「最後の文章まで行けなかった」「残り5分で、あわてて記号を埋めた」。国語のテストのあと、お子さんからこんな言葉を聞いたことはないでしょうか。国語は、時間にとてもシビアな科目です。どれだけ読む力があっても、時間切れになれば点数には結びつきません。
ところが「時間が足りない」の中身は、お子さんによってまったく違います。本文を読むのが遅い子もいれば、選択肢で迷い続ける子、記述を何度も書き直す子もいます。どちらも速い子でも、時間配分を決めていないだけで時間切れになります。この記事では、どこで時間を使っているのかを見つける方法、原因ごとの対処法、本番で崩れない時間配分の決め方を、順にご紹介します。
まず「どこで時間を使っているか」を突き止める
時間切れの原因は、大きく「読むスピード」と「解くスピード」に分かれ、さらにそれぞれ細かく分かれます。原因がちがえば、対策もまったくちがいます。まずは図解動画で全体像を確認してください。
原因を見つける手がかりは、テストの問題用紙に残っています。返ってきた問題用紙を、次の表と照らし合わせてみてください。
| 問題用紙の跡 | 時間を使っている場所 |
|---|---|
| 本文に線や印がほとんどない | 読み方の型がなく、返り読みや答え探しに時間がかかっている |
| 設問文に何度もなぞった跡や、同じ傍線部への書きこみが多い | 設問を読み返している |
| 選択肢に印がないのに、解答を消して書き直した跡がある | 選択肢で迷っている |
| 記述欄に消しゴムの跡が多い/字数が大きく足りない | 記述を書き直している |
| 一つめの文章は丁寧なのに、二つめの文章は丸ごと空欄 | 時間配分を決めていない |
もっと確実なのは、家で一度、本番と同じ制限時間で解かせてみることです。大問ごとに「解き始めた時刻」を問題用紙の余白に書きこませると、どこで時間を使いすぎたのかがはっきりします。
原因1 読むスピードが遅い
文字を目で追うスピードが遅い
一字ずつ追うように読んでいて、言葉を意味のかたまりとして見られていないケースです。時間をかけて読んでいる割に、内容も頭に残りません。
ふだんの読解演習で、難しいと感じた文に絞って、文節ごとにスラッシュを入れながら読む練習が効果的です。
例)私は/今日、/図書館で/友人と/勉強を/しました。
文を意味のかたまりでとらえる練習になり、一文の意味をぱっとつかめるようになります。すべての文でやると時間がかかりすぎるので、練習は難しい文だけに絞り、テスト本番ではやらなくてかまいません。
「返り読み」をしている
一度読んだところに何度も戻って読み直してしまうのが「返り読み」です。集中が切れて文字をぼんやり追うだけになり、意味がわからないまま進んで、気づいて少し戻る。この繰り返しで、時間はどんどん削られます。関心の薄い分野の文章や、緊張・疲れがあるときに起こりやすくなります。
対策の一つめは、入試と同じ分量の文章を最後まで音読することです。音読は「目で追う」「意味をとる」「声に出す」を同時に行うので、集中していないとそもそも続きません。最後まで集中を切らさずに読む練習になります。
二つめは、濃淡をつけて読むことです。文章には、筆者の主張や人物の気持ちが表れた重要な部分と、例や説明の部分があります。重要な部分に線や印をつけながら読むと、読みながら内容を整理できるので、戻って読み直す必要が減ります。私の授業では、ジャンルごとの読み方の型を「読解の絶対法則」としてまとめ、生徒に渡しています。
設問を読むのが遅い
設問を読んでも何を聞かれているのかがつかめず、解いている途中で何度も読み返してしまうケースです。本文を読み終えてほっとしてしまい、設問を集中して読めない子は珍しくありません。
設問を読んだら、まず「問いの中心」を丸で囲む習慣をつけましょう。
- 傍線部①とありますが、どういうことですか
- 傍線部②とありますが、なぜそう言えるのですか
- 傍線部③のとき、少年はどのような気持ちだったと考えられますか
「どういうこと」なら言いかえ、「なぜ」なら理由、「気持ち」なら心情を答える、と答えの形がその場で決まります。途中で「何を答えるんだっけ?」と戻ることがなくなります。
原因2 解くスピードが遅い
選択肢問題で、正解を決めきれない
どれも正しく見えて選びきれず、迷っているうちに時間が過ぎていくケースです。次の三つの手順で絞りこみます。
- 選択肢を「プラスの気持ち」と「マイナスの気持ち」、「肯定」と「否定」のように大きく二つに分け、答えるべきでないグループを最初に外す
- 残った選択肢を意味のまとまりごとにスラッシュで区切り、本文と合っていれば○、まちがっている・書かれていなければ×、判断できなければ△をつける。×が一つでもあれば除外する
- それでも決まらなければ、△の部分と似た表現を本文から探して線を引き、そこを読み直して判断する
選択肢に○×△の印が残っていれば、見直しのときにも迷った理由がすぐにわかります。家で答え合わせをするときは、正解したかどうかより、印をつけて判断したかどうかを見てあげてください。
本文から答えの場所を探すのに時間がかかる
設問に関わる部分が本文のどこにあったか見当がつかず、最初から最後まで探し直してしまうケースです。探しているうちに集中が切れ、見落としも増えます。
- 読みながら、文章を「意味段落」や「場面」で区切ります。難しければ「はじめ・なか・おわり」の三つで十分です。全体の地図が頭に入っていれば、探す範囲をしぼれます
- 筆者の意見、キーワード、心情を表す表現に印をつけておきます。設問に関わりやすい部分なので、印があるだけで探す時間が大きく減ります
記述問題を書き始められない・書き直しが多い
時間に追われると、少しでも早く書き始めようとして、答えの完成形を決めないまま書き出してしまいます。書きながら考えると、字数が足りなくなったり超えたりして、書き直しに時間を取られます。
必ずやってほしいのは、書く前に「一言で答えるとどうなるか」を決めることです。たとえば「少年が黙ってしまったのはなぜか」という問いなら、まず「言い返せないと悟ったから」のように一言の答えを決めます。そのうえで、「何に対して」「なぜ悟ったのか」といった要素を、指定字数に合わせて前に足していきます。
日本語は、いちばん大事な結論が文の最後に来る言語です。結論を決めずに書き出すと、主語と述語がねじれた答案になりやすくなります。文末をどう締めるかを余白にメモしてから書き始めるだけで、書き直しは大きく減り、正答率も上がります。
本番で崩れない時間配分を決めておく
国語のテストでいちばん大きな失点につながるのは、時間配分です。中学受験の国語は「知識問題と文章二題」という構成が多く、知識問題と一つめの文章に時間をかけすぎて、二つめの文章にほとんど時間が残らないという崩れ方がよく起こります。
文章が二つなら、両方に同じくらいの時間をかけるのが基本です。どちらの文章で点が取れるかは、解いてみるまでわかりません。時間切れで手をつけられなかった文章が、実は解きやすい文章だったということもよくあります。
50分のテストなら、時計を見るタイミングを次のように決めておくと、途中で配分を立て直せます。
| 経過時間 | その時点で終わっていたいこと |
|---|---|
| 6分 | 知識問題(漢字・語句) |
| 27分 | 一つめの文章。終わっていなくても、ここで二つめに移る |
| 48分 | 二つめの文章 |
| 50分 | 飛ばした問題と、記号の書き写しの見直し |
あくまで目安なので、問題の分量や難しさによって調整してください。文章が三題ある学校や、試験時間が45分・60分の学校でも、考え方は同じです。知識問題の時間を先に決め、残りを文章の数で割り、長い文章に少し多めに配分します。志望校の過去問を解くときに、自分用の「時計を見るタイミング」を決めておきましょう。
もう一つ決めておきたいのが、飛ばすルールです。一つの設問で2分以上手が止まったら、問題番号に印をつけて次へ進み、最後に戻る。記述の部分点が期待できる学校では、空欄にせず、一言の答えだけでも書いておきます。
速く解くための土台をつくる
解き方を定型化して、迷う時間をなくす
安定して速く解ける子は、設問のタイプごとに解く手順が決まっています。「傍線部をふくむ一文を分解する→前後の段落を見る→根拠を本文から特定する→答えの形にまとめる」といった手順が決まっていれば、毎回ゼロから考える時間が省け、答えのブレも小さくなります。ふだんの練習で、段落ごとに20字程度で要約する練習を取り入れると、筆者の主張や物語の山場をすばやくつかめるようになります。
語彙と背景知識で、読むスピードそのものを上げる
知らない言葉が一つあるだけで読みが止まり、前後から意味を推測する作業が発生します。これが積み重なると、一回読むのにかかる時間は驚くほど長くなります。語彙の増やし方は中学受験国語の語彙力を高める方法で詳しくご紹介しています。
背景知識も同じです。戦時中を描いた物語なら当時の暮らし、環境や科学技術の説明文ならニュースや図鑑の知識が、読む手がかりになります。テーマの見当がつくと、筆者の言いたいことを先回りして読めるので、読むスピードも選択肢を選ぶスピードも上がります。入試によく出るテーマは2026年度の入試出典ランキングでまとめています。
選択肢問題の徹底攻略 改訂版(若杉朋哉)
選択肢で迷って時間を使ってしまう子に。選択肢問題の解き方を手順として身につけるための一冊です(2023年改訂版)。この記事の「区切って○×△」と合わせて練習すると、迷う時間が減っていきます。
記述問題の徹底攻略 改訂版(若杉朋哉)
記述を書き始められない、書き直しが多い子に。同じ著者による記述問題の一冊です(2023年改訂版)。答えの組み立て方を段階的に練習できます。
家でできる「本番練習」2週間メニュー
時間切れは、ふだん時間を計らずに解いているかぎり、なかなか直りません。塾の宿題とは別に、次のようなメニューを2週間試してみてください。
| 時期 | やること | 確かめること |
|---|---|---|
| 1〜3日目 | 過去問か模試を1回分、本番と同じ時間で解く。大問ごとに開始時刻を書く | どこで時間を使いすぎたか(上の表で原因を確かめる) |
| 4〜10日目 | 原因に合った練習を毎日15分(音読、選択肢の○×△、記述の一言答えなど) | その練習を、テキストの文章題でも使えているか |
| 11〜14日目 | もう1回分を本番と同じ時間で解く。時計を見るタイミングも決めて試す | 二つの文章の両方に手をつけられたか。初回と比べてどこが縮んだか |
読むのが遅い子に、家庭でできること
読むのが遅いことがコンプレックスになり、国語そのものが嫌いになってしまうのは、とても残念なことです。家庭で気をつけたいことをまとめました。
子どもを急かさない
読むスピードは個人差がとても大きく、急かすと逆効果になることがほとんどです。「早く読みなさい」と言われると、内容を理解しないまま目だけを動かすようになり、かえって返り読みが増えます。家庭では、自分のペースで読める時間を確保し、内容を理解しながら言葉をかたまりでとらえることを優先してください。
音読から黙読へ、段階的に移る
音読は、文字を認識するスピードを上げ、意味のかたまりで読む力を育てます。ただし、頭の中でいつも声に出す癖がつくと、読むスピードに限界ができます。ある程度長い文章をすらすら音読できるようになったら、少しずつ黙読に移りましょう。黙読に移ったら、速さだけでなく、読んだ内容を一言で説明できるかも確かめてください。
小学生に「速読講座」は効果がある?
速読教室には一定の効果がありますが、個人差が大きく、長い目で見る必要があります。入試までの短い期間で成果を出す目的で受講するのは、あまりおすすめできません。小学生のうちは、速く読むことより、内容を正しく理解することと、読む楽しさを育てることを大切にしてください。
目が滑ってしまう子は、どうする?
同じ行を二度読む、行を飛ばすといった「目が滑る」状態の子は、まず保護者の方が音読を聞いてあげてください。行を飛ばしたら、その場で指で行を示してあげるだけでも改善します。それでも続く場合は、一行だけを見やすくする「リーディングトラッカー」という補助具を試してみるのも一つの方法です。
線を引きながら読むと、遅くなる?
線を引くと、読む速さそのものは少し落ちます。けれども重要な部分が整理されるので、設問を解くときに探し直す時間が減り、結果として全体の時間は短くなることが多いです。難しい文章や長い文章ほど、線を引きながら読むほうが速く解けます。
よくある質問
模試ではいつも時間切れなのに、家では最後まで解けます。なぜですか?
家では時間を気にせず、途中で休んだり考えこんだりできるからです。本番と同じ条件で解いていないので、どこで時間を使っているかが見えません。上の2週間メニューのように、家でも一度、本番と同じ時間で解いてみてください。
時間が足りないときは、どの問題から捨てればよいですか?
捨てる問題を決める前に、二つの文章の両方に手をつけることを優先してください。そのうえで、2分以上手が止まった設問は印をつけて飛ばし、最後に戻ります。抜き出しで見つからない問題や、長い記述は、飛ばす候補になりやすい問題です。
知識問題は最後に回したほうがよいですか?
知識問題に時間がかかる子は、最後に回すのも一つの方法です。ただし、最後に回すと焦って簡単な漢字を落とすこともあります。漢字や語句は短時間で確実に取れる得点源なので、6分など時間を決めて最初に片づけるほうが安定する子が多いです。過去問で両方を試し、合うほうを選んでください。
読むのを速くするには、たくさん問題を解けばよいですか?
量をこなすだけでは、遅い原因がそのまま残ります。文字を追うのが遅いならスラッシュ読みと音読、返り読みが多いなら線引きの型、語彙が足りないなら語彙の積み上げと、原因に合った練習をしたうえで量を増やすと効果が出ます。
まとめ
入試では国語が一科目めに置かれていることが多く、最初の科目で時間切れを起こして気持ちが崩れると、ほかの科目にも響きかねません。「時間が足りなかった」と聞いたら、まず問題用紙の跡から、どこで時間を使ったのかを一緒に確かめてください。原因がわかれば、対策は一つずつ打てます。
読解そのものが苦手な場合は、中学受験国語の読解力を上げるには?苦手になる4つの原因と原因別の強化法もあわせてご覧ください。
私の授業では、時間切れの原因をお子さんごとに分析し、合った対策をご提案しています。詳しくはお問い合わせからご相談ください。
