2026年9月27日(日)に実施された後期第1回合格力判定サピックスオープン(6年生)の国語を、全問解説します。大問1は蒼沼洋人さんの物語文『ぼくがぼくであるために』(ポプラ社)、大問2は唐沢かおりさんの論説文『「気が利く」とはどういうことか―対人関係の心理学―』(筑摩書房)、大問3はこの二つの文章を読んだ生徒たちの会話を手がかりに解く問題、大問4は漢字の読み書きです。この記事では、いじめを受ける山田を前にしたアキの心の動きと、「気が利く」ことの良い面・悪い面をたどる論の流れを、情景アニメ入りの図解動画で整理してから、根拠つきで一問ずつ解いていきます。
出題構成と全体の講評
- 大問1は物語文で、設問は7問(問二・問四は小問つき)、配点は58点です。記述は問六(16点)の1問だけで、ほかは、生き物を表す語(問一)、慣用句(問二)、記号選択(問三・問五・問七)、記号を二つ選ぶ問題と本文からの抜き出し(問四)です。
- 大問2は論説文で、設問は7問、配点は54点です。空らんの接続語(問一)、語句の意味(問二)、弊害をすべて選ぶ問題(問三)、選択(問四〜問六)、そして記述の問七(16点)が出ています。
- 大問3は、大問1と大問2をつなぐ問題で、設問は3問、配点は18点です。抜き出し(問一)、四字の言葉の抜き出し(問二)、選択(問三)です。近年の入試で増えている「二つの文章を関連づける」形式の練習になります。
- 大問4は漢字の読み書きで、10問・20点です。
- 合計は150点です。記述は大問1問六と大問2問七の2問(32点)だけで、残りは選択・抜き出し・語句です。ただし、選択肢は長く、本文の言葉と一つずつ照らし合わせる力が問われます。
この回は、「相手のために動くこと」と「自分の本音」の折り合いを、物語と論説の二つで読み取らせています。大問1のカギは、アキが本当にいらだっていた相手が、山田ではなく「なにもできなかったむかしの自分と今の自分」だったこと。眉村の「ひとりじゃ、どうしようもないときがある」という言葉が、山田を馬鹿にしていた自分の姿を映す鏡になりました。大問2のカギは、「気が利く」ことには良い面があるものの、過剰になると本音の抑え込み・評価と排除・先回りによる成長の妨げという弊害があるという筆者の整理です。そして大問3では、山田に「仲間だもんな」と迫る針谷たちの場面を、論説文の「同調圧力」でとらえ直します。大問1の場面と大問2の言葉を結びつけられるかが、この回の得点差になります。
大問1 物語文 蒼沼洋人『ぼくがぼくであるために』
あらすじと場面の整理
主人公の亜記(アキ)は、小さいころから「女の子のようにかわいい」と言われてきた男の子です。小学校6年生のとき、容姿のことでいじめられ、通っていたバレエ教室もやめてしまいました。知り合いのほとんどいない中学校に進学しますが、状況は変わりません。筋トレをして学ランを着ても、かわいいと言われてしまう。そんなアキが心の中で願うのが、「ゴリラになりたい」ということです。
中学に入って2か月がたったある日、アキは同じグループの針谷(はりや)・鈴川・東、そして山田の5人でいます。山田は、身長180センチ・体重95キロという大きな体をもつのに、針谷たちのいじめに抵抗せず、変な笑みを浮かべてやりすごすだけです。アキはそんな山田に「ほんといらいらする」と感じていました。
転機になるのは、アキが同じ野球部の眉村(まゆむら)と話す場面です。眉村は、去年、不登校になったアキを「守る」と言って救ってくれた人でした。その眉村の言葉がアキの心に刺さります。そして、山田のカバンから古いDVDが見つかって針谷たちがはやしたてる場面で、山田がふりしぼるように「ぼくはもう、おにぎりって呼ばれたくない」と言い、アキはその声を受けとめて針谷に立ち向かいます。
かわいいと言われるのがいや
「ゴリラになりたい」
いじめられても笑ってやりすごす
アキは「ほんといらいらする」
針谷が中心で、山田をいじめる
「俺ら、仲間だもんな」と迫る
去年、不登校のアキを救った
「ひとりじゃ、どうしようもないときがある」
問一 生き物を表す言葉(a・b)各3点
a・bには「生き物を表す言葉」がひらがなで入ります。ことわざ・慣用句の知識を、文脈と合わせて確かめます。
- a 「張り子の〔a〕」 山田の大きな体を、アキは「でくのぼう」「無用の長物」と並べて悪く言っています。「張り子の虎」は、首を振る虎の作り物のことで、見かけは強そうでも中身は弱い人のたとえです。体は大きいのに戦おうとしない山田をあらわすのにぴったりなので、答えは「とら」です。
- b 「〔b〕の鳴くような声」 針谷に「ぼくはいじられてるだけでーす、っていえ」とせかされて、山田がやっと出した声の場面です。とても小さくて弱々しい声のたとえは「蚊の鳴くような声」で、答えは「か」です。
問二 慣用句「胸」各3点
(1)は、泣きそうな顔の山田を見ているアキの気持ちに合う「胸〔 〕」を選ぶ問題です。針谷たちに囲まれてDVDを見つけられ、泣きそうな山田を見て、アキは心が痛みます。
- ア 胸を張る → 誇らしく堂々とするときに使います。
- イ 胸がつぶれる → 悲しみや心配で胸が苦しくなるときに使います。この場面にぴったりです。
- ウ 胸をなでおろす → 安心するときに使います。
- エ 胸がおどる → わくわくして期待するときに使います。
(2)は、「胸」が入る慣用句を選ぶ問題です。ア「胸がすく」(気持ちがすっきりする)は胸が入ります。イ「腹を決める」とエ「腹をくくる」は「腹」、ウ「手がこむ」は「手」が入る慣用句です。
問三 「ぼくはゴリラになりたい」のときの亜記の思い6点
同じ表現がある1ページ10〜11行目の前後に注目して、理由をとらえます。アキは「かわいい」と言われることにうんざりしています。そして、ゴリラになれば「女みたい」なんて言われないだろうと考えます。つまり、周りにかわいらしい容姿をからかわれてきたことへの不満から、ゴリラのような男らしい見た目にあこがれているのです。イが正解です。
- ア 他人をいじめる人に立ち向かう強い心を持ちたい、という内容は、この場面では出てきません。
- ウ 「人間をやめてゴリラにでもなろう」と投げやりになっているわけではありません。
- エ 「大胆さが必要だ」と考えているのではなく、見た目に対するあこがれです。
問四 「ほんといらいらする」 アキのいらだち(1)6点・(2)6点
(1) 山田のどのようなところにいらいらしているか(二つ選ぶ) 線②の直前を見ると、アキがいらだちを覚えているのは、取りつくろったような山田の「笑顔」に対してだとわかります。針谷たちにいじめられて「蒼ざめている」のに、口元だけは「笑顔」を浮かべる山田の様子から、山田が自分のつらい気持ちをごまかしていることが読みとれます。また、針谷たちのいじめに対して「へんな笑みを浮かべて必死に耐える」だけの山田は、その大きな体を生かして抵抗することなく、その場をやりすごそうとするだけです。アキはそんな山田を、「嫌なら嫌っていえや」や「男だろ。なっさけねー」というように、いらだちと軽蔑を込めて指摘しています。
- ウ 針谷たちの嫌がらせが本当はつらいのに、笑っているだけで自身の気持ちにしっかり向き合えない気弱なところ。これが一つ目です。
- エ 体格に恵まれているのに、針谷たちに立ち向かおうとせず、笑ってやりすごすだけの不甲斐ないところ。これが二つ目です。
- ア 気まずさを笑ってごまかす「不誠実」さをアキが責めているわけではありません。
- イ 「男らしく手を貸した自分と違って」という自慢のような気持ちは、この場面のアキにはありません。
- オ アキは山田に助言しているのではなく、いらだちをぶつけているだけです。
(2) 山田のほかに、本当は何にいらいらしているか(21字以上25字以内・はじめの5字) これは大問1の最大のカギです。8ページ11行目で、アキは「ぼくがむかついていたのは山田じゃない」と気づきます。その直後に、答えの一文があります。「なにもできなかったむかしのぼくと、今のぼくだ」。かつていじめられて何もできなかった自分にも、いじめという状況をどうすることもできない今の自分にも、アキはいらだっていたのです。「なにもできなかったむかしのぼくと、今のぼくだ」は、読点を入れて22字で、条件の「21字以上25字以内」に合います。はじめの5字は「なにもでき」です。
問五 「助けてやろうにも、本人に少しもたたかう気がないなら、どうしようもなかった」6点
線③の前に描かれていることを確認します。エスカレートする針谷たちの嫌がらせに対して、山田は「たたかう」どころか、彼らに「仲間」と認められることに満足して、「笑いながら」その場をやりすごしています(6ページ5〜10行目)。「どうしようもなかった」という言い方には、そのような山田のあいかわらずの態度への「あきれ」(6ページ2行目)の気持ちが込められています。アが正解です。
- イ アキが、山田はさすがに立ち向かうだろうと期待していた、という場面は本文にありません。
- ウ 山田が「仲間」という言葉に少しうれしそうにするのは本文のとおりですが、アキは「途方に暮れて」いるのではなく、そんな山田にあきれています。
- エ アキは山田に「嫌なら嫌っていえや」と言ってはいますが、この場面の気持ちは「困惑」ではなく、あきれです。
問六 「眉村の言葉は、内角ぎりぎりをえぐるストレートみたいに、心の深いところに刺さった」 このときの亜記の気持ち16点
記述で16点を占める、大問1の最大の得点源です。本文の注に、「内角ぎりぎりをえぐるストレート」は打者の体の近くを狙った真っすぐな球とあります。ここでは、「痛いところを突かれた」ということです。
では、眉村の何が痛いところを突いたのでしょうか。眉村は「人はさ、自分はおかしいって、変わんなきゃって、わかっててもさ、ひとりじゃ、どうしようもないときがあるから」と言います(7ページ2行目まで)。この言葉が「刺さった」のは、それがアキにとって痛いところを突くものだったからです。次の材料を集めます。
- アキは、去年、バレエ教室にも学校にも行けなくなったとき、眉村に嫌がらせから救ってもらった(7ページ8〜14行目)。
- だから、「だれかの助けがないと、ひとりでは変われないときがある」ことを、自分が「一番わかってたはずなのに」と気づく(7ページ16〜18行目)。
- それなのに、いじめに抵抗できない山田を助けるどころか、「男じゃない」と馬鹿にしていた。
- 「一番男らしくないのは、ぼくじゃないか」(7ページ18行目)と、自分の情けなさを痛感した。
①前提 眉村に嫌がらせから救ってもらった自分には、ひとりで変わることの難しさがわかるはずなのに
②行動 いじめに抵抗できない山田を助けるどころか、馬鹿にしていた
③気持ち 自らの情けなさを痛感している
「刺さった」は、そのままでは答えになりません。「なぜ刺さったのか」を、①と②の「自分の過去と、自分がした行動」で必ず説明します。
問七 「黒一色の教室で、まだきらきらと輝くその光を、ぼくはしっかりと受けとめた」6点
比喩表現を含む線⑤を、ていねいに言いかえます。言いかえの手順は、「何を何にたとえているか」を一つずつ確かめることです。
- きらきらと輝くその光 直前の「その声」(9ページ15行目)、つまり針谷たちに抵抗した山田の「つぶやき」(9ページ13行目)にあたります。「ぼくはもう、おにぎりって呼ばれたくない」という、山田の必死の声です。
- 黒一色の教室 「耳ざわりな笑い声」(9ページ13行目)で山田の声をかき消そうとする、針谷たちの高圧的な態度が、教室全体を支配している様子です。
- しっかりと受けとめた アキは、山田が勇気をふりしぼって示した抵抗の意思を受けとめます。その直後に「はりやっ」(9ページ17行目)と声をあげていることからわかるように、山田の思いに応えて、アキ自身が針谷たちに立ち向かう決意をしています。
エが正解です。ア「自分一人だけでも味方になろうと意気込む」は、山田が「助けてほしい」というメッセージを発したわけではないので不適切です。イ「勝利を収めようとしている」、ウ「胸に刻みつけて忘れないようにしたい」は、アキが決意して声をあげる、という行動とずれています。
大問2 論説文 唐沢かおり『「気が利く」とはどういうことか―対人関係の心理学―』
要旨 「気が利く」ことには良い面と悪い面がある。望ましいのは、本音を抑圧しない社会
心理学者である筆者が、「気が利く」ことのネガティブな側面を確認したうえで、それを乗りこえて望ましい社会をつくっていくためのヒントを示した文章です。ポイントが列挙されるので、本文の構造を意識して読み進めましょう。
まず筆者は、「気が利く」ことのよい面を認めます。場の空気を読んで適切な行動をとる、自分の意見を控えて他者を立てる。そうした行為は、人間関係を円滑にし、集団の調和を保つうえで大きな役割を果たします。相手の立場に立って考え、言葉にされないニーズを察する「気が利く人」は有用な存在だと述べます。
しかし、「気が利くこと」が過剰に求められたり、それにこだわりすぎたりすると、さまざまな弊害が生じます。筆者はそれを三つ示します。一つ目は、自分の感情や欲求を抑え込む傾向が強まること。二つ目は、「気が利かない」という評価が個人の性格や能力を否定する形で使われ、自己肯定感の低下や、気づかいができない人の排除につながること。三つ目は、先回りして手助けしすぎることで、相手が自ら考え学ぶ機会を奪ってしまうことです。
そこで筆者は、どう考え、日常に取り入れるかのヒントを三つあげます。一つ目は、「気が利くこと」と「率直さ」「自己主張」を対立するものと捉えず、対話を続ける中で両立の道筋を探ること。二つ目は、気づかいを「完璧にこなすべきもの」とせず、「不完全でも誠実に向き合う姿勢」があればよしとすること。三つ目は、気が利くことを「相手のために何かをしてあげる」ことだけでなく、「より良い状態に至る手伝い」として、長期的に見ることです。
最後に筆者は、「気が利く」の定義を示したうえで、社会のありかたに目を向けます。気が利くことが「当然」とされ、過度に求められる社会では、それが「忖度」や「同調圧力」に変質する危険があります。本来、気が利くことは「相手の立場を尊重しつつ、自分の意志を持って行動すること」であり、目ざすのは、個人の自由を抑圧しない社会だと述べます。
問一 空らんA〜Cに入る接続語各2点
ア「さて」、イ「しかし」、ウ「たとえば」を、同じ記号は一回しか使えません。空らんの前後の関係を一つずつ確かめます。
- A 「〔A〕、先回りして手助けしすぎると、相手が自ら考え、学ぶ機会を奪ってしまうことがあります」です。直前で「気が利くことが人の成長を妨げる場合もあります」と大きな主張を述べ、Aのあとで具体的な場合を示しています。例をあげる言葉は、ウ「たとえば」です。
- B 直前で「良いこともあるが、問題をもたらすこともあるのは、世の中の多くのことにあてはまる。気が利くこともその一つだと考えれば、それで済む話かもしれない」と述べ、〔B〕のあとに「どのように考え、日常生活に取り入れていけば良いのかという問いが残ります」と続きます。「それで済む話かもしれない」に対して、済まない課題を示す言葉は、イ「しかし」です。
- C 「〔C〕、本書を締めくくるにあたり、『気が利く』とはどういうことかという問いへの応答としたいと思います」です。ヒントを示し終えて、話題を本書のまとめに切り替える言葉は、ア「さて」です。
問二 語句の意味(a〜d)各2点
語句の問題は、その語が使われている一文の中で、言いかえて意味が通る選択肢を選びます。
- a 「ニーズ」 「言葉にされないニーズを察して」と、「相手のニーズや状況を察知したうえでの配慮」があります。相手が必要としていることなので、ウ「要求」です。
- b 「ネガティブ」 「ネガティブな側面を持つのだと意識しておく」です。「ポジティブ」(肯定的)の反対の言葉なので、イ「否定的」です。
- c 「コントロール」 「人間関係をうまくコントロールできている」とあります。思いどおりに調整すること、つまりオ「制御」です。エ「機能」は「働き」のことで、意味が異なります。
- d 「タイミング」 「適切なタイミングで、それに応える言動をおこなうこと」です。ちょうど良い時機のことなので、ア「機会」です。
問三 「さまざまな弊害が生じる」 どのような弊害か(すべて選ぶ)6点
線①の「さまざまな弊害」は、本文で列挙されています。この設問は、列挙の順に本文と選択肢を対応させると解けます。
- 一つ目 「自分の感情や欲求を抑え込む」ことで、自分の精神的健康や相手との関係性を損なう可能性がある(13ページ6〜8行目)。→ エ「気遣いが過剰になるあまり、自分の素直な感情を表に出せなくなってしまい、人間関係が損なわれてしまうことがある」。
- 二つ目 「気が利かない」という評価を通じた自己肯定感の低下や、気づかいができない人の排除を招く可能性がある(13ページ9〜11行目)。→ カ「気遣いができないと否定的な評価が与えられ、自分で自分を認められなくなったり立場が悪くなったりすることがある」。
- 三つ目 「さらに」、先回りして手助けしすぎることで、相手が成長する機会を奪う可能性がある(13ページ12〜13行目)。→ ウ「気遣いをしすぎてしまうことで、相手自身が問題と向き合い解決することで得られる経験を損なってしまうことがある」。
ア「相手が成長する機会を奪うと、結果的に自分自身に不利な結果がもたらされる」は、「自分に不利な結果」という部分が本文にありません。イ「自分の本音が何かわからなくなる」、オ「場の空気が悪くなる」も、本文の弊害とはちがいます。
問四 「配慮と率直さのバランスをとることは、簡単ではないかもしれません」 両立のために大切なこと6点
線②の直後の「しかし」以降に注目します。まず、長期的な視座を持ち、「対話を継続する中で両立の道筋を探ること」が重要だと述べます(14ページ5〜6行目)。ただし、その際「自分自身の気持ち」を押し殺して「周りとの軋轢」を回避するだけにならないように注意すべきだと補足されています(14ページ7〜11行目)。つまり、自分の気持ちを大切にしつつ、相手との対立に向き合ったうえで、ねばり強く対話を重ねていくことが必要だと言えます。ウが正解です。
- ア 「自己主張を積極的に行う」ことだけを求めているわけではありません。
- イ 「時間をかけて話し合い、思いやる心を育む」という内容は、本文にありません。
- エ 「自己肯定感を高め、自らの意見をはっきり伝える」ことだけでは、相手との対立に向き合う姿勢が抜けています。
問五 空らん〔③〕に入る言葉6点
空らんの前を確認すると、「互いにそうすること」、すなわち、「気が利かない」ことを「責める」のではなく、「誠実さ」に目を向けて「評価する」ことによってもたらされる「関係」を考えればよいとわかります(14ページ13〜15行目)。それは、問三で確認した「気が利かない」と「評価」されることの苦しさから解放された関係性と言えます。イ「気が利くことに縛られる苦しさのない」が正解です。
- ア 「本音を抑圧せずに意見を言い合える」は、対話の話で、ここで問われている評価のしかたとはずれています。
- ウ 「行動を適切に評価しあえる」は、評価の話ですが、「気が利かない」ことを責めない、という点が抜けています。
- エ 「失敗を恐れずに気が利くことを実践できる」は、本文にありません。
問六 「気が利くことは、社会的な責任の一部として捉えられる」 どういうことか6点
線④の直後の傍線部を言いかえた表現(15ページ9〜10行目)に注目します。「気が利くこと」が「社会的な責任の一部として捉えられる」とは、それが社会において「当然とされる」ことを意味します。すなわち「気が利くこと」は、「集団の安定や円滑な運営」のために当たり前に実践すべき行いの一つとして位置づけられるのです。エが正解です。
- ア 「人々が協力しあうことで実現可能」という説明は、線④の直後の言いかえ(「当然とされる」)とずれています。
- イ 「最も重視すべきだ」とまでは言っていません。
- ウ 「高い評価を得る」のではなく、「当然のこと」として求められるという話です。
問七 筆者はどのような社会になることを望んでいるか16点
線⑤をふくむ一文を確認すると、筆者は「相手の立場」と「自分の意志」のバランスを取った「社会」が望ましいと考えているとわかります。すなわち、「気が利くことを重視しつつも」「個人の自由を制限」しないことが「望まれる」のです(15ページ19〜20行目)。その結果として見えてくるのが、「円滑な人間関係を保つことが、私たちの生きやすさのためになると考える社会」でした(15ページ20〜21行目)。
ただしそれは、「表面的な調和を重視する社会」ではありません。「多様な人々」のあいだに本来は存在するはずの「軋轢」を無視しないような「社会」であるということにも注意しましょう(15ページ22行目〜16ページ1行目)。
①前提 多様な人々の立場のちがいに向き合ったうえで(軋轢を無視しない)
②方向 気が利くことを重視しつつも、個人の気持ちや自由を抑圧せずに
③結果 円滑な人間関係が保たれるような
④まとめ 誰もが生きやすいと感じる社会
「バランス」を書くときは、「〜しつつも〜せずに」の形で、両方の条件を一文に入れます。
大問3 二つの文章を関連づける問題
大問3は、大問1と大問2を読んだ生徒5人の会話です。近年の入試では、二種類の文章のつながりを意識させる形式の出題が増えています。二つの文章を関連づける問題が出るときは、それぞれの文章を読みながら、内容のつながりをできるかぎりつかんでおくことが大切です。
- 生徒Aは、大問2の「気が利く」人は、大問1にも登場していると言います。
- 生徒Bは、山田の言動が、気が利くことが否定的な結果をもたらす例だと考えます。「場の空気を壊したくない」という理由で本音を言えなくなる、という大問2の部分を読んで、大問1の山田を思い出しました。
- 生徒Cは、山田の問題を個人の問題にしてはいけないと言います。針谷たちが「俺ら、仲間だし」と迫ることは、山田に「気が利く」態度を暗に強制していて、人が集まると〔②〕が働くと感じたそうです。
- 生徒Dは、眉村も「気が利く」人だと思いました。ただ、大問2で「先回り」の「手助け」は長期的には相手のためにならないとあるので、そうなのかと迷っています。
- 生徒Eは、そうは思わないと言います。眉村の行動は、いじめられていた当時のアキを救っただけでなく、中学生になった今のアキを成長させるきっかけにもなっている、という考えです。
問一 山田は、どんなことを気にして本音を言えなくなっていたのか(抜き出し)6点
問題は、「山田はどんなことを気にして本音を言えなくなっていたのか」を説明する〔 〕に入る言葉を、大問1の5ページの〈中略①〉よりも前の部分から21字以上25字以内で探し、はじめとおわりの3字を答える形です。答えは「〔 〕ということ」につながります。
まず、山田の「本音」を確認します。それは、9ページ10行目の「ぼくはもう、おにぎりって呼ばれたくない」です。それなのに、問四・問五で確認したように、山田は「場の空気」を壊さないよう、針谷たちの嫌がらせを笑ってやりすごしていました。その理由にあたる部分を、範囲指定に注意しながら探します。すると、大問1の5ページ7〜8行目に、「ひとりだけ場ちがいな空気」がありながらも、針谷たちに「合わせようとする」山田の姿と、その理由が見つかります。「たぶん、自信がないんだろうな」というアキの推測のあと、こう続きます。「だれかに攻撃されないか、ヘンなやつ、と思われないか、山田はいつも気にかけている」。
山田が自分の「本音」を抑えても「場の空気」に合わせようとするのは、自分に自信がないために、周囲の反応を不安に思ってしまうからだったのです。「だれかに攻撃されないか、ヘンなやつ、と思われないか」が25字なので、条件に合います。はじめの3字は「だれか」、おわりの3字は「ないか」です。
問二 〔②〕にあてはまる四字の言葉(抜き出し)6点
針谷たちによって「仲間」であることが強調される中で、山田が「いやがって」いないという回答を、強制させられてしまう。こうした場は、大問2の問三で確認したような、「気づかいができない人の排除」を前提として、気を遣えという「無言の圧力」(大問2・13ページ9行目)がかかっている場と重なります。この「圧力」という表現に注目して、大問2の中で四字の言葉を探すと、15ページ16行目の「同調圧力」が見つかります。
問三 「中学生になった今の『ぼく』を成長させるきっかけにもなっている」 どのように成長させたか6点
亜記を嫌がらせから救った眉村の行動が、中学生になった亜記に影響を与えていることがわかるのは、大問1の8ページ19〜23行目です。ここで亜記は、いじめから山田を助けようとしたものの、威圧的な針谷にひるんでしまいます。しかし、「頼もしいおせっかい」を焼く眉村が「力になってくれる」ことを思い出すことで、ふたたび針谷に対して「やめろ」と声をあげられるようになりました。
すなわち、眉村の行動は、絶対的な味方がいるという心の支えを亜記にもたらし、今度は亜記自身が山田の味方であろうと決意する助けとなったのでした。ウが正解です。大問2に照らすと、眉村の行動は、長期的な視点で見た場合にも「相手のためになる」ものだったと言えます(14ページ19〜20行目)。
- ア 「恩に報いるために」決意したという説明は、8ページ19〜23行目の内容と合いません。中心は、眉村の存在が恐怖に打ち勝つ心の支えになったことです。
- イ 眉村の行動を「おせっかいだ」と否定的に見ているわけではありません。
- エ 「無謀でも強い相手に挑める自信を得た」のではなく、眉村の存在が心の支えになった、という話です。
大問4 漢字の読み書き
線の漢字はひらがなに、カタカナは漢字に直します。必要な場合は送りがなも書きます。各2点、10問で20点です。
- 1 机上の空論には付き合えない → 「きじょう」。机の上で考えただけの、現実には役に立たない理論のことです。
- 2 場末の停車場で待ち合わせる → 「ばすえ」。町の中心から離れた、にぎやかでない所のことです。
- 3 生物種をゲンミツに区別する → 「厳密」。細かい点まできちんとしていることです。
- 4 イチモクサンに逃げていった → 「一目散」。わき目もふらずに走る様子です。
- 5 イサギヨク罪を認めるべきだ → 「潔く」。未練なく、思い切りよくという意味で、送りがなの「く」まで書きます。
- 6 ホガラカな笑い声が聞こえる → 「朗らか」。明るくのびのびとした様子で、送りがなは「らか」です。
- 7 新しく雑誌がソウカンされる → 「創刊」。新聞や雑誌を新しく出すことです。「創」は「はじめる」の意味です。
- 8 ゲネツ剤を飲んで風邪を治す → 「解熱」。熱を下げることです。
- 9 フクシンの部下に意見を聞く → 「腹心」。心から信頼できる部下や仲間のことです。
- 10 新しい作品のコウソウを練る → 「構想」。考えを組み立てることです。「構造」と混同しないようにします。
解答一覧
大問1
- 問一 a とら b か 問二 (1) イ (2) ア 問三 イ
- 問四 (1) ウ・エ (2) なにもでき 問五 ア
- 問六 (解答例)眉村に嫌がらせから救ってもらった自分には、ひとりで変わることの難しさがわかるはずなのに、いじめに抵抗できない山田を助けるどころか馬鹿にしていた自らの情けなさを痛感している。
- 問七 エ
大問2
- 問一 A ウ B イ C ア 問二 a ウ b イ c オ d ア
- 問三 ウ・エ・カ 問四 ウ 問五 イ 問六 エ
- 問七 (解答例)多様な人々の立場のちがいに向き合ったうえで、気が利くことを重視しつつも個人の気持ちや自由を抑圧せずに、円滑な人間関係が保たれるような、誰もが生きやすいと感じる社会。
大問3
- 問一 だれか 〜 ないか 問二 同調圧力 問三 ウ
大問4
- 1 きじょう 2 ばすえ 3 厳密 4 一目散 5 潔く 6 朗らか 7 創刊 8 解熱 9 腹心 10 構想
この回から持ち帰るべき3つのこと
- 比喩表現は、「何を何にたとえたか」を一つずつ言いかえる 大問1の問七は、「きらきらと輝くその光」が「山田の声」、「黒一色の教室」が「笑い声や高圧的な態度に支配された教室」でした。比喩の部分をそのまま読まず、直前・直後の言葉と対応させて言いかえれば、選択肢が一つに絞れます。
- 抜き出しは、傍線部の言葉と本文の言葉を対応させて探す 大問1の問四(2)は、「むかついていたのは山田じゃない」の直後に答えがありました。大問3の問二は、「無言の圧力」の「圧力」に注目して、大問2の「同調圧力」にたどり着きました。範囲指定(「〈中略①〉よりも前」「21字以上25字以内」)と、言い換えの手がかりを目印にしましょう。
- 二つの文章は、抽象的な言葉と具体的な場面を結びつけて読む 大問3は、大問2の「同調圧力」「先回り」「気が利く」を、大問1の場面(針谷の「仲間だもんな」、眉村の「おれが守る」)に当てはめる問題でした。片方を読むときに、もう片方の場面が思い浮かぶようにしておくと、初見の問題でも速く解けます。
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