近年出題される物語文は多様性、移民、ヤングケアラー、など現代的な社会問題がテーマが扱われることが多いですが、物語の読書経験が少ない子がこれらのテーマに触れようとしても理解しづらいでしょう。物語の理解を深めるにはまずスタンダードな物語に触れ、話の展開パターンや表現方法に慣れておくことが重要です。
今回は中学受験生にお勧めできるわゆるスタンダードでおすすめできる物語文をご紹介します。
重松清さんの短編集『小学五年生』は、全17編からなる短編小説集です。小学校5年生の子どもたちの日常を描いた物語で、リアルな感情表現が魅力です。受験生にとっても共感しやすい内容が多く、短編なので30分程度で1話を読むことができます。寝る前や学校の朝読書の時間など、隙間時間を活用して読みやすい作品です。
直木賞と本屋大賞のダブル受賞を果たした恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』。国際ピアノコンクールを舞台に、世界を目指す4人のピアニストたちの葛藤や成長を描いた青春小説です。映画化もされており、読後に家族で映画を楽しむこともできます。恩田陸さんの他の作品『夜のピクニック』や『チョコレートコスモス』も中学受験で頻出です。
森絵都さんの『クラスメイツ』は、2015年に刊行された作品で、リズムよく読み進められる口語文と体言止めのバランスが絶妙です。登場人物の書き分けが秀逸で、内容が頭に入りやすく、人物の心情も理解しやすい作品です。森絵都さんの他の作品『カラフル』や『アーモンド入りチョコレートのワルツ』『みかづき』も中学受験で頻出です。
瀬尾まいこさんの『あと少し、もう少し』は、中学校の陸上部を舞台にした物語です。中学最後の駅伝大会に向けてメンバーが集まり、練習を重ねる中での成長を描いています。心理表現が巧みで、セリフにも人間味があふれています。瀬尾まいこさんの他の作品『幸福な食卓』も頻出なので、合わせて読むことをおすすめします。
こまつあやこさんの『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』は、不思議な呪文のようなタイトルが特徴的です。マレーシアからの帰国子女が主人公で、日本の学校に適応するための苦悩と成長を描いています。2017年に講談社児童文学新人賞を受賞し、2019年度中学受験では最も出題された作品です。
小川洋子さんの『博士の愛した数式』は、80分しか記憶が持たない数学博士と家政婦の母子との交流を描いた感動的な物語です。わかりにくい心理描写はないものの、間接表現に特色があり中学受験でよく出題されます。
あさのあつこさんの『バッテリー』は、天才的なピッチャーとキャッチャーの野球少年たちを中心に描かれる物語です。野球に興味がなくても楽しめるストーリーで、人物描写が魅力的です。人の心のひだを繊細に描くあさのあつこさんの作品は、子どもたちを一気に引き込みます。