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2024年度中学入試国語の出典と2025年度の展望

2024年度の中学入試国語では、多様な作品が出典として選ばれています。村上雅郁の『きみの話を聞かせてくれよ』や辻村深月の『この夏の星を見る』など、話題の新刊が多くの学校で出題されており、受験生にとって重要な参考資料となっています。

村上雅郁『きみの話を聞かせてくれよ』

村上雅郁の『きみの話を聞かせてくれよ』は、新船中学校を舞台にした青春群像劇で、7つの短編が連作形式で描かれています。各章は異なる主人公の視点から語られ、友情や悩み、成長など共感できるテーマが織り込まれています。例えば、親友と喧嘩して孤独を感じる六花や、お菓子作りが趣味の虎之助、吹奏楽部の夏帆など、多様なキャラクターが登場します。この作品は、全国学校図書館協議会選定図書やこども家庭庁こども家庭審議会推薦児童福祉文化財にも選ばれており、小学生から中学生まで幅広い年齢層に向けて書かれています

辻村深月『この夏の星を見る』

辻村深月の『この夏の星を見る』は、コロナ禍の中で

複雑な思いを抱える中高生たちの物語です。茨城県立砂浦第三高校の天文部に所属する亜紗、渋谷区立ひばり森中学の唯一の男子新入生である真宙、長崎県五島列島の旅館の娘である円華の3人が、それぞれの困難を乗り越えながらリモート会議を駆使して全国の天文部の生徒たちと繋がり、スターキャッチコンテストに挑む姿が描かれています。この作品は、哀しさや優しさ、あたたかさといった人間の感情が詰まった一冊です。

青山美智子『月の立つ林で』

青山美智子の『月の立つ林で』は、5つの短編から成る連作短編集で、各章が独立しながらも見えない繋がりで結ばれています。物語は、元看護師、売れない芸人、二輪自動車整備士、女子高生、アクセサリー作家といった多様な登場人物たちが、タケトリ・オキナのポッドキャスト『ツキない話』を通じて心を寄せ合う様子を描いています。それぞれのキャラクターが抱える孤独や悩みが、月に関する語りを通じて少しずつ癒され、新しい日々を紡いでいく姿が感動的です

 

市橋伯一『増えるものたちの進化生物学』

市橋伯一の『増えるものたちの進化生物学』は、生命と非生命を分ける「増える」能力に焦点を当てた書籍です。この能力が生物を進化させ、繁栄をもたらす一方で、尽きることのない不安や迷いをもたらすことを解説しています。本書は、生命の起源から未来までを見つめる知的問答の書であり、進化生物学の視点から人間の生き方や悩みを考察しています。例えば、人間が長生きするために「死んではダメ」という価値観を持ち、大きな脳をフル稼働させて自分や家族の命を守るようになったことが説明されています。また、長生きによって他人との付き合いが長くなるため、共感能力が発達し、見知らぬ人のことまで気に病むようになったと述べられています

 

山口仲美『日本語が消滅する』

山口仲美の『日本語が消滅する』は、日本語が消滅する可能性について警鐘を鳴らす書籍です。著者は、言語の消滅原因として話者の減少、強国による同化政策、自発的な言語のりかえを挙げています。特に、英語教育の早期導入が日本語の衰退を招く可能性が高いと指摘しています。また、日本語のオノマトペや敬語などの独自性を強調し、母語の重要性を再認識させる内容となっています。ユネスコの調査によれば、アイヌ語や琉球諸語などが消滅の危機に瀕しており、日本語も同様の危機に直面する可能性があると述べています

 

竹内早希子『巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ』

竹内早希子の『巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ』は、日本の伝統的な調味料である醤油や味噌、酒の製造に欠かせない巨大な木桶の製作技術が途絶えかけている現状を描いたドキュメンタリーです。木桶職人の減少に危機感を抱いた醤油蔵の当主たちが、自ら木桶を作り始める奮闘を詳細に記録しています。特に、香川県小豆島で始まった「木桶職人復活プロジェクト」では、地元の醤油蔵の五代目が大桶の破損に直面し、堺市の製桶所で修業を重ねながら技術を継承しようとする姿が描かれています。このプロジェクトは、木桶仕込み醤油の全国シェアを1%から2%に引き上げることを目指しており、毎年大桶づくりのイベントも開催されています

AIに関する知見を身につける

中学受験国語では、AIに関する書籍も出題される可能性があります。例えば、新井紀子の『AIvs.教科書が読めない子どもたち』は、AIが読解力テストで高得点を出す一方で、子どもたちの読解力が低下している現状を指摘しています。この本では、AIが発達する社会で求められる力として、情報を正しく読み取り、自分の頭で考える力が重要だと述べられています。また、松尾豊の『人工知能は人間を超えるか』も注目すべき一冊です。この本は、ディープラーニングの発展によってAIが人間を超える可能性を探るとともに、AIと人間が共存する未来像を描いています。著者は、AIには人間の創造性や倫理観が欠けているため、AIを活用しながら人間らしさを大切にすることが重要だと指摘しています。中学入試では、これらの本の一部を抜粋し、筆者の主張を正確に読み取らせたり、AIと人間の関係性について自分の考えを述べさせたりするような問題が出題されるかもしれません。受験生は、AIをテーマにした評論文や読み物に親しみ、技術の可能性と限界について考える習慣を身につけておくことが大切です。

中学受験で注目の多様性関連書籍

中学受験国語では、社会の分断や多様性をテーマにした書籍も出題される可能性があります。例えば、雨宮処凛の『生きさせろ! 難民化する若者たち』は、貧困や不安定な雇用に苦しむ若者の実態を浮き彫りにしています。この本では、社会的に排除された若者たちが、互いに支え合いながら生きる姿が描かれており、格差社会の現状を考えさせる内容となっています。また、姜尚中の『悩む力』も、多様性を尊重することの大切さを説く一冊です。この本では、「正解」を求めて思考停止に陥るのではなく、自分とは異なる意見に耳を傾け、悩みながら考え続ける姿勢が重要だと述べられています。著者は、多様な価値観を認め合うことで、社会の分断を乗り越えられると主張しています。中学入試では、これらの本の一部を引用し、登場人物の心情を問う問題や、筆者の主張を要約させる問題などが出題されるかもしれません。受験生は普段から、社会の様々な問題について考え、自分の意見を持つ訓練をしておくことが大切です。また、異なる立場の人々の視点に立って物事を捉える想像力も養っておきたいですね。

2025年中学入試国語の展望

2025年の中学入試について。
気候変動は加速しさらに環境への意識は高まるでしょう。世界情勢は国家レベルでの分断が進み、日本国内でも地域社会も格差が広がっています。高級タワーマンションに暮らす富裕層がいるかと思えば働かない親を支えるヤングケアラーの問題も起きています。高齢化や引きこもりも引き続き問題です。AIも大きく進化し始めており、使いこなせる人と使えない人の分断が進みそうです。また新型コロナが5類感染症に移行した結果、日本への外国人観光客の流入が増え、それによる経済へのプラス面と様々なトラブルが発生するマイナスの側面が大きくクローズアップされています。円安がさらに進行し、物価も高騰し日本の暮らしへの影響も深刻化しています。さらに、かつて日本人にはあまり馴染みのなかった移民の問題も各地で話題になることが多くなりました。LGBT法が施行されこれも様々な議論を呼んでいます。

2025年入試注目キーワードをまとめると以下の通り

・気候変動・環境問題・SDGsの功罪

・国家の分断・ロシアウクライナ紛争・イスラエルガザ紛争

・国家の右傾化・核兵器・NATO・EU・社会主義国家・イスラム国家

・宗教問題・キリスト教・イスラム教・新興宗教

・格差社会・富裕層・貧困層・生活保護・ヤングケアラー

・少子化・高齢化・8050問題

・外国人観光客・移民・同調圧力・日本文化の断絶

・AI・シンギュラリティ・情報格差

・SNS・フェイクニュース・誹謗中傷・名誉毀損・ネット詐欺

・円安・物価・インフレ

・資本主義の限界

・多様性・LGBTQ・LGBT法

このように非常に多岐にわたる社会の変化を「物語文」「説明文」「随筆文」の枠を超えて、いろいろな文章を読むこと、さらには本だけでなく様々なメディアで情報を摂取し、「自分事」として考えられるように育てていくことが何より重要かと思います。また親子での会話も非常に重要です。上記のキーワードについて是非一度話し合ってみてください。

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