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2026年度 桜蔭中 国語 入試問題解説

2026年度 桜蔭 国語 全問解説
【2026年度 桜蔭中学校】国語 入試問題 徹底解説|EduShift
2026年度
桜蔭中学校
国語 入試問題 徹底解説
説明的文章+物語文 金継ぎと「捨てる」 ファンタジーと孤立 全問解説

2026年度の桜蔭中学校・国語入試は、大問二題構成でした。大問一は藤原辰史氏へのインタビュー(説明的文章)、大問二は木村綾子「月の子」からの出題(物語文)です。どちらも記述問題中心の本格的な出題で、桜蔭らしい「読んで考え、自分の言葉で表現する力」が問われました。

大問一|藤原辰史氏へのインタビュー(説明的文章)

文章の概要

ミシマ社の「捨てないミシマ社」というレーベル(返品されて傷がついた本を「復活本」と名づけて再販売する試み)をきっかけに、藤原辰史氏へインタビューする形式の文章です(藤原辰史「九回裏の『捨てる』考」『ちゃぶ台12 特集:捨てない、できるだけ』所収)。

話題は、割れた器を金でつなぐ「金継ぎ」から始まり、「クズ」「ボロ」と呼ばれる役に立たなくなったものの扱い、生ゴミとコンポスト、徳島県上勝町のゼロ・ウェイストセンターでのゴミの分別へと進みます。最後は、地球の自然破壊を野球の「九回裏」にたとえ、SDGsをどう考えるかを語ります。

図解動画① 大問一の流れ:復活本・金継ぎ・かご・上勝町(約29秒・音声つき)

筆者(藤原氏)の主張の構造

この文章は、具体的なエピソードを積み重ねながら筆者の主張を浮かび上がらせる構成になっています。以下の段落構成図で整理しましょう。

桜蔭 2026 大問一 ― 文章構成図
説明的文章
導入
捨てないミシマ社と金継ぎ
返品されて傷がついた本を「復活本」として再販売するミシマ社の試みから、割れた器を金でつなぐ金継ぎへ。「傷跡に新しい生命が吹き込まれる」という世界観がある。
▼
具体例①
「クズ」「ボロ」と生ゴミ
「ゴミ箱」に入れて出すと密閉されて使えないとみなされるが、「クズかご」には隙間があり、クズはまた使える。生ゴミも野菜クズとして堆肥(コンポスト)にできる。
具体例②
上勝町のゼロ・ウェイストセンター
ゴミを45種類に分別。ゴミ捨ては長く女性が担ってきたが、ここでは「おじさんたち」が車で来てほいほいと分別して捨てていく。
▼
主張
傷や不完全さをそのまま愛し、捨てる行為を見直す
役に立たないと区別されたものを処分する考え方は、モノも生き物も人間までも捨ててしまう。傷や不完全さをそのまま愛することが、境界を超える心構え。SDGsは九回裏で連続ホームランを狙うようなもので、四球でいいから着実に、捨てるものを再利用していくしかない。
導入・問題提起
具体例①
具体例②
結論・主張

対比構造 ― 「捨てる」社会 vs「生かす」姿勢

この文章の根幹にある対比構造を図解します。藤原氏は「優劣をつけて、役に立たないものを処分する考え方」と「傷や不完全さをそのまま愛する姿勢」を対照的に描いています。

桜蔭 2026 大問一 ― 対比構造図
対比
「捨てる」社会
優劣をつけ、役に立たない・傷があるものは区別して処分する 「ゴミ箱」に入れて密閉し、もう使えないものと見なす モノも生き物も、人間までをも捨ててしまう
VS
「生かす」姿勢
傷を消さずに生かし、元にはなかった新しい魅力をつくる(金継ぎ) 「クズかご」の再利用、上勝町の45種類の分別 傷や不完全さをそのまま愛し、地道に捨てるものを再利用していく
筆者の主張 → 傷や不完全さをそのまま愛し、「捨てる」行為を見直して再利用していく
図解動画② 大問一の主張:「捨てる」社会と「生かす」姿勢・九回裏(約29秒・音声つき)

重要語句・表現

  • 復活本 ― ミシマ社が、返品されて傷がついた本に付けた呼び名。傷のある本をもう一度売り出す。
  • 金継ぎ ― 割れた器を漆でくっつけ、傷に金を塗る技術。傷を消さずに生かし、「傷跡に新しい生命が吹き込まれる」世界観がある。
  • ゼロ・ウェイスト ― ゴミをなくすことを目指す取り組み。文中では徳島県上勝町のセンターが登場する。
  • SDGs ― 持続可能な開発目標。藤原氏は「九回裏でまだ連続ホームランを狙っている」と、たとえで語る。
  • 密閉(問三に関連) ― すきまなくふさぐこと。「ゴミ箱」は密閉、「かご」にはすきまがある。

設問解説

問一 漢字(A・B・C)
線部A〜Cのカタカナを漢字に直しなさい。
A:模様(もよう)
B:重油(じゅうゆ)
C:無敵(むてき)
漢字のポイント 「模様」の「模」は「木へん」。「重油」は「重い油」。「無敵」の「敵」は右側が「攵(のぶん)」の形です。
問二 「傷跡に新しい生命が吹き込まれる」とは
線部①「傷跡に新しい生命が吹き込まれる」とはどういうことですか。説明しなさい。
傷があるからといって価値を認めずに捨てるのではなく、傷を生かして元のものにはなかった新しい魅力をつくり出すことを楽しむ価値観。
解法のコツ 金継ぎは、割れて傷の入った器を漆でくっつけ、傷に金を塗る技術です。ふつうなら「傷がある=価値がない=捨てる」ところを、傷を消さずに生かします。「傷を理由に捨てない」ことと「傷から新しい魅力を生み出す」ことの二つを入れましょう。
問三 【②】に入る言葉(三文字以内)
【②】に入る言葉を、三文字以内で答えなさい。(「かごには【②】があるじゃないですか。」)
すきま
根拠 「ゴミ箱」に入れて出すと密閉されて、もう使えないと見なされます。「クズかご」は入れて集めるだけで、外とつながる「すきま」があるから、クズはまた使うことができます。
問四 「おじさんたち」の思い
線部③とありますが、「おじさんたち」はどのような思いでゴミを捨てていると藤原氏は見ていますか。説明しなさい。
ゴミ捨ての仕事は、役に立たないものを処分するだけの汚くつまらない家事ではなく、地球環境を守るための価値ある作業であり、慣れてしまえば気軽に楽しくできることだから、積極的にないたい、という思い。
差がつくポイント ①汚くつまらない家事ではない ②地球環境を守るための価値ある作業 ③慣れれば気軽に楽しくできる。この三つを入れて「積極的に担いたい」という思いにつなげます。
問五 「ヒビをそのまま愛する」とは
線部④「そういうヒビをそのまま愛するということは、モノと非モノ、生き物とモノ、あるいは人間と生き物という境界を容易に超えていく心構えだと思います」とはどういうことですか。たとえに注意して説明しなさい。
優劣をつけ、役に立たないと区別されたものは処分するという考え方は、モノも生き物も、人間までをも捨ててしまう。不完全さや傷をそのまま愛することで、このような考え方からぬけだすことができる、ということ。
記述のポイント 「ヒビ」は、返品された本の傷のたとえであり、人間の不完全さや傷のことでもあります。前半で「区別して処分する考え方は、人間まで捨ててしまう」、後半で「傷をそのまま愛することでそこからぬけだせる」と二段で書きます。
問六 「九回裏」のたとえ
線部⑤「『SDGs』という標語は、九回裏でまだ連続ホームランを狙っているわけですよ。でも、それはありえない。四球でいいから着実に塁を埋めていくしかない。」とはどういうことですか。説明しなさい。
地球の自然破壊の度合いは、もう後がないというくらい深刻な状態にある。SDGsの理念はたしかに美しく、一気に問題を解決できるかのように見えるが、大量生産・大量廃棄の経済システムを変えるものではなく、解決にはつながらない。ものを捨てるという日々の生活の行為が自然を破壊しているのだから、捨てることの意味を考え直し、地道に捨てるものを再利用していくべきだ、ということ。
最高得点のために ①自然破壊は「九回裏」の深刻さ ②SDGsは美しいが、連続ホームラン(一気の解決)にはつながらない ③日々の「捨てる」行為を見直し、四球のように地道に再利用する、の三段で書きます。

大問二|木村綾子「月の子」(物語文)

作品情報

木村綾子「月の子」(『本が繋ぐ』所収)より出題。作中に登場する『はてしない物語』はミヒャエル・エンデ作のファンタジー小説(上田真而子・佐藤真理子 訳、岩波書店)です。

文章の概要

語り手の「私」は、小学五年生のとき、クラスでいじめられていたイトケ(伊藤恵子)と同じ教室にいました。イトケは貧しく、少し臭うと決めつけられて、みんなから遠ざけられています。「私」は調子はいいのに臆病で、イトケがいれば自分が最後のひとりにならずにすむと考え、その罪悪感をごまかすために図書室で過ごすことが増えていきます。

給食の時間、イトケの前後が空く光景に腹を立てた「私」は、後ろの子の背中を押し、「べつに全然臭くない!」と声を張りますが、身勝手に腹を立てただけで、その日から「私」もイトケと並んで孤立します。図書室で読んだ『はてしない物語』のバスチアンの能力に憧れた「私」ですが、無視が解けて友達の輪に戻ると、その続きを読もうとしなくなります。卒業式の帰り道、イトケに「あんたのことが一番キライだった」と言われ、大人になった今も、記憶のなかでイトケは「私」を睨み続けています。

登場人物と関係性

図解動画③ 大問二の人物関係:わたし・イトケ・バスチアン(約28秒・音声つき)
桜蔭 2026 大問二 ― 人物相関図
物語文
「私」
小5女子/語り手
調子はいいが臆病
クラスで無視される
図書室で読書
イトケ
伊藤恵子
貧しく少し臭うと
避けられる
いじめられている
バスチアン
『はてしない物語』
の主人公
望み通りに世界を
変える力を授かる
クラスメイト
イトケを遠ざける
給食の事件のあと
「私」も無視する
のちに輪に迎える
「私」 → イトケ 最後のひとりにならないよう利用し、後ろめたさを図書室でごまかす
イトケ → 「私」 ずるさや弱さを見抜き、「一番キライだった」と言う
「私」 → バスチアン 能力に憧れる。友達の輪に戻ると続きを読まなくなる
クラスメイト → イトケ 臭うと決めつけ、遠ざける
語り手
いじめられた子
作中作の人物
周囲の人物

心情の変化

「私」の心情は、給食の事件→孤立と図書室→無視の解除→卒業式のイトケの言葉→大人になった今、と動きます。「弱さ」がどう表れ、どう自覚されるかを追いましょう。

図解動画④ 大問二の心の動き:給食・孤立・解除・卒業式・現在(約34秒・音声つき)
桜蔭 2026 大問二 ― 心情変化表
物語文
場面①
給食
イトケの前後が空く光景に腹を立て、後ろの子を押し、「べつに全然臭くない!」と声を張る
±
庇ったようで、身勝手に腹を立てただけ→ その日から「私」もイトケと並んで孤立
問五に関連
場面②
孤立
クラス全員から無視され、図書室で『はてしない物語』を読む
-
つらさ・孤独→ 世界を望み通りに変える能力がほしい
問四に関連
場面③
解除
無視があっけなく解け、ふたたび友達の輪に迎えられる
+
この現実がそのまま続いてほしい→ 孤立しかけるバスチアンの続きは読みたくない
問四(中心)
場面④
卒業式
帰り道、イトケに「あんたのことが一番キライだった」と言われる
-
自分のずるさ・弱さを見抜かれた→ 保身し、悪意を向ける側にたったことの指摘
問五(中心)
場面⑤
現在
大人になった今も、記憶のなかでイトケは「私」を睨み続けている
-
自分の弱さを受け入れて、変わることができていない→ バスチアンのようにはなれていない
問六(中心)
+ プラス心情
- マイナス心情
± 混在

比喩表現・象徴

  • 『はてしない物語』のバスチアン ― 望めばその通りの世界が立ち現れる能力を授かりますが、仲間から孤立しかけていきます。「私」はその能力に憧れながら、友達の輪に戻ると続きを読めなくなります(問四)。
  • 記憶のなかのイトケ ― 「睨み続けている」のは、「私」が自分の弱い部分を受け入れて、自ら変わろうとすることができていないと感じ続けていることを表します(問六)。
  • 「アウリン」(宝のメダル) ― 注3。ファンタージェンの女王・幼ごころの君の代理人を表す印で、授けられた者は願いをかなえることができる代わりに、記憶が消えていきます。

主題

この物語の主題 いじめられる子を利用し、身勝手に庇い、輪に戻れば保身に走った「私」は、自分のずるさや弱さを、大人になった今も引きずり続けている。傷や弱さをそのまま受け止めて変わることの難しさが描かれている。

設問解説

問一 漢字(A・B・C)
線部A〜Cのカタカナを漢字に直しなさい。
A:独特(どくとく)
B:刷ら(すら)
C:興奮(こうふん)
漢字のポイント Bは送りがな「ら」まで書きます(「刷られた」)。「独特」の「独」はけものへん。「興奮」の「興」は画数が多いので、丁寧に。
問二 【ア】「天邪鬼な」の意味
【ア】「天邪鬼な」の意味を次から選び、番号で答えなさい。(1 意地が悪い/2 ひねくれた/3 気が小さい/4 むじゃきな/5 人見知りの)
2(ひねくれた)
解説 天邪鬼とは、わざと人の言うことに逆らう、素直でない人のこと。1「意地が悪い」は人を困らせる気持ちが強すぎ、「私」はそこまではしていません。
問三 【イ】にあてはまる漢字二字
【イ】にあてはまる漢字二字の言葉を考えて答えなさい。(「その【イ】感をごまかすために」)
罪悪(感)
ヒント イトケがいれば自分は最後のひとりにならない、と、イトケを自分の安心のために利用している。その後ろめたい気持ちが「罪悪感」です。
問四 続きを読もうとしなかった理由
線部①「その能力は私をひどく渇望させた」のような「私」が、線部②「けれど私はその続きを読もうとしなかった」ようになったのはなぜですか。説明しなさい。
クラス全員から無視されてつらい状態にある「私」は、バスチアンが授けられた、世界を望み通りに変える能力を欲していたが、ある日ふたたび友達の輪に迎えられた。この現実がそのまま続くことを強く願う「私」は、仲間から孤立しかけているバスチアンが、もっと孤立するかもしれないこの先の物語は読みたくないと思ったから。
差がつくポイント ①無視されていたときは、世界を変える能力がほしかった ②友達の輪に戻り、この現実が続くことを願うようになった ③孤立しかけるバスチアンの続きは読みたくない。前と後の変化を書きます。
問五 イトケの言葉の受け止め
線部③「あんたのことが一番キライだった」というイトケの言葉を、「私」はどのように受け止めたのでしょうか。説明しなさい。
給食の事件のとき、一見、イトケを助けようとしたふうに見えた「私」の行動は、実は自分の気分のためだけのものであり、イトケを思ってしたことではない。また、まわりから無視された「私」が、再び友達の輪に戻ったとき、二度と輪からはずれないように保身し、イトケに悪意を向ける側にたった。そのようなずるさや弱さをイトケは見抜いて、この言葉でするどく指摘したように「私」は受け止めた。
解答の骨格 ①給食の事件=助けたふうで、実は自分の気分のため ②輪に戻ったあと=保身し、悪意を向ける側に ③そのずるさ・弱さを見抜かれ、するどく指摘されたと受け止めた。
問六 「睨み続けている」とは
バスチアンは、忘れてしまった現実世界での自分の姿を、物語の結末では受け入れて、自ら変わろうとします。線部④「記憶のなかで、イトケは私を睨み続けている」とは、どういうことですか。説明しなさい。
「私」は、調子はいいけれど臆病だったり、頑固だったり、天邪鬼だったりして、自分でもコントロールできない。それは、いじめられたり孤独になったりすることを何よりもおそれるからであり、イトケがいじめられているのを見ることも、自分がいじめられるのを思い出してたえられない。それが、給食のときの事件にもつながり、結果的にイトケをないがしろにした。イトケににらまれ続けているように「私」が感じるのは、そのような自分の弱い部分を受け入れて、自ら変わろうとすることが、バスチアンのようにはできていないと考え、そのことを引きずり続けているということ。
最難関の記述問題 ①「私」の弱さ(臆病・頑固・天邪鬼)②その原因(いじめられ孤独になることへのおそれ)③給食の事件でイトケをないがしろにした ④バスチアンのように、弱さを受け入れて変わることができていない、の順に書きます。

まとめ

2026年度 桜蔭中 国語のポイント 大問一は、金継ぎや上勝町の話から「傷や不完全さをそのまま愛する」ことを語るインタビュー。大問二は、いじめの記憶を通して、自分のずるさや弱さを受け入れて変わることの難しさを描いた物語でした。二つの文章は「傷や弱さを、捨てるのか、受け止めるのか」という問いでつながっています。

記述は7問。「たとえ」が何のたとえかを言いかえること、人物の行動の理由を弱さや願いの根っこまでさかのぼって書くことが得点を分けます。

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