YS中学受験国語力研究室 中学受験国語専門の家庭教師|個別指導・個人契約・オンライン全国対応
アニメーション動画付き

2026.10.18実施 学校別サピックスオープン(聖光学院) 国語 徹底解説

サピックス小学部の学校別サピックスオープン[聖光学院](6年生・国語)のうち、大問四の論説文を、YS中学受験国語力研究室が全問解説します。2026年10月18日実施、国語は150点満点で、大問は四つです。大問一と大問二は漢字(各10点)、大問三は物語文(64点)、大問四は論説文(66点)という構成でした。この記事で扱う大問四は、福嶋亮大さんの『思考の庭のつくりかた はじめての人文学ガイド』(星海社)からの出題で、文芸批評家とはどのような仕事かを論じた文章です。「作家は何を考えているのか」という問いから始まり、人は他者の考えや伝統に「感染」していること、オリジナリティとは「消化力」であること、そして多くの判断を社会の「制度」に預けていることへと進み、批評家の仕事にたどり着きます。設問は問一から問八までの八問で、記述は三問(問三・問五・問八)。図解動画と文字の図解で整理し、八問すべての答えの組み立てを根拠つきで示します。記述の解答は、解答例です。

聖光学院 学校別サピックスオープン 国語 論説文の全問解説のYouTube動画
YouTubeの解説動画(約11分)
大問四の論説文を、問一から問八まで、図解と音声で解説しています。聖光学院の入試との構成の比較も入れています。
YouTubeで見る

出題構成と全体講評

  • 大問は四つ、配点は計150点です。大問一(漢字)が10点、大問二(漢字)が10点、大問三(物語文)が64点、大問四(論説文)が66点です。物語文と論説文で130点を占め、読解が点数の中心です。
  • 大問四の論説文は、設問が八問、66点です。問一は空らん補充(A〜C各3点・計9点)、問二・問六・問七は記号選択(各6点)、問四は空らん補充(6点)、問三・問五・問八が記述です。
  • 記述は三問で、合わせて33点です。問三(30字以内・9点)、問五(30字以内・9点)、問八(80字以内・15点)。66点のうち、ちょうど半分が記述です。問八は、大問四でいちばん配点が高い問題です。
  • 三問とも、結論の「一言」を先に決めて、答えの最後に置く型で書けます。問三は「作り話をすることに長けている」、問五は「自分なりの表現を生み出す力」、問八は「複雑な世界を知的に生き抜く術を、多面的に人々に示す仕事」が、それぞれ答えの最後に置く一言です。この記事では、各設問の解説に、答えの組み立てをまとめました。
  • 本文は、筋を六つのまとまりでつかむと整理できます。テクストの特徴、「作家は考えていない」という疑いへの返事、「感染」、オリジナリティと普遍性、「制度」と前景・後景、批評の仕事、の順です。問八は文章全体を踏まえる問題で、離れた段落の材料を結びつけます。
  • 選択肢の問題は、本文の言葉と一つずつ照らして消します。問二・問六・問七では、「本文にない話」「向きが逆」「筆者の主張の半分だけ」という形のまちがいの選択肢が並びます。それぞれの検討で、どの形かを示しました。
今回のポイント大問四は、本文を六つのまとまりに分けて、設問を割り当てると整理できます。問一は「オリジナルである必要はない」という補足の部分、問二・問三は批評への疑いへの返事、問四は「感染」の入口にあたる空らん、問五・問六は「消化力」と「普遍性」、問七は「制度」と前景・後景の部分、問八は文章全体です。どの設問も、線部の前後と、その直後の説明を読めば、筆者の言いかえが見つかります。記述は、結論の一言を先に決めて、答えの最後に置きます。
図 解く順番(空らん補充・記号選択・記述)
1 線部や空らんの前後を読んで、何を問われているかを一言で言う
▼
2 本文から根拠の文を探す(直後の説明に、筆者の言いかえがある)
▼
3 記号選択は、「本文にない」「逆」「半分だけ」の選択肢を消す
▼
4 記述は、答えの最後に置く一言を先に決めて、前に状況を並べる

大問四 論説文 福嶋亮大『思考の庭のつくりかた はじめての人文学ガイド』

要旨 文芸批評家は、作家が何を考えたかではなく、何に「感染」し、何を考えずに済ませているかを明らかにする仕事

はじめ(テクストと批評) 筆者はまず、テクスト(作品の文章)の特徴を三つにまとめます。言葉が不均質に散らばっていること、社会や歴史、作家の気分など世界からのさまざまな作用が合流する開放系(オープン・システム)であること、そして他のテクストとの「関係」の中にあるネットワークであること、です。世界もテクストと同じようにできているので、批評家は、この世界=テクストを、知的なアマチュアとして生き抜く術を多面的に示そうとする職業だ、と筆者は言います。ところが批評は、不信感を持たれがちです。「作家はそこまで込み入ったことを考えていないのではないか」という疑いに対して、筆者は、作家が何を考えたか読者に透視できるはずはなく、「考えていない」と言い切るのも傲慢な決めつけだ、と返します。作家のインタビューも、創作を仕事とする作家は作り話に長けているのだから、すべて真に受けるのは愚かだ、と言います。

なか(感染・消化・普遍性) 次に筆者は、考えているのは作家だけではない、と言います。誰もたった一人で考えるわけではありません。SNSへの投稿でも、人の「考え」の多くは、あらかじめ与えられたもので、他人の考えに感染しています。「コマ」や「フキダシ」という先人の発明がなければ漫画は描けないように、伝統の蓄積がなければ創作はできません。新人小説の月評をしたとき、作品がよく似ていた経験や、蓮實重彦さんが指摘した作家たちの共通パターンも、無意識の「感染」の例です。ただし、作家は一から十までオリジナルである必要はなく、複数の要素を組みあわせて新しい表現を生み出せばよい、と筆者は言います。ヴァレリーの言葉を借りて、オリジナリティとは「胃袋の問題」、つまりパワフルな消化力だと述べ、さらに、オリジナリティよりも「普遍性」を目指すべきだ、と続けます。

おわり(制度と批評の仕事) 最後に筆者は、人は多くの判断を、社会の「制度」に預けている、と述べます。家を出るときは服を着る(後景)、どの服を着るかは意識して選ぶ(前景)、という例で説明し、後景で自動的に処理することは避けられないが、そこに偏見が育つこともある、と続けます。そこで批評家は、「作家が何を考えているか」ではなく、作家がどのような考えに感染しているか、何を考えずに済ませているか、という構造的な問題にアプローチする、と結ばれます。

図1 大問四 段落構成図(論の流れと設問)
まとまり1テクストは、世界とつながるネットワークの一部
不均質・開放系・ネットワーク。批評家は、この世界=テクストを知的なアマチュアとして生き抜く術を示す職業。
対応する設問:問八(根拠)
▼
まとまり2「作家はそこまで考えていない」という疑いへの返事
読者に透視できるはずはない。言い切るのも傲慢な決めつけ。作家のインタビューも真に受けるのは愚か。
対応する設問:問二・問三
▼
まとまり3誰もたった一人で考えるわけではない(感染)
SNSの投稿、伝統(コマ・フキダシ)、新人小説の共鳴。人の考えは、他人の考えに感染している。
対応する設問:問四・問八
▼
まとまり4オリジナルである必要はない。パワフルな消化力と、普遍性
複数の要素を組みあわせて、新しい表現を生み出す。オリジナリティは胃袋の問題。唯一無二の個性より普遍性。
対応する設問:問一・問五・問六
▼
まとまり5多くの判断を、社会の「制度」に預けている
前景(意識的に選ぶ領域)と後景(選択以前の無意識の領域)。後景で処理することは避けられないが、偏見も育つ。
対応する設問:問七・問八
▼
結論批評の仕事は、作家が何に感染し、何を考えずに済ませているかという、構造的な問題にアプローチすること
「作家が何を考えているか」という問いでは勝負しない。
対応する設問:問八(文章全体)
図解動画① 大問四 論説文 論の流れ(約38秒・音声なし)
図2 大問四 論理フロー図(作家は「感染」し、「消化」して自分の表現にする)
主張:作家が「考える」といっても、その考えには、すでに他者の考えが入り込んでいる(思考は自己の独占物ではない)
▼ 根拠・具体例
SNSの投稿:話題も言葉遣いも画像も、あらかじめ与えられた考えに感染している
伝統:「コマ」「フキダシ」という先人の発明がなければ、漫画は描けない
新人小説:テーマや人物設定がよく似ていた。蓮實重彦さんも、作家たちの共通パターンを指摘
▼ ただし
作家は一から十までオリジナルである必要はない。複数の要素を組みあわせて、新しい表現を生み出す
▼ ヴァレリーの言葉
オリジナリティは「胃袋の問題」=パワフルな消化力。さらに、唯一無二の個性よりも「普遍性」を目指すべき
図3 大問四 対比構造図(前景と後景)
前景
意識的に選択可能な領域「どの服を着るか」を悩んで選ぶ意識して考え、選ぶ問七
VS
後景
選択以前の無意識の領域「家を出るときは服を着る」(悩まない)自動で処理する。避けられないが、偏見が育つこともある問七
筆者は、当たり前の後景を、当たり前ではない前景へ浮上させる作業も必要だ、と述べます。批評の仕事は、この後景(作家が考えずに済ませていること)を明らかにすることです。

問一 空らんA〜Cにあてはまる言葉空らん補充・各3点(A〜C)

設問 [A]〜[C]にあてはまる言葉を、次のア〜エの中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えなさい。ただし、同じ記号は二回以上使えないこととします。

何を答える問いか 三つの空らんに入る言葉を、ア〜エから選ぶ問題です。同じ記号は一回しか使えません。空らんの前後の内容が、どのようにつながるかを決めます。

答えの組み立て ①空らんの直前の内容を一言で言う。②空らんの直後の内容を一言で言う。③二つのつながり(補足・打ち消したあとの言いかえ・同じことの言いかえなど)を決める。④選んだ記号を消して、残りから次を決める。

本文の根拠 Aの前では、作家たちは独立独歩のつもりでも、いつしかお互い感染して似てしまう、と述べられています。Aの後は、「急いで補足すると、作家は一から十までオリジナルである必要性はありません」です。直前の話に補足を加えるつながりなので、「ただ」(ウ)が入ります(問題冊子20ページ)。Bの前は「オリジナルである必要性はありません」。Bの後は、「さまざまな文化的なウイルスに進んで感染しながら、それらを組みあわせて、新しい表現を生み出す」です。必要がないと打ち消したあとに、むしろ望ましい姿を示すので、「むしろ」(イ)です。Cの後は、「すでにある言葉や概念、発想法をうまく操作して、それを作品に組み込む」。これはBの内容を別の言い方で言いかえたものです。言いかえを並べる「もしくは」(エ)が入ります。

選択肢の検討

  • ア やはり 前の内容を受けて「思ったとおりだ」と確かめる言葉です。A〜Cのどこも、そういうつながりではありません。
  • イ むしろ Bの正解です。「必要性はない」と打ち消したあとに、望ましい姿を示します。 Bの正解です。
  • ウ ただ Aの正解です。直前の話に、補足を加える言葉です。 Aの正解です。
  • エ もしくは Cの正解です。Bと同じことを、別の言い方で並べています。 Cの正解です。
解答に入れる要素
A 前は「感染して似てしまう」、後は「オリジナルである必要性はない」という補足 → ただ(ウ)
B 「必要はない」と打ち消し、望ましい姿を示す → むしろ(イ)
C Bと同じ内容の言いかえ → もしくは(エ)
同じ記号は一回しか使えないので、選んだ記号を消しながら進めます。
解答A…ウ B…イ C…エ

問二 「妙なところ」と筆者が感じる理由記号選択・6点

設問 線部①に「妙なところ」とありますが、筆者が「妙」だと感じているのはなぜですか。その理由を説明した文として最もふさわしいものを、次のア〜オの中から一つ選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 筆者が「妙」だと感じる理由として、最もふさわしい文を選ぶ問題です。まず、線部①の直前にある「この意見」が何を指すかを確かめます。

答えの組み立て ①線部のある一文から、「この意見」が指すものを確かめる。②その直後で、筆者がどう反論しているかを探す。③反論の中心を一言にして、選択肢を一つずつ照らす。

本文の根拠 線部①のある文は、「作家はそこまで込み入ったことを考えていない――この意見には、しかし、妙なところがあります」です。「この意見」は、批評に対する読者の疑い、つまり「作家はそこまで込み入ったことを考えていないのではないか」を指します。直後に、筆者の理由があります。「そもそも、作家が執筆中に、何をどう「考えて」作品ができあがったのか、いったい誰に分かるのでしょうか。読者にそれが透視できるはずはない」。そうだとすると、「そこまで込み入ったことを考えていない」というのも、「それ自体が傲慢な決めつけではないでしょうか」と筆者は言います(問題冊子19ページ)。批評は作家の考えの勝手な決めつけだと批判する人が、自分も、作家は考えていないと断定している。ここが「妙」なところです。

選択肢の検討

  • ア 作家や作品を賞美しても批評にならないのに、作家や作品を分析すると読者はすぐに傲慢だと批評家を非難するから。 「作家や作品を賞美しても批評にならない」という話は、本文にありません。
  • イ 批評家の作家論や作品論は、作家の作品を解釈するうえで手助けになるものだと読者が分かっていない気がするから。 筆者が問題にしているのは、批評の役立ちを読者が分かっていないことではありません。「作家は考えていない」という読者の疑いそのものです。
  • ウ 作家の考えたことなど誰にも分からないと考えること自体が、作家に対する軽率な行為だと読者が理解していないから。 向きが逆です。筆者は、作家が何を考えたかは読者に透視できない、と言っています。「誰にも分からないと考えること」を軽率だとは言っていません。
  • エ 安易に批評家を否定することは、批評家だけでなく作家をも侮辱することになると、その人自身が気づいていないから。 「批評家を否定することは、作家をも侮辱することになる」という話は、本文にありません。
  • オ 批評家の作家論や作品論を、作家の考えの勝手な決めつけであると批判する人自身が作家の考えを断定しているから。 批評を「作家の考えの勝手な決めつけ」だと批判する人が、自分も作家の考えを断定している、という内容です。読者の疑いが、自分の言い方と矛盾していることを突いています。 これが正解です。
解答に入れる要素
批判する人(読者)が言っていること 作家はそこまで込み入ったことを考えていない
筆者の反論 作家の考えは読者に透視できない → 「考えていない」と言うのも傲慢な決めつけ
妙なところ 批判する人自身が、作家の考えを断定していること → オ
解答オ

問三 「作家」にカギ括弧がついている理由記述(30字以内)・9点

設問 線部②に『作家』という言葉にカギ括弧がついているのはなぜですか。それを説明した次の文の[   ]にあてはまる内容を、三十字以内で答えなさい。
[   ]ことを示すため。

何を答える問いか 空らんに入る内容を、30字以内で答える記述問題です。空らんのあとは「ことを示すため。」なので、「〜ことを示すため」につながる形で書きます。

答えの組み立て ①理由の一言を先に決める(作家とはどういう人か)。②その一言を、答えの最後(文末)に置く。③前に、状況(誰の、どんな仕事の話か)を並べる。④本文の根拠で、一言と状況を確かめる。

本文の根拠 線部②を含む文は、「何と言っても「作家」なのですから、その発言をすべて真に受けるのは愚かでしょう」です。その直前に、「作家が自分の仕事をすべて正確に言語化できるはずはなく、わざと嘘をつくことも十分可能です」とあります(問題冊子19ページ)。作家は、創作を仕事とする人です。物語を作ることが仕事なので、作り話をすることには長けているはずで、インタビューでの発言も、すべて本当とは限りません。「作家」にカギ括弧がつくのは、この言葉を、そうした人だということを示すために使っているからです。一言は、「作り話をすることに長けている」。これを答えの最後に置き、前に「創作を仕事とする作家は、」と状況を置きます。

失点例 「作家は嘘をつく人だ」と言い切る形にすると、本文の「わざと嘘をつくことも十分可能です」より強くなりすぎます。また、「信用できない」だけで終わると、作家という仕事の中身(作り話をすること)に触れていません。

解答に入れる要素
前に置く状況 創作を仕事とする作家は、
最後に置く一言 作り話をすることに長けている(「ことを示すため」へつなげる)
解答例創作を仕事とする作家は、作り話をすることに長けている(26字。空らんのあとの「ことを示すため。」につなげる)

問四 空らんXにあてはまる言葉空らん補充・6点

設問 [X]にあてはまる言葉として最もふさわしいものを、次のア〜オの中から一つ選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 空らんの前後から、人の「考え」がどのように決まるかを読み取り、ふさわしい語を選ぶ問題です。

答えの組み立て ①空らんを含む文を、前後も含めて読む。②「完全にXに決定されることはありません」と否定されているので、筆者が言いたい反対の内容を、直後から探す。③その内容を一言で言い、選択肢の意味と合わせる。

本文の根拠 空らんを含む文は、SNSに投稿するとき、「どの話題を選ぶか、どういう言葉遣いをするか、どんな画像を投稿するか、それらが完全に[X]に決定されることはありません」です。このあと、「その「考え」の多くは、実はあらかじめ与えられていたのではないか」「自分の考えが他人の考えに感染しているのは明らかでしょう」と続きます(問題冊子19ページ)。投稿の内容は、自分の内側からだけ生まれて決まるのではなく、他人の考えの影響を受けています。「自分の内側から生まれる」ことを表す言葉が「内発的」で、「完全に内発的に決定されることはありません」となります。

選択肢の検討

  • ア 観念的 頭の中だけで考えた、という意味です。「考え」が他人から与えられている、という話とは別です。
  • イ 内発的 自分の内側から生まれる、という意味です。「完全に内発的に決定されることはありません」と、あとの内容につながります。 これが正解です。
  • ウ 作為的 わざとらしい、という意味です。投稿者は頭を働かせていますが、わざとらしさの話ではありません。
  • エ 一義的 ただ一つの意味に決まる、という意味です。話題や言葉遣いの決まり方の話とは合いません。
  • オ 実用的 役に立つ、という意味です。ここでは関係がありません。
解答に入れる要素
空らんの前後 話題・言葉遣い・画像が、完全にXに決定されることはない
このあと 「考え」の多くは、あらかじめ与えられていた(他人の考えに感染している)
答え 自分の内側だけで決まるわけではない → 内発的(イ)
解答イ

問五 「パワフルな消化力」とは記述(30字以内)・9点

設問 線部③に「パワフルな消化力」とありますが、ここではどのようなものですか。三十字以内で説明しなさい。

何を答える問いか 「パワフルな消化力」とは、どのようなものかを、30字以内で説明する記述問題です。筆者は「消化」をたとえで説明しているので、たとえの中身を、ふつうの言葉に言いかえて答えます。

答えの組み立て ①答えの最後に置く一言を先に決める(消化力は、何を生み出す力か)。②たとえの「食べもの」にあたるものを決める(何を、どうするのか)。③一言を文末に置き、前に②を並べる。④本文の根拠で確かめる。

本文の根拠 線部③は、「だから、ヴァレリーが言うように、パワフルな消化力こそがオリジナリティの根源になります」という文にあります。続けて、「「消化」とはさまざまなものを食べあわせることでもあるし、食べたものをコンパクトにすることでもある。つまり、素材の加算および減算によって、それらを別の何かにトランスフォームするのが胃袋の仕事です」と説明されます(問題冊子21ページ)。注によると、トランスフォームは「形や外見を根底から変えること」です。食べものにあたるのは、他の作品や文化などの、すでにある要素。食べあわせることは、織り交ぜること。形を根底から変えることは、自分なりの表現にすることです。直前の段落にも手がかりがあります。「文化のゼロ地点からは、何も生まれません。かといって、他人をただ引き写すだけでは、剽窃家になってしまいます」。

失点例 「オリジナリティの根源」「食べあわせること」と、本文の言葉をなぞるだけでは、どのようなものかの説明になりません。食べものにあたるものを、「複数の既存の要素」のように言いかえましょう。

解答に入れる要素
前に置く状況 複数の既存の要素(他の作品や文化)を織り交ぜ、
最後に置く一言 自分なりの表現を生み出す力(形を根底から変えること)
解答例複数の既存の要素を織り交ぜ、自分なりの表現を生み出す力。(28字)
図解動画② 大問四 問五 パワフルな消化力(約36秒・音声なし)

問六 「読者を刺激する」ことの具体例記号選択・6点

設問 線部④に「ユニヴァーサルだから、たえず読者を刺激する」とありますが、ここでの「読者を刺激する」ことの具体例として、最もふさわしいものを次のア〜オの中から選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 線部④の内容に合う具体例を選ぶ問題です。まず、「ユニヴァーサル」が何を指すかを本文で確かめ、その条件に合う具体例を探します。

答えの組み立て ①線部の中の語「ユニヴァーサル」の意味を、本文で確かめる。②筆者がそれを何と言いかえているかを探す。③その条件に合う具体例を、選択肢から選ぶ。

本文の根拠 線部④を含む段落で、筆者は、ヴァレリーがオリジナリティよりもユニヴァーサリティのほうが重要だと言っていることに、「これは僕も同感です」と賛成します。「唯一無二の個性よりも「普遍性」を目指すべきだということです」。「共同体の「お約束」を超えたユニヴァーサルなものを追求しなければ、小説も批評も成り立ちません」(問題冊子21ページ)。「ユニヴァーサル」は「普遍的」、つまり、時代や共同体を超えて通じる、ということです。したがって具体例は、共同体の違いを超えて、人類に共通する真理や価値観が感じられ、読者が深く共感する、という内容になります。

選択肢の検討

  • ア 話題の書籍であったので読んでみると、最新の機器類に関する描写が織り交ぜられながら話が展開されており、自らの知的好奇心が満たされたので、友人たちに勧めることにした。 「最新の機器類に関する描写」は、その時代の話題です。時代や共同体を超えて通じる、という内容ではありません。
  • イ 偶然学校の図書館で目にしたので読んでみたところ、日本社会に住む者にしか伝わらないものの見方や考えで書かれており、この共同体で生きていく意味を改めて考えさせられた。 「日本社会に住む者にしか伝わらない」は、ある共同体の中だけで通じる話です。共同体の「お約束」を超えたものとは逆です。
  • ウ 昔ながらの作品であり、文体にもとっつきにくさを感じていたが、読み進めると平和に関するテーマが描かれてあり、人類に共通する真理や価値観が感じられて深い共感を覚えた。 「平和に関するテーマ」に、「人類に共通する真理や価値観」を感じて、深い共感を覚える。普遍的であるために読者を刺激する、という例です。 これが正解です。
  • エ 前から知っている作品だったので読むと、普遍的な名作と言われる数々の作品の描写を意識しながら、作家独自の世界観を築き上げているのが分かり、作家の能力の高さに感心した。 「作家の能力の高さに感心した」という話で、作品が普遍的かどうかを述べていません。
  • オ 周りの人たちから勧められたので読んでみると、共同体ごとに異なる家族のあり方や考え方が細やかに説明されており、作家の深い洞察力や高い見識を知って圧倒されてしまった。 「共同体ごとに異なる家族のあり方」は、共同体に特有のことで、普遍性とは逆です。作家の洞察力に圧倒された、という話にもなっています。
解答に入れる要素
ユニヴァーサル = 普遍的(時代や共同体を超えて通じる)
条件 人類に共通する真理や価値観が感じられ、深い共感を覚える
答え 平和というテーマに共感する例(ウ)
解答ウ

問七 「多くの判断を社会の『制度』に」預けることへの筆者の述べ方記号選択・6点

設問 線部⑤に「多くの判断を社会の『制度』に預けてしまっている」とありますが、「多くの判断を社会の『制度』に」預けることに対して、筆者はどのように述べていますか。その説明として最もふさわしいものを次のア〜オから選び、記号で答えなさい。

何を答える問いか 「多くの判断を社会の「制度」に預けてしまっている」ことについて、筆者がどう述べているかを選ぶ問題です。筆者は、この点を、認めている面と、注意している面の両方から述べています。

答えの組み立て ①線部のある段落と、そのあとの具体例(服の例)を読む。②筆者の主張を二つに分ける(認めている点と、注意している点)。③両方を述べている選択肢を選び、片方だけのもの・逆のもの・本文にないものを消す。

本文の根拠 筆者は、服の例で説明します。「家を出るときは服を着る」は選択以前の選択で、ここでは、意識的に選択可能な領域を「前景」、選択以前の無意識の領域を「後景」と区別します(問題冊子21ページ)。「日常のありとあらゆることを選択の対象とすると、負担が大きくなりすぎる」ので、後景で処理してしまいます。「後景で情報処理することは、生きるためには避けられません」。これが、認めている点です。そのあとに、「が、それによって偏見が育つことはあります」と続きます。男は男らしい服装、女は女らしい服装をすることが、暗黙の「制度」になっていて、「この後景こそがジェンダー的な偏見を固定化しているのではないか」と筆者は指摘します。これが、注意している点です。そして、「当たり前の後景を、当たり前ではない前景へと浮上させる作業も必要になります」と述べます(問題冊子21〜22ページ)。

選択肢の検討

  • ア 無意識的な判断で対応することで日常における多くの物事は迅速に進むけれど、意識的に判断しながら対応したわけではないので柔軟な思考力が育まれないという問題が起こっている。 「柔軟な思考力が育まれない」という話は、本文にありません。筆者が心配しているのは、偏見が固定化されることです。
  • イ すべての事柄を意識的に判断していると、人間は間違いをおかし、固定観念や偏見を持ってしまうことがあるので、無意識の領域に自らの判断の一部を任せるというのも理解はできる。 向きが逆です。本文は、すべてを意識的に選ぶと「負担が大きくなりすぎる」と述べています。意識的に判断すると偏見が生まれる、とは言っていません。
  • ウ あらかじめ制度化された選択を実行することによって、自分が気づかないうちに差別や偏見を助長してしまうことがあるが、無意識の領域での判断であるため、それをただすことはできない。 「それをただすことはできない」が、本文と合いません。筆者は、後景を前景に浮上させる作業も必要だ、と述べています。
  • エ 日常すべての選択を意識的に判断するのは不可能なので、無意識の判断にも頼らざるを得ないが、その選択のなかには、思い込みにより、不適切な対応をする危険性を含むものもある。 「無意識の判断にも頼らざるを得ない」(避けられない)と、「不適切な対応をする危険性を含むものもある」(偏見が育つ)の、両方を述べています。 これが正解です。
  • オ 人々がどれほど物事に対して理性を持ち、意識的に判断しようとも、気づかぬうちに固定観念や常識が入り込んでしまうので、理性や意識的な判断には限界があると言わざるを得ない。 「理性や意識的な判断には限界がある」と言うだけで、無意識の判断に頼らざるを得ない、という認める点が入っていません。筆者は、後景で処理すること自体は避けられないとしています。
解答に入れる要素
認めている点 後景で処理することは、生きるためには避けられない
注意している点 そこに偏見が育つことがある(暗黙の「制度」)
両方を述べているもの エ
片方だけの選択肢・逆の選択肢・本文にない選択肢を消すと、エが残ります。
解答エ
図解動画③ 大問四 問七 前景と後景(約36秒・音声なし)

問八 文芸批評家とは、どのような仕事か記述(80字以内)・15点

設問 波線部(本文のはじめ)に「テクスト」とありますが、「テクスト」を扱う文芸批評家とはどのような仕事だと筆者は考えていますか。文章全体を踏まえて八十字以内で説明しなさい。

何を答える問いか 文章全体を踏まえて、文芸批評家の仕事を80字以内で説明する記述問題です。大問四でいちばん配点が高く、本文のはじめ・中ほど・終わりから、材料を一つずつ集めて結びます。

答えの組み立て ①答えの最後に置く一言を、先に決める(批評家の仕事の中身)。②その前に置く状況を二つ決める(本文のどこに書かれているか)。③つなげて、80字以内に収める。

一言(答えの最後) 本文のはじめ近くに、「批評家はこの世界=テクストを知的なアマチュアとして生き抜く術を、多面的に示そうとする職業なのです」とあります(問題冊子18ページ)。ここから、「複雑な世界を知的に生き抜く術を多面的に人々に示す仕事」を、答えの最後に置く一言にします。

前に置く状況① 作家が、どのように伝統や他者の思考に影響されているか。本文の中ほどで、「その考えにはすでに他者の考えが入り込んでいます」(問題冊子21ページ)、「思考も創作も、他者への感染から始まるのです」(問題冊子20ページ)と述べられています。

前に置く状況② 作家が、どのような無意識の領域や価値観を持つのか。終わりのほうの、前景と後景、「制度」の話です。結びでも、「作家が何を考えずに済ませているか、このような構造的な問題にアプローチするのが批評の仕事です」と述べられています(問題冊子22ページ)。

失点例 「作家が何を考えているかを明らかにする仕事」と書くと、本文の結論と逆になります。筆者は、批評家は「作家が何を考えているか」という問いでは勝負しない、と述べています。

解答に入れる要素
前に置く状況① 作家がどのように伝統や他者の思考に影響されているか(感染)
前に置く状況② 作家がどのような無意識の領域や価値観を持つのか(後景・制度)
最後に置く一言 複雑な世界を知的に生き抜く術を、多面的に人々に示す仕事
状況①→状況②を「明らかにし」でつなぎ、最後の一言を置くと、78字になります。
解答例作家がどのように伝統や他者の思考に影響され、またどのような無意識の領域や価値観を持つのかを明らかにし、複雑な世界を知的に生き抜く術を多面的に人々に示す仕事。(78字)
図解動画④ 大問四 問八 八十字の記述の組み立て(約40秒・音声なし)

この回で身につけたい力

  • 記述は、答えの最後に置く一言を先に決めます。問三は「作り話をすることに長けている」、問五は「自分なりの表現を生み出す力」、問八は「複雑な世界を知的に生き抜く術を、多面的に人々に示す仕事」でした。一言を決めてから、前に状況を並べると、字数の中に収まります。
  • 空らん補充は、前後の関係を確かめます。問一の接続語は、補足(ただ)・打ち消したあとの言いかえ(むしろ)・同じことの言いかえ(もしくは)。問四は、空らんのあとの「あらかじめ与えられていた」「感染している」が手がかりでした。
  • 選択肢は、本文の言葉と一つずつ照らして消します。まちがいの選択肢は、「本文にない話」(問二ア・エ、問七ア)、「向きが逆」(問二ウ、問七イ)、「筆者の主張の半分だけ」(問七オ)の形で作られていました。

まとめ

大問四の論説文は、「作家は何を考えているのか」という問いを入口に、人は他者の考えや伝統に「感染」していること、オリジナリティとは「消化力」であること、多くの判断を社会の「制度」に預けていること、という筋で、批評家の仕事に結びつく文章でした。八問は、この筋のどこを問うているかを先につかめば、答えの根拠が見つかります。記述は三問とも、一言を先に決める型で書けます。

この記事の解説は、YS中学受験国語力研究室の解説動画(図解アニメ)とあわせて読むと、本文の流れがつかみやすくなります。記述の解答は解答例で、自分の答案は、答えの最後の一言と、前に置いた状況の二つが入っているかで見直しましょう。