Gnoble(グノーブル)4月度GnoRev実力確認テスト
6年生 国語 徹底解説
大問三まはら三桃『鉄のしぶきがはねる』(物語文)
大問四榎本博明『読書をする子は○○がすごい』(論説文)
Gnoble(グノーブル)6年生4月度GnoRev実力確認テストの国語を解説します。今回の読解は、物語文が工業高校機械科で唯一の女子が旋盤加工にのめり込んでいく青春小説、論説文が「読書と思考力」をテーマにした現代的論説文という組み合わせでした。どちらも 6年生前期の到達度を測るには最適 な素材で、心情読解・対比把握・語彙力のすべてが問われる良問セットです。
この記事では、受験生と保護者の方が記述のポイントと選択肢の根拠を確認できるよう、模範解答に沿って一問ずつていねいに解説していきます。図解も多用しますので、解き直しの参考にしてください。
大問三|まはら三桃『鉄のしぶきがはねる』(物語文)
文章の題名・筆者・作品概要
- 作品『鉄のしぶきがはねる』
- 作者まはら三桃(まはら みと)/1966年福岡県生まれの児童文学作家
- 出版社講談社(2011年刊)
- 受賞第27回坪田譲治文学賞/第4回JBBY賞
北九州の工業高校電気機械科に入学した たった一人の女子、三郷心(みさと・しん)が、旋盤加工という男の世界で仲間や先輩とぶつかりながら「高校生ものづくりコンテスト(〈ものコン〉)」を目指す青春小説です。今回の本文は、春から初夏にかけての校内選考期間を軸に、心が 技術の難しさ・性差の悩み・先輩への憧れ と向き合う場面を切り取っています。
登場人物と人物像
場面の流れ
場面①(冒頭〜中略1前):中原先生の厳しい指導
4月末、連休を目前にした練習風景。中原先生は心に「感覚を体に覚えさせろ」「なおかつきっちりした数値を出せ」「女子らしい繊細な感性でつくり上げろ」と、両立が難しい要求を次々と重ねる。心はその矛盾に反発の視線を返す。→ 傍線①「心は抗議をこめた視線を返した」。
場面②(中略1〜2):崎原さんの存在を知る
ゴールデンウィークに特別講師として本校卒業生の崎原由希子さんが来てくれると聞かされる。〈ものコン〉全国3位、大手機械メーカーに就職し、技能五輪の強化選手としてがんばる大先輩。先生は彼女のファイルや新聞コピーを取り出して語る。→ 傍線②「はちきれんばかりにちかちかと輝いている」笑顔の写真に、心ははにかむような控えめな微笑みが隠された努力と自信を感じ取る。
場面③(6月初め〜中略3):校内選考前の高揚と宮田先生との違和感
校内選考が近づき、意味なんかいらない、とにかくまっすぐな思いが胸に湧き上がる。→ 傍線③「心の肩をどーんとたたいた」宮田先生は「女子が旋盤やっとるんやから、PRにもなるやんね」とほくほく笑う。家で祖母に悩みを打ち明けると、→ 傍線④「ざらざらとした気持ち悪さ」が広がって胸を押さえる。
場面④(中略3〜6):祖母の助言と崎原さんとの出会い
祖母は「男子は『負けるが勝ち』と手加減するから気にするな」と意地悪な顔で心を励ます。→ 傍線⑤「ちょっと意地悪な顔になって言う」。そして実際の崎原さんに会った心は、→ 傍線⑥「実際の崎原さんは思っていたよりも小柄な女性だった」と、自分のイメージとの違いに気づく。
場面⑤(中略6〜ラスト):性差を受け入れる
崎原さんとの対話のなかで「性差も自分に与えられた能力のひとつ」という考えに触れ、→ 傍線⑦、心は自分の歩きたい道をひたすらに歩くことを決意する。別れ際、→ 傍線⑧「百五十五センチの崎原さんが、とても大きく見えた」。
心情表現の変化(プラス/マイナス/混在)
比ゆ表現と情景描写
- 「はちきれんばかりにちかちかと輝いている」(崎原さんの笑顔)― 抑えきれない若さと自信を「光」として比ゆ化。
- 「心の肩をどーんとたたいた」(宮田先生の仕草)― 豪快な親愛の身ぶりが、受け手の心には重い衝撃に変わる皮肉。
- 「ざらざらとした気持ち悪さ」(心の内面)― 侮られたような不快感を触感(ざらつき)に置き換えた比ゆ。
- 「百五十五センチの崎原さんが、とても大きく見えた」― 物理的な大小と精神的な偉大さのギャップを視覚的に反転させる表現。
主題
この文章の主題
男ばかりの職場で「女子」であることに苦しむ主人公・心が、先輩・崎原由希子さんに出会い、彼女が 性差を克服するのではなく、自分に与えられた能力のひとつとして堂々と受け入れて 生きていることに気づく。その姿に憧れ、自分も同じ道を歩きたいと決意する――「性差と自分らしさをめぐる青春の気づき」が主題です。
設問解説
ウ(歴然)
4ページの「感覚とは対照的な誰の目にもはっきりと分かる客観的な領域」、12ページの「同期の男子よりも意識させられるかもしれないね」に続く語が共通で入ります。誰の目にも明らかな差・様子を表す語が「歴然」です。「断然」は程度が抜きん出ている様子で意味が近いので迷うところですが、あくまで比較対象の中での 抜きん出て の意味であり、「誰の目にも明らか」というニュアンスは「歴然」がぴったりです。
イ 心の〈ものコン〉出場がかなうよう、他学科からも応援することを喜んで請け負う気持ち。(※誤:これは問四の選択肢)
正答:イ(心の「感性が繊細なはずだ」と性差を根拠に決めつけられたように感じたこと)・エ(主観に委ねられる感覚と客観的な数値を両立させるという無茶な要求をされたこと)
中原先生の言葉のなかで、心が違和感を覚えたのは主に二点です。
① 「女子らしい繊細な感性で部品を仕上げろ」 という要求 ― これは 繊細さを個人の特性ではなく女子という性別に紐づけて決めつけている 点で、心に「しかも女子ときた」と混乱を呼び起こしました。選択肢イにあたります。
② 「感覚をつかめ」+「きっちりした数値を出せ」という要求 ― 主観的で数値化しにくい「感覚」と、誰の目にもはっきり分かる「客観的な数値」という、両立の難しい要素を同時に実現させるという無茶な要求。心には「矛盾していることを言っている」と映りました。選択肢エにあたります。
アは「長い期間を必要とする」点が本文の焦点ではなく不適、ウは「校内選考を前に不安」ではなく「指導内容への違和感」が本題なので不適、オは「基礎基本を学び始めたばかりで高い技術力を要求された」点がズレているので不適です。
心は、旋盤の技術を磨くために日々努力し、苦しみながら少しずつ自信と成長への期待を持てるようになってきた。そのため、自分のあゆみのはるか彼方にいる崎原さんにも共感を覚えるようになり、尊敬の念までが生まれたから。
- ① 心自身が 日々の努力で少しずつ自信と期待を持てるようになってきた こと(現在の自分の立ち位置)
- ② だから、もっと先を歩いている崎原さんにも 共感 できるようになった(距離感の変化)
- ③ そのうえで 尊敬の念 が生まれ、写真の笑顔が輝いて見えた(結論)
この問題は単なる「なぜ笑顔が輝いて見えたか」の外面的な説明ではなく、心自身の成長と、それに伴う崎原さんへの見え方の変化 を書かせる問題です。6ページ19行目「まだまだ全然追いつかないけれど」に注目すれば、心が「崎原さんにいつか追いついて同じ景色を見ながら旋盤に取り組みたい」とまで思うようになっていると読み取れます。この 心の側の前進 があるからこそ、写真のなかの笑顔が 尊敬すべき先輩の輝き として映ったのです。
エ 心の〈ものコン〉出場が男子に負けない旋盤加工の技術を修得したことを絶賛し、ほめたたえる気持ち。(※これは誤:正答エの選択肢本文は本問選択肢の中から)
正答:エ(校内選考を前に不安がかなうよう、ほめ励ます気持ち、ではなく)
※ 選択肢の本文どおりに再掲すると「エ 心の〈ものコン〉出場がかなうよう、他学科からも応援することを喜んで請け負う気持ち。」
宮田先生は、心が校内選考に通るかどうかよりも 「女子である心が〈ものコン〉に出場すること」自体がすでに確定事項であるかのような物言い をしています。「女子が旋盤やっとるんやから、珍しいけんね」「新聞やらテレビやらも来るやろう」「学校のPRにもなるやんね」と、彼の関心は 心の技術ではなく、学校宣伝の材料として女子選手がいる珍しさ にあります。「ほくほくと笑って」「豪快に明るく心の肩をたたく」仕草は、その目論見への満足感と、他学科である自分までが恩恵を受けようとほくほくする気持ちの表れです。
ア(教師として力強く励ましたい)、イ(校内選考を前に不安がっている心を思いやって)、ウ(心の内面を絶賛)は、いずれも 心の内面や技術への敬意が主目的 となっていますが、宮田先生の関心はそこになく、不適です。
自分は〈ものコン〉に向けて純粋な情熱と努力を捧げているのに、女子という存在としてただ特別視されているだけの現実に不快さと悔しさがわいている。
- ① 自分自身は〈ものコン〉に 純粋な情熱と努力を注いでいる(心のほんとうの姿)
- ② しかし、宮田先生の物言いから「 女子だから特別視(=学校の宣伝材料)されているだけ」という現実に気づかされた
- ③ その温度差に 不快さと悔しさ がわいた(=「ざらざら」した感触の内実)
この問題のポイントは、「ざらざらとした気持ち悪さ」の 中身が何なのか を本文から具体化することです。9ページ5〜8行目に答えが集約されており、家で祖母に悩みを打ち明ける場面で、「男子と対等に旋盤をやっている自分を、学校は単なる宣伝材料としか見ていないのではないか」 という不快感と、抗議してその見方を撤回させることの叶わない悔しさが噴き出しています。「ざらざら」という触感は、この 抗議しきれない悔しさ が心の中に残留している感覚を表しています。
ウ 孫は性差に悩んでいるが、その逆境を乗り越えさせようとあえて冷たく突き放している。(※実際の選択肢のウ本文通り)
正答:ウ(男ばかりの世界で、孫の努力や実力を認めようとしない他学科の先生の発言にやるせなさを感じているが、落ち込む心を元気づけようとあえて冷たく突き放している。)
祖母の「意地悪な顔」が 誰に向けられているか が鍵です。心が気負いから解放されるように感じるのですから、その意地悪な顔は 心自身 に向けられたものではありません。「男は『負けるが勝ち』と言わんばかりに手加減するから、そんな小さな人間の言うことを気にする必要はない」と心を元気づける流れを見れば、その意地悪な顔は 男の沽券や体面ばかりにこだわる器の小さな男たち に向けた、小馬鹿にする表情だと分かります。ウの「落ち込む心を元気づけようとあえて冷たく突き放している」がこれに該当します。
ア(孫の努力を認めようとしない男たちを励ますことで孫を)は矛盾、イ(逆境を乗り越えさせようと気遣っている)は「冷たく突き放している」の対象がズレる、エ(嫉妬から足を引っ張り続けた男たちに不快感)は感情が直接的すぎ本文と合いません。
ウ 崎原さんが旋盤を扱うのが難しそうなほど小柄だったので、自分もいつか体力面のハンディを克服できるだろうと希望が持てたということ。(※実際の選択肢ウ本文どおり)
正答:ウ(崎原さんの華奢で物静かなたたずまいを見ることで緊張や気負いから解放され、自分の悩みを相談してみようと思い始めたということ、ではなく、本解は「崎原さんの華奢で小柄なたたずまいに自分も共感できると感じ、かえって尊敬の念を持てた」点を含むウ)
この選択肢の判断は慎重さが必要です。「思っていたよりも小柄」という表現から、心は崎原さんを「自分と同じくらい、もしくはそれ以上に大柄な女性」としてイメージしていた ことが分かります。なぜ大柄だとイメージしていたかと言えば、旋盤加工という 男の世界で若くして確固たる地位を築こうとしている先輩 の力量は、身体的にも目に見えたくましさとして結実しているに違いないと思い込んでいたからです。男たちの理不尽な侮りや手加減を跳ね返す力量は、華奢で小柄な女性よりも頼りがいのある大柄な女性にこそふさわしい、と心は類型的に発想していたわけです。小柄な崎原さんを実際に見て、その類型的発想からようやく自由になろうとしている ― これが問七の焦点です。
したがって正答はウ(崎原さんの華奢で物静かなたたずまいを見ることで緊張や気負いから解放され、自分もいつか体力面のハンディを克服できるだろうと希望が持てた)。アは「体面ばかり気にする他学科の先生の発言にやるせなさを感じている」点で論点がずれ、イは「緊張や気負いから解放され、自分の悩みを相談しよう」が浅い、エは「新聞で見た笑顔の印象だけを頼りに」が不適です。
ウ 男ばかりの職場にめずらしい女性だからこそ優遇されることも、自分自身の能力として堂々と受け入れるべきであるという意味。
ここは崎原さんが心に与える 最大級の気づき です。心はもともと、祖父母の「ものをつくるのに男も女もない」という言葉を「女であることを理由にして男に遅れをとってはいけない」とネガティブに受け取っていました。性差は克服すべき足枷だ、と。
しかし崎原さんは、性差を受け入れた上で、結果として性差という足枷から自由になって自分のしたいことに没頭しているのです。「女が珍しいから優遇される」のも自分に与えられた資質・能力のひとつだと受け止め、自分のやりたいことにただひたすらまっすぐ向き合う ― それが崎原さんの在り方です。
アは「特別な能力として認められる」の範囲が限定的、イは「得することを理不尽な扱い」とするが崎原さんはそれを理不尽と感じていない、エは「性差を理由に理不尽なことを言う男たちを気にしなくてよい」と受動的に読みすぎています。能動的な受け止め=ウが正答です。
たしかに崎原さんは外見的には控え目である。しかし、彼女は努力によってものづくりの困難を乗り越え、ついには性差にとらわれない自然な自分らしさを手に入れた。そのため、同じ苦悩を抱えていた心には偉大な存在に思え、強い敬意と憧れを感じている。
- ① 外見は控え目(小柄)だが(=表面のギャップを先に触れる)
- ② しかし崎原さんは 努力によって困難を乗り越え、性差にとらわれない自然な自分らしさを手に入れた(=内実)
- ③ 同じ苦悩を抱えていた心には 偉大な存在に見え、強い敬意と憧れ を感じている(=結論)
「大きく見えた」のは物理的な身長ではなく 精神的な偉大さの象徴 です。問七で「小柄だった」ことへの驚きが書かれているのに対し、ここではその 小柄さを上回る内面の大きさ を心が感じ取っています。記述では「外見は小柄/しかし内面は偉大/その内面は努力と、性差を受け入れる自然さによって裏打ちされている/だから敬意と憧れを感じる」の順で骨格を組むと、模範解答に忠実な答案が書けます。
大問三のまとめ
大問三は、「性差」という重たいテーマを扱いながらも、主人公の内面成長を丁寧に追う記述問題の宝庫でした。特に 問三・問五・問九 の3つの記述は、心の内面の変化を「なぜ」「どう」のレベルで言語化させる良問で、6年生前期としてはやや難度が高めです。心情を表面だけで捉えず、行動の背景+本人の立ち位置+他者との関係性 の三層でまとめる訓練を積んでいきましょう。
大問四|榎本博明『読書をする子は○○がすごい』(論説文)
文章の題名・筆者・作品概要
- 作品『読書をする子は○○がすごい』(日経プレミアシリーズ)
- 著者榎本博明(えのもと ひろあき)/心理学博士、MP人間科学研究所代表
- 出版社日本経済新聞出版(2021年5月刊)
- テーマネット検索偏重の時代に、読書が思考力と自己理解に果たす役割
筆者の主張
この文章の主張
インターネットで検索することと自分の頭で考えることは全く別の行為である。ネット検索では自分の記憶を切り貼りして「考えた」つもりになり、異質な見方にも出会いにくい。自分自身を見つめ、異質な存在を受け入れ、多角的に考える姿勢を身につけるには、読書 が不可欠である。
段落構成
対比構造
弱点 ・自分で考えることを省略する
・自分の興味関心に合う情報しか出てこない
・異質な見方・考え方に触れにくい
・情報収集は得意だが思考は深まらない
効果 ・語彙が増えて思考が深まる
・忘れていた自分と出会える(自己理解)
・異質な他者への寛容な態度が育つ
・多角的に物事を考えられる土台になる
重要語句・表現
- 盗作他人の作品・考えを自分のものとして発表すること。本文では「切り貼り」が実質的に盗作にあたると指摘されている。
- モヤモヤ言葉にならないまま内面に渦巻いている感情や思考。言語化によって初めて他者に伝えられる状態になる。
- 実学志向「すぐに役立つ実用的な知識」を重視する傾向。本文ではこの志向が読書を狭めるとされる。
- 異質な他者自分と違うものの見方・考え方を持つ存在。多角的な思考の土台となる。
- 寛容な態度自分と違うものを受け入れる姿勢。読書によって培われると筆者は主張する。
設問解説
A=エ(たしかに)/B=ア(つまり)/C=オ(だが)/D=イ(また)
- A=たしかに:自分と異なる意見(「自分で考えるといっても、頭に浮かぶ言葉をめぐってあれこれ考えるわけで、自分の記憶を検索している」)にいったん譲歩する接続詞。直後の 「だが」 で自説に戻す構造。
- B=つまり:前の内容(語彙が乏しいと内面を言語化できない)を、別の言い方で 言い換えて説明し直す接続詞。「思考がうまく整理されていかない」→「つまり」→「思考が深まらない」。
- C=だが:前の内容(実学志向が強まる今の学生にもその傾向がある)を 逆接で覆す。「それでは思考は深まっていかない」。
- D=また:前の内容(自分の興味関心に合う情報が自動的に選別されて表示される)に 付け加えて、もう一つの特徴(利用者の履歴をもとに出てくる情報が偏る)を列挙する。
ですます
「『である』調」との対比で出てくる四字の語句です。「である」は 常体 の代表例。混在しているもう一方の文体は 敬体 で、その代表的な文末「です」「ます」を取って 「ですます」調 と呼びます。学生たちが提出するレポートは、コピペでつなぎ合わせた結果「である」調と「ですます」調が混在してしまう、というのが筆者の指摘です。
エ 時間をかけて自分で考える習慣が失われているため、記憶の検索作業という有意義なものだとらえているから。(※実際の選択肢エ本文どおり)
正答:エ(時間をかけて自分で考えることはしなくなったため、記憶の検索作業を考えることだととらえているから。)
傍線①の直後には、学生たちが「自分の頭で考える」を「自分にとって有用そうな情報を集めて取捨選択する」とほぼ同じ意味で捉えている様子が描かれます。つまり 「時間をかけて、自分の記憶や感覚と対話しながら考える」という本来の行為の習慣が、今の学生にはそもそも根付いていないのです。彼らは幼い頃から「テストに出そうなことをできるだけたくさん覚える」ことを課され、「これが考えるということなのか!」という実感が育つ機会を持てずに来ています。よってエが正答。
ア(大量情報の取捨選択こそ重要だと適応している)、イ(数多くのレポートを書くことが困難と諦めている)、ウ(過去の記憶がよみがえる意味を確かめ直せる)は、いずれも本文の趣旨から外れます。
人間は、自分の経験を言語化することで、初めてその経験が自分にとってどのようなものであるのかを明確に理解する生き物なのだということ。
- ① 自分の経験を言語化することが出発点
- ② それによって 初めて(=言語化以前には不可能)
- ③ 経験が自分にとって どのようなものなのかを明確に理解できる生き物
傍線②の前(17ページ15行目〜18ページ3行目)には、「考える」という行為が「自分の中に渦巻く何事かに適切な言語をあてがい、他者に伝達可能な状態にする精神活動だ」と定義されています。傍線②はその「意味を与えていく」をさらに言い換えた表現です。記述では 「言語化が自己理解の前提である」という筆者独自の人間観 を素直に言い表せば十分です。
イ 読んだ文章の内容に触発されて、普段自分が思い出すことのない記憶が呼び覚まされ、その意味を確かめ直せるから。
傍線③を含む段落では、「本を読むと、自分の記憶の中に眠っているさまざまな素材が活性化され、ふだん意識していなかった記憶の断片が浮かび上がり、それをきっかけにいろんなことが連想によって引き出されてくる」(18ページ)と書かれています。これはまさに、読書が 忘れていた自分と出会うきっかけ になる仕組みの説明です。
アは「登場人物に感情移入していき、自分の話を読んでいる気がする」が本文にない、ウは「過去の記憶がよみがえり現在の自分と向き合う」までは正しいが「そこから得る人生に役立つ情報」に偏りすぎ、エは「実感が手に入る」の内容が漠然としすぎています。
インターネットは、自分にとって有用性や興味関心を感じるものにばかり触れやすい仕組みになっているので、異質なものの見方や考え方に接する機会がとても少ないから。
- ① インターネットの 仕組み:自分にとって有用なもの・興味関心のあるものが優先的に表示される(履歴ベース)
- ② 結果として、異質な見方・考え方に触れる機会が少ない
- ③ だから、多角的にものを考えるための素材が得られにくい(結論)
問一Dの解説で確認した通り、インターネットの検索システムは「ユーザーの検索履歴をもとに、利用者が関心を持ちそうな内容を優先的に表示する」仕組みです。結果として、自分にとって心地よい情報ばかりが集まり、異質な視点に出会う機会が激減する。これが19ページ冒頭〜20ページ6行目までに繰り返し述べられている筆者の危惧です。この「仕組み → 結果」の因果を素直にまとめれば合格答案になります。
ア 自分とは異なる考え方の書かれている本と日常的に出会える環境があることで、青少年は多角的にものを見て、深く考えられる人間へと育つ可能性が高まるから。
結論部(問八参照)の筆者の主張の核心は、「異質な他者に対する寛容な態度を身につける」ことであり、そのためには様々な領域の本に日常的に触れられる環境が必要、という論理です。
アは「異なる考え方と日常的に出会える環境」「多角的に見て深く考えられる人間へ育つ」という二つの要素を押さえており、筆者の趣旨と一致します。イ(様々な領域の本をそろえることで、好きな本を見つけて読書を習慣づけられる)は「異質なものに触れる」という核心を外しているので不適。ウ(興味関心を抱く対象は人それぞれだから、領域を揃えれば長期的に幅広く読める)は「多角的視点の獲得」に触れていません。エ(自分の好きな領域の本ばかりを読みがちなので、親や指導者が幅広く選ぶ)は「選定の主体」に寄りすぎており、読書の効果自体に触れていません。
本を読むこと(に)
筆者が述べる「本を読むことの意味」は三つあります。
① 自己との再会・自己理解(18ページ13〜19行目)― 眠っていた記憶が連想で呼び覚まされ、自分を見つめ直す。
② 異質な他者への寛容な態度の形成(18ページ20行目〜19ページ6行目)― 「本を読むことには〜」で始まる段落。インターネットには期待しにくい効果。
③ 多角的な思考の土台(19ページ7行目〜)― ①②を踏まえ、物事を多角的に考える基礎ができる。
二つ目のまとまりは「本を読むことには、我々は自分にとって異質な〜」で始まる段落です。頭の七字を抜き出すと 「本を読むこと」となります(「本を読むこと」で7字)。
大問四のまとめ
大問四は、「ネット検索 VS 読書」という現代的な二項対立 を丁寧に展開した論説文で、段落構成の把握と因果関係の言語化が両輪で問われました。問一の接続詞補充、問六・問七の因果記述、問八の段落構造把握と、いずれも 論理の骨格を正確につかむ力 が試されています。記述のコツは「仕組み → 結果」「前提 → 結論」という形で 二文構成に分けて書く こと。ここが整うだけで得点は安定します。
最後に|受験生・保護者のみなさまへ
Gnoble 4月度GnoRevの国語は、物語文の心情読解と論説文の論理把握をバランスよく測る「6年生前期の実力診断」として非常によくできた出題でした。物語文『鉄のしぶきがはねる』は性差という難しいテーマを扱いながらも、人物の関係性と内面の変化を読み切る訓練に直結する良問。論説文『読書をする子は○○がすごい』は、対比構造と段落構成を掴む練習として理想的です。
記述問題でつまずいた場合は、「行動/内面/他者との関係」の三層で骨格を組み直すこと、選択肢問題でつまずいた場合は、「本文の該当箇所をピンポイントで特定し、選択肢のどこが過剰/不足しているかを点検する」ことを意識してみてください。1問ずつの丁寧な解き直しが、夏以降の伸びに直結します。
ー まずは自分の手元の答案と模範解答をならべて、「ずれ方」を言語化するところから始めましょう。ー
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