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日能研小6公開模試(5/29)「果物屋のたつ子さん」(物語文)解説

こんにちは。指導歴20年中学受験国語専門プロ家庭教師のヨッシーです。

今日は昼過ぎから突然の雷雨。地域によっては大きな雹が大量に降ってきたようで、驚かれた方も多いのでは。

ピンポン玉ぐらいの雹が降り注いだ地域もあるというの驚きです。これも気候変動の影響なんでしょうかね。

さて、今回は小6日能研公開テストです。難易度は決して高いものではありませんでしたが、記述が多かったので苦手な子にとっては厳しい問題構成だったかもしれません。

その中でも物語文 いしいしんじ氏の「果物屋のたつ子さん」の文章について分析・解説していきます。

出典「果物屋のたつ子さん」 いしいしんじ著

2006年刊行の作品(「雪屋のロッスさん」所収)です。本作品は私が調べる限り中学受験に出題された履歴が見当たりません(もしあったら教えていただけると幸いです)が、作者のいしいしんじさんの作品は「ぶらんこ乗り」という作品が青山学院中、「おばけの涙」という作品が聖光学院、城北、法政大学中などで出題された実績があります。

本文解説

登場する人物は限られますので一人ひとりの人物像に関する情報は線引きをするなどしてチェックしておきましょう。

・P12

「たつ子さんの店は〜まわりには看板をおろした空き家のバー、磨りガラス窓の不動産屋。七十二歳になったいまも〜青物市場に向かいます。」

「たつ子さんはおもに、季節ごとの果物を商っている。〜果物の質にはいっさい妥協しません。」

→このあたりの表現から主人公となる「たつ子さん」の人物像を整理しておきましょう。

・P13

「若い常連客が一人できた。〜短髪の学生です。週に二度〜品物を見るその目つきから、たつ子さんには彼がずいぶん果物好きらしいことがわかりました。北国の、山の生まれかもしれない。〜密かに想像します。」

→新キャラクター「若者」の登場です。果物好きであり、たつ子さんもこの若者の出身を想像するなど関心を持ち始めることがわかります。

その後のシーンが重要。

「ボールはすぐに見つかりました。大きな袋にあたって止まったのです。たつ子さんはその場でしばらく立ちつくし、足下のものを見つめていました。」

→「立ちつくし」という表現から良くないことが起きていることがわかりますが、この段階ではまだそれが何なのかわかりません。気持ちがマイナスに傾いているのは間違いなさそうなのでここに線を引き「−」印でもつけておくと良いでしょう。

場面が変わって「マイナス心情」の予感的中・・・

P14

「翌日の昼間、いつもの風体でやってきた学生に、悪いけれどもう、あんたに果物は売れない、とたつ子さんは言いました。」

「『たべやしないのに』冷静な口調ですが、声はわずかに震えています。」

→たつ子さん、若者に怒ってますね。声を震わせるほどに・・・。これは冒頭に確認した「果物の質にはいっさい妥協しません」の表現からわかるようにたつ子さんは果物に非常に強いこだわりをもって仕事をしているからにほかなりませんね。

しかし、若者の事情を知りたつ子さんは若者に理解を示します。

P15「『さあ、おたべなさい』薄皮を割り、たつ子さんはいいました。『たべて、腐ったものののことは忘れちまいなさい。いまどきのグレープフルーツは、まったく目がさめるような味がしますよ』」

→この瞬間、たつ子さんの心情は「果物を食べずに捨てた若者への怒り」(マイナス)から「若者の苦悩への同情」(プラス)に転換したことがわかります。

このようなマイナスからプラス、プラスからマイナスといった大きな心情の転換には必ず大きな出来事が起因しています。その原因をしっかり整理把握しながら読み進めることが大切です。

若者もたつ子さんに剥いてもらったグレープフルーツを食べ、そのあまりの美味しさに笑顔を取り戻します。

そしてラストシーン

P16

「学生は微笑みながら、額に入れた絵を一枚、たつ子さんにプレゼントしました。」

「渡された絵を胸元でちらをのぞき、たつ子さんは唖然となりました。数日前にしあがったというそれは、果物だけの絵ではなかったのです。」

→この画学生はずっと果物を書いてきましたが、それ以外で欠くべきものがあるとすると何なのか。それに対してたつ子さんが「唖然」としていることから考えます。

「たつ子さんは、さくらんぼのような頬を揺らせ、照れくさげに笑いました。」

→これが決定打。たつ子さんが頬を赤らめて照れてしまうということは「たつ子さん」が描かれていたと考えて間違いないでしょう。(ここまで気づければ問五は簡単ですね)

問題解法

問二に注目します。

傍線部②「繁華をきわめた飲食街も、いまは空き家ばかりとなり、店を訪れるお客たちも、年々数少なくなっていました」とあります、その理由を文章中の言葉を使って書きなさい、という問題。

傍線部(あるいは傍線部を含む一文)は一字一句漏らさず読むようにしましょう。文字通り一字たりとも読み漏らしてはいけません。

①繁華をきわめた飲食街、いまは空き家ばかりとなり

②店を訪れるお客たち、年々数少なくなって

このように飲食街「も」、お客たち「も」と並列表現をされています。

したがって①飲食街が空き家になった理由②お客が少なくなった理由、それぞれ書かなくては行けないということに気付けるかどうか。

おそらく「スーパーの出店」だけを理由として書いてしまっている生徒さんが多いのではないかと思います。

これは傍線部の読み込みが浅いことに原因があります。傍線部と傍線を含む一文の精読を徹底するようにしていきましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

定石通り、大きな心情変化の原因をしっかり捉えることで内容理解が十分できる比較的平易な問題だったと思います。ただし問二のような細部を確認させるような問題や、本文に明記されていないラストシーンの絵に描かれていた内容を類推させるような問題には手こずった生徒さんも多いかもしれません。

・傍線部や空欄、その他線引きをした重要部分は一字一句漏らさず精読

・心情の間接表現や情景描写から類推できる条件を整理する

このような読み方を心がけていきましょう。

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