【2026年度 海陽中等教育学校 特別給費生入試】国語 徹底解説


はじめに

この記事では、2026年度 海陽中等教育学校 特別給費生入試 国語の文章と設問を徹底解説します。

試験時間は60分。難関校の特別給費生入試として、読解力・思考力を問う良問が揃っています。

大問は2つ構成:

  • 大問1:【文章Ⅰ】高橋敬一「『自然との共生』というウソ」+【文章Ⅱ】山根英樹「グローバル職人になろう!」(説明文・論説文)
  • 大問2:伊集院静「少年譜」(物語文)

それぞれ詳しく見ていきましょう。


大問1【文章Ⅰ・Ⅱ】説明的文章の解説

文章の概要

【文章Ⅰ】高橋敬一「『自然との共生』というウソ」(祥伝社)

要約: 人間を含むすべての生物には認識能力に「限界」がある。その限界は①本能によるものと②学習によるものの2種類に分けられる。本能は定められた手順では優れた能力を発揮するが、予定外の事態には対応できない。また学習は経験に基づくため、個人的で限定されたものにならざるを得ない。グローバリゼーション(=均一化)は価値観の違いを解消する方策だが、「すべての人が個性を発揮しながら平和的に共存する」というのは生物の原則を無視した絵空事である。


【文章Ⅱ】山根英樹「グローバル職人になろう!」(中央経済社)

要約: 日本を覆う閉塞感を打破するには、若者が海外も視野に入れて進路を選べる社会になることが大切だ。筆者自身、アメリカで起業した経験や、海外で活躍する日本人職人たちとの出会いから、異文化での経験が考え方を改めるきっかけになると確信した。世界はフラット化しており、海外経験を日本にフィードバックすることで日本は元気を取り戻せる。


📊 段落構成と筆者の主張【図解】


重要ポイント解説

✅ 筆者の主張を示す文末表現

【文章Ⅰ】では以下の表現に注目:

「人間という生物種は、~かなり特殊な状況といっていい

「人間は自分で思っているよりもはるかに偏った見方しかしていない

「すべての人や集団が個性を発揮し、かつ何物も失わずに平和的に共存するなどというのは生物の原則を無視した絵空事にすぎない

【文章Ⅱ】では:

「日本人が国の内外を問わず自分の進路をもっと自由に選べる社会になれば良いと思います

「きっと日本は元気を取り戻すだろうと確信しました


✅ 対比的な表現

両文章は「グローバリゼーション」をテーマにしていますが、捉え方が正反対です。


✅ 【文章Ⅰ】の論理構成

本能による限界

  • ファーブルの狩りバチ実験を具体例として提示
  • 「本能によって定められた手順では人間も及ばない知恵を見せるが、予定外の事態には対応できない」

学習による限界

  • 学習=「本能を現在の環境に合わせるフォーマット作業」
  • 経験に裏打ちされない知識は身につかない
  • 認識方法は「きわめて限定された個人的なもの」

結論

  • 人間は自分の認識様式に縛られていることに気づかないまま、自分の価値観を他者に押しつけてしまう

設問解説

問一【傍線部①の具体例を選ぶ問題】

正解:エ

傍線部①「私たち自身は、あくまでも私たちにまとわりつくごくごく狭い世界の常識から自由にはなりえない」の具体例を選ぶ問題。

ポイント:「狭い世界の常識」=自分たちの文化圏で当然のこととして受け入れている習慣や価値観のこと。

  • ア:法律による規制の話で、「常識」の具体例としては不適切
  • イ:「注意して立たせる人」という行為への評価の話で、論点がずれている
  • ウ:「疑問が持たれつつある」は文章の趣旨に合わない
  • :日本では頭を下げる挨拶を「違和感なく受け入れている」=まさに「狭い世界の常識」✅

問二【「本能の奴隷」の説明】

正解:エ

「本能の奴隷」とは、生物があらかじめ定められた行動パターンに従わざるを得ない状態のこと。

解法のコツ: 直前の文脈「融通のキかなさ」「定められた手順を進めている限り」などから読み取る。


問三【記述問題・70字以内】

正解例:

生物の驚異的な本能のみに目を向ける番組制作者は、ファーブルの指摘した想定外の事態に対応できない生物の本能的限界に気づいていないから。(65字)

解法のコツ:

  1. 「彼ら」=番組制作者であることを明確にする
  2. ファーブルが「本能のすばらしさ」だけでなく「融通のきかなさ」も発見したことを踏まえる
  3. 「追いつかない理由」を因果関係で説明

問四【「彼らの感覚では彼ら自身が世界の覇者だ」の説明】

正解:イ

各生物は自分の感覚・認識では自分が世界を支配していると思い込んでいるが、実際にはそうではない、という意味。

注意: アの「微々たる存在として見下している」やエの「人間が生物界の下層に位置している」は本文に根拠がない。


問五【「学習」の結果として不適切なもの】

正解:ア

アは「認識能力の限界に気がつく」だが、本文では「学習によってむしろ限定的な価値観が形成される」と述べられており、学習の結果として「限界に気づく」わけではない。


問六【空欄⑤に入る言葉】

正解:イ 最適化

文脈:「本能を現在の環境に合わせて( ⑤ )する必要がある」

「フォーマット作業」「環境に合わせる」という説明から「最適化」が適切。


問七【記述問題・70字以内】

正解例:

生物の本能は感覚で捉えられないものを意識できず、学習も個々の経験に基づく以上、人間の認識様式はきわめて限定的であることに気づいていないから。(69字)

解法のコツ:

  • 本能による限界と学習による限界の両方に言及
  • 「気づいていないから」押しつけてしまう、という因果関係を明示

問八【会話文の空欄補充】


大問2【物語文】伊集院静「少年譜」解説

作品情報

  • 題名:「少年譜」
  • 筆者:伊集院静(いじゅういん しずか)
  • 出典:文春文庫

👥 登場人物と人物像

主要人物


📍 場面の変化

この物語は現在と過去(回想)が交互に描かれる構成になっています。

時系列整理

  1. 【現在】 古備前が割れる事件発生
  2. 【回想・昭和49年】 少年イサムが花壺を壊す
  3. 【回想】 海辺で絶望する少年
  4. 【回想】 校長先生に救われる
  5. 【回想・もっと前】 校長と柿の木のエピソード
  6. 【現在】 大室邸訪問、桃治夫妻との会話
  7. 【現在】 真実への気づき

最も古い回想シーン:「それは一年前の秋のことで~」(柿の木のエピソード)


💫 心情変化フローチャート


📋 心情表現一覧


比ゆ表現とその解説

★「暗黒の海からは波音だけが聞こえていた」

種類: 情景描写による心情の暗示

解説: 「暗黒」という言葉が、少年の絶望感・先が見えない不安を表現しています。「波音だけ」という表現は、孤独感や、自分を追い詰める何かが迫ってくる感覚を暗示しています。

★「狐につままれたような気分」

種類: 慣用句

解説: 思いがけないことに出会い、わけがわからなくなる様子。古備前が贋作だと聞いて驚き、混乱しているイサムの心情を表しています。

★「春の風が一瞬、イサムの顔を叩いた気がした」

種類: 比喩的表現

解説: ハッと気づいた瞬間を表現。桃治夫妻が「贋作だ」と嘘をついて悠をかばってくれたのではないか、という真実に気づいた衝撃を表しています。


主題

この物語の主題は**「思いやりの連鎖」**です。

  1. 校長先生がイサム少年を救った言葉 「この学校には子供がこわして困るようなものは何ひとつ置いてありません」
  2. イサムが悠に対してとった態度 「ユウ、欠けらを拾おうか」
  3. イサムが桃治夫妻に語った言葉 「うちの店にあるものでお客さまと店の者がこわして困るものは何ひとつありませんから」

校長先生から受けた優しさが、イサムを通じて悠に受け継がれていく。そして桃治夫妻もまた、「贋作」と嘘をついてまで悠を守ろうとした(と示唆される)。

物を大切にすることより、人を大切にすること―これがこの作品を貫くテーマです。


設問解説


問二【「ユウ」を指す表現】

正解例(3つ):

  • あんた
  • 職人
  • あの子
  • 若衆
  • 小僧さん

解法のコツ: 文脈から悠を指している表現を探す。ミサエの「あんた」、イサムの「職人」「若衆」、桃治夫人の「小僧さん」など。


問三【イサムの気持ち】

正解:ウ

イサムは一瞬にして事の次第を理解し、悠がいちばん辛いことをわかっているからこそ、責めることをしたくないと感じている。

注意: アは「ユウのことをよく知らない人間」という部分が不適切(ミサエは悠をよく知っている)。


問四【記述問題・60字以内】

正解例:

花壺をこわしたことを何一つ責めようとしなかった校長先生のように、自分もユウの悲しみを受け止めてやるべきだと思ったから。(58字)


問五【「暗黒の海」の場面でのイサムの気持ち】

正解:エ

絶望感にひたっている状態。「懸命に働く母のために我慢してきたが、その母を哀しませることになってしまった」という点がポイント。


問六【「大粒の涙」の場面での少年の気持ち】

正解:ア

「取り返しのつかないことをしでかし、母親に申し訳ないと思っていたところに、校長先生から寛大な言葉をかけてもらい、張り詰めていた思いが一気に解放された」


問七【文の挿入位置】

正解:声だった。

挿入する文:「少年は声のする方に泣きながら走り出した。」

「母の声だった。」の直後に入れるのが自然。


問八【最も古い回想シーン】

正解:それは一年(または「以前、少年」でも可)

「それは一年前の秋のことで校内にある柿の木になった柿の実を取ろうと~」の部分。花壺事件よりさらに前の出来事。


問九【記述問題・150字以内】

正解例:

校長の笑いは、壺を割ってしまったイサムとその母の気持ちを軽くしてやろうとする笑いで、ミサエの笑いは悠の成長をわが子のように喜ぶ笑いである。桃治と夫人の笑いは、イサムのいさぎよい言葉に感心し、古備前を贋作だと嘘をついたことをおかしく思い出しての笑いで、どの笑いも相手への思いやりの気持ちが根底にある。(148字)


まとめ

この入試問題は、説明文と物語文の両方で「深い読み」を求める良問でした。

説明文のポイント:

  • 2つの文章を比較し、同じテーマに対する異なる見解を読み取る力
  • 筆者の主張を支える論理構造を把握する力

物語文のポイント:

  • 現在と過去の時間軸を整理する力
  • 心情表現(直接表現・しぐさ・情景描写・会話)から心情を読み取る力
  • 複数の場面に共通するテーマ(主題)を見出す力

特に物語文では「物が壊れる」という出来事を通じて、「人への思いやり」という普遍的なテーマが描かれていました。「何ひとつこわして困るものはない」という言葉が、校長→イサム→(暗示的に)桃治夫妻へと受け継がれていく構造を読み取ることが大切です。


受験生のみなさん、最後まで読んでくださりありがとうございました!

中学受験の国語では、「表面的な読み」ではなく「深い読み」が求められます。文章の構造を意識しながら、筆者や登場人物の「本当に伝えたいこと」を読み取る練習を続けていきましょう。

頑張ってください!

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