YS中学受験国語力研究室 中学受験国語専門の家庭教師|個別指導・個人契約・オンライン全国対応

2027年度中学受験に向けた読書ガイド 新刊14冊|物語文11冊・説明文3冊

中学受験国語で注目の新刊14冊(物語文11冊・説明文3冊)の表紙を並べた画像

この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

「入試に出そうな本を読ませたほうがいいですか?」――保護者の方からよくいただくご質問です。結論から言うと、出典を「当てにいく」ための読書はおすすめしていません。ただ、最近の作品がどんな題材や悩みを描いているのかを知っておくことは、初めて読む文章に向き合うときの確かな助けになります。

そこで今回は、2027年度中学受験に向けた読書の参考に、2025年9月から2026年5月に発売された新刊から、物語文11冊・説明文3冊の計14冊を紹介します。それぞれ発売日順に並べ、書誌情報、あらすじ、主なテーマに加えて、国語講師の目線で「どこに注目して読むとよいか」をひとことずつ添えました。テストの出典となった作品には、そのテスト名も記しています。

もちろん、14冊すべてを読む必要はありません。気になるテーマの作品や、お子さんの学年に近い主人公の作品から、まず1冊選んでみてください。

今回の14冊に見える3つの流れ

一冊ずつの紹介に入る前に、全体を見渡して気づいたことを整理しておきます。

  • 家族を支える子ども・若者:『君の火がゆらめいている』『青のナースシューズ』は、きょうだいや家族の世話を担ってきた主人公が、自分自身の願いに目を向けていく物語です。「しっかり者」が胸にしまってきた本音をどう読み取るかがポイントになります。
  • 他人の目と「自分らしさ」:『中三・ラプソディ』の苦手意識、『わたしのbe』の外見への悩み、『あの子は一番』の嫉妬。人と比べてしまう心を描いた作品が目立ちます。周りの目を気にしない『成瀬は都を駆け抜ける』の成瀬は、その対極にいる人物といえるでしょう。
  • 慣習・信仰・歴史と個人:『春の雨にぬれて、獅子はおどる』の伝統行事、『ギアをあげて、風を鳴らして』の親の信仰、『彼の空のユンカース』の戦争の記憶。自分が生まれる前からそこにあるものと、どう向き合うのかが問われます。

説明文の3冊も、「文字」「自他の境界線」「進化」と題材はさまざまですが、「当たり前だと思っていることを問い直す」という点で共通しています。物語文と説明文が、同じ問いを別の角度から扱っている。そのことに気づけると、読解の幅がぐっと広がります。

物語文11冊

物語文は、主人公が小学生の作品から、大学生や社会人が主人公の一般文芸まで幅広く並べました。中学入試では、受験生と同年代の主人公だけでなく、大人が主人公の作品も出題されます。自分とは立場の違う人物の気持ちを、想像ではなく文章中の表現を根拠に読み取る。その練習として活用してください。

中三・ラプソディ

  • 著者:花里真希
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2025年9月10日
  • あらすじ:歌が苦手な中学生の前に、クイーンのフレディ・マーキュリーが空想の友達として現れる。合唱コンクールに向けた日々を通して、自分の悩みや周囲との関係に向き合っていく。
  • 主なテーマ:自分らしさ、苦手意識、仲間との関係

国語講師のひとこと

「空想の友達がフレディ・マーキュリー」という設定に目を引かれますが、中心にあるのは「苦手なことを抱えたままクラスの行事に向き合う」という、受験生にも身近な悩みです。合唱コンクールは、クラスの人間関係が大きく動く場面として、物語文でよく描かれる舞台でもあります。

主人公が自分の「苦手」をどう受け止め直していくのか。気持ちが変わるきっかけになった出来事に印をつけながら読むと、そのまま心情の変化をとらえる練習になります。

わたしのbe 書くたび、生まれる

  • 著者:佐藤いつ子
  • 出版社:KADOKAWA
  • 発売日:2025年9月26日
  • テストの出典:日能研 全国公開模試(2026年3月・大問5)
  • あらすじ:容姿に自信のない高校1年生の文香は、書道部で出会った佑京の姿に刺激を受け、書の魅力を知る。文化祭の書道パフォーマンスに向けて練習するなかで、自分にとっての美しさを探していく。
  • 主なテーマ:外見への悩み、自己理解、表現

国語講師のひとこと

発売から半年ほどで、日能研の全国公開模試に登場しました。佐藤いつ子さんは、2025年度入試で30校以上に出題された『透明なルール』の著者で、いま最も注目したい作家の一人です。

外見へのコンプレックスという題材は、高学年の受験生にとっても切実なはず。「美しさ」という抽象的な言葉が、物語のなかのどんな具体的な場面と結びついているかを意識して読むと、記述問題に強くなります。この作品はこちらの記事でも詳しく取り上げています。

ポジション!

  • 著者:高田由紀子
  • 出版社:岩崎書店
  • 発売日:2025年10月21日
  • テストの出典:日能研 全国公開模試(2026年4月5日)/四谷大塚 予習シリーズ4年上 カリキュラムテスト(第16・17回)/四谷大塚系 小5第2回公開組分けテスト(2026年5月10日)
  • あらすじ:背の高さを理由にミニバスケットボールのチームへ誘われた芽吹。仲間とのすれ違いや、車いすバスケットボールに励むルイとの再会を通して、チームでの役割と自分の居場所を考えていく。
  • 主なテーマ:居場所、仲間との協力、自信

国語講師のひとこと

今回の14冊のなかで、塾のテストでの採用が最も多い作品です。小5の公開組分けテストについては、当ブログで解説しています。第72回青少年読書感想文全国コンクール(小学校高学年の部)の課題図書でもあります。

章によって視点となる人物が変わるので、「いま誰の目から見た場面なのか」を確かめながら読むのがポイントです。4年生のテストにも使われているので、読書にまだ慣れていないお子さんの最初の一冊としてもすすめやすい作品です。

龍の守る町

  • 著者:砥上裕將
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2025年11月12日
  • あらすじ:水害の救助活動で心に傷を負った消防士・秋月龍朗は、消防指令センターへ異動する。119番通報に応じ、現場へ出動する仲間を支える仕事のなかで、人を救うことと自分の過去に向き合う。
  • 主なテーマ:仕事の責任、心の傷と再生、支え合い

国語講師のひとこと

水墨画を題材にした『線は、僕を描く』で知られる砥上裕將さんの作品です。主人公は大人の消防士。中学入試、とくに上位校では、こうした大人が主人公の「仕事小説」も出題されます。

小学生には経験のない「仕事の責任」や「心の傷」を、想像ではなく文章中の表現を根拠に読み取れるかどうか。現場に出る隊員ではなく、通報を受けて仲間を支える側に光を当てている点にも注目です。6年生や、読書に慣れたお子さんに向いています。

春の雨にぬれて、獅子はおどる

  • 著者:岳明秀
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2025年11月13日
  • あらすじ:東京から岐阜の山あいの村へ転校した小学5年生のナオコは、春祭りの獅子舞にひかれる。男子が獅子を舞い、女子が笛を吹く慣習のなかで、獅子の舞い手になることに挑む。
  • 主なテーマ:新しい環境、伝統と変化、性別による役割

国語講師のひとこと

「転校」「地域の伝統行事」「性別による役割」と、入試で問われやすい要素が重なった作品です。「男子は獅子、女子は笛」は長く続いてきた慣習だけに、単純な善悪では割り切れません。

ナオコの挑戦を、周りの大人や子どもたちがそれぞれどう受け止めるのか。立場による考え方の違いを整理しながら読むと、記述問題のよい練習になります。主人公が小学5年生なので、4・5年生にも手に取りやすいでしょう。

君の火がゆらめいている

  • 著者:落合由佳
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2025年11月27日
  • テストの出典:第2回合不合判定テスト(大問二)
  • あらすじ:小学6年生の葉澄は、発達障害のある双子の姉・菜々実を支え、自分の気持ちを後回しにしてきた。同じような立場の子どもたちとの出会いを通して、家族への思いと自分自身の願いを見つめ直す。
  • 主なテーマ:きょうだいの関係、家族、自分の願い

国語講師のひとこと

2026年7月の第2回合不合判定テストで出題されました(当ブログの解説記事はこちら)。2026年度の青少年読書感想文全国コンクール(中学校の部)の課題図書でもあります。

障害のあるきょうだいを支える「しっかり者」の主人公が、後回しにしてきた自分の気持ちに気づいていく物語です。口に出す言葉と本心とのずれを読み取ることは、物語文読解の核心。葉澄が「言わなかったこと」に注目して読んでみてください。家族のケアという点で、『青のナースシューズ』と読み比べるのもおすすめです。

成瀬は都を駆け抜ける

  • 著者:宮島未奈
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2025年12月1日
  • あらすじ:京都大学に進学した成瀬あかりは、京都で新たな人々と出会い、自分の関心に従って行動していく。東京へ進学した幼なじみの島崎みゆきとの関係も交え、進学後の暮らしを描く。
  • 主なテーマ:自分らしい行動、進路、友情

国語講師のひとこと

『成瀬は天下を取りにいく』に始まる人気シリーズの3作目です。第1作は本屋大賞を受賞し、中学入試でも多くの学校で出題されました。

周りの目を気にせず、自分の関心にまっすぐ進む成瀬の姿は痛快ですが、読解のうえで大切なのは、成瀬を見つめる周囲の人物の気持ちです。これまでのシリーズでも、成瀬に振り回されたり刺激を受けたりする側の視点が丁寧に描かれてきました。未読の方は、ぜひ第1作から順にどうぞ。

ギアをあげて、風を鳴らして

  • 著者:平石さなぎ
  • 出版社:集英社
  • 発売日:2026年2月26日
  • あらすじ:小学4年生の癒知は、母の信仰する宗教団体で特別な存在とされ、厳しい決まりのもとで暮らしている。転校生のクミと親しくなることで、それまで知らなかった世界に触れていく。
  • 主なテーマ:親子関係、友情、自分で選ぶ自由

国語講師のひとこと

母の信仰という、子どもには選べない環境で育つ主人公を描いた作品です。題材は重めですが、「親の価値観のなかで生きてきた子が、友だちとの出会いをきっかけに外の世界を知る」という構図は、物語文の王道でもあります。

癒知にとっての「当たり前」が、クミと過ごすなかでどう揺らいでいくのかが読みどころ。一般向けの文芸書ですので、保護者の方が先に目を通し、お子さんに合うかどうかを判断していただくと安心です。

青のナースシューズ

  • 著者:藤岡陽子
  • 出版社:KADOKAWA
  • 発売日:2026年2月28日
  • あらすじ:看護師を目指す大学生の岡崎成道は、車いすで暮らす弟の世話を担ってきた。学びや実習、仲間や患者との関わりを通して、看護の仕事と自分の生き方を考えていく。
  • 主なテーマ:職業への志、家族のケア、他者への理解

国語講師のひとこと

藤岡陽子さんは、中学受験を描いた『金の角持つ子どもたち』などで知られる、中学入試の頻出作家です(以前の記事では『僕たちは我慢している』を紹介しました)。看護師として働いた経験をもち、医療の現場を描いた作品を多く手がけています。

家族の世話を担ってきた主人公が、今度は仕事として他者を支える側に立つ。「人を支えること」と「自分の人生を生きること」をどう両立させるのかという問いは、『君の火がゆらめいている』とも響き合います。

あの子は一番

  • 著者:朝比奈あすか
  • 出版社:福音館書店
  • 発売日:2026年4月10日
  • あらすじ:小学4年生のあかりは、勉強も運動も得意で、クラスの中心にいた。新しいクラスでまこっちゃんにかなわないと感じたことから、相手を追い落とそうと行動し、関係が変わっていく。
  • 主なテーマ:他者との比較、嫉妬、友人関係

国語講師のひとこと

朝比奈あすかさんは、『君たちは今が世界』が多くの学校で出題された、中学入試の頻出作家です。本作の主人公は、ライバルを追い落とそうとする側。共感しにくい人物かもしれませんが、入試の物語文は「いい子」ばかりを描くわけではありません。

嫉妬や焦りといった負の感情を、良い悪いの判断をいったん脇に置いて読み取れるかどうかが試されます。主人公は小学4年生で、4・5年生から読める一方、テーマは6年生にも十分読みごたえがあります。

彼の空のユンカース

  • 著者:柊サナカ
  • 出版社:双葉社
  • 発売日:2026年5月20日
  • あらすじ:高校生の雅美は、曽祖母の遺品に残された手紙と作者不明の歌集を、友人の凜と調べる。短歌に託された思いをたどるうちに、戦争や差別の歴史と、身近な友人の抱える問題が見えてくる。
  • 主なテーマ:記憶の継承、戦争と差別、他者への理解

国語講師のひとこと

今回の物語文のなかで最も新しい作品です。戦争を当時の出来事として直接描くのではなく、現代の高校生が手紙や短歌を手がかりに「調べて知っていく」形をとっているのが特徴で、戦争の時代と今の自分たちとのつながりを考えさせる構成になっています。

短歌が物語の鍵になるので、韻文に込められた思いを読み取る練習にもなります。戦争や差別を扱うため、歴史を学んだ6年生のほうが理解しやすいでしょう。

説明文3冊

説明文の3冊は、いずれも筑摩書房のちくまプリマー新書です。2026年度中学入試 国語出典ベスト10でも、同レーベルから複数の作品がランクインしました。中高生に向けて書かれたシリーズなので、説明文が苦手なお子さんは、まず興味のある章だけを読むのでも十分です。

読み書きのない世界――無文字社会の文化を知る七章

  • 著者:山下宗久
  • 出版社:筑摩書房
  • 発売日:2026年1月6日
  • 内容:文字を用いない社会では、取り引きや約束、知識の伝達はどう成り立つのか。七つの疑問を手がかりに、経済・法律・口頭伝承などのしくみを紹介する。
  • 主なテーマ:文字と言葉、文化の多様性、社会のしくみ

国語講師のひとこと

「文字があるのが当たり前」という前提を問い直す一冊です。自分たちとは異なる社会を知ることで、自分たちの社会のしくみが見えてくる。こうした比較文化の考え方は、説明文の定番です。

「文字を用いない社会では〜、それに対して文字のある社会では〜」という対比を整理しながら読むと、説明文の構造をつかむ練習になります。七つの章に分かれているので、気になる章から読めるのも利点です。

自他の境界線を育てる――「私」を守るバウンダリー

  • 著者:鴻巣麻里香
  • 出版社:筑摩書房
  • 発売日:2026年2月5日
  • 内容:断りたいのに断れない、他人と意見が違うと不安になる。そうした身近な場面から、自分の気持ちや願いと他人の期待を区別し、互いを尊重する関係を考える。
  • 主なテーマ:自他の境界線、権利、対人関係

国語講師のひとこと

「断りたいのに断れない」「人と意見が違うと不安になる」。高学年のお子さん自身にも、思い当たる場面が多いはずです。人間関係の距離感を論じた文章は、菅野仁『友だち幻想』をはじめ、入試の定番テーマになっています。

この本で得られる「自分と他人を区別する」という視点は、物語文を読むときにも役立ちます。相手の期待に応えようとして苦しくなる主人公は、物語文にたびたび登場するからです。今回の物語文では、『君の火がゆらめいている』と合わせて読むと理解が深まります。

ダーウィンは進化をどう考えたのか

  • 著者:長谷川眞理子
  • 出版社:筑摩書房
  • 発売日:2026年5月7日
  • 内容:ダーウィンはどのように進化と自然淘汰の考えにたどり着いたのか。ビーグル号での航海や生物の研究をたどり、その生涯と『種の起源』が生まれるまでの過程を解説する。
  • 主なテーマ:生物の多様性、進化、科学的な探究

国語講師のひとこと

長谷川眞理子さんは、中学入試の説明文でも名前を見かける研究者です。生命科学や進化を扱う文章は、近年の説明文の柱の一つになっています。

この本の特徴は、結論としての進化論だけでなく、ダーウィンが観察と考察を積み重ねて考えにたどり着くまでの「過程」を追っている点です。「事実をもとに仮説を立て、確かめる」という流れを意識して読むと、理科的な題材の説明文への苦手意識がやわらぎます。伝記のように読めるので、説明文の入口としてもすすめやすい一冊です。

テストの出典情報は、確認できたもののみ掲載しています。あらすじ・内容は各書籍の紹介をもとに要約しています。

迷ったときの「最初の一冊」の選び方

どれから読めばよいか迷う場合は、学年や目的に合わせて選んでみてください。

  • 4・5年生、読書にまだ慣れていないお子さん:主人公が小学生の『ポジション!』『春の雨にぬれて、獅子はおどる』『あの子は一番』
  • 6年生が、すきま時間に1冊だけ読むなら:模試でも出題された『君の火がゆらめいている』『わたしのbe 書くたび、生まれる』
  • 大人向けの文章に慣れておきたい上位校志望のお子さん:『龍の守る町』『青のナースシューズ』『彼の空のユンカース』
  • 説明文に苦手意識があるお子さん:身近な悩みから入れる『自他の境界線を育てる』

読み終えたあとに感想文を書かせる必要はありません。「主人公は、最初と最後でどう変わった?」とひとこと聞いてみるだけで十分です。保護者の方が先に読んで、食卓の話題にしてみるのもよいと思います。

出題予想よりも最新のトレンドに触れることが重要

今回ご紹介した本は、入試に出る作品を予想することよりも、最近の作品でどのような題材や問いが扱われているのか、その傾向に触れることを目的に手に取っていただければと思います。人物が抱える悩みや、社会・ことば・自然をめぐる考え方に触れることは、ものの見方を広げるきっかけにもなります。

すべてを読み切ろうと構えず、勉強の合間や移動中などのすきま時間に、気になる一冊を少しずつ読み進めてみてください。読書まで課題にしてしまわず、物語を楽しんだり、知らなかった考え方に出会ったりする、息抜きの時間にできるとよいでしょう。