小学6年生の秋は、志望校の過去問が本格的に始まる時期です。算数や社会は少しずつ点が上がってきたのに、国語だけは何年分解いても目標点に届かない。点数が上がったり下がったりして、何が悪いのかがわからない。この時期になると、毎年このようなご相談をいただきます。
国語の過去問で点が取れない理由は、一つではありません。本文を読み違えていることもあれば、選択肢を二つまで絞ってから外していることも、記述の方向は合っているのに大事な要素が抜けていることもあります。理由がちがえば、直し方もちがいます。点数だけを見て「もっとたくさん解こう」と年数を増やしても、同じ失点をくり返すだけになりがちです。
この記事では、まず過去問の基本の進め方(いつから・何年分・本番と同じ形で解くこと)を確認します。そのうえで、国語の失点を「本文を読み違えた」「選択肢で迷った」「記述の要素が足りない」の三つに分け、どれから直すか、そして次の1回に何を持ち越すかを、具体的にご紹介します。
まず確認したい、過去問の基本の進め方
国語の話に入る前に、どの教科にも共通する過去問の進め方を確認しておきます。ここが崩れていると、失点を分析しても正しい結論が出ません。
いつから・何年分解くか
過去問に取り組み始める時期は、塾や担当の先生によって判断が分かれますが、夏休みから9月ごろに始めるご家庭が多いようです。2学期以降は、週に1回、1校1年分を目安に進めます。年数の目安は次のとおりです。
| 受験校 | 年数の目安 | 進め方 |
|---|---|---|
| 第一志望 | 7〜10年(回)分 | 新しい年度から順に解き、入試直前に解く分を1〜2年分残しておく |
| 第二志望 | 5年分程度 | 出題形式と時間配分に慣れることを優先する |
| そのほかの受験校 | 少なくとも1〜2年分 | 形式と時間配分を、本番の前に一度は体験しておく |
ただし、年数はあくまで目安です。国語は、1回解くごとの見直しに時間がかかる教科です。見直しが追いつかないまま年数だけを増やすのは逆効果になります。この点は、後半の「次の1回に何を持ち越すか」でくわしくお話しします。
本番と同じ形で解く
- 解答用紙は実物大にコピーする(記述らんの大きさで、書ける量の感覚が変わります)
- 問題もできるだけコピーし、本文に線や印を書きこめるようにする
- 時間は正確に計り、時間が来たら途中でも鉛筆を置く
- できれば、受験科目を本番と同じ順番で通して解く
時間をのばして最後まで解かせると、本番で取れる点がわからなくなります。時間内に解けたところまでで採点し、時間のあとに解いた分は別に記録しておきましょう。
点数と一緒に「目標点との差」を記録する
過去問の点数は、教科ごとの合格者平均点や受験者平均点を公表している学校なら、その点と比べます。教科ごとの点を公表していない学校では、合格最低点から国語の目標点を決めておきましょう。学校名・年度・点数・目標点との差を一覧にした管理表をつくっておくと、どの学校を優先するかを調整しやすくなります。
国語は「何点取れたか」より「どこで落としたか」
採点が終わったら、点数を記録して終わりにせず、×と△がついた問題を1問ずつ見ていきます。国語の読解の失点の多くは、次の三つのどれかに分けられます。
| 失点の種類 | 答案や問題用紙に出るサイン | 本人に聞くと |
|---|---|---|
| 本文を読み違えた | 記号でも記述でも、答えの手がかりにした場所がずれている。人物の気持ちや筆者の考えを、逆にとっている | 「手がかりは本文のどこ?」と聞くと、正解とはちがう場所を指す |
| 選択肢で迷った | 二つまで絞れたのに外している。答えを消して書き直した跡がある | 「アとウで迷った」と、迷った選択肢をすぐに言える |
| 記述の要素が足りない | 部分点だけ取れている。方向は合っているが、解答例にある要素の一部が書かれていない | 「言いたいことは合っているのに」と、本人も納得がいかない |
分け方のコツは、お子さんに「答えの手がかりは、本文のどこにあった?」と聞くことです。正しい場所を指せないなら、それは選択肢や記述の問題ではなく、本文を読み違えています。正しい場所を指せるのに外しているなら、選択肢の選び方か、記述の書き方に原因があります。
漢字や語句などの知識問題と、時間切れで手がつかなかった問題は、三つとは別に数えておきます。知識問題は覚え直し、時間切れは解く順番と時間配分の見直しで対応します。時間切れの対策は「中学受験国語の時間が足りない・時間切れ対策」でくわしく解説しています。
どれから直すか 失点を「点数」で合計して決める
三つに分けたら、種類ごとに落とした点数を合計します。問題の数ではなく、点数で数えるのがポイントです。記述1問で10点落としたのと、記号2問で4点落としたのとでは、重みがちがうからです。
直す順番は、次の二つの決まりで決めます。
- いちばん多く点を落としている種類から直す
- 点数が近いときは、「本文を読み違えた」を先に直す
本文の読み違いを先にするのは、それがほかの二つの原因にもなっているからです。本文を読み違えたまま選択肢を選べば、正解の選択肢がまちがいに見えます。記述でも、読み違えた内容をもとに書けば、要素が足りなくなります。一つの読み違いが、同じ文章のいくつもの設問に広がっていることも少なくありません。根っこを直すと、まとめて失点が減ります。
たとえば、ある回の結果が次のようだったとします。
| 失点の種類 | 落とした問題 | 落とした点数 |
|---|---|---|
| 本文を読み違えた | 問三・問六(記号)、問七(記述) | 14点 |
| 選択肢で迷った | 問二・問五(記号) | 6点 |
| 記述の要素が足りない | 問八(記述) | 6点 |
この例で、問三・問六・問七が、どれも主人公の気持ちが変わる場面の読み違いから起きていたとします。まず直すのはここです。選択肢の迷いと記述の要素不足は同じ6点なので、志望校の配点の大きいほうから手をつけます。記述の配点が大きい学校なら記述の要素を、記号選択が中心の学校なら選択肢の迷いを、先に直しておく価値があります。
失点1 本文を読み違えたときの見直し
本文の読み違いは、解説を読む前に見直すのがコツです。先に解説を読むと「なるほど」で終わってしまい、自分がどこでずれたのかがわからないままになります。
- 設問ごとに、答えの手がかりになる場所を本文から探し、線を引く
- 解説や解答例と照らし合わせ、手がかりの場所が合っているかを確かめる
- ずれていたら、どう読み違えたのかを一言で書く
三つめの「一言」が大切です。「よくわかっていなかった」ではなく、次のように具体的に書きます。
| 文章 | よくある読み違い | 一言の例 |
|---|---|---|
| 物語文 | 気持ちが変わる場面を見落とし、前半の気持ちのまま答えている | 「出来事のあとで気持ちが変わったのに、前の気持ちで答えた」 |
| 物語文 | 登場人物の言葉を、そのままの意味でとっている | 「強がりの言葉を、本音だと思った」 |
| 説明文 | 例や一般論を、筆者の考えだと思っている | 「『〜と言われている』を、筆者の主張だと思った」 |
| 説明文 | 対比のどちら側の話かを取り違えている | 「AとBを比べているのに、Bの説明をAのことだと思った」 |
次の1回に持ち越すのは、この一言から作る「読むときの約束」です。たとえば「出来事のあとで気持ちが変わったのに、前の気持ちで答えた」なら、「気持ちを表す言葉に印をつけ、その直前の出来事に線を引く」。約束は一つだけにします。いくつも決めると、本番でどれも使えなくなるからです。
失点2 選択肢で迷ったときの見直し
二つまで絞れているということは、本文はある程度読めています。直すのは、最後の一つを決める手順です。
- 迷った二つの選択肢を並べ、ちがう部分に線を引く
- そのちがう部分だけを、本文と照らし合わせる
- 正解でないほうの選択肢が、なぜ正しくないのかを言葉にする
正しくない選択肢には、よく使われる型があります。お子さんがどの型に引っかかりやすいかを知っておくと、本番で迷ったときの決め手になります。
| 型 | 中身 |
|---|---|
| 言いすぎ | 「必ず」「すべて」「まったく」など、本文より強く言い切っている |
| 本文にない | 本文に書かれていない内容が、一部に混ざっている |
| 半分ちがう | 前半は正しいが、後半が本文と食いちがっている |
| 場所ちがい | 本文の言葉を使っているが、別の場面・別の段落の話になっている |
| 順番の入れかわり | 原因と結果、きっかけと気持ちの順番が逆になっている |
次の1回に持ち越すのは、「迷ったら、ちがう部分だけを本文と照らす」という手順と、自分が引っかかった型の名前です。「自分は『半分ちがう』に引っかかりやすい」とわかっているだけで、選択肢を最後まで読む意識が変わります。
失点3 記述の要素が足りないときの見直し
記述で部分点しか取れないときは、方向は合っていても、答えに必要な要素が足りないことがほとんどです。解答例と自分の答案を全体の印象で比べても、何が足りないかはわかりません。要素に分けて比べます。
- 解答例を、意味のまとまりごとに区切る(例:「きっかけ」「気持ち」「理由」)
- 自分の答案に、それぞれの要素が入っているかを○×で確かめる
- 抜けていた要素を足して、自分の言葉で書き直す
たとえば「傍線部のとき、少年はなぜ黙ってしまったのですか」という設問で、解答例が「本当のことを言えば、自分が約束を破ったことまで知られてしまうと気づき、言い出せなくなったから。」だったとします。この解答例は、次の三つの要素に分けられます。
- きっかけ:本当のことを言えば、約束を破ったことまで知られると気づいた
- 気持ち:言い出せなくなった
- 文末:「〜から。」で、理由の形にする
答案が「本当のことを言うのがこわかったから。」なら、気持ちの方向は合っていますが、何に気づいたのかという「きっかけ」が抜けています。ここを足して書き直すと、自分の答案のどこが足りなかったのかが、目に見えてわかります。
理由を聞かれた記述では、まず理由を一言で決め、それを答えの最後に置くと、要素が抜けにくくなります。字数の指定がある問題は、指定の8割以上を目安に書きましょう。また、学校の公式解答がない場合、塾や出版社の解答例は一つの例です。一字一句同じである必要はなく、要素がそろっているかどうかで比べてください。
記述の採点は、ご家庭では判断が難しい部分です。要素で比べても迷うときは、塾の先生に添削をお願いし、どの要素が足りないのかを具体的に教えてもらいましょう。
次の1回に持ち越すのは、「書く前に、設問の条件に丸をつけ、入れる要素の数を決める」という手順です。「理由を二つ」「本文の言葉を使って」などの条件を見落とすだけで、要素は簡単に抜けてしまいます。
何年分解くかより「次の1回に何を持ち越すか」
過去問は、1回ごとに区切って終わらせるものではありません。前の回の見直しで見つけたことを、次の回で試し、効いたかどうかを確かめる。このつながりがあってはじめて、年数を重ねる意味が出てきます。
そこでおすすめしたいのが、1回解くごとに書く「持ち越しメモ」です。書くのは次の3行だけです。
- 今回、いちばん点を落とした種類(本文の読み違い・選択肢の迷い・記述の要素不足)
- その原因を一言で
- 次の1回で試すことを、一つだけ
| 持ち越しメモの例 | 書くこと |
|---|---|
| いちばん落とした種類 | 本文の読み違い(14点) |
| 原因を一言で | 出来事のあとで気持ちが変わったのに、前の気持ちで答えた |
| 次の1回で試すこと | 気持ちを表す言葉に印をつけ、その直前の出来事に線を引く |
| 次の1回の結果 | (次の過去問を解いたあとに書く) |
次の過去問は、このメモを読み返してから始めます。解き終わったら、「試すこと」ができたかどうか、同じ種類の失点が減ったかどうかを、4行目に書きます。減っていれば次の課題へ進み、減っていなければ、同じ約束をもう1回続けます。
国語の過去問の点数は、文章との相性で上下しやすいものです。点数が下がった回でも、持ち越したことが試せていて、同じ種類の失点が減っていれば、前に進んでいます。点数の上下だけで一喜一憂せず、失点の中身の変化を見てあげてください。
秋から入試までの進め方
| 時期 | 進め方 |
|---|---|
| 10月〜11月 | 第一志望を中心に週1回。解いた日は採点と失点の分類まで、見直しと書き直しは別の日に行う |
| 12月 | 新しい年度を増やすより、持ち越しメモを読み返し、×だった問題を解き直す |
| 入試直前 | 残しておいた年度を本番の時間割どおりに通して解き、時間配分と持ち越しの約束を最終確認する |
解いた日に見直しまで終わらせようとすると、疲れて「答えを写して終わり」になりがちです。解く日と見直す日を分けると、見直しの質が上がります。見直しが追いつかないときは、年数を減らしてでも、1回ごとの見直しを終わらせることを優先してください。
過去問だけに頼らない
過去問とまったく同じ文章や問題が入試で出ることは、基本的にありません。過去問で見つかった弱点を直すには、塾の教材やテストの復習、語彙や読解の練習も欠かせません。本文の読み違いが多いなら読み方の練習を、言葉の意味がわからずに読み違えているなら語彙の強化を、過去問と並行して進めましょう。読み方の練習は「中学受験国語の読解力を上げるには?」、語彙の強化は「中学受験国語の語彙力を高める方法」でくわしく紹介しています。
また、出題の傾向が年によって変わることもあります。過去の傾向に合わせすぎず、どんな文章が出ても読める力を、過去問と並行して育てていくことが大切です。
ご家庭での声かけ
- 点数を見る前に、「どこで落としたか、一緒に分けてみよう」と声をかける
- ×の問題を責めるのではなく、「手がかりは本文のどこだった?」と場所を聞く
- 持ち越しメモが書けたら、点数より先に、そのことをほめる
過去問の点数は、お子さん自身がいちばん気にしています。失点を「種類」で分けて見ると、「国語が苦手」という大きな不安が、「気持ちが変わる場面に気をつける」という小さな課題に変わります。課題が小さくなれば、次の1回で試すことができます。
よくある質問
国語の過去問は、何年分解けばよいですか?
第一志望は7〜10年(回)分、第二志望は5年分程度が目安です。ただし、国語は1回ごとの見直しが大切な教科です。見直しと持ち越しメモが追いつかないなら、年数を減らしてかまいません。
過去問の点数が、回によって大きく上下します。
国語は、文章のテーマや読みやすさとの相性で、点数が上下しやすい教科です。点数よりも、失点の種類が毎回同じかどうかを見てください。毎回同じ種類で落としているなら、そこが直すべきところです。
同じ過去問を、もう一度解き直したほうがよいですか?
答えを覚えてしまった問題をすぐに解き直しても、正解できるのは当然です。記号問題は「なぜその答えになるのか、ほかの選択肢はなぜちがうのか」を説明できるか、記述問題は要素を足して書き直せるかで確かめます。少し時間をおいて、12月以降にもう一度解き直すのは効果があります。
記述の採点を、家庭でするのが難しいです。
解答例を要素に分けて、答案にそれぞれが入っているかを○×で見る方法なら、ご家庭でも採点の目安が立ちます。それでも判断に迷う問題は、塾の先生に添削をお願いしましょう。
時間が足りず、最後の大問まで行けません。
時間切れで手がつかなかった問題は、三つの失点とは別に数え、解く順番と時間配分を見直します。原因の見分け方と対策は「中学受験国語の時間が足りない・時間切れ対策」をご覧ください。
まとめ
- 過去問は本番と同じ形・同じ時間で解き、時間のあとに解いた分は別に記録する
- 国語の失点は「本文を読み違えた」「選択肢で迷った」「記述の要素が足りない」の三つに分ける
- 種類ごとに点数で合計し、多いものから直す。点数が近いときは、本文の読み違いを先に直す
- 見直しは、解説を読む前に「答えの手がかりの場所」を自分で探すことから始める
- 1回ごとに持ち越しメモを書き、次の1回で試すことを一つだけ決める
過去問は、解いた年数よりも、1回ごとに何を直し、次に何を持ち越したかで力がつきます。入試までの残りの時間で、一つずつ失点を減らしていきましょう。

