2025.6.8実施 小6第2回サピックスオープンB読解問題解説

文章の基本情報

題名: 「旅立ちの日に」
筆者: 清水晴木(中央公論新社)
文章の要約: 妻の陽子を交通事故で失った「俺」(浩)が、血の繋がらない息子・大輔(5歳)との関係に悩みながらも、最終的に家族の絆を再確認する感動的な物語。


登場人物と人物像

主要登場人物

「俺」(浩・39歳)

  • 春風亭の店主、大輔の義父
  • 妻を失った悲しみから立ち直れずにいる
  • 血の繋がりを意識してしまう弱さがある
  • 最終的に父親としての愛情を確認する

陽子

  • 浩の妻、大輔の実母(故人)
  • 明るく思いやりのある性格
  • 春風亭を心から愛していた
  • 「男の子は泣いちゃだめ」と大輔に教えていた

大輔(5歳)

  • 陽子の連れ子、浩の義息子
  • 母の死後、感情を抑制するようになる
  • 母の遺志を継ごうとする健気な少年
  • 物語のキーパーソン

比喻表現とその解説

主要な比喻表現

1. 「牡丹の花が地面に落ちるような、そんな大粒の涙」

  • 通常「桜の花びらが散る」といった表現は繊細な悲しみを表すが、牡丹の花は大きく重い
  • 「俺」の深い悲しみと絶望感を表現
  • 陽子を失った衝撃の大きさを物理的な重さで表現

2. 「春風どころか大きな嵐に見舞われることになった」

  • 店名「春風亭」の穏やかなイメージと対比
  • 突然の不幸を自然現象で表現
  • 人生の急変を気象現象で象徴

3. 「愛の塊があった」

  • 大輔への愛情を物理的な存在として表現
  • 血縁を超えた愛情の確固たる存在を強調
  • 抽象的な愛を具体的な形で描写

4. 「隣同士、一緒に並んで咲くハクモクレンと桜の花」

  • 陽子(ハクモクレン)と浩(桜)の関係性を象徴
  • 死後も変わらない絆を表現
  • 希望的な未来への暗示

主題

中心的な主題:血縁を超えた家族愛と絆の再生

  1. 血縁を超えた愛情:義理の父子関係でも真の愛情は育まれる
  2. 喪失と再生:大切な人を失っても、残された者同士で新しい絆を築ける
  3. 成長と理解:相手の立場に立って考えることの大切さ
  4. 受け継がれる思い:陽子の願いが大輔を通じて継承される

重要語句・表現

文章理解のキーワード

1. 春風亭 – 陽子が名付けた店名。温かさと希望の象徴

2. 血の繫がり – 物語の核心テーマ。真の家族愛とは何かを問う

3. ハクモクレンと桜 – 陽子と浩それぞれの好きな花。最後に並んで咲くことで絆を象徴

4. 春風亭ノート – 陽子の思いが込められた大切な記録。大輔が探していた理由

5. 「男の子は泣いちゃだめ」 – 陽子の教え。大輔が感情を抑制する理由

6. 「そこに愛はあるのかい?」 – ドラマのセリフが「俺」の心に響く重要な問いかけ


その他読み取りづらい部分

時系列の整理

  • 現在:陽子の死から2週間後
  • 回想①:1992年、金谷移住・開店
  • 回想②:開店1年後、陽子の事故死
  • 現在:大輔の家出と和解

大輔の行動の真意

表面的には「わがまま」に見える家出が、実は母の遺志を継ごうとする健気な行動だったという逆転の構造

花の象徴性

木蓮(陽子)は既に散り始めているが、桜(浩)はこれから咲く。悲しみから希望への転換を表現


設問解説

問一:「春を遠くに感じる」理由

解答のポイント

  • 「春」は季節だけでなく、心の状態(幸せ・希望)を象徴
  • 陽子の死を受け入れられない現在の心境
  • 立ち直って幸せを感じるのはまだ先という気持ち

問二:「陽子ならありえる事故」の人物像

解答:ウ

  • 動物を避けるための単独事故
  • 思いやりの強い陽子らしい判断
  • 咄嗟に他者(動物)を守ろうとする行動

問三:「そこに、愛はあるのだろうか」の気持ち

解答のポイント

  • 血の繫がりを意識してしまう自分への疑問
  • 大輔を理解できない自分への苛立ち
  • 本当に愛せているのかという不安

問五:大輔が黙っていた理由

解答のポイント

  • 「男の子は泣いちゃだめ」という陽子の教え
  • 母のことを話すと涙が出そうになる
  • 強くあろうとする健気な気持ち

問六:「大粒の涙」の気持ち

解答のポイント

  • 大輔への申し訳なさ
  • 自分の理解不足への情けなさ
  • 大輔の健気さへの感動
  • 陽子の面影を感じ取った感動

問七:並んで咲く花の描写の意味

解答のポイント

  • ハクモクレン(陽子)と桜(浩)の象徴
  • 死後も変わらない絆
  • 二人で悲しみを乗り越えていく未来


まとめ

この物語は、表面的には「血の繫がらない父子の物語」ですが、実際は「真の家族愛とは何か」を深く問いかけています。大切な人を失った悲しみの中でも、残された者同士が支え合い、新しい絆を築いていく姿が感動的に描かれています。

中学受験生の皆さんには、登場人物の心情変化を丁寧に追いながら、比喩表現や象徴的な描写の意味を考える練習をしてもらいたいと思います。物語文は「人の心」を読み取る問題です。自分だったらどう感じるかを想像しながら読むことで、より深い理解につながるでしょう。

特に今回の物語では、「血縁」というテーマが現代社会にも通じる重要な問題提起となっています。家族の形は様々でも、そこに愛があれば真の家族になれるということを、美しい花の描写とともに教えてくれる素晴らしい作品でした。

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