こんにちは。大手塾国語講師兼管理職のヨッシーです。
中学入試は一部がすでにスタートし、首都圏の一般受験本番が近づいてきました。
気になるのは今年の出題傾向。
国語講師としては特にどんな文章が出されるのか、という点にはいつも注目しています。
中学入試においては出題できる出典がある程度限られますので予想がしやすいのですね。
【中学入試の出典に選ばれやすい本】
・小学生に読ませられる内容のもの(過激すぎる描写、極端に偏った思想・内容がないこと)
・青少年・少女が登場し、彼らが困難を乗り越えて成長していくストーリーを描いたもの
・家族を取り巻く様々な環境変化とそれをに影響を受ける家族関係の変化を描いたもの
・時事的な社会問題・国際問題を身近な社会に関連付けて考えさせるもの
・社会文化・自然科学の謎や新発見について深く掘り下げ知的好奇心を高めうるもの
このような条件かつ発行時期が比較的新しいものは話題性もあり、
現在の社会情勢を反映した内容になっていることから非常に出題が多くなります。
今回の記事では【中学入試出典に選ばれやすい内容】かつ【発行時期が新しい
(2021年度入試問題作問時期以降に発刊されたもの)】をご紹介していきます。
※ちなみに学校によっては「名作」と言われる古典的作品を出典に選ぶことも珍しくありません。
そうなると予想範囲は膨大になってしまいますので、今回はあくまで「最近出版された本」
の中で出題されやすいと思われる本のご紹介になります。
本記事は以下のような方にお役立ていただける内容です。
・小6生:入試直前期の息抜きに読ませる本を探している方
・小5~小4:中学受験準備として冬休みにお子さんに読ませる本を探している方
「『自分らしさ』と日本語」 中村桃子 2021/5/8
当然ですが国語の入試問題は国語の先生が作成します。
したがって国語の先生が授業で扱いたくなるような
言語学系のテーマが出典になりやすい傾向があります。
今年の注目度No.1はこちらの「自分らしさと日本語」です!
著者は言語学者で日本語に関する著作をいくつも出版しています。
この書籍では例えば日本語による自分の呼称「わたし、ぼく、おれ、おら、・・・」を
使われる性別・世代ごとに分析し社会における言葉の役割を考察します。
身近な映画の和訳やアニメに使われる言葉などからその背景や社会的意義を分析するのも面白い。
お子さんの国語への興味関心を引き出せるかもしれない一冊です。
「はじめての哲学」藤田 正勝 2021/6/22
哲学という小学生にはなじみのない分野ではありますが、本書はそれを
非常にわかりやすく解説する哲学入門書です。
ソクラテス、アリストテレスといった哲学の偉人たちの言葉を紹介しながら
平易な言葉で哲学の世界に誘います。
何のために生きるのか、よりよく生きるとはどういうことか、真理を探求することの意義、
言葉とは何なのか、、、など中学受験の学習の合間に、
ふとこういった寄り道的に思考を広げていく時間も大切です。
「勉強する気はなぜ起こらないのか」外山 美樹 2021/4/8
受験生に対してこの本をお勧めすると「やる気がでないとか言ってる場合じゃない!」と
怒られそうですが、内容的にはとても参考になりますので是非お読みいただきたい一冊です。
「内からのやる気」と「外からのやる気」に分けてそれぞれ「やる気」の構造を分析します。
内からのやる気が理想だが、勉強を心から面白いと思って前向きに取り組める子は多くない。
だからこそ「自己実現」「目標達成」といった高次元の「外から」のやる気を高める必要がある、と
筆者は語ります。
イチロー選手の言葉なども引用しながら最後は「頭の良さ」よりも「我慢強さ」が学力に
大きく影響する研究結果などを紹介し、誘惑に打ち勝つ我慢強さの大切さを説きます。
入試直前の受験生。我慢しなくてはいけないことが多いと思います。
きっとこの一冊が勇気を与えてくれるでしょう。
「他者を感じる社会学」 好井 裕明 2020/11/7
格差問題、人種差別問題、ジェンダー差別などが話題に上がることが増えていますが、
これらの社会問題の根源的な「差別」に関して深く考えさせる一冊で、
社会の公民分野の理解を深めるのにも役立ちそうな内容です。
差別とはどのようにして生まれるのか?そして我々はいつでも差別をしてしまう
可能性があることを自覚し、どのように対応するのが適切なのかを考えます。
そもそも我々が考える「普通」とは何かを考え、普通でないことを普通であることと
区別することの難しさを訴えます。
単一民族の日本人にとって人種差別などは対岸の火事のようにとらえられがちですが、
これを機会に差別について身近な問題として捉え直すきっかけにしてはいかがでしょうか。
「みつばちと少年」いとうみく 2021/4/7
中学入試定番の「心の成長」をテーマにした題材。
過去にも学習院中等科、日本女子大付属などで出題された村上しいこさんの作品です。
3月の合不合判定テストにも出題されていますので皆さん注目されていることでしょう。
発達障害を抱えた少年が北海道の養蜂場でほかの事情を抱えた子どもたちとひと夏を
過ごす中で心の成長とともに自分の居所を見出していくストーリー。
読後感がすがすがしく、希望に満ちた気持ちになります。
直前期のストレスを抱えた子たちの息抜きに是非!
「声の在りか」寺地はるな 2021/5/24
2021年中学入試で出題が集中した「水を縫う」の著者,寺地はるなさんの作品です。
「水を縫う」は21年度だけで海城、市川、大妻、中央大横浜、東邦大東邦、など多くの学校で
出題が集中した作品。
本作は小学生の子を持つ母親が主人公。子育てや家族関係に悩み、声にならない声をうちに
貯めこんでいく。様々な人との交流を通じて母親として成長していく。
小学生が「親」の視点を理解できるか?という点で国語教師としては
非常に出題してみたくなる作品です。是非チャレンジしてみてください。
「零から0へ」 まはら三桃 2021/1/14
かつて零戦を作った技術者たちが新幹線0系の製造に挑む。
戦争の道具を作ったことへの罪の意識や、戦争で国に役立てなかった後悔の念を抱える
技術者たちが命がけで日本を支える大動脈を作り上げる史実に基づいた感動ストーリー。
こちらも4月の合不合判定テストで出題されていますので、注目されている方もいるでしょう。
著者のまはら三桃さんの作品は、桜蔭、桐朋、栄光学園、国府台女子など多くの学校で
出題されていますので、次年度も出題される可能性は非常に高いでしょう。
「イカル荘へようこそ」にしがき ようこ 2021/5/8
こちらも定番の心の成長ストーリー。
主人公は中学2年生の女の子。揉め事の絶えない両親に嫌気がさして家を飛び出す。
展覧会で惹きつけられた作品を描いた画家の住む「イカル荘」でホームステイすることを決意。
両親と離れて暮らすことで一緒に暮らしていては気づけなかったことを
多く学び取り視野を広げ、成長していく。
著者のにしがききょうこさんは高校入試では頻出。
2021年9月のサピックスオープンに出題され、中学入試でも扱われるのではないかと
考えています。
「教室に並んだ背表紙」相沢 沙呼 2020/12/4
こちらは短編集です。
中学校の図書室を舞台に、様々な悩みを抱える少女たちが読書を通じて成長していく
ストーリーを全六篇収録しています。
例えばいじめにあっている子に対して本を通じて仲良くなりたいと思っていながら
いじめられっ子に近づくことへの恐怖から本心とは裏腹な行動をとってしまう中学生女子の
心の葛藤。中学入試では特に扱いたくなる内容です。
著者の相沢沙呼さんの作品は過去にも芝中(2019)、浦和実業中(2020)で出題されています。
特に女の子の繊細な心情把握が苦手な男子に読んでもらいたい作品です。
「あしたの幸福」いとうみく 2021/2/19
父子家庭の中学生が交通事故で父親を亡くし、生後間もなく自分を置いて出ていった
母親と父の元恋人と暮らすことに・・・といった重い内容。
展開がスピーディで続きが読みたくなる作品。
単純に面白いので一気に読み通せるかと思います。
最後にはとても優しく希望を持った気持ちになれるようなお話です。
いま社会問題になっている「ヤングケアラー」問題もテーマに含まれますので
こうした問題への深い理解にもつながるでしょう。
著者のいとうみくさんの作品で「朔と新」は21年度入試において
浦和明の星、栄光学園、淑徳与野、ラ・サールなどで出題された大注目作品。
22年度も注目です!
いかがだったでしょうか?
発行時期、内容、著者の過去の出題歴、今年の模試での出題などを参考に
ピックアップしてみました。
受験される学校で出題されるかどうかはさておいても、
是非どれも中学受験生には読んでおいていただきたい素晴らしい内容です。
受験生は直前学習で忙しいと思いますが、その合間の息抜きに。
小4・5年生はちょっとハードルが高いかもしれませんが、新年度前の
チャレンジに。
是非手に取ってみたください。
ちなみに21年度入試で出題が多かった本もまだまだ注目です!
↓こちらの記事をご参考になさってください。
ここに挙げた本がまだ敷居が高いなぁ・・・というかたは
まずは読書好きにさせるためのアプローチを!
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