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出典
「モノガタリは終わらない」所収、水野良樹「誰がために、鈴は鳴る」からの出題でした。
登場人物とその特徴
- すぐる: 病気により俳優の道を諦めようとしていたが、姉との会話や祖母の思い出を通じて、家族の支えに気付き、前向きな気持ちを取り戻す。
- 美咲: 離婚を経験し、人生の岐路に立っているが、弟との会話を通じて、自分自身を見つめ直し、家族の大切さを再確認する。
- 母: 厳格な態度を取っていたが、実は息子を深く愛しており、自身の母親(祖母)の形見の鈴を大切にしている。
- 祖母:すぐると美咲にとって親しみ深い存在。孫から贈られた鈴が形見となってしまう。
気をつけるべき語句・表現
- 身代わり鈴:身代わりに厄災を引き受けるとされる鈴。祖母の形見として重要な役割を持つ。
- 鬼籍に入る:亡くなること。
- ひと区切り:物事が一応終わること。
- 几帳面:細かいことによく気がつき、物事をきちんと行うさま。
- 快活:性格が明るく、元気の良いさま。
- シングルマザー:子どもを一人で育てている母親。
- 台詞が飛ぶ:セリフを忘れて出てこなくなること。
- 縁起担ぎ:良い結果を願って、ある物事をしたりしなかったりすること。
- 出戻り:結婚後、離婚などで実家に戻ること。
物語の主題と要点
この物語の主題は「家族愛の再認識」と「過去の思い出と現在の対比」です。すぐると美咲が祖母の形見である身代わり鈴を通じて、祖母の愛情はもちろん、その娘である母親が不器用ながら自分たちに誠意パイの愛情を注いでいたことに気づかされ、家族の絆や愛情を再確認する過程が描かれています。
重要問題解説
問3 「おばあちゃんの十七回忌だから今年だけは絶対に帰ってきなさい」とありますが、すぐるの母がそのように言った のはなぜだと考えられますか。
不器用ですぐるに対して冷たいように感じる母親もすぐるへの愛情は非常に深いということを主題としてつかみ取っておく必要があります。
正解:エ
すぐるが仕事の面でうまくいっていないことを察して、元気づけてやりたいと思ったから:
- 物語の中で、すぐるが現在病気で俳優としての活動がうまくいっていない状況が描かれています。そのため、母がすぐるを元気づけるために「絶対に帰ってきなさい」と言ったことは自然です。
他の選択肢が間違っている理由
- ア: すぐるが上京したことをよく思っておらず、地元の良さを改めて知らしめたいと思ったから:
- すぐるの母がすぐるの上京自体を良く思っていないわけではありません。また、「地元の良さを知らしめたい」という理由は、十七回忌という厳かな行事とはあまり関係がありません。
- イ :すぐるが法事に一度も参加しなかったため、直接会って反省をうながしたいと思ったから:
- すぐるが法事に参加しなかったという具体的な描写はありませんし、反省を促すために「絶対に帰ってきなさい」という言い方をするのは不自然です。
- ウ :すぐるがさびしい思いをしていると考え、親戚たちと会う機会を作ってやろうと思ったから:
- すぐるの母がすぐるの孤独を感じているという描写は少ないですし、親戚は「多くが鬼籍に入った」とあり会う機会を作ることが主な理由であるとは考えにくいです。
問5「もうひと踏ん張り しなくちゃね」とありますが、ここでの「もうひと踏ん張り」とはどのようなことですか。
正解:エ
- エ 早く退院して元気になり、長生きをすること:
- 「もうひと踏ん張り」という言葉は、現在の困難を乗り越えて前向きな目標を達成しようとする意思を表しています。祖母が身代わり鈴を受け取った後に言ったこの言葉は、孫たちの愛情に応えて病気を克服し、元気になって長生きすることを意味しています。
他の選択肢が間違っている理由
- ア 体調が悪くても、孫の前では気丈にふるまうこと:
- これは一時的な行動であり、「もうひと踏ん張り」という言葉が示す長期的な努力や目標とは異なります。祖母の意図は孫たちのために元気になることであり、単に気丈にふるまうことではありません。
- イ 孫の愛情に報いるような贈り物を選ぶこと:
- 贈り物を選ぶことは「もうひと踏ん張り」という言葉が示す意味とは異なります。これは祖母が努力して病気を克服しようとする気持ちを表していません。
- ウ 入院前の旅行で、孫たちと最後の思い出を作ること:
- この選択肢は過去の行動に焦点を当てていますが、「もうひと踏ん張り」という言葉は未来に向けた努力を示しています。祖母が意図しているのは、現在の病気を乗り越えて長生きすることです。
問6「ばあちゃんが生きていたら、応援してくれたはずだよ」とありますが、このときのすぐるはどのような様子ですか
※「様子」=目に見えたり、見えるものから察することが出来る状態を表しています。気持ちを問われているわけではないことに注意します。
正解:ウ
- ウ 自らの進路に理解を示してくれない母の姿から、十分な愛情を示してもらえないことへの不満を改めて抱き、優しく接してくれた祖母を引き合いに出して、ついとがめてしまっている様子:
- 後に母の愛情に気づくすぐるではありますが、この時点はすぐるが母に対する不満を感じており、その感情を祖母との対比で表現している点が正確です。母に理解されないことで感じる不満と、祖母の優しさを持ち出すことで母をとがめる気持ちが描かれています。
他の選択肢が間違っている理由
- ア :自分の人生設計について話しているときも、これまでと同様に自らの意見に聞く耳を持ってくれない母に反発し、幼い考え方でも尊重してくれた祖母の話を持ち出して母をやりこめようとしている様子:
- すぐるは母に「反発している」という要素はありますが、「攻撃する」という意図は描かれていません。この選択肢はすぐるの感情を「やりこめる」という表現で過度に攻撃的に描いています。
- イ :大学への進学を強要するなど、勉強にはげむことばかり要求し続ける母にうんざりして、やりたいことを応援してくれた祖母と比べて、思わず母を否定するような発言をしてしまっている様子:
- すぐるが母にうんざりしていることや、祖母との対比は正しいですが、この選択肢はすぐるの気持ちを単に「うんざりしている」として描いており、母に対する深い悲しみや甘えたい気持ちが欠けています。
- エ 自分の人生を充実させるための意見にすら、親らしい情を示してくれない母を持ったことが悲しく、優しかった祖母の話をすることで、母に甘えたいという本心をそれとなく示そうとしている様子:
- すぐるの母への悲しみは描かれていますが、母に対する甘えたい気持ちは明確に書かれておらず、また不満と祖母を引き合いに出してとがめるという要素が欠けています。
問7「もうひとつ、身代わり鈴を買ってきて」とありますが、このように祖母が言ったのはなぜだと考えられますか。
正解:イ
- イ いずれは自分や懸命に育てた子どもたちとはなれるであろう娘に対し、自分の代わりとなる鈴で孤独感を和らげたいと考えたから:
- 祖母の意図として、自分の代わりに娘の孤独感を和らげるために鈴を用意するという点が最も適切です。本文の主題である「家族の結びつき・家族愛」を感じ取れているかどうかが重要でした。
他の選択肢が間違っている理由
- ア :娘が子どもたちと意見を戦わせることになったとき、親子のつながりを示す鈴を見て子どもたちに歩み寄ってほしいと考えたから:
- 親子間の意見の対立を和らげるというよりは、祖母が自分娘に対する気遣いから孤独感を和らげるために鈴を用意したことが重要です。この選択肢は祖母の意図としては不十分です。
- ウ :娘が自分や子どもたちと一緒にいられなくなることをわかっていたため、旅の思い出である鈴で娘のさびしさを癒やしたいと考えたから:
- これは一部正しいですが、「旅の思い出である鈴」という点が不適切です。祖母の意図は、旅の思い出ではなく、自分の代わりとしての鈴を通じて娘の孤独感を和らげることです。
- エ :娘には家族との別れが待ち受けているため、子どもたちの愛情を表す鈴によって悲しみを少しでもなくしてあげたいと考えたから:
- これは娘に対する愛情を示すものですが、祖母の意図として「自分の代わりとなる鈴で孤独感を和らげる」という部分がズレています。この選択肢も祖母の意図としては不十分です。
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