このような読書に関するお悩みを保護者の方から毎年受けています。
塾の教室長としてあるいは国語講師としてこの手のご相談は年に数十件はいただいていると思います。
「何度言っても読まないし、性格の問題なのかしら?」という保護者の方もいらっしゃいます。
しかし、お子さんによってアプローチは異なるものの、
お子さんに必ず読書を好きになってもらえるは方法は存在します。
今回はそのような方のためにお子さん自分から本を読むような「読書好き」な子にする
ためのアプローチをご紹介します。
実を言うと、私の2人の息子(上は高校生、下は小6)のうち、下の子は小5までは
真性の読書嫌いでした・・・。本を与えてもほとんど手を付けず、
読んだとしても、せいぜい最初の数ページ読むだけ。
親が国語講師でありながら二人目の油断といいますか、長男に比べて手をかけていなかった部分が
あるかもしれないと反省し、これからご紹介するようなアプローチを試みました。
しばらくアプローチを続け、今では自ら本を買いたいとお小遣いを求めるようにまでなっています。
多くの生徒さんやわが子を読書好きにさせるために取り組んできたこと、
是非皆さんにもご紹介したいと思い今回の記事を書きました。
お子さんが読書をするようになるとお子さんの将来が大きく変わっていきます。
是非ご参考になさってください。
本記事は以下のような方にお役立ていただける内容です。
・自分から読書をするような子に育てたいが、お子さんがほとんど読書に興味を示さないとお困りの保護者の方。
塾で国語の授業を取って真面目に宿題がんばれば国語の成績は大丈夫?
国語という教科は実はそう簡単でもありません。
例えば国語で必須の「読解力」。
これは国語の授業内だけで完結せず、日常の読書経験が大きく読解力を左右します。
またこれだけでなくその他にも読書でしか得られないものがたくさんあります。
読書を通じて身につけられるものを確認していきましょう。
読書の学習効果として代表的なのは「読解力」の向上でしょう。
読解力と一言で言ってもさまざまな力に分類されます。
・物理的読解力(活字を目で追う力)
・語彙力
・文と文のつながりを理解し全体を把握する力
・自分の経験に照らし合わせて腑に落とす力
詳しくは下の記事をご覧ください。
これらの力は正しい姿勢で読書を続けることで自然に身についていくものです。
特に中学受験生は人生経験が少ないのでお子さんのこれまで過ごしてきた
生活環境によって常識の幅が大きく異なります。
例えば物語のシナリオ。
表面的な言動・態度と本心が裏腹であるパターン。
・ある男の子に恋心を抱くがそれを悟られまいとつい冷たい態度を取ってしまう女の子。
・子どもたちには日常厳しく接し決して笑顔を見せないが裏では子どもの幸せ願う昭和の頑固おやじ。
などなど、、、。
こうしたよくあるパターンは日常生活で体験をする機会は少なく、
物語を読んだりドラマや映画を観たりする中で培われていく「常識」ですね。
こうした物語によくある「人物像」をしっかり事前に常識としてストックされていると
物語文の理解が非常にスムーズになります。
また、主人公が様々な試練を乗り越えて、今まで気づかなかった価値観を身につけて
成長していくストーリーなどもよくある「展開」。
よくある展開も「常識」としてストックしておくと読解しやすくなります。
さらに、説明的文章の読解経験も文章構成の把握に慣れさせるためには重要。
話題の提示~具体例~結論・まとめといった流れを無意識レベルで理解できるようになるには
そのような構成の文章を多く読むことが大切です。
読書が好きになると好奇心が高まります。
読むことが苦痛ではなくなるので情報の摂取が早くなり、その分多くの情報を
得たいという欲求が高まっていくものです。
「物語の続編を読みたい」という気持ちが出てくればしめたもの。
これこそが好奇心の発露です。
ここから同じ著者の別の物語などに広がっていくことになります。
また物語だけでなく説明的文書においても同様。
生き物、天体、科学、芸術、スポーツ、その他趣味に関わること、、、何でもよいので
本を読む、そしてそこでより深めたり広げたい知識に関する本を見つけ出し読んでみる、
こうして興味の連鎖を広げていくことができるのが読書なのです。
読書好きにするための第1の方法は「読み聞かせ」です。
小学校高学年より上の学年の保護者の方には
「今さら?」と思われてしまうかもしれませんね。
「読み聞かせ」というと幼児や小学校低学年の子供に対して絵本や平易な物語を読んで
聞かせるイメージがあるかもしれません。
しかし、私は小学校高学年いや中学高校生にも読み聞かせは効果があると確信しています。
ただし、題材は短くて内容の濃いものを選ぶ必要があります。
短編物語・小説、その他セクションごとに短い文章がまとめられたタイプの本などは
読み聞かせに最適です。
以下、おススメの書籍をご紹介いたします。
10分間で読める 宮沢賢治短編集
星新一ショートショートセレクション(全15巻セット)
天声人語 2021年 1月-6月
幼児~低学年の子を寝かしつけるためにベッドで本を読んで聞かせてあげるのが
読み聞かせのイメージとして定着している思います。
一方で私が推奨する読み聞かせは大人と子どもののコミュニケーションの一環として
行うもので、リビングや食卓など家族が一緒に過ごす場所で行ってもらうイメージです。
大切なのは「大人」と「子ども」のコミュニケーション。
大人が読んで聞かせる作業自体は10分程度が適切でしょう。
読んだ内容について「大人」と「子ども」で話をすることが非常に重要です。
「この部分の意味は分かった?」
「この言葉の意味知ってる?」
「なぜこのときこの人物はこんなこと言ったんだろう?」
「最後のセリフな何を意味してるんだろうね?」
・・・同じ文章を親子で読み、内容を深堀する経験こそが読書の面白さを
子供に実感させ、読書を好きにさせる秘訣です。
高学年以上になった子と一緒に読み聞かせをするのは
少し照れくささなどの抵抗があるかもしれませんが、まずは思い切って
「ちょっとこの本一緒に読んでみない?」と踏み出してみましょう。
第2の方法は「ジャンル選択」。
読書が好きになれない子の大半が
「読書」イコール「難しくてつまらない内容を我慢して読む」というイメージをお持ちです。
この「難しくてつまらない」イメージを「少し難しいけど面白い」に置き換えられるか
どうかが重要です。
ポイントはお子さんが「面白い」と感じるものが何なのか?という部分。
読書が好きでなくても興味が持てる可能性が高いジャンルをご紹介します。
読書は嫌いだけどアニメやドラマ、映画は好き、という子は多いもの。
こういったメディア視聴でも前述の「常識」が見についていく可能性は十分ありますので
過度に長時間の視聴にならないのであれば、否定する必要はありません。
一方でできることであればそれらを文字に置き換えても読み切れるような力を付けてほしい。
そういった意味で原作やノベライズ物をお勧めします。
映像で流れてくるものとは違った印象を持つことに面白さを感じたり、
映像では気づかなかった細部の描写、映像では描かれない人物のバックグラウンドなどが
描かれているなど、お子さんの興味をそそる内容が多く含まれているものです。
ちなみに最近この半年で私が読書が苦手な生徒さんに
おススメして読書にどっぷり漬からせることに成功した本は以下の3冊。
参考までにどうぞ。
劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ みらい文庫版
天気の子 (角川つばさ)
日曜劇場 日本沈没―希望のひと―(上) (扶桑社文庫)
良質な漫画は読書の入り口としては歓迎できるものです。
良質な漫画とはストーリーや人物設定がしっかりしていて、深みのある内容であることが
前提かと思います。
最近のマンガには疎いのでご紹介できるのがかなり古い作品になってしまいますが、
以下のような宮崎駿さんや手塚治虫さんなどの作品はシナリオが秀逸で引き込まれます。
読書の苦手なお子さんにもお勧めできます。
風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット
火の鳥 全12巻セット
近年はその他にも歴史ものを代表とするような「学習マンガ」シリーズが非常に充実
していますのでこういったものに触れさせていくことも読書好きに導くための
良い手段となります。
その他、絵本、空想科学読本シリーズ、スポーツ選手関連の本など、
お子さんの興味のアンテナに引っかかりそうなものはすぐに与えてみることをお勧めします。
ジャンルの制限をせずに何でも読ませてみるというのがポイント。
銀河鉄道の夜 ハードカバー
空想科学読本
大谷翔平86のメッセージ (知的生きかた文庫)
お子さんの興味に合わせて様々な本を探してあげてください。
きっと夢中になれるものがどこかに埋もれているはず。
それを見つけてあげるのが親御さんの大切な役割です。
3のつ目は「環境づくり」です。
読書好きな子の保護者はほとんど例外なく読書が好きです。
日常的に親が本を読む姿を見てそれに影響を受ける、あるいは本が身近にあふれる環境に
身がおかれているということが要因でしょう。
逆に言えばそのような環境をつくることが子どもを読書の世界に誘うことになるわけです。
具体的には以下の3つ。
・保護者が子どもと読んだ本を共有する(親子で同じ本を読む)
・本をプレゼントにする。
・リビングや食卓にブックラックや本棚を置く。
これらを意識してお子さんにとって本が日常生活の一部に溶け込むように工夫をする。
読書をすることが何か特別な行動ではなく、食事をとり、お風呂に入り、歯を磨くなどの
生活の一部の中の自然なルーティンに組み込むことが大きなポイントです。
SCIVEI 本立て ブックスタンド 伸縮自在 卓上収納 ブックエンド
こちらは我が家の食卓にあるブックエンドです。
伸縮自在なのでスペースを取らず読みかけの本をいつでもおいておけるので重宝しています。
子どもが読みかけの本もこのブックエンドのある食卓に置くようにすることで
同じ本を一緒に読める、食事中に同じ本に関する話題で話ができる、
などメリットが多いです。強くお勧めします。
ここまでいかがだったでしょうか?
なかなか読書が好きになれないお子さんも工夫次第で必ず読書をするようになります。
「うちの子は性格的に読書に向いてない」なんて言わずに
様々なアプローチを試してみていただきたいと思います。
本の世界にの向こう側にあるワクワクするような未知の世界を
多くの子供たちに知ってもらいたいと願っています。
この記事がお役に立てていれば幸いです。