2026年2月3日(火)に実施された浅野中学校の国語(50分)を、大問一から大問三まで全問解説します。大問二の物語文は小池水音さんの「二度目の海」(『あなたの名』新潮社 所収)、大問三の説明文は根ヶ山光一さんの『抱え込まない子育て 発達行動学から見る親子の葛藤』(岩波新書)です。どちらも大人向けの本格的な文章で、物語文では「言葉にされない気持ち」を、説明文では「ヒトの子育てがなぜ難しいのか」という筋道を、正確に追えるかが問われました。この記事では、登場人物の関係や筆者の論の流れを情景アニメ入りの図解動画で整理してから、各設問を根拠つきで解いていきます。
出題構成と全体の講評
- 大問一は漢字の書き取り8問と読み2問、大問二は物語文(小池水音「二度目の海」)、大問三は説明文(根ヶ山光一『抱え込まない子育て』)という構成です。
- 記述は三問あります。大問二の問四(十字以上二十字以内)、大問二の問六(七十字以上八十字以内)、大問三の問三(六十字以上七十字以内)です。字数の下限があるので、要素を落とすとすぐに字数が足りなくなります。
- 大問二の問七は「適切でないもの」を選ぶ問題です。大問三の問八は、本文に書かれていない観察結果をグラフで予想させる、浅野らしい思考力の問題です。
- 物語文は、映画監督の祖父と孫の「僕」、亡くなった俳優の姉・光莉さんが登場する大人の物語です。人物の年齢も立場も受験生から遠く、場面の空気を読み取る力が必要でした。
大問二は「光莉さんは、弟の本当の思いを、なぜ祖父ではなく『僕』だけに話したのか」という問いが全体を貫いています。その答えが、翌日の書斎の場面で祖父の口から明らかになり、最後の「二冊のノート」につながります。大問三は「保護を強める哺乳類」と「自由度を高める霊長類」の両方の性質を最も強くもつヒトが、その矛盾をどう乗り越えたか(離れつつ守る)という一本の筋で読めます。
大問一 漢字の書き取りと読み
書き取りは、熟語の意味をつかんでいれば書ける標準的なものが中心です。ただし「付和雷同」「表裏一体」のような四字熟語や、「則る」のような送りがなをともなう訓読みは、意味と形をセットで覚えていないと手が止まります。
- ①メイジ(明示) はっきり示すこと。「自分の意見を明示しない」
- ②キョウリ(郷里) ふるさと。「郷里に帰り」
- ③ショカン(所感) 心に感じたこと。「所管」(管理すること)と書き分けます
- ④ツイキュウ(追及) 責任を問いつめること。「追求」(目的を求める)、「追究」(真理をきわめる)との書き分けが頻出です
- ⑤ワコウド(若人) 若い人。熟字訓です
- ⑥フワ(付和)雷同 自分の考えがなく他人の意見にすぐ同調すること。「附和」でも正解です
- ⑦ヒョウリ(表裏)一体 二つのものが切りはなせない関係にあること
- ⑧ノットる(則る) 手本としてしたがうこと。「法」ではなく「則」です
- ⑨奏功(そうこう) ねらいどおりの成果をあげること
- ⑩時雨(しぐれ) 秋の終わりから冬の初めに降ったりやんだりする雨。熟字訓です。「蝉時雨」は、たくさんの蝉の声を時雨の音にたとえた言葉です
大問二 物語文 小池水音「二度目の海」
あらすじ 「ちがう目があの子に、注がれてほしい」
映画監督の祖父(八十四歳)は、五十五年前に撮った役者「満さん」主演の映画の続編を撮ろうとしていて、孫の「僕」がそれを手伝っています。満さんの思い出の地である伊豆で、満さんの姉・光莉さんにインタビューをしますが、祖父が満さんの人柄について解釈を投げかけても、光莉さんは「そうだったかもしれません」と曖昧な返事しかしませんでした。
その夜、光莉さんは「僕」にだけ打ち明けます。「弟は人生の多くを恨んでいました。たとえば、わたくしたち家族を。それに自身のたどってきた道行きを」。満さんは若い時期から大病に苦しみ、役者としてこれからというときに再び病を得て、命を落としたのでした。光莉さんは、満さんを思い出そうとすると苦痛しか見えないこと、楽しい思い出さえ「あの子の苦しみを想像するための、一本の薪のようになってしまう」ことを語り、「ちがう目があの子に、注がれてほしい」とつぶやいて、満さんの残したノートを「僕」に差し出します。
翌朝、光莉さんは帰っていきます。伊豆から帰った日の夜、書斎で祖父は「光莉さんは、思い出せないわけじゃないんだ」と言い、光莉さんの沈黙の意味をすでにわかっていたことを明かします。さらにその翌朝、「僕」は古紙回収に出されようとしていた雑誌の束の中から、祖父のノートを見つけます。映画の構想を記すはずのそのノートは、〈五十五年前に届ける〉というひと言のほかは、ほとんど白紙でした。「僕」は、満さんのノートと祖父のノートの二冊を預かることに決め、「祖父には、二冊がともに必要なのだ」と考えます。
続編の映画づくりを手伝う
五十五年前に満さん主演の映画を撮った
弟を「あの子」と呼ぶ。思い出すと苦痛しか見えない
大病ののち役者の道を選び、再び病で亡くなる
場面は「その夜の告白」「翌朝の別れ」「書斎の祖父」「二冊のノート」と進みます。「僕」の気持ちは、光莉さんの話を聞いて沈み、翌朝の明るい別れでいったん持ち直したように見えて、書斎で祖父の本心を知ってもう一度深く沈みます。そのうえで最後に、祖父の未来へ向けた願いに変わります。設問はこの流れの上に並んでいます。
問一 語句の意味(A 機微・B ままならない・C 一瞥)
- A「機微」は、表面からはわかりにくい、心の細かな動きのことです。「人間の機微」「人情の機微」のように使います。ウ「容易には察せられない細やかな心理」が正解です。
- B「ままならない」は「思いどおりにならない」という意味です。本文の「ままならない過去をむしろ認めるためにこそ、役者という道を選び取ったひと」は、病気で思いどおりにならなかった過去を受け入れるために役者になった、ということです。エが正解です。
- C「一瞥」は、ちらっと見ることです。「一瞥をくれる」のように使います。イが正解です。
問二 傍線部①「答えの半分はわかっていた」とはどういうことか
「僕」は光莉さんに「そのことを祖父には伝えず、いま話してくださったのはどうしてですか」と聞きました。その答えの「半分」として「僕」がわかっていたのは、直後に書かれています。「光莉さんの言う道行きには当然、祖父とともに作った映画だって含まれているはずだった」。満さんは「自身のたどってきた道行き」を恨んでいた。その中には祖父と作った映画も入る。だから映画を撮った祖父本人には言えなかった、という理由です。
では残りの半分は何か。光莉さん自身も「それはわたくし自身にも、説明のつかないことです」と言っているように、「僕」にもわかりません。わかっている理由(祖父への気づかい)と、まだわからない理由(ほかにもあるかもしれない)の二つを押さえたイが正解です。
ウは「彼が祖父を恨んでいた事実」が誤りです。満さんが恨んでいたのは「人生」や「道行き」で、祖父個人ではありません。アの「映画を作るべきだという光莉さんの意志」、エの「祖父への不信感」は本文にありません。
問三 傍線部②「空も、海も、繁る木々も、すべてをひとつの色に変えてその瞳に浮かべていた」からうかがえること
夜の窓の向こうでは、本来ちがう色をもつ空と海と木々が、闇の中で見分けのつかない一色になっています。それが光莉さんの瞳に映っている。この情景は、直前の光莉さんの言葉と重ねて読みます。
- 「あの子のことを思い出そうとするとき、わたくしにはもう、あの子の苦痛しかみえません」
- 「ふいにあの子の笑顔や、何気なく過ごした時間がよみがえることはあります。でも、ほんの短いひとときです」
- 「結局はそれらの思い出も、あの子の苦しみを想像するための、一本の薪のようになってしまう」
- 「わたくしにはもう、そのような目しかないんです」
笑顔も楽しい時間も、すべて「弟の苦しみ」というひとつの見方に塗りつぶされてしまう。光莉さんは、自分ではどうしても弟の人生をそのひとつの観点からしか見られないのです。これを説明したアが正解です。
イの「弟の楽しそうな笑顔は虚像に過ぎない」、ウの「弟のことしか考えられなくなり、弟に執着している」、エの「一人で向き合おうと決意している」は、どれも本文から言えません。ポイントは「ひとつの色」を「ひとつの見方」と読みかえられるかです。光莉さんが「ちがう目があの子に、注がれてほしい」と願うのも、自分にはもうこの「ひとつの色」の目しかないからです。
問四 傍線部③「むなしい安堵」の説明(十字以上二十字以内)
空欄のあとは「という無意味な営みを終えたこと」です。傍線部をふくむ文を正確に読みます。
- 「内心で苦痛をもたらすものの輪郭を、指で一周たどることができた。ほとんど無意味なそんな営みを、それでも終えたことへの③むなしい安堵だった」
「そんな営み」が指すのは直前の「内心で苦痛をもたらすものの輪郭を、指で一周たどる」ことです。弟の苦しみを語ったところで何も変わらない(無意味)。けれども、心の中の痛みの形を一度たどり終えることはできた。その安心が「むなしい安堵」です。空欄には「苦痛をもたらすもの」を「確かめた・たどった」という内容を入れます。
「内心で苦痛をもたらすものを再確認する」なども可。
問五 傍線部④「祖父がなにもわかっていないほうがよかった」のときの「僕」の気持ち
書斎で祖父は「光莉さんは、思い出せないわけじゃないんだ」と言います。それは昨晩、光莉さんが「僕」だけに伝えたことでした。遠い過去を思い出すことは「引き出しを開くようにはいかなかった」、閉じた唇を開き、粘膜を掻きわけ、狭く深い奥底へと手指を押しこむような「激しい苦痛を伴う記憶」かもしれない。祖父はそのことを「わかる」と言います。
傍線部の直後に、「僕」の気持ちがはっきり書かれています。
- 「光莉さんが口を噤んでいるなどとは露もおもわずにいてくれたら、そしてただ時間の流れのみを恨んでいてくれたらよかった」
- 「祖父の目のまえに横たわるのは重く痛ましい沈黙ではなく、うつろな忘却であるとおもえていたほうが、ずっとよかった」
つまり、光莉さんが黙っていたのは「忘れていた」からではなく「思い出すことが苦痛だった」から。祖父はそれに気づいていて、自分のインタビューが光莉さんの苦しい記憶を掘り起こしていたと知り、苦しんでいた。「僕」はそんな祖父に胸を痛めています。これを説明したエが正解です。祖父が目頭を揉み、瞳に「冷たい光」が映っていた描写も、祖父の苦しみを表しています。
アは「祖父が何も知らなければ自分が光莉さんの願いを叶えられたのに」と、「僕」が自分のことを残念がっている点が誤りです。「僕」が心を痛めているのは祖父の苦しみです。イの「自己中心的な人物に変わり失望」、ウの「傲慢な一面」「祖父を嫌いになれない」は、祖父を否定的に見ている点で誤りです。
問六 傍線部⑤「しかし祖父には、二冊がともに必要なのだと僕はおもう」のときの「僕」の気持ち(七十字以上八十字以内)
まず「二冊」が何かを確認します。
- 満さんのノート 光莉さんから託された、遠い過去に書かれた古いノート
- 祖父のノート 映画の構想を記すはずだった、ほとんど白紙のノート。雑誌の束といっしょに捨てられようとしていた。冒頭には〈五十五年前に届ける〉のひと言だけ
本文では「痛ましい過去にじっと身を沈めるか、あるいは、ただまっさらな未来を思い描くか。どちらか一方だけを選べたなら、物事はもっと容易くなるのかもしれなかった」と、二つの道が対比されています。過去だけを見れば、光莉さんと同じ「苦しみ」という一つの色の見方に沈んでしまう。未来だけを見れば、満さんの本当の思いから目をそらすことになる。そして結論が、最後の一文です。
- 「ちがう目があの子には注がれてほしい。光莉さんのその望みは、過去をつなぎとめながら、それでもあらたな視線を未来に注ぐことでしか、叶わないことだった」
①満さんのノート=満さんの本当の思い(過去)をつなぎとめる
②祖父のノート=新しい構想(未来)へ視線を注ぐ
③その両方によって、祖父が満さんに「ちがう目」を注いでくれることを願う
①②だけで終わると「気持ち」が抜けます。③の「光莉さんの望み」を祖父に叶えてほしいという願いまで書き切りましょう。
問七 内容と表現の特徴として適切でないもの
一つずつ本文と照らします。
- ア 「粘膜を掻きわけ、狭く深い奥底へと手指を押しこむ」は、記憶を掘り起こす痛みを体の感覚にたとえた比喩です。適切です。
- イ 光莉さんは途中から、満さんを「あの子」と呼ぶようになります。「僕」も「彼女がいつからか満さんのことをあの子と呼んでいることに」気づきます。弟の記憶に深く入りこんでいることを示す変化で、適切です。
- ウ 別れ際の「本当に?」「ええ、本当に」は、力になれなかったと気にする光莉さんを、祖父が快活に励ましているやりとりです。二人が「映画の完成に本心から自信を持ち互いを励まし合っている」わけではありません。光莉さんは申し訳なさそうで、祖父は光莉さんの苦しみをわかったうえで明るくふるまっています。これが適切でないものです。
- エ 伊豆高原からの帰りの出来事が回想されることで、光莉さんと祖父の両方を思う「僕」の気持ちが伝わります。適切です。
大問三 説明文 根ヶ山光一『抱え込まない子育て』
要旨 ヒトは「離れつつ守る」子育てを発達させた
哺乳類は子どもの保護を強める方向に進化し、霊長類はそれを手指で行うようになりました。同時に霊長類は、個としての行動の自由度を高める方向にも進化しました。ヒトは「霊長類の中で最も子どもを保護する傾向が強く、かつ最も個の自由度が高い種」です。子どもを守ることは母親が自由にふるまうことを難しくするので、ここに矛盾が生まれます。筆者は「そのことが子育ての困難の根本的な原因であり、子育てに悩むということは、ヒトならではの進化的宿命なのである」と述べます。
ヒトの赤ちゃんは生理的早産で生まれ、しばらく寝たきりです。母親も常に抱いて運ぶわけではなく、母子はかなりの時間はなれています。そのため「家庭」という安全な母子分離空間が必要になりました。筆者は、ヒトの母子は「本質的に出生の直後から分離的」であり、これはアタッチメント(愛着)理論にはない視点だと主張します。
そして、はなれていても子どもを守るしくみとして、母親以外の人が子育てを担う「アロマザリング」(重層的な協力的育児)と、スリングやベビーカー、おもちゃなどの「モノ」が発達しました。新生児自身も、泣いて親を呼び、表情をまねるなど、生まれたときから「能動的で主張的」に周囲へ働きかけています。
問一 「巣」にあたるもの(二字の抜き出し)
二次的就巣性とは、本来は生まれてすぐ動ける「離巣性」の動物なのに、巣にとどまる「就巣性」の特徴をもつことです。ヒトの赤ちゃんは寝たきりで、母親も常に抱いてはいないので、赤ちゃんが安全にいられる場所が必要です。本文の「そのために家庭という安全な母子分離空間が必要となった」から、「巣」にあたるのは「家庭」です。
問二 従来の考え方(空欄補充)
▼から▲の部分で、従来の考え方として紹介されているのは「アタッチメント(愛着)理論」です。「養育者との身体接触を通じて安心が得られ、それをベースに子どもは母親から離れて外の世界を探索」するという考え方で、母親と子どもがぴったりくっついていることを重視します。筆者はこれに対して「実はヒトの母子は、本質的に出生の直後から分離的なのである」と反論しています。筆者の「分離」と反対の考え方なので、「子どもにとって、母親に対する密着が重要である」となるウが正解です。
問三 傍線部②「ヒトの子育てに抜き差しならない困難をもたらしている」とはどのような困難か(六十字以上七十字以内)
「哺乳類」「霊長類」という言葉を使う条件があります。根拠は冒頭の二段落です。
- 「哺乳類は子どもの保護を強める方向に母親の身体と行動を進化させ」
- 「霊長類には、個体の自律性、すなわち個としての行動の自由度を高めるという方向の進化も指摘できた」
- 「ヒトは霊長類の中で最も子どもを保護する傾向が強く、かつ最も個の自由度が高い種となる」
- 「子どもの保護は、自身の他の行動を犠牲にして子どもに積極的に関わることを必要とし、それは母親が個体として自由にふるまうことを難しくする」
①哺乳類として、子どもの保護を最も強めた
②霊長類として、個の自由度も最も高めた
③その二つが相反するので、母親は板ばさみになる(矛盾)
注4の「ジレンマ=相反する二つの事柄の間で板ばさみとなり、どちらとも決めかねる状態」も、③の言い方のヒントになります。
問四 傍線部③「本質的に能動的で主張的である」とはどういうことか
「能動的で主張的」の中身は、前の段落に具体的に書かれています。
- 「目や耳は環境に対してしっかりと開かれて情報を取り込める」「顔という刺激に対する生まれつきの好み」「高い視認能力」「胎内で聞いていた音刺激を出生直後から認識できる」→優れた知覚能力
- 「泣いて親を呼び、親から保護を引き出す能力は高い」「顔つきや仕草のかわいらしさは、保護の解発刺激として、それへの敏感な反応を親に引き起こさせる」→保護を引き出す行動
この二つを合わせたアが正解です。イの「親に頼りきりにならず」は、保護を「引き出す」という本文と逆です。ウの「周囲に積極的に関わろうとする」だけでは保護を求める点が抜けています。エの「親とは異なる個性」「自身の意志で活動」は本文にありません。
問五 傍線部④「女性の生き方を大きく変容させた」とはどう変わったか
直後に、柏木惠子さんの分析が紹介されています。「女性の『個人化』の問題は、繁殖の重視から『個』として生きるのを優先することへの変化」であり、それは「子どもの存在を『さずかるもの』から『つくるもの』へと変化させる」。自分の生き方(自由)とのかねあいで、子どもを持つかどうかを「選ぶ」ようになった、ということです。イが正解です。
ア(別々に住んで一人で子育て)、ウ(男女平等と労働者不足で働くように)、エ(時間を持て余す)は、どれも本文の「さずかるもの」から「つくるもの」への変化を説明していません。
問六 傍線部⑤「まさにヒトは重層的な協力的育児の発達した種である」とはどういうことか
「重層的」とは、何層にも重なっていることです。直前に、父親、祖父母やきょうだい、家族の枠を超えた血縁個体、近隣集団、保育士・教師・医師・看護師などの専門家と、何層もの担い手が挙げられています。さらに直後で、アロマザー同士がつながるように「子どもが能動的に導いているとみることもできる」とあります。
「母親以外にも様々な育児の担い手がおり、子ども自身もそれらに働きかけることで保護がなされる」と、担い手の多さと子どもの能動性の両方を入れたイが正解です。アは子ども自身の「学習能力」による成長の話、ウは「世代から世代へ」の話、エは「他者を思いやる気持ちを学ぶ」の話で、どれも本文の要点とずれています。
問七 傍線部⑥「母親の遠心性」とはどういうことか
「遠心」は、中心から遠ざかろうとする力のことです。本文では「アロマザーを信頼し、安心して子どもを手渡す母親の遠心性」とあり、子どもの育児から少し離れようとする母親の性質を指しています。エが正解です。
アの「やりたいことを我慢」は逆向きです。イの「疑いを持たない」は「信頼」の一部だけで、「遠心」の意味が入っていません。ウの「今とは別の場所に行きたい」は、育児から離れることではなく場所の話になっています。言葉の意味(遠心=中心から離れる)から考えると、迷わずに選べます。
問八 モノ遊びによる母子の分離の時間(グラフの予想)
本文に観察結果は書かれていないので、筆者の考えから予想します。根拠は次の部分です。
- 「ヒトの子どもは二次的就巣性ゆえにしがみつきは不得手だが、モノへの執着はとても強い」
- 「さまざまな道具を作り出し、それを母子の身体間に介在させることによって子どもを守るとともに、母子の隔たりと自由度の増大を実現した」
生まれてすぐ(0〜1カ月)は、まだ自分でモノを持って遊べないので、モノ遊びによる分離はほとんどありません。月齢が上がって手でモノを扱えるようになると、子どもはモノに夢中になり、母子がはなれている時間の割合は増えていきます。したがって、低いところから右上がりに増えていくアが正解です。
イ(右下がり)は、成長するほどモノ遊びで離れなくなるという逆の予想です。ウ(ずっと低い)はモノ遊びで分離が生まれないことになり、エ(ずっと100%近い)は生まれた直後からモノ遊びで常に離れていることになって、どちらも本文と合いません。グラフ問題は、まず「0カ月のとき」と「成長したとき」の二点で考えると整理できます。
解答一覧
- 大問一 ①明示 ②郷里 ③所感 ④追及 ⑤若人 ⑥付(附)和 ⑦表裏 ⑧則(る) ⑨そうこう ⑩しぐれ
- 大問二 問一 A ウ B エ C イ
- 大問二 問二 イ
- 大問二 問三 ア
- 大問二 問四 (解答例)内心で苦痛をもたらすものの輪郭をたどる
- 大問二 問五 エ
- 大問二 問六 (解答例)満さんの本当の思いが残る古いノートで過去をつなぎとめつつ、白紙のノートに新しい構想を描くことで、祖父が満さんにこれまでとはちがう目を注いでほしいと願う気持ち。
- 大問二 問七 ウ
- 大問三 問一 家庭
- 大問三 問二 ウ
- 大問三 問三 (解答例)ヒトは哺乳類として子の保護を最も強め、霊長類として個の自由度も最も高めたので、母親は子の保護と自分の自由という相反する要求の板ばさみになる。
- 大問三 問四 ア
- 大問三 問五 イ
- 大問三 問六 イ
- 大問三 問七 エ
- 大問三 問八 ア
この回から持ち帰るべき3つのこと
- 情景描写は、直前のセリフと重ねて読む 大問二の問三の「ひとつの色」は、それだけ読むと夜景の描写です。直前の「わたくしにはもう、そのような目しかないんです」と重ねると、「どんな思い出も苦しみ一色になってしまう見方」の比喩だとわかります。情景が出てきたら、その直前直後の人物の言葉を探しましょう。
- 「なぜ〜ほうがよかったのか」は、本当は何が起きていたかを確かめる 問五の「祖父がなにもわかっていないほうがよかった」は、祖父が実は「わかっていた」からこそ出た言葉です。「〜ならよかった」という仮定の裏には、つらい現実があります。現実のほう(祖父は光莉さんの苦しみに気づいて苦しんでいた)を答えの中心にします。
- 説明文の記述は、指定語句を「対立する二つ」として使う 大問三の問三は「哺乳類」と「霊長類」の二語がそのまま「保護」と「自由」の対立を表しています。指定語句が出たら、それぞれが本文のどの性質と結びつくかを書き出してから一文にまとめると、六十字以上の下限も自然に満たせます。