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2026.10.18実施 後期第2回合格力判定サピックスオープン 国語 徹底解説

サピックス小学部の後期第2回合格力判定サピックスオープン(6年生・国語)を、YS中学受験国語力研究室が全問解説します。2026年10月18日実施、150点満点で、大問は四つです。大問1は漢字(読み2問・書き取り8問)、大問2は敬語の正誤(5問)、大問3は野崎泰伸さんの『「できなさ」からはじまる倫理学』(大月書店)と青木真兵さんの『資本主義を半分捨てる』(筑摩書房)という二つの文章を読む論説文、大問4は真下みことさんの『きみは悪口を言わない』(光文社)からの物語文でした。「豊かさ」と「できなさ」を問い直す論説文と、赤いリボンが友情の印になり、そして返されるまでを描く物語文。二つの大問を図解動画と文字の図解で整理し、34の設問すべての答えの組み立てを根拠つきで示します。記述の解答は、解答例です。

出題構成と全体講評

  • 大問は四つ、配点は計150点です。大問1(漢字)が20点、大問2(敬語)が10点、大問3(論説文)が60点、大問4(物語文)が60点です。論説文と物語文で120点、150点のうちの8割を占め、読解が点数の中心です。
  • 大問1・2は、全部で15問、各2点です。大問1は読み2問と書き取り8問で、3番(借りる)・4番(危ない)・9番(委ねる)は送りがなまで書きます。大問2は、線を引いた敬語の使い方が正しければ○、正しくなければ×と答える形式です。
  • 大問3の論説文は、設問が10問、記述は問五(12点)の1問です。問一はA・Bの空らんに接続語を入れる問題(各3点)、問二(6点)と問八(6点)は抜き出し、残りの問三・問四・問六・問七・問九・問十は、5点の記号選択です。二つの文章をつなぐ問題(問八・問十)が入っているのが特徴です。
  • 大問4の物語文は、設問が9問、記述は問五(80字以内・12点)の1問です。問一は漢字一文字の空らん補充(a・b各3点)、問三(6点)は二字の抜き出しで、残りの問二・問四・問六・問七・問八・問九は、6点の記号選択です。
  • 記述は2問で、合わせて24点です。大問3の問五(12点)と大問4の問五(12点)です。どちらも、結論や気持ちの「一言」を決めて、答えの最後に置く型で書けます。この記事では、各設問の解説に、答えの組み立てをまとめました。
  • 論説文と物語文は、「欠けている」「かわいそう」と人を見る視線が、その人との関係を変えてしまう、という点でつながっています。論説文は、「できなさ」を「欠けているもの」とみる社会のまなざしを問い直す文章。物語文は、「かわいそう」という強い言葉が、二人の友情を終わらせる物語です。
今回のポイント大問3は、文章Ⅰで「豊かさ」「見えない人びと」「共にいる時間」と筋をつかみ、文章Ⅱで「医学モデル」と「社会モデル」の違いをおさえます。問八(欠けているもの)と問十(価値は社会との関係で決まる)は、二つの文章の言葉を言いかえて結びつける問題です。大問4は、「リボン」の意味が、「変身」するための道具から「友情の印」へ、そして「返される」ものへと変わっていく一本の筋でできています。「かわいそう」という言葉が何をしたかを、問五・問六・問七・問九で何度も確かめます。この二本の筋を先につかんでおくと、記号選択の消去も、記述の骨組みも、ぐっと楽になります。
図 解く順番(抜き出し・記号選択・記述)
1 線部の前後を読んで、何を問われているかを一言で言う
▼
2 本文から根拠の行を探す(行に印をつける)
▼
3 抜き出しは、問題文の言いかえを手がかりに探し、字数で確かめる。記号選択は、本文と一か所だけ違う選択肢を消していく
▼
4 記述は、結論や気持ちの一言を先に決め、答えの最後に置く。前に、状況や成り立ちを並べる

大問1 漢字(読み2問・書き取り8問)

大問1は、線部の漢字をひらがなに直す読み2問と、カタカナを漢字に直す書き取り8問で、各2点、計20点です。「必要な場合は送りがなも書くこと」とあるので、3番・4番・9番は、送りがなまで書いて正解になります。

問題1〜10 漢字の読みと書き取り各2点(全10問)

設問 次の1〜10の——線の漢字はひらがなに、カタカナは漢字に直して答えなさい。必要な場合は送りがなも書くこと。(ただし、送りがなはひらがなで書きなさい。)

答えの組み立て 読みは、①文全体の意味をつかむ、②その意味に合う熟語の意味を思い浮かべる、③意味に合う読みを選ぶ、の順で考えます。書き取りは、①文の意味から熟語を一つ決める、②同じ読みの別の熟語と区別する、③送りがなのある語は、送りがなから先に決める、の順です。

  • 1 派手な行動を自重する。(読み) = じちょう 「自重」は、軽はずみな行動をつつしむこと。「派手な行動を」とつながるので、「つつしむ」の意味の読みを選びます。
  • 2 お願いを無下にはできない。(読み) = むげ 「無下」は、冷たく扱うこと。「無下にはできない」は、冷たく断ることはできない、という意味です。
  • 3 成功のために力をカリル。 = 借りる 送りがなは「りる」です。「力を借りる」は、人の助けを受けること。渡す側の「貸す」と区別します。
  • 4 アブナイ橋を渡る。 = 危ない 送りがなは「ない」です。「危」に「ない」をつけて、「あぶない」と読みます。
  • 5 昨日の出来事をサイダイもらさず報告する。 = 細大 「細大もらさず」は、大きなことも小さなことも、すべて、という意味です。同じ読みの「最大」と書かないように注意します。
  • 6 この地域はコクソウ地帯だ。 = 穀倉 「穀倉地帯」は、穀物がたくさんとれる地域のこと。「穀」は、「禾」(のぎ)を含む字です。
  • 7 意見を通すためにカクサクする。 = 画策 「画策」は、計画を立てて、ひそかに働きかけること。「企画」の「画」と、たけかんむりの「策」を組み合わせます。
  • 8 噴火のヨチョウが見られる。 = 予兆 「予兆」は、前ぶれのこと。「予定」の「予」と、「きざし」を表す「兆」を組み合わせます。
  • 9 先生に判断をユダネル。 = 委ねる 送りがなは「ねる」です。「委ねる」は、まかせること。「委」は、「禾」の下に「女」を書きます。
  • 10 犬のケットウ書を確認する。 = 血統 「血統」は、血筋のこと。同じ読みの「決闘」と区別します。「統」は、いとへんの字です。
解答に入れる要素
1 じちょう / 2 むげ / 3 借りる(送りがな「りる」) / 4 危ない(送りがな「ない」) / 5 細大
6 穀倉 / 7 画策 / 8 予兆 / 9 委ねる(送りがな「ねる」) / 10 血統
解答1 じちょう 2 むげ 3 借りる 4 危ない 5 細大 6 穀倉 7 画策 8 予兆 9 委ねる 10 血統

漢字は、字形が一画違うだけで×になります。書き取りは、間違えた字を何度も書き写すだけでなく、「どこを間違えたのか」を自分の言葉で一言書くと、身につきます。たとえば、「細大を最大と書いた」「委ねるの送りがなを忘れた」のように、間違えた場所を言葉にして残してください。

大問2 敬語の正誤

大問2は、線を引いた敬語の使い方が正しければ○、正しくなければ×と答える形式で、5問、各2点、計10点です。理由を書く必要はありませんが、○と×を分ける理由を言えるようにしておくと、初めて見る文でも判断できます。

問題1〜5 敬語の使い方(○か×か)各2点(全5問)

設問 次の1〜5の——線の敬語の使い方が正しければ○、正しくなければ×とそれぞれ答えなさい。

答えの組み立て 次の順で考えます。①線の敬語は、誰の動作か。②その敬語は、尊敬語(相手の動作を高める)か、謙譲語(自分の側の動作をへりくだる)か。③動作をする人と、敬語の種類が合っているか。④「お〜になる」に「れる・られる」をさらに重ねた二重敬語になっていないか。

  • 1 先生がお茶をめしあがった。 = ○ 「めしあがる」は、「食べる」「飲む」の尊敬語です。動作をするのは先生なので、尊敬語で合っています。
  • 2 今日の午後、母が学校にいらっしゃいます。 = × 「いらっしゃる」は尊敬語ですが、動作をするのは身内の母です。身内の動作には、尊敬語を使いません。「参ります」と謙譲語にします。
  • 3 私がお部屋までかばんをお持ちいたします。 = ○ 「お持ちいたす」は謙譲語です。動作をするのは私なので、謙譲語で合っています。
  • 4 お客様がお見えになられたら、この部屋に通してください。 = × 「お見えになる」は、「来る」の尊敬語です。そこに「られる」をさらに重ねた、二重敬語になっています。「お見えになったら」とします。
  • 5 社長が社員ひとりひとりの考えをうかがってくださった。 = × 「うかがう」は、謙譲語です。動作をするのは社長なので、尊敬語を使います。「お聞きくださった」とします。
解答に入れる要素
1 ○(尊敬語・先生の動作) / 2 ×(身内の動作に尊敬語は使わない) / 3 ○(謙譲語・自分の動作)
4 ×(二重敬語) / 5 ×(社長の動作に謙譲語は使わない)
見分けるコツは、「その動作をするのは誰か」を先に決めることです。
解答1 ○ 2 × 3 ○ 4 × 5 ×

敬語の問題は、尊敬語と謙譲語の取り違えが、最も多い失点の原因です。「うかがう」「参る」「いたす」「申す」は謙譲語で、自分の側の動作に使い、「いらっしゃる」「めしあがる」「くださる」は尊敬語で、相手の動作に使う、と二つのグループに分けて覚えましょう。

大問3 論説文 野崎泰伸『「できなさ」からはじまる倫理学』(文章Ⅰ)・青木真兵『資本主義を半分捨てる』(文章Ⅱ)

要旨 「豊かさ」とは何か。「できなさ」と「障がい」を、社会との関係から見直す

文章Ⅰ(野崎泰伸) 筆者は、障害のある当事者として、「豊かさ」とは何かを問います。現代社会では、「豊かさ」は「どれだけ多くを手に入れられるか」という消費のものさしで受けとめられ、多くの消費ができることは、「自由」や「幸福」と結びつけられています。一方で、消費する力をもたない人びと(貧困の人、障害のある人、病気の人、高齢の人など)は、社会の「外に追いやられ」、自由な主体として数えられにくくなります。筆者は、この人びとを「見えない人びと」と呼び、倫理とは、その人びとに目を向けるまなざしだと述べます。

次に筆者は、「できなさ」が、多くの場合「欠けているもの」として語られることを指摘します。しかし、筆者は、「できない」からこそ見える世界、生まれるつながりがあると感じています。他者に頼らなければ生きていけない現実と向き合うことは、助けてもらうことで、人とのつながりを実感することでもあります。時間をかけて食事をする、介助者と目を合わせて確認しながら服を着る、会話に沈黙がはさまる。そうした時間は、効率のものさしでは測れない「共にいる時間」を育てていきます。「早くできる人」や「強い人」ばかりを基準にした社会では、多くの人が置き去りにされます。「自分が何をできるか」だけでなく、「社会がどんな前提で成り立っているのか」を問い直すまなざしが、社会をより公平に変えていく力になる、と筆者は述べます。

そして、文章Ⅰは、次の結論で結ばれます。わたしたちが本当に求めている「豊かさ」とは、何でもひとりでこなせる万能性ではなく、助けを必要とすることに気づき、それを差し出し、受け取り合うことのできる関係のあり方ではないか。「豊かさ」を、持ち物の量ではなく、関係のあり方で言いかえた文章です。

文章Ⅱ(青木真兵) 筆者は、人間には、存在するだけで比較できない唯一無二の価値があり、評価で示されるのは、比較できる社会的な価値にすぎない、と述べます。評価にさらされる場では力をみがき、評価から解放された場では存在そのものが認められる。その両方を行き来できることが、土着的に生きることだと考えています。筆者が、この「比較不能な価値」と「比較される価値」の違いを強く意識したのは、東吉野村に移り住み、障がい者の就労支援の仕事を始めてからでした。就労支援の事業所は、障がいがあっても「働きたい」という思いをもつ人が通う施設です。そこで筆者は、障がいが「その人自身がもともと持っている性質」だけで決まるのではなく、社会のあり方との関係の中で形づくられている、と知ります。社会のあり方次第で、その人は、障がい者にも健常者にもなりうるのです。

この考えを整理したのが、「医学モデル」と「社会モデル」です。医学モデルは、障がいを個人の身体や心の欠陥として理解し、治療や矯正の対象とする考え方。社会モデルは、障がいを、社会の側にある制度や環境のバリアによって生み出されるものととらえる考え方です。たとえば、車椅子を使う人にとって、階段しかない建物は障がいを生み、エレベーターやスロープがあれば、障がいは生まれません。障がいは、個人の属性ではなく、社会との関係の中で生じるのです。

図1 大問3 文章Ⅰ 段落構成図(論の流れと設問)
まとまり1「豊かさ」は、消費のものさしで測られる
多くの消費ができることが、「自由」や「幸福」と結びつけられる。
対応する設問:問一(A)・問二(問いかけ)
▼
まとまり2消費する力をもたない人びとは、「見えない人びと」になる
「外に追いやられ」、自由な主体として数えられにくい。倫理とは、その人びとに目を向けるまなざし。
対応する設問:問三
▼
まとまり3「できなさ」は、「欠けているもの」として語られる。しかし、「できない」からこそ生まれるつながりがある
時間をかけて食事をする、服を着る、沈黙がはさまる。効率のものさしでは測れない「共にいる時間」。
対応する設問:問一(B)・問四・問八
▼
まとまり4「社会がどんな前提で成り立っているのか」を問い直すまなざしが、社会を変える
「早くできる人」や「強い人」ばかりを基準にした社会では、多くの人が置き去りにされる。
対応する設問:問五
▼
結論本当に求める「豊かさ」とは、助けを必要とし、差し出し、受け取り合う関係のあり方
何でもひとりでこなせる万能性ではない。
対応する設問:問二(答え)
図解動画① 大問3 文章Ⅰ 論の流れ(約40秒)
図2 大問3 文章Ⅱ 対比構造図(医学モデルと社会モデル)
医学モデル
個人の身体や心の欠陥として理解する治療や矯正の対象とする本人を変えて、周りに合わせる方向の支援問八
VS
社会モデル
社会の側にある制度や環境のバリアによって生み出される社会の側の制度や環境を変える階段しかない建物にスロープやエレベーターをつける問九
障がいは、その人だけの性質ではなく、社会のあり方との関係で決まる。この考えが、問七・問九・問十の中心です。
図3 大問3 二つの文章をつなぐ問題(問八・問十)
文章Ⅱ 医学モデルは、障がいを個人の「欠陥」とみる
文章Ⅰ 「できなさ」は、「欠けているもの」として語られる。何かが「不足している」
▼ 同じ意味の言葉を探す
問八 答えは「不足している」(六字)
 
文章Ⅱ 障がいは、社会のあり方との関係で決まる
文章Ⅰ 「早くできる人」や「強い人」ばかりを基準にした社会
▼ 文章Ⅱの考え方を、文章Ⅰの言葉にあてはめる
問十 答えは、社会のあり方が変われば、その価値も変わる、という内容のウ
図解動画② 大問3 文章Ⅱ 医学モデルと社会モデル(約46秒)

問一 空らんA・Bにあてはまる接続語記号選択・各3点(A・B)

設問 文章Ⅰの[A]・[B]にあてはまることばとして、最もふさわしいものを次の中から選び、それぞれ記号で答えなさい。(ただし、同じ記号は一回しか使えません。)

何を答える問いか 二つの空らんに入る接続語を選ぶ問題です。接続語は、空らんの前の内容と後の内容が、どのようにつながるかを示します。

答えの組み立て ①空らんの直前の内容を一言で言う。②空らんの直後の内容を一言で言う。③二つのつながりを決める(同じ向きなら「だから」、反対なら「しかし」、具体例なら「たとえば」、言いかえなら「つまり」)。④選択肢から選び、選んだ記号を消して、残りから次を考える。

本文の根拠 Aの前では、消費できることが「自由」や「幸福」と結びつけられる、と述べられています(本文1ページ5行目)。Aの後は、消費する能力をもたない人びとが「外に追いやられ」てしまう、という話です(本文2ページ3行目)。前は消費できる人の話、後は消費できない人びとの話で、反対の内容がつながるので、「しかし」が入ります。Bの後には、時間をかけて食事をする、介助者と目を合わせて服を着る、会話に沈黙がはさまる、という具体例が続きます(本文3ページ1〜2行目)。具体例を示す「たとえば」が入ります。

選択肢の検討

  • ア だから A・Bのどちらも、前の内容が理由で、後がその結果になる、という関係ではありません。
  • イ たとえば Bの後に、食事や服を着る場面の具体例が続いています。 Bの正解です。
  • ウ つまり A・Bのどちらも、前の内容を言いかえてまとめる関係ではありません。
  • エ しかし Aの前後は、消費できる人と消費できない人で、反対の内容です。 Aの正解です。
解答に入れる要素
A 前は消費できる人、後は消費できない人びと → 反対の内容 → しかし(エ)
B 後は食事や服を着る場面の具体例 → たとえば(イ)
同じ記号は一回しか使えないので、選んだ記号を消しながら進めます。
解答A…エ B…イ

問二 線①「「豊かさ」とは何でしょうか」 筆者の考える「豊かさ」(抜き出し)抜き出し・6点

設問 線①「『豊かさ』とは何でしょうか」とありますが、文章Ⅰの筆者は、「豊かさ」とはどのようなものだと考えていますか。文章Ⅰから四十字以上四十五字以内で探し、はじめと終わりの五字を抜き出して答えなさい。

何を答える問いか 線①は筆者の問いかけで、その答えは、文章の最後の結論に書かれています。結論の中から、条件の四十字以上四十五字以内に合う範囲を探し、はじめと終わりの五字を答える問題です。解答欄の網かけの部分は、全体で1問として採点されます。

答えの組み立て ①線①は問いかけだと気づく。問いかけの答えは、結論にある。②結論の段落(最後から二つ目の段落)で、「わたしたちが本当に求めている「豊かさ」とは」という言い回しを探す。③その後ろの、「〜関係のあり方」までが、答えの範囲。④かぎかっこも1字に数えて、四十字以上四十五字以内に合うか確かめる。⑤はじめの五字と、終わりの五字を書く。

本文の根拠 最後から二つ目の段落に、「わたしたちが本当に求めている「豊かさ」とは、何でもひとりでこなせる万能性ではなく、むしろ「助けを必要とすることに気づき、それを差し出し、受け取り合う」ことのできる関係のあり方ではないでしょうか」とあります。「むしろ」のあとの、「「助けを必要とすることに気づき、それを差し出し、受け取り合う」ことのできる関係のあり方」が答えの範囲で、かぎかっこを含めて43字です。条件の四十字以上四十五字以内に合います。はじめの五字は「「助けを必」(かぎかっこを含む)、終わりの五字は「係のあり方」です。

解答に入れる要素
① はじめの五字 「助けを必(かぎかっこも1字)
② 終わりの五字 係のあり方
③ 範囲は「むしろ」のあと。「万能性」の部分は答えではない
解答(はじめの五字〜終わりの五字)「助けを必〜係のあり方

失点しやすい書き方 

  • 「何でもひとりでこなせる万能性」の部分を抜き出す 「万能性」は、筆者が「豊かさ」ではないと否定している内容です。「ではなく、むしろ」の、「むしろ」のあとが答えです。
  • かぎかっこを落として、「助けを必」ではなく「助けを必要」と書く 五字の中に、かぎかっこも1字として数えます。「「助けを必」と書きます。
  • 終わりを「あり方」だけで終えたり、字数が合わない範囲をとる 答えの範囲は、「関係のあり方」で終わります。終わりの五字は「係のあり方」です。

問三 線②「見えない人びと」とは記号選択・5点

設問 線②「見えない人びと」とありますが、ここではどのような人びとになるのですか。その内容を説明したものとして、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 「見えない人びと」が、どのような人びとのことかを選ぶ問題です。「見えない」は比喩なので、本文の前後の言葉に言いかえられた内容を探します。

答えの組み立て ①線②の直前の内容を読む。②「消費できる人」と「消費できない人」の対比をとらえる。③「見えない人びと」は、どちらの人びとか決める。④「見えない」を、本文の言葉(「外に追いやられ」・数えられにくい)で言いかえた選択肢を選ぶ。⑤主語(誰が何をしているか)がずれた選択肢を消す。

本文の根拠 筆者は、現在の社会で理想の生活とされるのは、「洗練された商品、便利なサービス、余裕ある暮らしをもつ姿」だと述べます(本文1ページ2〜3行目)。そうした中で、「消費できること」はしばしば「自由」や「幸福」と結びつけられます(本文1ページ5行目)。その一方で、消費する能力をもたない人びとは、「外に追いやられ」てしまっています(本文2ページ3行目)。こうした状況にある人びとを、筆者は「見えない人びと」と表現しています。つまり、消費する力をもたないために、社会の中で評価されない人びとです。

選択肢の検討

  • ア 自分で商品を選び取る能力を持たない人を社会から排除することによって、本当の豊かさとは何かを見失っている人びと。 「排除する」のは社会の側で、「見えない人びと」は排除される側です。主語がずれています。
  • イ 理想的な生活と自分の暮らしを比較し、多くのものを持てない自分は劣った存在でしかないと思い込んでしまう人びと。 本文は、社会が人びとを「外に追いやる」と述べています。本人が自分を劣った存在だと思い込む、とは書かれていません。
  • ウ 多くの消費をできる人が幸福で自由だとみなされている社会の中で、消費する力を持たないために、評価されない人びと。 「消費できる人が幸福で自由とされる社会」と、「消費する力を持たないために評価されない」の両方が、本文に合っています。 これが正解です。
  • エ 貧困や病気などを理由に消費する力を持つことができないことを意識するあまり、自分の価値に気づけないでいる人びと。 本文は、本人が自分の価値に気づけない、という話ではありません。社会が、その人びとを数えにくい、という話です。
解答に入れる要素
① 消費できる人が、幸福で自由とされる社会がある
② 消費する力を持たない人びとは、「外に追いやられ」る
③ そのために、評価されない人びとが、「見えない人びと」
解答ウ

問四 線③「「できない」からこそ、生まれるつながりがある」 どのようにすることで生まれるか記号選択・5点

設問 線③「『できない』からこそ、生まれるつながりがある」とありますが、文章Ⅰの筆者は、「できなさ」を抱える人がどのようにすることでまわりの人とのつながりが生まれると述べていますか。その説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 「できなさ」を抱える人が、どのようにすることで、つながりが生まれると筆者が述べているかを選ぶ問題です。筆者の述べている「方法」を、本文の具体例から探します。

答えの組み立て ①線③のあと、筆者がつながりについて具体的に述べている段落を探す。②その具体例(食事・服を着る・会話の沈黙)を確かめる。③具体例に共通することを、一言で言う(介助者と時間をかけて関わる)。④それを言いかえた選択肢を選ぶ。

本文の根拠 本文2ページ23行目からの段落で、筆者は、「できない」ことが、どのようなつながりを生むかを述べています。「時間をかけて食事をすること、介助者と目を合わせて一つひとつ確認しながら服を着ること、会話に沈黙がはさまること」(本文3ページ1〜2行目)のように、介助者と時間をかけて関わることで、「効率のものさしでは測れない「共にいる時間」を育てていく」(本文3ページ2〜3行目)ことができる、というのです。

選択肢の検討

  • ア 「できない」ことを助けてもらいながら、効率を求めずゆっくりとまわりの人と向き合い、共に過ごす時間を持つこと。 「助けてもらいながら」「効率を求めず」「ゆっくりまわりの人と向き合い、共に過ごす時間を持つ」が、本文の具体例と「共にいる時間」に合っています。 これが正解です。
  • イ 効率的に物事をこなせる人に一方的に介助してもらう状況から抜け出し、「できない」ことがある人同士で助け合うこと。 本文は、介助者と時間をかけて関わる話です。「介助してもらう状況から抜け出す」「できない人同士で助け合う」とは述べていません。
  • ウ 「できない」ことを否定的にとらえずに、「できない」ことがあっても価値を認めてくれる人を介助者として選ぶこと。 本文は、介助者を「選ぶ」話ではありません。「価値を認めてくれる人を選ぶ」は、本文にない内容です。
  • エ 自分の「できなさ」を周囲の人に伝え、効率にこだわらず自分を介助してくれる人をより多く見つけようとすること。 本文は、介助してくれる人を「より多く見つける」話ではありません。人数を増やす内容は、本文にありません。
解答に入れる要素
① 具体例 時間をかけて食事・服を着る・会話に沈黙
② 共通点 介助者と、時間をかけて向き合う
③ つながり 効率のものさしでは測れない「共にいる時間」を育てる
解答ア

問五 線④「そのまなざしが、社会をより公平に変えていく力になります」 どのようなことか(記述)記述・12点

設問 線④「そのまなざしが、社会をより公平に変えていく力になります」とありますが、どのようなことですか。説明しなさい。

何を答える問いか 「どのようなことですか」は、傍線部を、別の言葉で言いかえる問いです。傍線部の中の、「そのまなざし」と、「社会をより公平に変えていく力になる」を、それぞれ本文の言葉で言いかえます。「まなざし」「力になる」のような比喩的な表現は、本文のほかの場所の言葉に置きかえます。

答えの組み立て 結論の一言を決めて、答えの最後に置く まず、答えの最後に置く結論の一言を決めます。「社会をより公平に変えていく力になる」を言いかえた、「誰もが豊かに生きることのできる社会に変える原動力になる」です。この一言を答えの最後(文末)に置き、その前に、状況と成り立ちを並べます。状況・成り立ちは二つです。(1)「そのまなざし」とは、「社会がどんな前提で成り立っているのか」を問い直すこと。(2)今の社会は、「早くできる人」や「強い人」ばかりを基準にして、多くの人が置き去りにされていること。書く順番は、(1)→(2)→結論の一言です。

本文の根拠 「そのまなざし」は、線④の直前の「社会がどんな前提で成り立っているのか」を問い直すこと、を指しています。そして、「社会をより公平に変えていく」ことは、「『早くできる人』や『強い人』ばかりを基準にした社会」の中で、「多くの人が置き去りにされて」いる(本文2ページ20〜21行目)状況を改善し、誰もが豊かに生きることのできる社会に変えることです。

解答に入れる要素
① 「そのまなざし」の言いかえ 社会の前提を見直そうとすること
② 今の社会の状況 できる人ばかりを基準にして、できない人を排除している
③ 結論の一言(答えの最後に置く) 誰もが豊かに生きることのできる社会に変える原動力になる
書く順番は、①→②→③です。
解答例(82字)社会の前提を見直そうとすることが、できる人ばかりを基準にすることでできない人を排除している社会を、誰もが豊かに生きることのできる社会に変える原動力になるということ。

解答例の組み立て 解答例は、「〜見直そうとすることが、〜社会を、〜原動力になるということ」という一文です。「見直そうとすることが」で、「そのまなざし」を言いかえ、「基準にすることで〜排除している社会を」で状況を並べ、「変える原動力になるということ」と、結論の一言を文末に置いています。

失点しやすい書き方 

  • 「まなざし」を言いかえず、そのまま使う 「社会を見るまなざしが〜」のように書くと、傍線部の言い直しになっていません。「社会の前提を見直そうとすること」と、本文の言葉に置きかえます。
  • 状況を説明して終わって、結論の一言で結んでいない 「できる人ばかりを基準にした社会で、多くの人が置き去りにされている」で終えると、「だから、どうなるのか」が書けていません。「誰もが豊かに生きることのできる社会に変える原動力になる」と、働きの一言で結びます。
  • 「公平」をそのまま使い、中身を書かない 「より公平な社会になる」だけでは、どう公平なのかが伝わりません。「誰もが豊かに生きることのできる」と、具体的に言いかえます。

問六 空らんa・bにあてはまる言葉の組み合わせ記号選択・5点

設問 [a]・[b]にあてはまることばの組み合わせとして、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 文章Ⅱの空らんaとbに入る言葉(可能か不能か)の組み合わせを選ぶ問題です。空らんの文が、本文の別の場所の言葉と、同じことを言っていないか探します。

答えの組み立て ①aの文が、何について述べているかを言う。②bの文が、何について述べているかを言う。③それぞれ、本文の別の場所の、似た内容の言葉(比較不能な価値・比較される価値)を探す。④a・bの順に、不能か可能かを決める。

本文の根拠 aの部分では、人間が「存在するだけで」もっている、「唯一無二の価値」について述べています。これは、本文4ページ3行目の「生き物としての比較不能な価値」と対応するので、aには「不能」が入ります。bの部分では、「評価で示される」「社会的価値」を説明しています。本文4ページ3行目の「社会人として比較される価値」が、この内容と同じことを述べているので、bには「可能」が入ります。

選択肢の検討

  • ア a 可能 b 可能 aが「可能」になっていて、本文の「比較不能な価値」と合いません。
  • イ a 可能 b 不能 aもbも、本文と逆になっています。
  • ウ a 不能 b 可能 aは「比較不能な価値」と、bは「比較される価値」と対応しています。 これが正解です。
  • エ a 不能 b 不能 bが「不能」になっていて、「比較される価値」と合いません。
解答に入れる要素
① a 存在するだけの唯一無二の価値 = 比較不能な価値 → 不能
② b 評価で示される社会的価値 = 比較される価値 → 可能
解答ウ

問七 線⑤ 違いをより強く意識するようになったのは、なぜか記号選択・5点

設問 線⑤「『生き物としての比較不能な価値』と『社会人として比較される価値』の違いを、僕がより強く意識するようになったのは東吉野村に移り住んでからのことです」とありますが、なぜですか。その理由を説明したものとして、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 筆者が、「比較不能な価値」と「比較される価値」の違いを、東吉野村に移り住んでから強く意識するようになった理由を選ぶ問題です。理由は、移り住んでから始めた仕事の中での、筆者の気づきにあります。

答えの組み立て ①移り住んでから、筆者が何を始めたかを確かめる(障がい者の支援)。②その中で、筆者が何を知ったかを探す。③「知ったこと」と、二つの価値の違いを結びつける。④理由として、気づいた内容を過不足なく述べた選択肢を選ぶ。

本文の根拠 筆者は、障がい者の支援に携わるなかで、障がいが「その人自身がもともと持っている性質」だけで決まるのではなく、社会のあり方との関係の中で形づくられている(本文4ページ9行目)ことを知ります。つまり、障がい者は、生まれながらの「比較不能な価値」によって障がい者となるのではなく、社会の中で「比較可能な価値」を評価される中で、障がい者とみなされることがある、と気づいたのです。

選択肢の検討

  • ア 障がいは、社会との関わりの中で生まれるものであり、その人個人に生まれつき備わっている、生き物としての比較不能な価値を揺るがすものではないのに、比較と競争によって障がいのある人の価値を認めようとしない社会の問題点を痛感したから。 「比較と競争によって障がいのある人の価値を認めようとしない社会の問題点を痛感した」とは、書かれていません。筆者が気づいたのは、障がいが社会との関係で形づくられる、ということです。
  • イ 障がいというものは、その人個人に生まれつき備わった性質とは関係なく、社会の仕組みの中で生まれるものであり、筆者自身も社会の環境によっては障がいを持つ存在になるように、比較不能な価値と比較可能な価値は表裏一体だと実感したから。 筆者は、二つの価値の「違い」を意識するようになった、と述べています。二つの価値が「表裏一体」だと実感した、とは言っていません。
  • ウ 障がい者の就労支援をする中で、働きたいという意思を持つ障がい者と関わるうちに、いまの社会のあり方との関係の中で価値がないと判断され、その能力を発揮できないような人でも、見方を変えれば他の人より優れた価値を持つ人と言えるのだと感じたから。 「他の人より優れた価値を持つ」は、本文にない内容です。「比較不能な価値」は、他の人より優れているという意味ではありません。
  • エ 障がいのある人と関わる中で、今の社会で価値を認められづらい人にも比較不能な価値があると気づき、障がいというのはその人のもともと持った性質だけによるものではなく、社会の中で比較可能な価値を他者と比較された結果生まれたものなのだと実感したから。 「比較不能な価値がある」「障がいは、もともとの性質だけではなく、社会の中で比較可能な価値を比較された結果生まれる」が、本文の気づきに合っています。 これが正解です。
解答に入れる要素
① 障がい者の支援に携わる中で、筆者が知った
② 障がいは、その人のもともとの性質だけでは決まらない
③ 社会の中で「比較可能な価値」を評価される中で、障がい者とみなされることがある
解答エ

問八 線⑥「医学モデル」 空らんにあてはまる言葉(抜き出し)抜き出し・6点

設問 線⑥「医学モデル」とありますが、これを次のように説明するとき、次の[ ]にあてはまることばを文章Ⅰから六字ちょうどで探し、抜き出して答えなさい。
「障がいのある人は、身体的・精神的に[ ]部分があるととらえる考え方。」

何を答える問いか 文章Ⅱの「医学モデル」の説明を手がかりに、文章Ⅰの中から、同じ意味の言葉を探す問題です。二つの文章をつなぐ問題です。字数は六字ちょうどです。

答えの組み立て ①空らんの前後「身体的・精神的に□部分がある」から、「足りない・欠けている」の意味が入ると見当をつける。②文章Ⅱで、医学モデルがどう説明されているか確かめる(個人の「欠陥」)。③文章Ⅰで、同じように障がいを「欠陥」と述べている場所を探す。④その周辺で、「〜部分がある」とつながる六字を探し、字数で確かめる。

本文の根拠 文章Ⅱは、医学モデルを、「障がいは個人の身体や心の欠陥として理解され、治療や矯正の対象とされます」と説明しています(本文4ページ15行目)。文章Ⅰの中で、同じように障がいを「欠陥」と述べている場所は、本文2ページ10行目の、「「できなさ」は、多くの場合「欠けているもの」として語られます」です。そのすぐ後に、「何かが不足している、他の人にはあるのに自分にはない」とあり、「不足している」が六字ちょうどです。

解答に入れる要素
① 文章Ⅱ 医学モデル = 障がいを個人の「欠陥」とみる
② 文章Ⅰ 「できなさ」は「欠けているもの」として語られる(本文2ページ10行目)
③ その後ろの「何かが不足している」から、六字ちょうどを抜き出す
解答不足している

失点しやすい書き方 

  • 「欠けているもの」と書く 「欠けているもの」は七字で、六字ちょうどの条件に合いません。「欠けている」は五字なので、これも合いません。
  • 文章Ⅱの中から探してしまう 設問は、「文章Ⅰから」探す、と指定しています。文章Ⅱの「欠陥」は、探す手がかりです。答えは、文章Ⅰにあります。

問九 線⑦「社会モデル」 その考え方にもとづく行動の具体例記号選択・5点

設問 線⑦「社会モデル」とありますが、この考え方をもとに障がい者の不便を解消しようとする行動の具体例として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 「社会モデル」の考え方を、具体的な場面にあてはめる問題です。社会モデルとはどのような考え方かを、先に言葉にしてから、各選択肢が、その考え方に合っているか確かめます。

答えの組み立て ①社会モデルとは何かを言う(障がいは、社会の側の制度や環境のバリアによって生み出される)。②その考え方に合う支援とは、本人を変えるのではなく、周りの制度や環境を変えること、と決める。③各選択肢が、変えているのは「本人」か「周り」かを確かめて、消していく。

本文の根拠 「社会モデル」とは、「障がいは社会の側にある制度や環境のバリアによって生み出される」(本文4ページ15〜16行目)という考え方です。この考え方にもとづくと、障がい者本人を変えるのではなく、周りの制度や環境を変えようとする支援になります。

選択肢の検討

  • ア 話すことが難しい人が不利にならないように、電話での申し込みを受け付けないことにした。 電話での申し込みをやめても、話すことが難しい人が申し込める別の方法が示されていません。不便が解消できていません。
  • イ 目の見えない人でも注文できるようにするために、点字でも料理名を記載したメニュー表を作った。 目の見えない人が注文できるように、メニュー表という周りの環境を変えています。社会モデルの考え方に合っています。 これが正解です。
  • ウ 耳が聞こえない人が聴力を回復して生活しやすくするために、専門の病院を全国各地に整備した。 聴力を回復させるための病院づくりは、障がいを治療の対象にしています。医学モデルの考え方です。
  • エ 腕の不自由な人が周りと同じ速さで黒板を写せるように、事前に文字を書く練習をしてもらった。 腕の不自由な人に、書く練習をしてもらうのは、本人に努力を求めています。周りの環境を変えていません。
解答に入れる要素
① 社会モデル = 障がいは、社会の側の制度や環境のバリアで生まれる
② 合う支援 = 本人ではなく、周りの制度や環境を変える
③ 選択肢の「変えるもの」が、本人か周りかを確かめる
解答イ

問十 「「早くできる人」や「強い人」」 文章Ⅱの筆者の考え方にあてはめると記号選択・5点

設問 〜〜線「『早くできる人』や『強い人』」とありますが、文章Ⅱの筆者の考え方にあてはめると、「早くできる」ことや「強い」ことはどのようにとらえられますか。その説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 文章Ⅰの言葉を、文章Ⅱの筆者の考え方にあてはめて、どうとらえられるかを選ぶ問題です。二つの文章をつなぐ問題です。文章Ⅱの筆者の考え方を、先に一言で言えるかが鍵です。

答えの組み立て ①文章Ⅱの筆者の考え方を一言で言う(障がいは、社会のあり方との関係で決まる)。②その考え方を、裏返してみる(今の社会で価値があるとされることも、社会との関係で決まる)。③「早くできる」「強い」を、②にあてはめて、どうとらえられるかを決める。④決めた内容と一致する選択肢を選ぶ。「〜すべきだ」という主張の選択肢は、問われていることとずれていないか確かめる。

本文の根拠 文章Ⅱの筆者は、障がいは社会のあり方との関係で決まるものだと述べています。これを裏返すと、今の社会で価値をもつとされていることも、社会のあり方との関係で決まっている、ということです。文章Ⅱで、「社会のあり方次第で、その人は障がい者にも健常者にもなりうる」(本文4ページ11行目)と述べているのと同じように、今の社会で評価されることも、社会のあり方が変われば、その価値は揺らぐことがあるのだと考えられます。

選択肢の検討

  • ア 「できない」ことがあってはじめて、人間が生まれながらに持つ比較不能な価値に気づくことができるので、「早くできる」ことや「強い」ことはむしろその人の視野を狭めることになりかねない。 「視野を狭めることになりかねない」とは、筆者は述べていません。筆者の考え方に、そのような内容はありません。
  • イ 「早くできる」ことや「強い」ことを重視して、障がい者のような「できない」ことがある人を排除するのではなく、そのような人こそ人間本来の価値を持っている人として尊重するべきである。 問われているのは、「どうとらえられるか」です。「尊重するべきである」という主張は、問われていることとずれています。
  • ウ 現在の社会が「早くできる」ことや「強い」ことに価値を置く仕組みになっているだけであり、その仕組み次第では「早くできる」ことや「強い」ことの価値が変わっていくこともある。 「今の社会が、そういう仕組みになっているだけで、仕組み次第で価値が変わる」が、筆者の考え方をあてはめた内容です。 これが正解です。
  • エ 「早くできる」ことや「強い」ことは、「できる」人びとの中で価値を認められているだけであり、障がい者のように「できない」ことがある人とともに過ごす時間には役に立たないものである。 「ともに過ごす時間には役に立たない」と、言い切っています。筆者は、そのようには述べていません。
解答に入れる要素
① 文章Ⅱ 障がいは、社会のあり方との関係で決まる
② 裏返す 今の社会で価値があるとされることも、社会との関係で決まる
③ あてはめる 社会が変われば、「早くできる」「強い」の価値も変わりうる
解答ウ

大問4 物語文 真下みこと『きみは悪口を言わない』

あらすじ 赤いリボンが「友情の印」になり、そして返されるまで

小学三年生の美紗都は、クラスの中で目立つ女の子のグループの一員です。ある日、図書室で、クラゲの図鑑ばかり読んでいる亜子と仲良くなります。亜子は、クラスでは誰とも話さない、浮いた存在でした。本文は、美紗都が、グループの友達のカナと愛由美に、「学習発表会のことで頼まれたことがある」とごまかした日から始まります。

美紗都は髪にリボンをつけて図書室へ行き、亜子に話しかけます。美紗都がアマクサクラゲのことを聞いても、亜子は「図鑑を見て」と言うばかりで、質問に答えようとしません(問一・問二)。友達がいない理由は、そこにあるのではないかと思いながらも、亜子が決して責めたりしないこと、毎朝一緒に登校しなくても怒らないことに、美紗都は、大人のような雰囲気を感じます。

やがて美紗都は、髪につけてあるリボンを解き、赤いリボンを亜子に差し出して、「友達の印」だと言います。亜子はそのリボンを「触手みたい」と言い、赤い触手をもつヒラタカムリクラゲの図鑑を見せてくれます。ここで、リボンは、単なる「変身」アイテムではなく、秘密の友情の印になりました(問三)。二月に入ってすぐ、美紗都は二日続けて図書室へ行きます。カナや愛由美に何を言われても、もう気にならなくなっていました(問四)。

ところが、教室へ戻る道すがら、美紗都は、亜子といるところをカナと愛由美に見られます(問一)。「何してんの、こんなところで」「調べ学習は?」としつこく言われた美紗都は、キッとにらみそうになるのを必死で抑えます。「この居場所を、守らなくてはならない」と思ったからです(問五)。そして、亜子と一緒にいた理由を、「かわいそう、だったから」と説明してしまいます。この言葉を何度も口にするうちに、リボンをあげたことや、二人で話して楽しかった思い出が、強い言葉にかき消されていきます(問六)。

翌日の昼休み、美紗都は亜子に会いに行き、「昨日はごめんね」と話しかけます。しかし、亜子は図鑑をぱたんと閉じ、赤いリボンを美紗都に返して、「もう友達じゃないから、このリボンは返すね」と言います(問七)。亜子は、昨日、廊下で美紗都の言葉を聞いていたのでした。その後、美紗都は、「カナと愛由美とも、うまくやっていかなきゃいけないから」と、前日の発言への言い訳をつぶやきます(問八)。返された赤いリボンを右手に持ったまま、リボンが赤い血のように見えてきます。美紗都は、「身勝手に流れる赤いリボンの血」を、ぎゅうっと握りしめます(問九)。

図4 大問4 人物相関図
美紗都
小学三年生
クラスで目立つグループの一員
図書室で亜子と仲良くなる
亜子
図書室でクラゲの図鑑ばかり読む
クラスでは誰とも話さない浮いた存在
質問には「図鑑を見て」と答える
カナ
美紗都のグループの友達
愛由美
美紗都のグループの友達
美紗都→亜子図書室で仲良くなる。赤いリボンを「友達の印」として渡す
亜子→美紗都「かわいそうな子」と言われたのを廊下で聞き、赤いリボンを返す
美紗都⇄カナ・愛由美同じグループ。居場所を守るため、合わせようとする
図解動画③ 大問4 登場人物と関係(約37秒)

物語は、場面ごとに、美紗都の立つ場所が変わります。設問の根拠を探すときは、「どの場面か」を先に確かめましょう。場面の並びを整理しておきます。

図5 大問4 場面構成図
場面1
図書室。美紗都が亜子に話しかける。亜子は、質問に答えず、「図鑑を見て」と言うばかり本文8ページ問一(a)・問二
▼
場面2
美紗都が、髪のリボンを解き、赤いリボンを「友達の印」として亜子に渡す。リボンは、秘密の友情の印になる本文9〜10ページ問三
▼
場面3
二月に入ってすぐ、二日続けて図書室へ。カナや愛由美に何を言われても気にならない本文10ページ問四
▼
場面4
教室へ戻る道すがら、カナと愛由美に問いつめられる。「かわいそう、だったから」と言ってしまう本文11ページ問一(b)・問五・問六
▼
場面5
翌日、図書室で、亜子に赤いリボンを返される。「もう友達じゃない」本文14ページ問七
▼
場面6
廊下の寒さの中で、亜子の傷ついた心を思う。赤いリボンは、美紗都の手の中にある本文15ページ問八・問九
図6 大問4 美紗都の心情の流れ

-=否定的な心情 / ±=複数の気持ちが重なる転換点 / +=肯定的な心情

1
図書室・「図鑑を見て」
友達に合わせてばかりの美紗都は、質問に答えず、自分のペースを崩さない亜子を、大人のようだと感じる
美紗都 + 亜子への新鮮さ・あこがれ
対応する設問:問二
2
リボンを渡す・「友達の印」
髪のリボンを解いて、赤いリボンを亜子に渡す。リボンは、秘密の友情の印になる
美紗都 + 友情が始まるうれしさ
対応する設問:問三
3
二月・図書室に通う
亜子との時間が新鮮で、カナや愛由美に何を言われても気にならない
美紗都 + 亜子との時間を楽しむ
対応する設問:問四
4
教室へ戻る道すがら・問いつめられる
亜子と話していたことをしつこく問いつめられ、いら立つ。それでも、にらみそうになるのを抑える
美紗都 ± いら立ちと、居場所を失う不安
対応する設問:問五
5
「かわいそう、だったから」
「かわいそう」と何度も言ううちに、楽しかった思い出が、強い言葉にかき消される
美紗都 - 友達との関係を重く見て、楽しい思い出を遠ざける
対応する設問:問六
6
リボンを返される・「もう友達じゃない」
「かわいそうな子」と言われたのを聞いていた亜子が、友情を終わらせる
美紗都 - 友情が終わったことを突きつけられる
対応する設問:問七
7
廊下の寒さ・赤いリボンの血
罪悪感を和らげようとしても、リボンは手の中。傷つく自分の身勝手さを痛感する
美紗都 - 罪悪感と、身勝手さの痛感
対応する設問:問八・問九
図解動画④ 大問4 美紗都の心の動き(約49秒)

問一 空らんa・bにあてはまる漢字一文字漢字一文字の空らん補充・各3点(a・b)

設問 [a]・[b]にあてはまる漢字一文字をそれぞれ答えなさい。

何を答える問いか 空らんの前後の言葉と合わせて、一つの言葉になる漢字一文字を答える問題です。a・bとも、決まった言い回しです。

答えの組み立て ①空らんの前後をつなげて、言葉の形にする(一□張り・□すがら)。②言葉の意味を思い浮かべる。③意味が、その文の様子に合っているか確かめる。④合う漢字を一文字書く。

本文の根拠 aは、「亜子ちゃんは図鑑を見ての一[a]張りで、まったく譲らない」という文です。「一点張り」は、一つのことだけを押し通すこと。亜子が、「図鑑を見て」と言うばかりで、まったく譲らない様子に合います。bは、「教室に帰るまでの[b]すがら、美紗都は一度くしゃみをした」という文です。「道すがら」は、道の途中、という意味です。教室に帰る途中、という文の意味に合います。

解答に入れる要素
a 「一点張り」 = 一つのことだけを押し通す → 点
b 「道すがら」 = 道の途中 → 道
解答a…点 b…道

問二 線①「美紗都にはそこが面白かった」 亜子のどのようなところか記号選択・6点

設問 線①「美紗都にはそこが面白かった」とありますが、美紗都は亜子のどのようなところを面白いと感じているのですか。その説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 美紗都が面白いと感じている、亜子の「そこ」を選ぶ問題です。「そこ」という指示語は、直前に書かれた内容を指しています。

答えの組み立て ①「そこ」が指す、直前の亜子の様子を確かめる。②その亜子を、美紗都がどう感じているか(本文の言葉)を探す。③①と②をまとめた言い方の選択肢を選ぶ。

本文の根拠 美紗都に「アマクサクラゲ」がどんなものか聞かれても、亜子は、「図鑑を見て」と言うばかりで、質問に答えようとしません(本文8ページ12行目)。美紗都は、そのマイペースな部分を、「友達がいない理由」だと考えます(本文8ページ13行目)。しかし、いつも友達に合わせてばかりの美紗都は、無理に周囲に合わせず、自分の考えをはっきり言う亜子を、「大人のように」感じています(本文8ページ17行目)。

選択肢の検討

  • ア 無理に他人に同調しようとしない、自立したところ。 「質問に答えず、自分のペースを崩さない」亜子を、「大人のように」感じていることに合っています。 これが正解です。
  • イ 自分に友達がいないことを気にしない、勝ち気なところ。 「友達がいない理由」は美紗都が考えたことで、亜子が友達がいないことを気にしていない、とは書かれていません。「勝ち気」とも書かれていません。
  • ウ 仲良くしようとする相手を拒まない、優しいところ。 線①の直前の亜子は、質問に答えず、「図鑑を見て」と言っています。相手に合わせて、優しく接している様子ではありません。
  • エ 自分の気持ちを正直に語ってくれる、気取らないところ。 線①の直前の亜子は、自分の気持ちを語っているのではなく、「図鑑を見て」と言うばかりです。
解答に入れる要素
① 「そこ」の中身 質問に答えず、「図鑑を見て」と言うばかり
② 美紗都の感じ方 友達に合わせてばかりの自分と違い、亜子を「大人のように」感じる
③ まとめ 無理に他人に同調しない、自立したところ
解答ア

問三 空らん②「単なる②アイテムではなく、秘密の友情の印」(抜き出し)抜き出し・6点

設問 [②]にあてはまることばを本文中から二字で探し、抜き出して答えなさい。

何を答える問いか リボンが、友情の印になる前は、どのようなものだったかを表す言葉を、本文から二字で探す問題です。「単なる〜ではなく、〜」という対比の、前の方に入る言葉です。

答えの組み立て ①空らんの前後「単なる□アイテムではなく、秘密の友情の印」から、「友情の印」と対になる言葉が入ると見当をつける。②あとの場面で、リボンをどのようなものとして考えているか探す。③その言葉を、二字で抜き出す。

本文の根拠 空らんには、それまでのリボンがどのようなものだったかを説明する言葉が入ります。このあとの場面で、カナと愛由美という本来の場所に戻った美紗都は、「いつも違う色のリボンをつけて、友達とお喋りをして笑っている」自分を、「変身リボンでできあがる『美紗都ちゃん』」(本文11ページ9〜10行目)と考えています。本当の自分を隠し、友達に合わせるためのアイテムが、「リボン」だったのです。

解答に入れる要素
① 空らんは、「友情の印」と対になる、それまでのリボンの働き
② あとの場面 「変身リボンでできあがる『美紗都ちゃん』」
③ 二字で抜き出す
解答変身

失点しやすい書き方 

  • 「友情」と書く 「友情」は、リボンが後から変わった姿です。空らんには、それまでのリボンの働きが入ります。
  • 空らんの前後だけで考える 前後の文からは、答えは決まりません。「変身リボン」が出てくるあとの場面まで、読み進めて探します。

問四 線③「美紗都はもう二人に何を言われても気にならなかった」 なぜか記号選択・6点

設問 線③「美紗都はもう二人に何を言われても気にならなかった」とありますが、なぜですか。その理由を説明したものとして、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 美紗都が、カナと愛由美に何を言われても気にならなかった理由を選ぶ問題です。理由は、直前までの、亜子との関わりの中にあります。

答えの組み立て ①それまで、美紗都がカナや愛由美とどう過ごしていたかを確かめる。②亜子と関わりはじめて、何が変わったかを探す。③「気にならない」を、「気持ちがどうなったか」で言いかえる。④①〜③を過不足なくまとめた選択肢を選ぶ。

本文の根拠 これまで、美紗都は、カナや愛由美に合わせて過ごしていました。しかし、図書室で亜子と関わりはじめてから、「友情の印」としてリボンをあげるほど、亜子との時間を楽しむようになります。無理に他人に合わせることをせず、同い年とは思えない知識をもつ亜子の存在が新鮮で、だからこそ、今までのように、友達に合わせようという気持ちが弱くなっていた、と考えられます。

選択肢の検討

  • ア 亜子に友情の印のリボンをあげた以上、今までのようにカナや愛由美とうわべだけの付き合いをするのは亜子に申し訳ないと感じたから。 「申し訳ないと感じた」とは、書かれていません。気にならなかった理由は、亜子との時間が新鮮で、二人に合わせる気持ちが弱くなっていたことです。
  • イ カナや愛由美に合わせなければいけない日々にうんざりしている中で、人に合わせることをしない亜子という味方を得ることができたから。 「うんざりしている」「味方を得た」は、本文にない内容です。
  • ウ 新しく友達になった亜子と過ごす時間が新鮮で、カナや愛由美と一緒にいるために二人に合わせようという気持ちが弱くなっていたから。 「亜子と過ごす時間が新鮮」「二人に合わせようという気持ちが弱くなっていた」が、本文に合っています。 これが正解です。
  • エ 亜子という新しい友達に魅力を感じていたため、表面的な会話しかできないカナや愛由美と仲良くするのはやめようと決意していたから。 「仲良くするのはやめようと決意していた」まではいっていません。合わせようという気持ちが「弱くなっていた」程度です。
解答に入れる要素
① これまで カナや愛由美に合わせて過ごしていた
② 変化 亜子との時間が新鮮で、楽しくなった
③ その結果 二人に合わせようという気持ちが弱くなっていた
解答ウ

問五 線④「美紗都はキッとにらみそうになるのを必死で抑える」 なぜか(記述)記述(80字以内)・12点

設問 線④「美紗都はキッとにらみそうになるのを必死で抑える」とありますが、美紗都がこのような様子になったのはなぜですか。八十字以内で説明しなさい。

何を答える問いか 美紗都が、「にらみそうになった」ことと、それを「必死で抑えた」ことの、両方の理由を、八十字以内で説明する問題です。傍線部を、「にらみそうになる」と「必死で抑える」の二つに分けて考えます。

答えの組み立て 気持ちを一言で決めて、答えの最後に置く まず、美紗都の気持ちを一言で決めます。「クラスの居場所を失うわけにはいかないと考えたから」です。この一言を答えの最後(文末)に置き、その前に、状況を並べます。状況は二つです。(1)にらみそうになった理由。亜子と話していたことを、しつこく問いつめられて、いら立ったこと。(2)抑えた理由。愛由美やカナとの関係を悪化させたくないこと。書く順番は、(1)→(2)→気持ちの一言です。

本文の根拠 線④の直前に、美紗都が、亜子と話していたことを、カナと愛由美にしつこく問いつめられる場面があります。これが、「にらみそうになる」理由です。そして、線④の直後に、「この居場所を、守らなくてはならない」とあります。教室でのいつもの居場所は、「変身リボンでできあがる『美紗都ちゃん』」(本文11ページ9〜10行目)です。カナや愛由美と一緒にいることで確保してきた、クラスの中での立ち位置を守るために、必死で抑えたのです。

解答に入れる要素
① きっかけ 亜子と話していたことを、しつこく問いつめられて、いら立った
② 抑えた理由 カナや愛由美との関係を悪化させたくない
③ 気持ちの一言(答えの最後に置く) クラスの居場所を失うわけにはいかないと考えたから
書く順番は、①→②→③です。八十字以内に収めます。
解答例(73字)亜子と話していたことについてしつこく問いつめられていら立ったが、愛由美やカナとの関係を悪化させてクラスの居場所を失うわけにはいかないと考えたから。

解答例の組み立て 解答例は、「〜問いつめられていら立ったが、〜悪化させて〜失うわけにはいかないと考えたから」という一文です。「いら立ったが」で、にらみそうになった理由を、「悪化させて」で、抑えた事情を並べ、「失うわけにはいかないと考えたから」と、気持ちの一言を文末に置いています。

失点しやすい書き方 

  • 出来事で終わって、気持ちの言葉で結んでいない 「カナと愛由美にしつこく問いつめられたから」で終えると、「なぜ、抑えたのか」が書けていません。「クラスの居場所を失うわけにはいかないと考えたから」と、気持ちの一言で結びます。
  • 「亜子との友情を守るため」と書く 抑えたのは、亜子のためではありません。カナや愛由美との関係で確保してきた、クラスの居場所を守るためです。
  • 「いら立ったから」だけで終える 「にらみそうになった」理由は書けますが、「必死で抑えた」理由が書けていません。二つの理由を、両方書きます。
  • 八十字を超える 字数を超えると、減点されることがあります。理由は、二つの状況と一言に絞り、八十字以内に収めます。

問六 線⑤「言葉は不思議だ」 言葉のどのようなところか記号選択・6点

設問 線⑤「言葉は不思議だ」とありますが、言葉のどのようなところを不思議だと考えているのですか。その説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 美紗都が、言葉のどのようなところを不思議だと考えているかを選ぶ問題です。線⑤の直後に、その中身が説明されています。

答えの組み立て ①線⑤の直後の、説明の文を探す。②「ぼんやりと浮かんでいた考え」とは何かを、本文の言葉で言いかえる。③その考えが、言葉によってどうなったかを確かめる。④①〜③を過不足なくまとめた選択肢を選ぶ。

本文の根拠 線⑤の直後に、「頭の中でぼんやりと浮かんでいた考えは、言葉に勝つことができない」とあります。この「ぼんやりと浮かんでいた考え」とは、「友達の印としてリボンをあげた」ことや、「二人で話していてあんなに楽しかった」ことといった、「淡い思い出」(本文11ページ20〜21行目)です。しかし、カナと愛由美に、亜子といるところを見られ、亜子と話していた理由を説明するうちに、その思い出は、「強い言葉にかき消されてしま」います(本文11ページ21行目)。つまり、「かわいそう」という強い言葉を何度も口にすることで、亜子を本当にかわいそうな子なのだと思いはじめるとともに、亜子と楽しく過ごしたことよりも、目の前のカナや愛由美との関係を重く見てしまうのです。

選択肢の検討

  • ア 亜子と仲良く話していたのはかわいそうだったからだとカナと愛由美に話しているうちに、亜子と仲良くしながらも頭の中にあった、亜子をかわいそうだと感じる気持ちがはっきりしてくるところ。 「ぼんやり浮かんでいた考え」は、リボンをあげたことや、二人で話して楽しかったことです。「亜子をかわいそうだと感じる気持ち」が、前からあったとは書かれていません。
  • イ 本当は、仲良くしていた亜子のことをかわいそうだと思っているわけではないのに、亜子がかわいそうだと繰り返し言うことで、自分の本音を隠しながらカナや愛由美との関係を修復できるところ。 本文が不思議だと述べているのは、「関係を修復できる」ところではありません。強い言葉が、淡い思い出をかき消してしまうところです。
  • ウ 亜子のどんなところをかわいそうだと感じているのかはわからなかったのに、カナと愛由美に亜子のことをかわいそうだと言うたびに、亜子のかわいそうな部分を明確に言えるようになったところ。 「かわいそうな部分を明確に言えるようになる」は、本文にない内容です。
  • エ 亜子のことをかわいそうだと繰り返し言うことで、亜子は本当にかわいそうな子だと感じられるだけでなく、楽しいと感じていたはずの亜子との日々のことを考えずに発言できるようになるところ。 「かわいそう」と繰り返すことで、本当にそう感じるようになり、楽しかった日々を考えずに発言できるようになる、が本文に合っています。 これが正解です。
解答に入れる要素
① ぼんやりした考え リボンをあげたこと、二人で話して楽しかったこと(淡い思い出)
② 強い言葉 「かわいそう」と繰り返し言う
③ 結果 亜子を本当にかわいそうだと思いはじめ、楽しかった日々を考えずに発言できるようになる
解答エ

問七 線⑥「これ、返す」 このときの亜子の気持ち記号選択・6点

設問 線⑥「これ、返す」とありますが、このときの亜子の気持ちを説明したものとして、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 亜子が、赤いリボンを返すときの気持ちを選ぶ問題です。リボンが何を表しているかと、亜子が何を聞いていたかの、二つをつなげて考えます。

答えの組み立て ①亜子が、それまでに何を聞いたか確かめる。②赤いリボンが、二人にとって何を表しているかを言う。③亜子が、リボンを返す言葉(「もう友達じゃない」)から、決意を読み取る。④①〜③をまとめた選択肢を選ぶ。

本文の根拠 亜子は、美紗都が、亜子のことを「かわいそうな子」と言っていたのを、廊下で聞いていました。赤いリボンは、「友達の印」であり、美紗都と亜子の友情を象徴するものです。「かわいそうな子」という発言を聞いた亜子は、美紗都に「もう友達じゃない」(本文14ページ19行目)と述べ、リボンを返して、その友情を終わらせることを決意しているのです。

選択肢の検討

  • ア 教室に一人でいる自分と仲良くしてくれる美紗都だけは、自分の本当の友達だと思っていたのに、かわいそうだから仲良くしていたのだとわかり、美紗都に対して強い憤りを覚えている。 「強い憤り」を表す言葉は、亜子の言葉にありません。亜子は、怒りをぶつけるのではなく、友情を終わらせようと決めています。
  • イ 仲良くなれたと思っていた美紗都が、自分のことをかわいそうだと言っていたのを聞き、美紗都に裏切られたように感じたため、美紗都とのうわべだけの関係を断ち切ろうと決意している。 「かわいそう」と言っていたのを聞いて、裏切られたように感じ、関係を断ち切ろうと決意している、が本文に合っています。 これが正解です。
  • ウ クラゲという共通の話題で仲良くなった美紗都は、クラスの他の子とは違い、他人に流されない人だと思っていたのに、結局カナや愛由美に合わせて本音を隠しているのを悲しく思っている。 亜子が傷ついたのは、「カナや愛由美に合わせて本音を隠している」ことではありません。「かわいそうな子」と言われたことです。
  • エ カナや愛由美に対しては、亜子がかわいそうだから仲良くしたと言いながら、亜子の前ではカナと愛由美を子どもだと見下すような発言をする、美紗都の自分勝手な様子にあきれている。 亜子が問題にしているのは、「子どもだと見下す発言」ではありません。「かわいそうな子」と言われたことで、裏切られたと感じています。
解答に入れる要素
① 亜子は、「かわいそうな子」と言うのを、廊下で聞いていた
② 赤いリボン = 友達の印・二人の友情の象徴
③ 返す = 裏切られたと感じ、友情を終わらせようと決意している
解答イ

問八 ⑦(15ページ4〜13行目)の部分の美紗都の様子記号選択・6点

設問 ⑦(15ページ4〜13行目)の部分の美紗都の様子を説明したものとして、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 指定された範囲の、美紗都の様子を選ぶ問題です。範囲の中の、美紗都の行動・つぶやき・手の中にあるものから、気持ちを読み取ります。

答えの組み立て ①範囲の中で、美紗都が感じていること(寒さ)、つぶやいていること、手の中にあるものを、一つずつ拾う。②それぞれが、どのような気持ちを表すか言う。③全体をまとめた選択肢を選び、一部だけ合っていても、言い切りすぎの選択肢は消す。

本文の根拠 15ページ4行目からの場面で、美紗都は、亜子が「かわいそうな子」という発言を聞いていた廊下の寒さを感じながら、亜子の傷ついた心を思います。「カナと愛由美とも、うまくやっていかなきゃいけない」(本文15ページ9行目)と、前日の発言に対する言い訳を、一人でつぶやく様子からは、亜子を傷つけたことへの罪悪感を、なんとか和らげようとしていることがわかります。それでも、「赤いリボンは美紗都の手の中」(本文15ページ12行目)にあり、美紗都が亜子を傷つけたこと、それによって二人の友情が終わってしまったことは、変えられない現実として、そこにあるばかりです。

選択肢の検討

  • ア カナや愛由美との関係を保つためには、亜子をかわいそうと言うしかなかったのだと自分自身に言い聞かせて、亜子を傷つけた罪悪感を和らげようとしながらも、自分の犯した罪の大きさを感じている。 「言い聞かせて罪悪感を和らげようとしながら、罪の大きさを感じている」が、つぶやきと、手の中のリボンに合っています。 これが正解です。
  • イ 亜子のことを傷つけてしまった以上、今までと同じように亜子と仲良くしていくことはできないのだと痛感し、これからはカナや愛由美と友達でいるしかないのだと気持ちを切り替えようとしている。 「気持ちを切り替えようとしている」とは、書かれていません。言い訳をつぶやきながら、罪悪感を和らげようとしています。
  • ウ 友達になれた亜子に拒絶されたことに動揺し、自分は亜子をかわいそうと言うことでしか自分の立場を保てなかったのであり、拒絶した亜子が悪いのだと考えることで自分の気持ちを保とうとしている。 「拒絶した亜子が悪い」とは、考えていません。美紗都は、亜子を傷つけたことへの罪悪感を抱いています。
  • エ 亜子がいた廊下の寒さから、自分がどれほど亜子を傷つけたのかを改めて痛感するとともに、自分から友情の印を渡したのに、その友情を終わらせてしまった軽はずみな発言を心から悔いている。 言い訳をつぶやいて、罪悪感を和らげようとする様子がありません。「心から悔いている」と言い切るのも、本文の様子とずれています。
解答に入れる要素
① 寒さの中で、亜子の傷ついた心を思う
② 「うまくやっていかなきゃいけない」とつぶやき、罪悪感を和らげようとする
③ それでも、赤いリボンは手の中にあり、友情が終わったことは変えられない
解答ア

問九 線⑧「身勝手に流れる赤いリボンの血を、美紗都はぎゅうっと握りしめる」 美紗都について表現していること記号選択・6点

設問 線⑧「身勝手に流れる赤いリボンの血を、美紗都はぎゅうっと握りしめる」とありますが、ここでは美紗都についてどのようなことを表現していると考えられますか。その説明として、最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 線⑧の比喩表現を、正しく解釈した選択肢を選ぶ問題です。「赤いリボンの血」が何を表しているか、「身勝手」と言うのはなぜか、の二つを、本文に戻して確かめます。

答えの組み立て ①「赤いリボンの血」が表しているものを、本文の言葉で言う。②なぜ、それを「身勝手」と言うのかを、二人の友情の始まりと終わりをたどって考える。③「握りしめる」が表す気持ちを決める。④①〜③を過不足なくまとめた選択肢を選ぶ。

本文の根拠 「赤いリボンの血」とは、「美紗都の心から流れている」(本文15ページ22行目)とあるように、亜子に友情の終わりを告げられて傷ついている、美紗都の気持ちを表しています。では、なぜそれが「身勝手」なのでしょうか。美紗都と亜子の友情は、亜子の性格を面白いと感じた美紗都が、一方的に赤いリボンを手渡して始まったものでした。それなのに美紗都は、亜子のことを見下したような発言によって、亜子を傷つけてしまいます。自分から友達の印を渡し、自分の発言でその友情を終わらせて、それによって傷つく美紗都は、どこまでいっても自分本位でわがままです。「身勝手に流れる赤いリボンの血」を「ぎゅうっと握りしめる」美紗都は、そのような自分の身勝手さを、痛切に感じているのです。

選択肢の検討

  • ア 他人に合わせようとしない亜子に魅力を感じて友達になったはずなのに、自分自身の言葉によって亜子を傷つけてしまい、結局は他人に合わせることでしか生きていけない自分の軽薄さを感じているということ。 美紗都が感じているのは、「他人に合わせることでしか生きていけない軽薄さ」ではありません。自分の都合で亜子を傷つけて、その自分が傷つく、「身勝手さ」です。
  • イ 亜子に友情の印のリボンを返されたことに深く傷つきながらも、本当に傷ついているのはひどい言葉を聞いた亜子なのだから、自分が傷ついていてはいけないのだと考え、深い罪悪感にさいなまれているということ。 「自分が傷ついていてはいけない」と、自分を戒める内容ではありません。傷ついている自分を、わがままだと感じています。
  • ウ 独りよがりな考えで亜子にリボンを渡し、軽率な発言によって亜子を傷つけてその友情を終わらせてしまった挙句、亜子にリボンを返されたことに傷ついている自分がどれほどわがままかを痛感しているということ。 「独りよがりなリボン」「軽率な発言で友情を終わらせた」「傷ついている自分がわがままだと痛感」が、本文に合っています。 これが正解です。
  • エ 亜子と友達になれたと思って浮かれていた自分のおろかさに気づくとともに、大切な存在だと思っていたはずの亜子さえも簡単に傷つけてしまったことを反省し、人を傷つけない人になろうと決意しているということ。 線⑧の比喩が表しているのは、人を傷つけない人になろうという決意ではありません。自分の身勝手さを、痛切に感じていることです。
解答に入れる要素
① 「赤いリボンの血」 = 友情の終わりを告げられて傷ついた、美紗都の気持ち
② 「身勝手」の理由 自分から友情の印を渡し、自分の発言で友情を終わらせたのに、傷ついている
③ 「握りしめる」 = 自分の身勝手さを痛切に感じている
解答ウ

二つの大問が響き合うところ

大問3は、「できなさ」を「欠けているもの」としてみる、社会のまなざしを問い直す論説文です。大問4は、「かわいそう」という強い言葉が、美紗都と亜子の友情を終わらせる物語です。当研究所は、二つの大問に、次の共通点を見ました。どちらも、人を「足りない人」「かわいそうな人」とみる見方が、その人との関係を変えてしまう、という点です。文章Ⅰの筆者は、「できない」ことが「欠けているもの」として語られる一方で、「できない」からこそ生まれるつながりがあると述べました。亜子は、「私は、かわいそう、とかじゃないから」と言って、リボンを返します。ただし、これは当研究所の読み方で、本文が二つを結びつけているわけではありません。

解き方にも共通点があります。論説文は、「まなざし」「医学モデル」のような言葉を、本文の別の場所の言葉に言いかえて読む力を、物語文は、「変身リボン」「赤いリボンの血」のような比喩を、本文の言葉に言いかえて読む力を、それぞれ試しました。どちらも、「たとえ」を、本文のほかの箇所の言葉に置きかえる、という読み方で解けます。

この回から持ち帰るべき3つのこと

  • 記述は、結論や気持ちの「一言」を決めて、答えの最後に置く 大問3の問五は、「誰もが豊かに生きることのできる社会に変える原動力になる」を文末に置き、前に、「社会の前提を見直そうとすること」と、「できる人ばかりを基準にして、できない人を排除している社会」を並べました。大問4の問五は、「クラスの居場所を失うわけにはいかないと考えたから」を文末に置き、前に、「問いつめられていら立った」ことと、「関係を悪化させたくない」ことを並べました。材料を並べて一文にまとめるのではなく、先に一言を決めてから、前を作る練習をしてください。
  • 抜き出しは、問題文の言いかえを手がかりに、本文の対応する言葉を探し、字数で確かめる 大問3の問二は、問いかけの答えは結論にある、と考えて、四十字以上四十五字以内の範囲を決めました。問八は、「欠陥」を、文章Ⅰの「欠けているもの」に言いかえて、「不足している」(六字)にたどりつきました。大問4の問三は、「友情の印」と対になる言葉を探し、あとの場面の「変身リボン」から、「変身」を見つけました。
  • 二つの文章をつなぐ問題や比喩の問題は、言いかえた所を探して結びつける 大問3の問六は、「唯一無二の価値」を「比較不能な価値」に、問十は、文章Ⅱの考え方を、文章Ⅰの言葉にあてはめました。大問4の問九は、「赤いリボンの血」を、「美紗都の心から流れている」という本文の言葉に言いかえて、傷ついた気持ちと、身勝手さの両方を確かめました。

大問1・2の知識問題は、1問2点で、合計30点です。これは、150点のうち、20パーセントにあたります。読解の問題に入る前に、確実に取れる点数です。漢字は、同じ読みの別の熟語(細大と最大、血統と決闘)と区別する習慣を、敬語は、「その動作をするのは誰か」を先に決める習慣を、それぞれつけておきましょう。

まとめ

この回は、論説文でも物語文でも、記述が「一言を決めて、答えの最後に置く」型で書けるかが、得点を分けました。論説文の記述は、「誰もが豊かに生きることのできる社会に変える原動力になる」という結論の一言を、物語文の記述は、「クラスの居場所を失うわけにはいかないと考えたから」という気持ちの一言を、それぞれ文末に置きます。そして、前に、状況や成り立ちを並べます。この順番を守れば、記述は、材料を並べるだけの答えから、理由まで言い切る答えに変わります。記号選択と抜き出しでは、本文の言いかえを探して、根拠の行を指さす習慣が、点数を安定させます。