2025年度 栄東中学校 1/10A 国語入試問題 徹底解説
【大問三】論説文:戸谷洋志『悪いことはなぜ楽しいのか』
文章の要約
筆者: 戸谷洋志
主題: 「空気を読む」ことの本質と「空気を読まない」ことの意義
筆者は高校時代、演劇部員でありながら制服を着崩し、暗黙のルールに反抗した経験を語る。ハイデガーの哲学を引用しながら、人間は日常生活で「非本来性」の状態にあり、無意識に同調圧力に支配されていると説明。しかし、自分の人生の有限性(死)を意識することで「本来性」を取り戻し、個性ある存在として生きられると主張する。
重要な哲学概念

筆者の主張の構造
📖 論説文「空気を読む」ことの構造
なぜ私たちは空気を読んでしまうのか?
人間は日常生活で常に「非本来性」の状態にある
自分を理解している状態
= 自分らしく生きている
自分を理解している状態
= 世間に同調している
死は他者と交換することができない
有限性を意識することで「本来性」を取り戻せる
設問解説
問一「その不文律」の内容
解答: オ
解説:
「不文律」とは明文化されていないルールのこと。文脈から「イケている生徒は制服を着崩してもよいが、イケていない生徒はダメ」という暗黙のルールを指す。オが最も適切。
問二 慣用句完成
解答: 鼻
「鼻つまみ者」: 嫌われて避けられる人のこと
問三 ハイデガーの「分析」
解答: ア、オ
ア: 人間は日常で常に「非本来性」の状態にあり、無意識に同調している ✓
オ: 世間の意見は誰が言い出したか分からないのに、人はそれに流される ✓
×の選択肢:
- イ: 暴力の危険性について直接言及していない
- ウ: 楽観・悲観という観点ではない
- エ: 思考力の低下という説明は不適切
問四 X、Yの穴埋め
解答: イ
- X: 空気を読んでいる
- Y: 空気を読んでいない
解説: 「だってみんな空気を読んでいるんですから。空気を読んでいない人間なんて存在しないんですから」という文脈。
問五「誰でもない誰か」の意味
解答: オ
解説:
「非本来性」の状態では、個性を失い「みんな」の一員となる。自分らしさを持たず他者と同じように生きているので、個人の存在意義を失った状態にある。
問六「死を他者と交換することはできません」の意味
解答: エ
解説:
珍太郎くんの例で示されるように、誰かが代わりに死んでも「私」の死はなくならない。「私」の死から逃れることは誰にもできないという人生の有限性を意味する。
問七 記述問題(30〜40字)
解答例:
「自分の人生が他者と交換できない有限なものであることを意識すること。」(35字)
採点のポイント:
- 「人生の有限性」「死の自覚」が含まれているか
- 「他者と交換できない」という要素があるか
問八 文の挿入位置
解答: ウ
解説:
「このとき、人間は非本来性を脱却し、本来性を取り戻している」という文は、余命宣告の例の直後が適切。
問九 記述問題(20〜30字)
解答例:
「空気を読まないことで自分を個性のある存在だと実感できるから。」(29字)
ポイント:
- 「個性」「自分らしさ」「存在意義」などのキーワード
- 「誰でもない誰か」ではないことの実感
問十 生徒の会話
解答: ウ(不適切なもの)
理由:
ウは「空気を読むことのほうが悪い」と断定しているが、本文では「空気を読むこと自体は悪くない」「みんな空気を読んでいる」と述べている。筆者は空気を読むことを否定していない。
【大問四】物語文:実石沙枝子『物語を継ぐ者は』
あらすじ
主人公: 本村結芽(中学生)
時系列:
- 過去(小学5年生): クラスで孤立、本が唯一の救い
- 現在(中学生): 亡くなったおばさん(泉美)の遺品整理
物語の核心:
結芽は遺品整理中、おばさんが自分の愛読書『鍵開け師ユメ』シリーズの作者「イズミ・リラ」だったことを発見する。

💫 結芽の心情変化タイムライン
マイナスの感情から始まり、本という救いを得て、最終的には運命的な繋がりの発見へ。感情が激しく揺れ動く展開が特徴的。
比喩表現
- 「心は麻縄で縛り上げられたみたいに悲鳴をあげている」
→ 孤立の苦しみを具体的に表現 - 「本のジャングルみたいだ」
→ おびただしい量の本を視覚的に表現 - 「パズルのピースがはまるみたいに情報が繋がった」
→ 真実に気づく瞬間の感覚を表現
心と行動の裏腹
- 「大丈夫。全然平気。べつに、つらくなんてない」と唱えながら、実際は悲鳴をあげている
- 表面上は平静を装いながら、内心では孤立に苦しんでいる
主題
①孤独からの救い
本という世界が、現実で孤立する主人公の心の支えとなる
②つながりの発見
自分を救ってくれた物語の作者が、実は家族だったという運命的な発見
③物語を継ぐこと
タイトル『物語を継ぐ者は』が示すように、おばさんから結芽へと物語が受け継がれていくテーマ
設問解説
問一 笑いの種類
解答: ウ(冷笑)
解説:
孤立している結芽を馬鹿にするような笑い。「聞こえよがしな笑い声」という表現からも、冷笑が適切。
問二「そういう順番」
解答: 仲間外れ
解説:
「たぶん、ただ単にそういう順番が回ってきてしまった」という文脈から、クラスで孤立させられる順番のこと。
問三「わたしのための物語」
解答: ア
解説:
名前が同じというだけでなく、「落ちこぼれの出来損ない」である主人公ユメが敵と戦うストーリーが、つらい現状を打開したい自分と重なったから。
問四「おじゃましますも言わずに」
解答: オ
解説:
普通なら故人への挨拶をするが、それをしないことで、お母さんがおばさんをよく思っていなかったことが分かる。
問五 穴埋め
解答: カ(訃報)
訃報(ふほう): 人の死を知らせる便り
問六 抜き出し(初めの五字)
解答: 「たかが本」
本文: 「たかが本なのに高すぎると却下された」
解説:
お母さんの「本は大した価値がない」という価値観が表れている。
問七 記述問題(40〜50字)
解答例:
「部屋の匂いの中に本の匂いがあり、彼女が自分と同じく本好きだったことが伝わってきたから。」(45字)
ポイント:
- 「本の匂い」というキーワード
- 「自分と同じ本好き」という共通点
問八 適切な漢字二字
解答: 愛読
「大の愛読書」: 非常に好きで何度も読む本
問九「パズルのピース」にあたる情報
解答: イ、エ、カ
繋がった情報:
- イ: 愛蔵版が大切にされていた
- エ: カレンダーの「鍵ユメ改稿〆切」
- カ: イズミ・リラ宛てのファンレター
これらから「おばさん=イズミ・リラ」という結論に至る。
問十 X に入る一文(20字以内)
解答例: 「おばさんは、イズミ・リラだ。」(15字)
ポイント:
- 主人公が確信した結論を簡潔に
- 「おばさん」「イズミ・リラ」の関係を明示
まとめ:中学受験生へのメッセージ
この栄東中学校の国語入試問題は、深い読解力と論理的思考力を問う良問です。
大問三(論説文)から学ぶこと
「空気を読む」ことは悪いことではありません。でも、自分が空気を読んでいることに気づくこと、そして時には空気を読まない勇気を持つことも大切です。ハイデガーの哲学は難しく感じるかもしれませんが、「自分らしく生きることの大切さ」を教えてくれています。
大問四(物語文)から学ぶこと
つらいときに本が救いになる――これは多くの人が経験することです。この物語は、本を通じた人と人とのつながりを描いています。結芽を救った物語が、実は家族によって書かれていたという展開は、運命的で感動的です。
入試問題を解くコツ
- 論説文: 筆者の主張を正確に読み取る。対比構造に注目
- 物語文: 心情変化を丁寧に追う。±の転換点に注目
- 記述問題: キーワードを本文から拾い、字数内で簡潔に
栄東中学校の国語は、ただ文章を読むだけでなく、深く考え、自分の言葉で説明する力が求められます。これらを強く意識して取り組んでみてください!








