サピックス小学部の第3回志望校診断サピックスオープン(新6年・現5年・国語)を、YS中学受験国語力研究室が全問解説します。2026年11月3日実施、50分・150点満点で、大問は三つです。大問1は漢字(読み2問・書き取り8問)、大問2は橋爪大三郎さんの『人間にとって教養とはなにか』(SBクリエイティブ)からの論説文、大問3は高田由紀子さんの「姫のゆびさき」(『君色パレット』所収・岩崎書店)からの物語文でした。「自分ではどうしようもないこと」にとらわれず、本当に考えるべき問題に向き合おうと説く論説文と、ネイルが好きな男の子と、指に生まれつきの特徴がある幼なじみの女の子が、おたがいの「違い」を認め合っていく物語文。二つの大問を図解動画と文字の図解で整理し、すべての設問の答えの組み立てを根拠つきで示します。記述の解答は、解答例です。
出題構成と全体講評
- 大問は三つ、配点は計150点です。大問1(漢字)が20点、大問2(論説文)が54点、大問3(物語文)が76点です。論説文と物語文で130点、150点のうちの9割近くを占めます。
- 大問1は、読み2問と書き取り8問、各2点です。同じ読みの熟語が多い語(登用・気管・固有)は、文の意味から一つに決めて書きます。
- 大問2の論説文は、設問が8問、記述は問六(40字以内)と問八(字数指定なし)の2問で、各10点です。問一は接続語の空らん補充、問二は言葉の意味(X・Y)で、ここまで各2点です。問三・問四・問五・問七は6点の記号選択で、問五は「二つ選ぶ」問題(二つそろって正解)です。
- 大問3の物語文は、設問が10問、記述は問二・問八(50字以内)・問十の3問です。配点は問二・問八が各12点、問十が16点で、記述だけで40点あります。問一は様子を表す言葉の空らん補充(各2点)、問四は慣用表現「[ ]の友」(3点)、問六は11字以上15字以内の抜き出し、残りは5点の記号選択です。問三は「ふさわしくないもの」を選ぶ問題です。
- 記述は5問で、合わせて60点です。大問2の問六・問八(各10点)、大問3の問二・問八(各12点)と問十(16点)です。「なぜ」の問題は、理由や気持ちの「一言」を決めて答えの最後に置く型で書けます。問八(大問2)は「何のため」なので、目的の一言で結びます。
- 二つの文章は、「何に目を向けるか」を自分で選び直す話として、つながっています。論説文は、世間の基準や自分ではどうしようもないことに考えを向けるのをやめ、本当に考えるべき問題に向き合おうと説きます。物語文の咲姫も、「ない方」にばかり目を向けていた自分に気づき、虹色も、隠してきたネイルの趣味を「いいのかもしれない」と受け入れていきます。
大問1 漢字(読み2問・書き取り8問)
大問1は、線部の漢字をひらがなに直す読み2問と、カタカナを漢字に直す書き取り8問で、各2点、計20点です。書き取りは、同じ読みの熟語が多いものがそろっています。文の意味から、熟語を一つに決めてから書きましょう。
問題1〜10 漢字の読みと書き取り各2点(全10問)
設問 次の1〜10の——線の漢字はひらがなに、カタカナは漢字に直して答えなさい。
答えの組み立て 読みは、①文全体の意味をつかむ、②熟語の意味を思い浮かべる、③意味に合う読みを選ぶ、の順で考えます。書き取りは、①文の意味から熟語を一つ決める、②同じ読みの別の熟語と区別する、③一画ずつ形を確かめる、の順です。
- 1 名作を読み、滋味にあふれた表現に触れる。(読み) = じみ 「滋味」は、心にしみるような、深い味わいのこと。食べ物だけでなく、文章や人がらの味わいにも使います。
- 2 長い旅路の果てにかつての友と再会する。(読み) = たびじ 「旅路」は、旅の道のり。「路」を「じ」と読むのは、「家路」「山路」と同じです。
- 3 優れた人材を重要な役職にトウヨウする。 = 登用 「登用」は、人を高い地位に引き上げて用いること。同じ読みの「盗用」(ぬすんで使うこと)と区別します。
- 4 解決すべき問題がサンセキしている。 = 山積 「山積」は、山のように積み重なること。「問題が山積する」の形でよく使います。
- 5 各地を転々とし、十年ぶりにフルスに戻る。 = 古巣 「古巣」は、以前に住んでいた所や、前にいた職場のこと。「古い巣」と、訓読みを二つ重ねた言葉です。
- 6 セツドのある行動を意識することが重要だ。 = 節度 「節度」は、行き過ぎのない、ほどよい程度のこと。「節」は、たけかんむりの字です。
- 7 友人がエンポウから訪ねてくれた。 = 遠方 「遠方」は、遠い所。「方」は、方向・場所を表します。
- 8 水が食道ではなくキカンに入り、激しくむせる。 = 気管 「気管」は、呼吸する空気の通り道。「食道」と対になっています。同じ読みの「器官」「機関」「期間」と区別します。
- 9 きんもくせいの花のカオりで秋を実感する。 = 香 「り」は問題文に書かれているので、答えは「香」の一字です。においのよさを表すときは「香り」と書きます。
- 10 この地域にコユウの動植物を保護する。 = 固有 「固有」は、その物だけがもともと持っていること。「固有の動植物」は、その地域にしかいない動物や植物のことです。
1 じみ / 2 たびじ / 3 登用 / 4 山積 / 5 古巣
6 節度 / 7 遠方 / 8 気管 / 9 香 / 10 固有
書き取りで差がつきやすいのは、同じ読みの熟語の選び分けです。8番の「キカン」なら、「食道ではなく」とあるので、体の中の空気の通り道だと分かります。間違えた字は、何度も書き写すだけでなく、「器官と書いた。食道と対になるのは気管」のように、選び分けの理由を一言そえて残しておくと、次に同じ読みの語が出たときに迷いません。
大問2 論説文 橋爪大三郎『人間にとって教養とはなにか』
本文の内容 「ヘンな問題設定」をやめて、本当に考えるべき問題へ
筆者はまず、人間は「自然の産物」で、一人ひとり違う、と言います。スイカ畑のスイカが一つひとつ大きさも甘さも違うように、人間の頭のはたらきも「千差万別」です。そうなると、生まれつきの頭の出来不出来が気になるかもしれません(問三)。しかし筆者は、そんなことは気にしないのが正しい、と言います。もっと重要なのは、自分の頭を、ひとの頭と取り替えることはできない、ということです。人間は、生まれ持った自分の頭で、一生、生きていかなくてはなりません(問四)。
そこで筆者が気をつけたいと言うのが、「ヘンなふうに考えるくせ」です。たとえば、「このドリンクを毎日飲むとスリムになれる」といった宣伝文句を真に受けてしまう人は、「そんなことありえない」と考えられるだけの歯止めが欠けています。それに加えて、世間の「美の基準」にふり回され、自分のあり方に満足できていません。そこに、生物や化学の知識不足が重なって、宣伝を信じこんでしまうのです(問五)。
世間の人びとが考える通りに考えるだけでは、自分の人生は切り開けません。問題設定そのものが変てこだと、本当に考えるべき問題に思考が向かわなくなります(問六)。では、ふさわしい問題設定とは何か。それは、「自分ではどうしようもないことは考えない」ところから始まります。筆者は、幼いころに母親を亡くした人を例にあげ、本当に大事なのは、その状況を乗り越えて、周りの人びととどう生きていくかだ、と言います(問七)。悲しみや悩みを言い訳にせず、感情と理性を切り分けて、自分が考えるべきことは何かを考える。それが、自分の頭を正しく使うコツだと結んでいます(問八)。
後半の「ふさわしい問題設定」は、感情と理性の関係で説明されています。怒りや悲しみ、嫉妬は、人間の自然な反応なので、感じるなと言っても無理です。ただ、「感情の引力」は強いので、そちらにひきずられると、本当に考えるべき問題に立ち向かえなくなります。その流れを、図にまとめておきます。
問一 空らんA〜Cにあてはまる接続語記号選択・各2点(A〜C)
設問 [A]〜[C]にあてはまることばとして、最もふさわしいものを次の中から選び、それぞれ記号で答えなさい。(ただし、同じ記号は一回しか使えません。)
何を答える問いか 空らんの前と後が、どんな関係でつながっているかを見て、接続語を選ぶ問題です。
答えの組み立て ①空らんの前の文を一言にする。②後の文を一言にする。③二つが、逆(逆接)か、例(例示)か、原因と結果(順接)かを決める。④その関係を表す接続語を選ぶ。
本文の根拠 Aは、「勉強すれば知識はつくかもしれない。[A]、別な誰かの頭になることはできない」。前は「知識はつく」、後は「別な誰かの頭にはなれない」で、前から予想されることと逆の内容が続くので、逆接の「でも」です。Bは、「じゃあ、『ヘンなふう』とはどういうことか」と問いかけたあとに、「[B]『このドリンクを毎日飲むとスリムになれる』とか…宣伝文句を真に受けてしまうひとがいる」と具体的な例が続くので、「たとえば」です。Cは、「そんなことありえない、と考えられるだけの歯止めが欠けている。[C]、そうかと思ってしまう」。歯止めが欠けていることが原因で、「そうかと思ってしまう」という結果になるので、「だから」です。
使わなかったのは、話題を変える「ところで」(ア)と、後ろに理由を続ける「なぜなら」(イ)です。「なぜなら」は、文の終わりが「〜からだ」の形になるのが目印です。
A 前「知識はつく」⇔後「別な誰かの頭にはなれない」 → 逆接 → オ でも
B 問いかけのあとに、宣伝文句の具体例 → 例示 → ウ たとえば
C 歯止めが欠けている(原因)→ そうかと思う(結果) → 順接 → エ だから
問二 〜〜線X「あらずもがな」・〜〜線Y「とりわけ」の意味記号選択・各2点(X・Y)
設問 〜〜線X「あらずもがな」・〜〜線Y「とりわけ」の意味として、最もふさわしいものを次の中から選び、それぞれ記号で答えなさい。
何を答える問いか 言葉の意味を選ぶ問題です。知らない言葉でも、本文の中での使われ方から、意味を確かめられます。
答えの組み立て ①言葉をその場所から取り出して、選択肢を一つずつ入れてみる。②前後の内容と合うかを確かめる。
本文の根拠 Xは、「『もっとスリムにならなければ』『もっと色白にならなければ』などという、あらずもがなの問題設定」です。筆者は、世間の基準にふり回されるこうした考え方を、「ヘンなこと」としています。「あらずもがな」は、「ないほうがよい」「なくてもよい」という意味の古い言い方です。Yは、「誰でも、自分の欠落や痛みが、とりわけ苦しいと感じます」。自分の痛みは、ほかのことよりも「特に」苦しく感じる、という意味です。
- X「あらずもがな」 ア なくてはならない / イ ないほうがよい / ウ あってもよい / エ ありそうもない。 イが正解です。アは正反対の意味です。
- Y「とりわけ」 ア 少しばかり / イ 多くの場合 / ウ 常に / エ 特に。 エが正解です。「とりわけ」は、多くの中から一つを取り分けて言う言葉です。
問三 線①「そうなると、生来の頭の出来不出来が気になる」 どういうことか記号選択・6点
設問 ——線①「そうなると、生来の頭の出来不出来が気になる」とありますが、どういうことですか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 「そうなると」が指す内容と、「出来不出来が気になる」の中身を、合わせて言いかえる問題です。
答えの組み立て ①「そうなると」の「そう」が指す内容を、直前から取り出す。②「生来の頭の出来不出来が気になる」が、何をしたくなることなのかを、後ろの例で確かめる。③①と②をつないだ選択肢を選ぶ。
本文の根拠 直前には、「頭に脳みそが詰まっているという点は同じでも、そのはたらきは千差万別だ」「自然の産物はそれぞれ微妙に個性的で、一つとして同じものがない」とあります(本文1ページ)。これが「そう」の中身です。そして、線①のあとには、藤井聡太二冠のように「将棋がうんとできるひとと、できないひとがいる」「うらやましくても…藤井二冠みたいにはなれません」と、他人と自分を比べる話が続きます。つまり、「出来不出来が気になる」とは、生まれつきの自分の頭を、他人と比べたくなる、ということです。
選択肢の検討
- ア 生まれ持った能力が一人ひとり違うからこそ、自分が勉強で得た知識が多いか少ないかで不安になってしまうということ。 「生来」は、生まれつき、という意味です。勉強で得た知識の多い少ないの話ではありません。
- イ 人それぞれの能力の違いを目の当たりにすることで、生まれつき備わった自分の知能の限界を知ってしまうということ。 線①は「気になる」です。「限界を知ってしまう」とまでは書かれていません。
- ウ 自然物に全く同じものが存在しないならば、人間の頭の機能にも差がありそれぞれ違うのが当然だといえるということ。 「そうなると」の前の内容(頭のはたらきは一人ひとり違う)だけの説明で、「出来不出来が気になる」の部分が入っていません。
- エ 人間の脳は一人ひとり違うものであると考えると、生まれながらの自分の能力を他人と比べたくなってくるということ。 「一人ひとり違う」(そうなると)と、「他人と比べたくなる」(出来不出来が気になる)の両方が入っています。 これが正解です。
① 「そう」の中身 人間の頭のはたらきは、一人ひとり違う(一つとして同じものがない)
② 「出来不出来が気になる」 生まれつきの自分の頭を、他人と比べたくなる
問四 線②「そんなことより重要なことは…」 筆者が伝えたいこと記号選択・6点
設問 ——線②「そんなことより重要なことは、自分の頭を、ひとの頭と取り替えることはできない、ということです」とありますが、筆者はこの表現によってどのようなことを伝えたいのですか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 「そんなこと」より重要だと筆者が言うことは何か、その表現にこめた考えを選ぶ問題です。
答えの組み立て ①「そんなこと」が指す内容(問三で見た、他人と自分の頭を比べること)を確かめる。②線②のあとで、筆者が何をすすめているかを読む。③「比べることより、自分の頭でどう生きるか」という向きの選択肢を選ぶ。
本文の根拠 線②の直後には、「人間は、生まれ持った自分の頭で、一生、生きていかなくちゃならない」とあり、次のページでは、「生まれ持った自分の頭が、よいとか悪いとか、文句を言っても仕方がない。勉強すれば知識はつくかもしれない」と続きます(本文1〜2ページ)。他人の頭と比べて不満を持つのではなく、自分の頭で、自分にできることに取り組むことが大切だ、というのが筆者の考えです。
選択肢の検討
- ア 他人をうらやんでいては、自分が考える理想の姿になることはできないということ。 「理想の姿」という考えは、本文にありません。
- イ 自分が持つ才能の良し悪しを気にして、不満の感情を抱くのはやむをえないということ。 筆者は、「不満に思っても始まらない」と言っています。不満を持つのは「やむをえない」という向きは、本文と逆です。
- ウ 周囲の人間の能力は気にせず、自己の課題の克服に取り組むことが大切だということ。 他人の能力は気にせず(そんなことより)、自分の課題に取り組む(自分の頭で生きていく・勉強すれば知識はつく)という筆者の考えに合っています。 これが正解です。
- エ 自分の知能の限界を見定めもせず、無駄な努力を続けるべきではないということ。 筆者は「勉強すれば知識はつくかもしれない」と言っており、努力が無駄だとは言っていません。「知能の限界を見定める」も本文にありません。
① 「そんなこと」 他人と自分の頭(能力)を比べること
② 重要なこと 自分の頭は取り替えられない → 自分の頭で、自分の課題に取り組む
問五 線③「ヘンなふうに考える」のはなぜか(二つ選ぶ)記号選択・6点(二つそろって正解)
設問 ——線③「ヘンなふうに考える」とありますが、なぜ「ヘンなふうに」考えてしまうのだと筆者は述べていますか。ふさわしいものを次の中から二つ選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 「ヘンなふう」の例(宣伝文句を真に受ける人)について、筆者があげている原因を二つ選ぶ問題です。
答えの組み立て ①「ヘンなふう」を具体的に説明している部分(本文2ページ)を読む。②原因として書かれていることを、すべて取り出す。③取り出した原因と同じ内容の選択肢を二つ選ぶ。
本文の根拠 筆者は、宣伝文句を真に受けてしまう人について、三つのことを書いています。一つ目は、「そんなことありえない、と考えられるだけの歯止めが欠けている」こと。二つ目は、「世間の『美の基準』にふり回されている」こと。筆者は、「自分で自分のあり方に満足していればいい」と言っているので、裏返すと、ふり回される人は、自分のあり方に満足できていないのです。三つ目は、「生物や化学の知識不足があいまって」信じこんでしまうこと(本文2ページ)。二つ目がイ、一つ目と三つ目がオにあたります。
選択肢の検討
- ア 世間の人びとの考え方を気にせず行動しているから。 本文は、世間の基準にふり回されることを問題にしています。「気にせず」は逆です。
- イ 自分自身のあり方に満足することができていないから。 世間の「美の基準」にふり回され、「自分で自分のあり方に満足して」いない、という本文に合います。 これが正解です。
- ウ 明らかな誤りであっても指摘できない弱さがあるから。 誤りを人に指摘できるかどうかの話は、本文にありません。
- エ 自分を支える大切な人への思いやりが足りないから。 本文は、大事な人が「素敵だね」と言ってくれれば十分、と言っています。思いやりが足りない、という話ではありません。
- オ 嘘の情報を見破るための知識が不足しているから。 「生物や化学の知識不足」「そんなことありえない、と考えられるだけの歯止めが欠けている」に合います。 これが正解です。
① 世間の「美の基準」にふり回され、自分のあり方に満足できていない → イ
② 知識不足で、「ありえない」と考えられる歯止めがない → オ
二つ選ぶ問題は、一つだけ合っていても点になりません。本文の原因を全部書き出してから選びましょう。
問六 線④「本当に考えるべき問題に思考が向かわなくなってしまう」のはなぜか記述(40字以内)・10点
設問 ——線④「本当に考えるべき問題に思考が向かわなくなってしまう」とありますが、そのような状態になってしまうのはなぜですか。四十字以内で説明しなさい。
何を答える問いか 思考が本当に考えるべき問題に向かわなくなる「理由」を、40字以内で書く問題です。「なぜ」の問いなので、答えは「〜から。」で終わります。
答えの組み立て ①線④の直前の「そうすると」が指す内容を確かめる(問題設定そのものが変てこである)。②「変てこな問題設定」とはどんなものかを、本文の言葉で言いかえる。③理由の一言「必要のないことを考えてしまっているから」を決めて、答えの最後に置く。④その前に、原因「世間の基準にしばられ」を置く。
本文の根拠 線④の直前には、「正解があるかどうか以前に、問題設定そのものが変てこである。そうすると」とあります。その「変てこな問題設定」について、同じページのはじめに「世間の人びとが考える通りに、ものを考えるだけでは、自分の人生は切り開けない」とあり、前のページでは、世間の基準にふり回されて「もっとスリムにならなければ」と考えることを、「あらずもがなの(ないほうがよい)問題設定」と呼んでいます(本文2〜3ページ)。さらに、ふさわしい問題設定は「自分ではどうしようもないことは考えない」ところから始まる、とあります。つまり、変てこな問題設定とは、世間の基準にしばられて、自分には必要のないこと、考えても仕方のないことを考えてしまうことです。
① 原因 世間の基準にしばられる(世間の人びとが考える通りに考える)
② 理由の一言 自分には必要のないことについて考えてしまっているから → 答えの最後に置く
「問題設定が変てこだから」だけでは、「変てこ」の中身を言いかえていないので、点が伸びません。
問七 線⑤「後ろ向きに考えても、仕方ありません」 なぜ後ろ向きに考えるべきでないか記号選択・6点
設問 ——線⑤「後ろ向きに考えても、仕方ありません」とありますが、後ろ向きに考えるべきでないのはなぜですか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 母親を亡くした人の例で、「後ろ向きに考える」ことがなぜよくないのかを選ぶ問題です。
答えの組み立て ①「後ろ向きに考える」の中身(「どうせ自分は母親を亡くしたんだし」と考えること)を確かめる。②筆者が「本当に大事」と言っていることを探す。③後ろ向きに考えると②ができなくなる、という選択肢を選ぶ。
本文の根拠 筆者は、「もう起こった出来事は、取り返しがつきません」「自分に責任のないことをくよくよ考えても仕方がない」と言い、「本当に大事なのは、この状況を乗り越えて、父親をはじめ周りの人びとと、どう生きていくかでしょう」と述べています(本文3ページ)。人生の局面ごとに、自分で考えて判断しなくてはいけない問題にぶつかるとき、変えられない事実にとらわれていると、周りの人とどう生きるかを考えられなくなります。
選択肢の検討
- ア 母親を亡くしたという事実にとらわれ悲しんでいると、父親のいるありがたみを実感する余裕が失われてしまうから。 本文で大事だと言っているのは、周りの人びとと「どう生きていくか」です。「父親のいるありがたみを実感する余裕」ではありません。
- イ 母親の死という動かない事実にとらわれていると、残された人たちとどう生きていくかを考えられなくなってしまうから。 「取り返しがつかない」(動かない事実)と、「周りの人びとと、どう生きていくか」の両方が入っています。 これが正解です。
- ウ 母親がいないというつらい現実を変えることなどできないのに、変えられるのではないかと希望を持ってしまうから。 「変えられるのではないかと希望を持つ」という話は、本文にありません。
- エ 母親がこれまでどのように自分を大切にしてきてくれたかを思い出すと、現実がよりつらいものになってしまうから。 母親との思い出を思い出す話は、本文にありません。
① 後ろ向き 取り返しのつかない出来事(母親の死)にとらわれる
② 本当に大事なこと 周りの人びとと、どう生きていくか → 考えられなくなる
問八 線⑥「そう思い切らなければならない」 何のためか記述(字数指定なし)・10点
設問 ——線⑥「そう思い切らなければならない」とありますが、これは何のためですか。説明しなさい。
何を答える問いか 「そう思い切る」ことの「目的」を書く問題です。「何のため」の問いなので、答えは「〜ため。」で終わります。
答えの組み立て ①「そう」が指す内容を、直前から取り出す(悲しみや悩みを、言い訳にしてはいけない)。②そう思い切ったあとに筆者がすすめていることを、後ろの段落から探す。③目的の一言「自分自身の課題と正しく向き合うため」を決めて、答えの最後に置く。④その前に、方法「感情をコントロールして理性を働かせ」を置く。
本文の根拠 線⑥の直前には、「誰にだってひとに言えない、悲しみや悩みがあります。それを言い訳にしてはいけない」とあります。そのあと筆者は、怒りや悲しみ、嫉妬のような「感情の引力」にひきずられがちな人間について、「感情と理性を切り分けて、理性が感情と、切り離されて動くようにする。それが、自分の頭を正しく使うコツです」と述べ、「感情をコントロールして、理解を働かせると、ふさわしい問題設定ができるようになります」「自分が考えるべきことはなんだろう」と結んでいます(本文3〜4ページ)。ふさわしい問題設定とは、問六・問七で見たように、自分が本当に考えるべき問題に向き合うことです。
① 方法 感情(悲しみ・悩み)にひきずられず、感情をコントロールして理性を働かせる
② 目的の一言 自分自身の課題と正しく向き合うため → 答えの最後に置く
「言い訳にしないため」と書くと、「そう」の中身をくり返しただけで、目的になりません。思い切った先に「何をするのか」まで書きます。
大問3 物語文 高田由紀子「姫のゆびさき」
あらすじ 八色のつめが、二人の「違い」を明るく照らすまで
小学六年生の虹色(にいろ)は、ネイリストの母親を持ち、ネイルに興味がある男の子です。ある日、家で一人、自分のつめにネイルを塗っていたところに、幼なじみの咲姫(さき)が訪ねてきます。「虹色が自分で塗ったんでしょ?」と見ぬかれた虹色は、思わず認めてしまい、あわてます(問二)。「男子なのにネイル?」とからかわれるのが、こわかったのです。ところが咲姫は、ほほえんで、「わたしのつめにも塗ってくれないかな?」と頼みます(問三)。
咲姫は、右手の中指と薬指が生まれつき短く、その二本にはつめがありません。生まれつき手や足の形が多くの人とはちがう「先天性四肢障がい」の症状の一つです。虹色と咲姫は、それがいつ分かったのか覚えていないくらい、小さいころからいっしょでした(問四)。小学校に入学したとき、咲姫の指をじろじろ見る男子たちの前に、咲姫は仁王立ちになり、「この指、生まれつきなの」ときっぱり言いました。それ以来、咲姫はみんなから「姫」と呼ばれるようになります。強気で、堂々としている、なんでもできる子です(問六)。
私立中学を受験する咲姫は、四年生から塾に通っていて忙しいはずなのに、その日は「今日はいいの」とあっさり言って家にあがります。虹色は、「今日の咲姫は、なんだかヘンだ」と感じます(問五)。ネイルを塗ってもらいながら、咲姫は、本当は塾の模試の日だったこと、中学校に受かったら初めて会う子ばかりになると思うと気が重いことを打ち明けます。
虹色は、なぐさめの言葉を考えたあと、六年生の運動会のことを話します。足の遅い子がせめられていたクラス対抗全員リレーで、咲姫は、長い距離を走る子と短い距離を走る子を決める作戦を提案し、みんなに受け入れられました(問八)。「できないんじゃなくて、得意なこととか好きなことが違うだけ」という咲姫の言葉を聞いて、虹色は、ネイルが趣味でも、みんなと違っていても、別にいいのかもしれないと思えるようになったのです(問七)。咲姫は、「ない方」にばかり目を向けていた自分に気づき、虹色はしっかりとうなずきます(問九)。八つの色に塗られた咲姫のつめは、日が暮れた玄関の外でも、色とりどりの花が咲いたように、ほんのり光って見えました(問十)。
母親はネイリスト
ネイルが好きだが、だれにも知られちゃいけない趣味だと思っている
右手の中指と薬指が生まれつき短い
強気で、堂々としている「姫」
私立中学を受験する
足が遅く、リレーでせめられた
「ネイルをしていると、お客さんがふだんは言えないようなことを話してくれる」
この物語は、「今」のネイルの場面の中に、「小学校入学のとき」と「六年生の運動会」という二つの回想が入っています。設問の根拠を探すときは、どの時の場面かを先に確かめましょう。
-=否定的な心情 / ±=複数の気持ちが重なる転換点 / +=肯定的な心情
問一 空らんA〜Dにあてはまる様子を表す言葉記号選択・各2点(A〜D)
設問 [A]〜[D]にあてはまることばとして、最もふさわしいものを次の中から選び、それぞれ記号で答えなさい。(ただし、同じ記号は一回しか使えません。)
何を答える問いか 空らんのあとの動き(でてくる・言う・つぶやく)と、その場の人物の様子に合う言葉を選ぶ問題です。
答えの組み立て ①空らんのすぐあとの動詞を確かめる。②その場面の人物の気持ち(あわてている・強気・不安)を確かめる。③動きと気持ちの両方に合う言葉を選ぶ。
- A 言い訳みたいな言葉が[A]とでてくる = オ ペラペラ ネイルを見ぬかれてあわてた虹色の口から、言い訳が次々に出てくる様子です。
- B おれは[B]と文句を言ってやろうと思って立ちあがった = イ ビシッ 咲姫の指をじろじろ見る男子たちに、きっぱり厳しく言おうとした様子です。実際には「うるさいよ……」と小声で言うのが精いっぱいだった、という結果と対になっています。
- C 咲姫は[C]言うと、「あがっていい?」と聞いてきて…さっさと靴を脱いだ = エ あっさり 受験勉強で忙しいはずなのに、「今日はいいの」とこだわりなく言う様子です。
- D 急に[D]とつぶやいた = ウ ぼそっ 「つぶやいた」に合うのは、小さな声で短く言う「ぼそっ」です。言いにくいこと(模試の日だった)を打ち明ける場面です。
使わなかったのは、「グダグダ」(ア)です。だらだらとまとまりのない様子を表すので、どの空らんにも合いません。
問二 線①「あ、やべ。認めちゃった」 なぜ認めたくなかったか記述(字数指定なし)・12点
設問 ——線①「あ、やべ。認めちゃった」とありますが、虹色はなぜネイルを塗っていることを認めたくなかったのですか。説明しなさい。
何を答える問いか 虹色が、ネイルを塗っていることを認めたくなかった「理由」を書く問題です。答えは「〜から。」で終わり、虹色の気持ちの言葉で結びます。
答えの組み立て ①「やべ」という言葉から、認めたことを失敗だと思っていることをおさえる。②なぜ失敗だと思うのか、本文の根拠を探す。③理由の一言「からかわれてしまうと不安だったから」を決めて、答えの最後に置く。④その前に、「男子がネイルを塗るのはおかしなこと(と思われる)」という状況を置く。
本文の根拠 線①のすぐあとに、「ふつうなら『男子なのにネイル?』とか『きもっ』とかつっこまれそうなもんだけど」とあります(本文7ページ)。虹色は、男子がネイルを塗っていると知られたら、からかわれると思っていたのです。物語の終わりにも、「だれにも知られちゃいけない趣味だと思っていた」とあり(本文13ページ)、虹色がネイルの趣味を隠してきたことが分かります。
① 状況 男子がネイルを塗るのは、おかしなことだと思われる
② 予想 他人に知られたら、からかわれる
③ 気持ちの一言 不安だったから → 答えの最後に置く
「恥ずかしかったから」だけでは、何が、なぜ恥ずかしいのかが伝わりません。「男子なのにネイル」という本文の言葉を使って、状況を書きましょう。
問三 線②「えっ、咲姫のつめに? な、なんで?」 ふさわしくない理由記号選択・5点
設問 ——線②「えっ、咲姫のつめに? な、なんで?」とありますが、虹色がこのような反応をしているのはなぜですか。その理由としてふさわしくないものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 「ふさわしくないもの」を一つ選ぶ問題です。本文に書かれている理由(三つ)を先に確かめ、それに当てはまらない選択肢を選びます。
答えの組み立て ①線②の反応の理由が書かれている部分を探す。②書かれている理由を、すべて取り出す。③どれにも当たらない選択肢を選ぶ。
本文の根拠 次のページのはじめに、「とまどったのは、咲姫にネイルを塗るのが恥ずかしいからとか、おれがまだヘタだからとか、それだけが理由じゃない」とあります(本文8ページ)。恥ずかしさ(イ)と、まだヘタなこと(エ)が書かれています。さらに、咲姫の右手の中指と薬指が短いことが書かれ、「ネイルなんて、わざわざ指が目立つようなことしなくてもいいんじゃないかな?」と考えています。これがウです。
選択肢の検討
- ア 今まで隠していたネイルの趣味を、咲姫が見ぬいていたことにとまどっているから。 ネイルを見ぬかれたのは、線①の場面です。線②は、「つめに塗って」と頼まれたことへの反応で、その理由として「見ぬかれたこと」は書かれていません。 これが「ふさわしくないもの」です。
- イ 幼なじみである咲姫のつめにネイルを塗ることを想像すると恥ずかしかったから。 「咲姫にネイルを塗るのが恥ずかしいから」に合います。
- ウ 咲姫の右手の特徴を強調することになるネイルを頼まれたことに動揺しているから。 「わざわざ指が目立つようなことしなくてもいいんじゃないかな?」に合います。
- エ まだネイルをうまく塗れない自分が、他人のつめに塗ることにためらいがあったから。 「おれがまだヘタだから」に合います。
問四 「[ ]の友」にあてはまる漢字二字(慣用表現)慣用表現・3点
設問 ——線③「それくらい、咲姫とは小さいころからいっしょだったんだ」とありますが、このような関係を表す次の慣用表現の[ ]にあてはまる漢字二字を答えなさい。
・[ ]の友
何を答える問いか 「小さいころからいっしょ」という関係を表す、慣用表現を答える問題です。
本文の根拠 線③は、咲姫の指のことをいつ教えてもらったのか覚えていないくらい、二人が小さいころからいっしょだった、という意味です(本文8ページ)。幼いころからの友だちを、「竹馬の友(ちくばのとも)」と言います。竹馬に乗って遊んだころからの友だち、という意味です。
問五 線④「今日の咲姫は、なんだかヘンだ」 いつもと違う理由記号選択・5点
設問 ——線④「今日の咲姫は、なんだかヘンだ」とありますが、なぜ咲姫はいつもと違った様子になっているのだと考えられますか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 咲姫がいつもと違う様子になっている「本当の理由」を選ぶ問題です。線④の場面ではまだ分からないので、あとで明かされる咲姫の言葉から確かめます。
答えの組み立て ①あとで虹色が「もしかしたらこのことを言いたかったのかもしれない」と考える部分を探す。②「このこと」が指す咲姫の打ち明け話を読む。③打ち明け話の中心(これからへの不安)に合う選択肢を選ぶ。
本文の根拠 虹色は、「なんだかいつもと様子が違うと思っていたけど、もしかしたらこのことを言いたかったのかもしれない」と考えています(本文10ページ)。「このこと」は、直前の咲姫の言葉です。咲姫は、出かけたときにじろじろ見られたり、「あの人、指がへん」と言われたりすることがあると話し、「中学校に受かったら、初めて会う子ばかりになるんだって思ったら、なんだか気が重くなってさ……。わたし、ちゃんとやっていけんのかなって」と打ち明けました。新しい中学で、事情を知らない人たちから指を好奇の目で見られることへの不安が、理由です。
選択肢の検討
- ア 塾の模試に行かなければならなかったのに、休みにすることを一人で勝手に決めてしまったために落ち着かなかったから。 模試を休んだのは、不安があったからです。「一人で勝手に決めたから落ち着かない」という理由は書かれていません。
- イ 指の障がいを受け入れたつもりだったのに、出かけた先での人々からの無神経な反応に傷つき、まだ引きずっているから。 出かけた先で見られた話は出てきますが、咲姫の打ち明け話の中心は、「中学校に受かったら」というこれからへの不安です。
- ウ 虹色と久々に二人でゆっくりと話すことに懐かしさを感じるとともに、ネイルを塗ってもらうことに興奮しているから。 懐かしさや、ネイルへの興奮が理由だという内容は、本文にありません。
- エ これから先、新しい人間関係を築いていく中で、指を好奇の目で見られることへの不安がおさえきれなくなっているから。 「中学校に受かったら、初めて会う子ばかり」(新しい人間関係)と、指を見られることへの不安の両方が入っています。 これが正解です。
問六 線⑤「咲姫ならちゃんとやっていけるに決まってる」 理由の抜き出し抜き出し(11字以上15字以内)・5点
設問 ——線⑤「咲姫ならちゃんとやっていけるに決まってる」とありますが、虹色がこのように考えるのはなぜですか。次のように説明するとき、[ ]の中にあてはまる内容を本文中から十一字以上十五字以内で探し、ぬき出して答えなさい。
・咲姫はいつも[ ]から。
何を答える問いか 「咲姫はいつも[ ]から。」の空らんに合う、咲姫の人がらを表す言葉を、11字以上15字以内で抜き出す問題です。
答えの組み立て ①線⑤の直前の「そもそも」に注目し、虹色が前から知っている咲姫の様子を探す。②「いつも」に合う、咲姫の人がらを表す言葉を探す。③字数(11〜15字)と、「〜から。」へのつながりを確かめる。
本文の根拠 小学校入学のとき、咲姫は、指をじろじろ見る男子たちの前に仁王立ちになり、「この指、生まれつきなの」ときっぱり言いました。そして、みんなに「姫」と呼ばれるようになった理由を、虹色は「きっと強気で、堂々としているからだ」と考えています(本文8ページ)。この「強気で、堂々としている」(11字)を空らんに入れると、「咲姫はいつも強気で、堂々としているから。」となり、意味も字数も合います。
① 根拠の場面 小学校入学のとき、仁王立ちで「この指、生まれつきなの」
② 人がらを表す言葉 強気で、堂々としている(読点も1字に数えて11字)
問七 線⑥「できないことがあっても別にいいんだ」 どういうことか記号選択・5点
設問 ——線⑥「できないことがあっても別にいいんだ」とありますが、どういうことですか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 虹色が咲姫から教わった、「できないことがあっても別にいい」という考えの中身を選ぶ問題です。
答えの組み立て ①線⑥のあとで虹色が話す、運動会の回想を読む。②回想の中で、咲姫がこの考えを言葉にしている部分を探す。③その言葉と同じ内容の選択肢を選ぶ。
本文の根拠 運動会の回想の終わりで、咲姫は「みんな同じことができなくたっていいよね。できないんじゃなくて、得意なこととか好きなことが違うだけなのに……」と言っています。それを聞いた虹色は、「勉強や運動が苦手でも、ネイルが趣味でも、みんなと違っていても、別にいいのかもしれない」と思いました(本文12ページ)。不得意なことは、人と違う部分があるだけで、気にする必要はない、ということです。
選択肢の検討
- ア 人には得意なことと苦手なことがあるので、苦手な分野については得意な人の力を借りればいいのだということ。 「得意な人の力を借りる」という話は、本文にありません。
- イ 人より不得意なことがあったとしても、他人と違う部分があるというだけなので気にする必要はないということ。 「できないんじゃなくて、得意なこととか好きなことが違うだけ」「みんなと違っていても、別にいい」に合います。 これが正解です。
- ウ 自分が苦手とする分野で競わなくてはならないときは、ルールを工夫することでうまく切りぬけられるということ。 リレーのルールを工夫した話は出てきますが、線⑥の考えの中心は、「違うだけだから気にしなくていい」という点です。
- エ 他人からからかわれるような趣味を持っていても、好きだと思うなら自信を持って続けてもいいのだということ。 趣味の話は、虹色の受け止め方の一部です。「できないことがあっても」の説明になっていません。
問八 線⑦「あれ? これってアリ……なんだ」 このときの虹色の気持ち記述(50字以内)・12点
設問 ——線⑦「あれ? これってアリ……なんだ」とありますが、このときの虹色の気持ちを五十字以内で説明しなさい。
何を答える問いか このときの虹色の「気持ち」を50字以内で書く問題です。答えは、気持ちの言葉で結びます。
答えの組み立て ①「これ」が指す内容を確かめる(咲姫が提案したリレーの作戦が、みんなに受け入れられたこと)。②虹色が、それまでどう思いこんでいたかを探す。③気持ちの一言「おどろいている」を決めて、答えの最後に置く。④その前に、「思いこみ(常識)がくつがえされた」という状況を置く。
本文の根拠 咲姫は、長い距離を走る子と短い距離を走る子を決めて、みんなで作戦会議をするリレーを提案しました。虹色は、「たとえ足が遅くても、みんなと同じ距離を走らなきゃいけない、迷惑をかけちゃいけない……おれはずっとそう思いこんでいたから」、びっくりしました。さらに、「きっとみんなは反対するんだろうなって思っていたら」、岡本さんをせめていた男子たちまで「それいいじゃん!」と言ったのです(本文11ページ)。線⑦の「あれ?」は、自分の中の当たり前がくつがえされたおどろきを表しています。
① 思いこみ 苦手(足が遅い)でも、みんなと同じように走らなければいけない
② 出来事 その常識が、咲姫の案とみんなの賛成でくつがえされた
③ 気持ちの一言 おどろいている → 答えの最後に置く
「咲姫の案にみんなが賛成したから」と出来事だけを書くと、気持ちの言葉で結んでいないので、点が伸びません。
問九 線⑧「しっかりとうなずく」 何のためか記号選択・5点
設問 ——線⑧「しっかりとうなずく」とありますが、ここでしっかりとうなずいたのは何のためですか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。
何を答える問いか 虹色が、ここで「しっかりと」うなずいた目的を選ぶ問題です。直前の咲姫の言葉に、どう応えたのかを考えます。
答えの組み立て ①直前の咲姫の言葉を読む。②「今度は」に注目し、前のうなずき方と比べる。③虹色が咲姫の言葉をどう受け止めているかを確かめ、合う選択肢を選ぶ。
本文の根拠 直前で咲姫は、「わたしの指、こんなにきれいだったんだね」と言い、「なんでみんな『ない方』にばかり目を向けるんだろうって。なのに、いつの間にか自分が気にしちゃってたんだね」と気づきます(本文12〜13ページ)。指を好奇の目で見られる不安を、乗り越えようとしているのです。少し前には、恥ずかしくて、うなずくかわりに軽くあごをひいただけでしたが、「今度は」しっかりとうなずきます。虹色は、ネイルを塗りながら「だからなんなんだ」「これが、咲姫の指だ」と思っていました(本文9ページ)。その思いのとおり、咲姫の言葉を強く肯定して、背中を押しているのです。
選択肢の検討
- ア ネイルを塗ったことで自分の指の美しさに気づいた咲姫の気持ちをやさしく受け止め、指の長さを気にしていた咲姫をいたわるため。 虹色は、咲姫の言葉を肯定し、励ましています。「いたわる」(かわいそうに思ってなぐさめる)ではありません。
- イ 自分自身が指のことを気にしすぎていたのだと気づいたという咲姫のことばに同意することで、咲姫自身への反省をうながすため。 「反省をうながす」という内容は、本文にありません。
- ウ 先ほどは恥ずかしくてしっかりうなずかず、咲姫を不安にさせてしまったと反省し、今度こそ咲姫のことを応援していると伝えるため。 前に軽くあごをひいたのは恥ずかしかったからで、それで咲姫を不安にさせた、とは書かれていません。
- エ まわりから好奇の目で見られることへの不安を乗り越えつつある咲姫のことばを肯定することで、さらに咲姫を勇気づけるため。 不安を乗り越えつつある咲姫の言葉を肯定し、さらに勇気づける、という場面に合っています。 これが正解です。
問十 線⑨「色とりどりの花が咲いたように、ほんのり光って見える」 なぜそう見えたか記述(字数指定なし)・16点
設問 ——線⑨「咲姫の指は色とりどりの花が咲いたように、ほんのり光って見える」とありますが、虹色の目からこのように見えたのはなぜですか。
何を答える問いか 薄暗い中でも、咲姫の指が光って見えた「理由」を書く問題です。配点は16点で、この回でいちばん大きい問題です。
答えの組み立て ①この表現は、虹色の気持ちが、ものの見え方に表れたものだと考える。②このときの虹色の気持ちを、本文の言葉から二つ取り出す(咲姫を元気にできた/自分の趣味を認められた)。③気持ちの一言「喜びを感じているから」を決めて、答えの最後に置く。④その前に、二つの喜びの中身を並べる。
本文の根拠 物語の終わりで、虹色は「ネイルを塗ってあげた人が少しでも元気になってくれるのって、うれしいことかもしれない」と感じ、さらに「それを男子がやったって……いいのかもしれない」と考えています(本文13ページ)。一つ目は、ネイルで咲姫の不安を和らげることができた喜びです。二つ目は、「だれにも知られちゃいけない趣味だと思っていた」ネイルを、肯定的にとらえられるようになった喜びです。この二つの喜びが、日が暮れた薄暗い中でも、咲姫の指を明るく光って見せているのです。
① 喜びの中身1 ネイルを塗ることで、咲姫の不安を和らげることができた
② 喜びの中身2 恥ずかしいと思っていたネイルの趣味を、肯定的にとらえられるようになった
③ 気持ちの一言 喜びを感じているから → 答えの最後に置く
「ネイルがきれいだから」「八色に塗ったから」と見た目だけを書くと、虹色の気持ちが入りません。気持ちが見え方を変えている、と読み取りましょう。
身につけたい力
- 指示語の中身を先に確かめる力 大問2の問三(そうなると)・問四(そんなこと)・問六(そうすると)・問八(そう)、大問3の問八(これ)と、指示語の線部が多く出ました。指している内容を先に一言で言えると、選択肢の消去も、記述の材料集めも速くなります。
- 記述の最後に「一言」を置く力 「なぜ」は理由や気持ちの一言(〜から)、「何のため」は目的の一言(〜ため)、「気持ち」は心情の言葉で結びます。大問2の問六は「必要のないことを考えてしまっているから」、問八は「自分自身の課題と正しく向き合うため」、大問3の問八は「おどろいている」、問十は「喜びを感じているから」が、その一言です。
- 回想の場面を区切る力 大問3は、「今」の場面に、小学校入学と運動会の二つの回想が入っていました。根拠の行が、どの時の場面かを区切って読むと、問六(強気で、堂々としている)や問八(思いこみがくつがえされた)の根拠を、まちがいなく探せます。
- 本文にないことを消す力 記号選択は、本文にない内容(「理想の姿」「反省をうながす」「いたわる」)が一か所でも入っていれば消せます。大問3の問三のように「ふさわしくないもの」を選ぶ問題では、本文に書かれている理由を先にすべて取り出してから選びます。
まとめ
第3回志望校診断サピックスオープン(新6年・現5年)の国語は、論説文と物語文の二つで130点を占め、記述5問で60点でした。論説文は、世間の基準にしばられた「ヘンな問題設定」をやめ、感情と理性を切り分けて、本当に考えるべき問題に向き合おう、という文章です。物語文は、ネイルが好きな虹色と、指に生まれつきの特徴がある咲姫が、「できないんじゃなくて、違うだけ」と、おたがいを認め合っていく物語でした。
記述は、どの問題も「一言を決めて、答えの最後に置く」型で組み立てられます。「なぜ」なら理由の一言、「何のため」なら目的の一言、「気持ち」なら心情の言葉。その前に、本文から取り出した状況やきっかけを並べます。答え合わせのときは、解答例と同じ言葉かどうかよりも、「最後の一言」と「前に並べた材料」がそろっているかを確かめてください。