることです。文字を追うのに精一杯の子に「筆者の主張を考えなさい」と言っても、考える余裕がありません。4つの原因を、下の段から順に見ていきます。
原因1 文字を目で追う力(物理的読解力)が弱い
「物理的読解力」は私が使っている造語で、文字を正確に、ある程度の速さで目で追う力のことです。黙読している姿を見ても、この力があるかどうかはわかりません。わかるのは音読をしてもらったときです。
つっかえる、行を飛ばすといったわかりやすいサインのほかに、見落とされやすいサインがあります。「〜していた」を「〜してた」と読む、「が」を「は」に読み替える、文末を勝手に変えてしまう。これは一字ずつ見ずに、なんとなくの予想で読んでいる証拠です。本人は読めているつもりなので、設問で細部を問われたときに初めて失点します。
原因2 語彙力が足りない
知らない言葉が多いと、文章の理解は当然下がります。やっかいなのは、知らない言葉を「知っているつもり」で読んでいるケースです。
たとえば「父はおもむろに立ち上がった」。「おもむろに」を「急に」と思いこんでいる子はとても多く、そう読むと、ゆっくりと覚悟を決めて立ち上がる場面が、あわてて立ち上がる場面に変わってしまいます。一語の取りちがえで、場面の空気が正反対になるのです。子どもどうしの会話は限られた言葉で通じてしまうので、ふだんの会話から語彙の不足に気づくのは難しいものです。
原因3 文と文のつながり・全体をとらえる力が弱い
すらすら読めて、言葉も知っている。それなのに設問に答えられない子は、一文ずつの意味をバラバラに受け取っていて、文どうしの関係を考えていないことがほとんどです。次の短い文章で考えてみます。
「人は失敗から学ぶ。しかし、失敗を恐れる子どもは、そもそも挑戦しない。だからこそ、大人は失敗を責めない環境をつくる必要がある。」
筆者がいちばん言いたいのは三文目です。「しかし」で話の向きが変わり、「だからこそ」で結論が出ています。ところが、つながりを見ずに読む子は、最初に目に入った「人は失敗から学ぶ」を答えてしまいます。指示語や接続語の問題、本文からの抜き出し問題でよく間違える子は、この段でつまずいている可能性が高いです。
原因4 自分の経験や考えが、書かれていることとかみ合わない
ここまでの力がそろっていても、内容が腑に落ちないことがあります。登場人物の言動や筆者の考えが、お子さん自身の経験とかみ合わないケースです。
たとえば「A君に好意を寄せるB子が、それを悟られないように、ついA君に冷たい態度をとってしまう」場面。物語ではこうした気持ちは直接書かれず、言動から読み取るしかありません。ところが、B子はA君を嫌っているのだと受け取ってしまう子は少なくありません。
最近の入試では、この段の力がますます問われています。2026年度の出典を約90校分集計した記事でまとめたとおり、「嘘をつくとはどういうことか」を哲学の視点から問う新書が10校で出題されました。物語では、上位校を中心に大人が主人公の仕事小説も出題されますし、家族の世話を担う子どもを描いた新刊も増えています。小学生が直接は経験しにくい世界を、文章から想像できるかどうかが試されているのです。
家庭で15分でできる「原因の見分け方」
用意するのは、お子さんがまだ読んでいない文章を一つだけです。塾のテキストの先の単元や、使っていない問題集の文章で、800字前後のものが扱いやすいでしょう。次の順番で確かめ、最初に「当てはまる」となったところが、最優先で取り組む原因です。
模試や塾のテストの答案からも、原因の見当はつきます。答案が手元にあれば、次の表と照らし合わせてみてください。
| 答案の様子 | 疑われる原因 |
|---|---|
| 二つめの文章の設問ほど空欄や誤答が増える | 原因1(読むのに時間がかかっている) |
| 語句の意味の問題を落とす/選択肢の言葉がわからずに迷っている | 原因2(語彙) |
| 指示語・接続語・抜き出しの問題で失点が多い | 原因3(つながり・全体) |
| 物語の心情問題や、特定のテーマの説明文だけ極端に点が低い | 原因4(経験とのずれ) |
原因別 読解力の強化法
強化法1 初見の文章の「音読」で、読むスピードと正確さを上げる
学校の音読の宿題は、同じ教科書の文章を何度も読むものがほとんどです。受験国語の力をつけるには、初見の文章を音読することが大切です。塾のテキストや問題集の文章は、初見で分量もちょうどよいので最適です。
やり方は簡単です。一日一題、国語の文章題を解く前に音読をさせ、保護者の方は次の三つだけを聞いてください。
- 行や言葉を飛ばしていないか
- 語尾や助詞を勝手に読み替えていないか
- 意味のまとまりで区切って読めているか
気づいたところは、その場で一言直すだけで十分です。かかった時間をテキストの余白にメモしておくと、2〜3週間後に速くなったことがお子さん自身にもわかり、続ける励みになります。
強化法2 「マイ辞書」と語彙の問題集で、語彙力を上げる
お子さん専用の紙の辞書を一冊用意してください。きょうだいで共用していると、調べた跡が残らず、復習になりません。引いた言葉には線を引いたり付箋を貼ったりして、調べた記録を残していきます。付箋が増えていくこと自体が、次に辞書を引くやる気になります。
小学館の小学生向け国語辞典の最新版(第十二版・2023年)です。オールカラーで、4年生から入試直前まで長く使えます。三省堂の『例解小学国語辞典』第八版(2023年)も、オンライン辞書つきで使いやすい一冊です。どちらか一冊を、お子さん専用にしてあげてください。
辞書で拾う言葉に加えて、入試に必要な言葉をまとめて押さえるには、語彙の問題集が効率的です。一日1〜2ページを決まった時間に進めるのが、長続きのコツです。
語彙の問題集は、井上秀和先生の『中学入試 語彙力トレーニング1400プラス』(文英堂、2025年)がおすすめです。「覚える→あてはめる→使いこなす」の3ステップで、意味を覚えるだけでなく、文脈に合った使い方まで練習できます。まず基礎編から始め、難関校を目指すなら発展編へ進みましょう。
語彙の増やし方は中学受験国語の語彙力を高める方法で、物語文で特に大切な心情語は「気持ちを表す言葉」の習得で詳しくご紹介しています。
強化法3 「読解の型」で、文と文のつながりと全体の構成をつかむ
文と文のつながりがつかめない子の多くは、読み方の「型」を持っていません。型とは、どこに注目し、どんな印をつけながら読むかという決まりごとです。解き終わったテキストの本文に線がまったく引かれていなければ、型がないサインです。
たとえば次のような印を決めておくだけで、文と文の関係が目に見えるようになります。
- 指示語(これ・その・こうした)に印をつけ、指している内容に線を引いて矢印で結ぶ
- 逆接の接続語(しかし・ところが)を四角で囲む。そのあとに筆者の言いたいことが来やすい
- 「つまり」「このように」「だからこそ」のあとの文に線を引く。まとめの文になっていることが多い
- 物語文では、人物の気持ちが表れた言葉・行動・情景に線を引く
家庭で見てあげるときは、答えの正誤より先に本文の線を見てください。正解した問題でも、根拠になる部分に線がなければ「たまたま当たった」可能性があります。反対に、間違えた問題でも根拠の近くに線があれば、あと一歩です。「この答えは本文のどこに書いてあった?」と聞いて、指で示せるかどうかを確かめるだけで、型は少しずつ身についていきます。
保護者の方が「読解の型」を知るには、井上秀和先生の『中学受験国語 文章読解の鉄則』(増補改訂版)が参考になります。説明文・物語文などの読み方と解き方を「鉄則」として整理した一冊で、お子さんに線引きのルールを教えるときの手引きになります。
型は、指導者の力量がもっとも問われる部分でもあります。毎回その文章の内容を解説して答え合わせをするだけで、ほかの文章に使える読み方を教えない授業も少なくありません。塾の解説を聞いてもテストで解けない状態が続く場合は、型を教わっているかどうかを確かめてみてください。
強化法4 「間接的な経験」と親子の会話で、経験値を上げる
入試に出るテーマは、説明文なら環境、科学技術、言葉、哲学、社会のしくみ、物語なら家族、友人関係、部活動、戦争や昔の暮らし、大人の仕事と、とても幅広く、すべてを直接体験させることはできません。そこで大切なのが、読書や映像による「間接的な経験」です。
ただ読ませる、観せるだけでは、経験は十分に積み上がりません。いちばん効果があるのは、読んだ本や観た番組について親子で少し話すことです。
話すときは、次のような問いかけが効果的です。正解を求めず、お子さんの答えに「お母さん(お父さん)はこう思ったよ」と別の見方を返すだけで十分です。
- 「この人は、本当はどうしたかったんだと思う?」
- 「言っていることと、思っていることが違う場面はあった?」
- 「自分だったら同じことをする? しない?」
- 「この番組(本)の人がいちばん伝えたかったことは何だと思う?」
どんな本を読めばよいか迷ったら、入試によく出ている本から選ぶのが近道です。2026年度の入試出典ランキングと、2027年度入試に向けた新刊の読書ガイドで、テーマや読みどころとあわせて紹介しています。いきなり一冊読み通すのが難しければ、短編集を一日一編から始めてみてください。
学年別の進め方
4つの原因のうち、どこに力を入れるかは学年によって変わります。目安は次のとおりです。
| 学年 | 重点 | 家庭での取り組み |
|---|---|---|
| 4年生 | 原因1・2(音読と語彙) | 初見の文章の音読を毎日。マイ辞書を用意し、引いた言葉に付箋を貼る習慣をつける |
| 5年生 | 原因3(読解の型) | 解いたあとに本文の線を確認。「どこに書いてあった?」と根拠を指で示させる |
| 6年生 | 原因4と、弱点の総点検 | 志望校の出題テーマに近い本や新書を読み、親子で話す。模試の答案で失点の傾向を確かめ、欠けている段に戻る |
6年生でも、原因1や2でつまずいているなら、そこに戻るのがいちばんの近道です。学年より、お子さんの欠けている段を優先してください。
よくある質問
問題集をたくさん解けば、読解力は上がりますか?
原因に合っていれば上がりますが、合っていなければほとんど変わりません。文字を追う力や語彙が足りない子が長文の問題集ばかり解いても、読めないまま答え合わせを繰り返すだけになります。まず見分け方で原因を確かめてから、量を増やしてください。
塾の解説を聞くとわかるのに、テストでは解けません。なぜですか?
解説で「その文章の答え」は理解できても、「ほかの文章でも使える読み方」が身についていないからです。解説を聞いたあと、根拠になった部分に自分で線を引き直し、「なぜそこが根拠になるのか」を一言で言えるか確かめてみてください。言えなければ、型としてはまだ身についていません。
読書をしない子は、読解力が伸びませんか?
読書は有効ですが、読書量だけで受験国語の点数が決まるわけではありません。読書好きでも、型がなくて設問で点が取れない子はいます。反対に、読書が苦手でも、音読と語彙と型を積み上げれば読解問題は解けるようになります。読書が苦手なら、親子で映像を観て話すことから始めてください。
記述問題が書けないのは、読解力のせいですか?
読めていないのか、読めているのに書けないのかで、対策が変わります。記述の答えを口で説明させてみてください。口では言えるなら、読解より「まとめて書く」練習が必要です。口でも言えないなら、まずこの記事の4つの原因に戻ります。
まとめ
読解力がなかなか上がらないのは、原因がお子さんによってばらばらなのに、対策が「問題集を増やす」「本を読ませる」に偏りがちだからです。裏を返せば、欠けている段を見つけて、そこに合った練習をすれば、読解力は必ず上がります。
まずは今日、初見の文章を一つ、お子さんに音読してもらうところから始めてみてください。15分で、取り組むべき場所が見えてきます。
試験時間内に読み切れないお悩みは、中学受験国語の時間が足りない・時間切れ対策で原因と時間配分のコツをまとめています。
