6年生 第3回 組分けテスト
国語 徹底解説
大問二:内田 樹「コミュニケーション能力とは何か」
大問三:ブレイディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』(文藝春秋)
大問四:中山聖子『この手はいつか』(文研出版)
2026年6月14日に実施された四谷大塚・6年生 第3回組分けテスト(国語)の全問解説です。漢字・語句の知識問題に加え、現代社会の「差別」や「言葉の力」を論じた骨太な論説文、母子家庭の少年の心の揺れを描いた物語文と、6年生の夏にふさわしい読み応えのある構成でした。各設問を公式解答にもとづいて解説し、文章理解を助ける図解も交えてまとめています。
テスト全体の構成
大問は4つ。配点の重心は読解2題(大問三・大問四)にあり、記述問題と抜き出し問題が合否を分けます。
- 大問一:漢字の書き取り(10問・各1点)
- 大問二:語句の知識(外来語・三字熟語・ことわざ)+短い論説文の記述(内田 樹)
- 大問三:論説文(ブレイディみかこ)-「言葉」が思い込み・偏見・暴力を溶かす、という抽象度の高い文章
- 大問四:物語文(中山聖子)-母を思う少年の感情の起伏を丁寧に追う文章
大問一 漢字の書き取り
標準的な難度ですが、送り仮名と同訓異字で取りこぼしやすい問題が混ざっています。
- 3「気が利く」… 「効く(薬が効く)」「聞く」との同訓異字。気がはたらく意味は「利く」。
- 7「試みる」・10「著しく」… 送り仮名を落とすと不正解。「試る/著い」は×。
- 9「帰省」… 「規制」「寄生」などの同音異義語に注意。生まれ故郷へ帰る意味は「帰省」。
- 4「脳裏」… 「裡」と書かない。「頭の中(うら)」のイメージで覚える。
大問二 語句の知識 + 内田 樹「コミュニケーション能力とは何か」
出典と文章の要点
後半の読解文は、思想家・内田 樹(うちだ たつる)のエッセイ「コミュニケーション能力とは何か」からの出題です。フランスのスーパーでマグカップを買おうとした筆者が、店員から「郵便番号は?」と訊かれて戸惑う体験談がもとになっています。単語の意味はわかっても、なぜそれを訊かれるのかという文脈がわからない。店員が身を乗り出して理由を説明してくれたことで、ようやく意味が通じた——という場面です。
問一 三字熟語の補充(各2点)
1「□の覚悟で選挙戦に臨む」は、決して退かない強い決意を表す不退転。2「善人がひどい目にあうのは□に思えてならない」は、道理に合わず筋が通らないことを表す不条理です。打算的・抜本的・度外視などの紛らわしい選択肢に惑わされないこと。
問二 外来語の意味(各2点)
1「ボキャブラリー(vocabulary)」=語彙、2「プロセス(process)」=過程。カタカナ語を漢語に言い換える力は、論説文の読解でもそのまま役立ちます。
問三 ことわざ(漢字一字+意味、各2点)
- 1「風が吹けば桶屋が儲かる」… エ「意外なところに影響が出るたとえ」。
- 2「光陰矢のごとし」… イ「月日はあっという間に過ぎ去るものだ」。「光陰」=月日・時間。
問四 記述・空欄補充(各6点)
傍線「意味がわからない」について、筆者がレジでの質問の意味をつかめなかった理由を、文章中の言葉を使って二段階で説明する問題です。次の形に当てはめます。
筆者は「郵便番号」という意味のフランス語は知っていたが、[ 1・40字以内 ]を知らなかったため、[ 2・40字以内 ]から。
2 普段レジで訊かれるはずの質問リストの中にその単語が存在せず、文脈が見えなかった(39字)
- 会話を円滑に進める力
- 自分の意見をはっきり言う
- 明確なメッセージを送受信する
- 不調に陥ったときに抜け出す力
- 「わからなさ」に向き合う
- 相手のために説明の労をとる
大問三 ブレイディみかこ「他者の靴を履く」
出典と文章の要点
論説的随筆の読解です。出典はブレイディみかこ『他者の靴を履く——アナーキック・エンパシーのすすめ』(文藝春秋)。前半は、コロナ禍のイギリス・ブライトンで筆者の息子がアジア系差別を受けた出来事、後半は、映画監督・坂上香が記録した刑務所のTC(回復共同体)プログラムが描かれます。一見つながりのない二つの話題が、「言葉にすることで、古い自分の殻が溶ける」という一つの主張で結ばれている——この骨組みをつかめるかが勝負です。
問一 空欄補充(接続語、各2点)
選択肢はア「例えば」イ「または」ウ「なぜなら」エ「だから」オ「しかし」。空欄の前後で話の向きがどう変わるかを見ます。Bの「しかし」は前後が反対向きになる逆接、Cの「例えば」は具体例を挙げる例示、Dの「だから」は理由から結論へ進む順接。とりわけ逆接の「しかし」は、その後ろに筆者の言いたいことが来やすい合図なので、確実に取りたい一問です。
問二 指示内容(5点)
傍線①「こうした事情」が指す内容は、傍線より前の二つの形式段落から読み取ります。ブライトンの複数の住人に感染が確認され、全国ネットのニュースで大きく報じられ、「ブライトンに行くのは安全なのか」という論調が広がっていた——つまり人々の不安があおられていた状況を指します。指示語は「前にもどって探す」が原則です。
問三 傍線部の解釈(5点)
「中国の国旗の柄のマスクをつけた地球のイラスト」は、コロナで苦しむ地球を描きつつ、マスクが中国国旗の柄であることで「発生源は中国だ、中国のせいだ」という見方を暗に示しています。アジア以外の人々にとっては、これがアジア人差別を助長する表現になっている——本文前半の「黄色い警報」と同じ、差別が表れた例です。イは「苦しむ地球」に触れていない点で不十分です。
問四 筆者の様子(5点)
「面と向かって言うのはすごいね」の「すごい」は、ほめ言葉ではなく「ひどい」という意味で使われています。面と向かって差別的な言葉を投げつけてくる相手の行為に驚きつつ、傷ついた息子のつらい心境を思いやっている——この二つを同時にとらえているウが正解。イの「許される」「憤慨している」は本文から読み取れません。
問五 記述(12点)+抜き出し(4点)
傍線④「僕も少し反省した」について、(1)息子が反省した内容を70字以内で説明し、(2)筆者が得た気づきの空欄を埋める問題です。
問六 内容の合致(5点)
TC(回復共同体)について、本文の記述と照らし合わせる問題です。坂上監督が前作『ライファーズ』でアメリカの刑務所を、『プリズン・サークル』で島根あさひの施設を記録したこと、参加者全員がセラピストでも患者でもあり、輪になって自分の言葉で語り合うことなどは本文どおり。オは後半の「思想や感情の表現に長けた人ほど成果を出しやすい」が誤りです。本文はむしろ、表現する力が訓練によって後から育つと述べています。
問七 心情(5点)
寡黙なはずの受刑者が赤裸々に語る姿を目の当たりにし、予想が裏切られた坂上監督の感想は、傍線⑥の直後「目頭が熱くなった」と書かれています。驚きと感動で涙が出そうになるほど心を動かされた——これを表すエが正解。ウの「歓喜」では、こみ上げる涙のニュアンスを表しきれません。
問八 抜き出し(各4点)+抜き出し(6点)
(1)は「溶けた」が何を溶かしたのかを二か所から抜き出します。受刑者にとっては自らの「暴力生成のメカニズム」(76行め)、筆者・坂上監督にとっては長年抱えてきた「沈黙の文化は変わらない」(127〜128行め)という懐疑です。(2)は題名「他者の靴を履く」を本文で言い換えた一文「誰かの靴を履くためには自分の靴を脱がなければならない」(72行め)。古い自分(自分の靴)を手放してこそ、他者の立場に立てるという比喩です。
- 思い込み・信条
- 偏見(「話してもわからない」)
- 沈黙の文化・暴力生成のメカニズム
- 言葉できちんと表現する
- 他者の靴を履く=自分の靴を脱ぐ
- 新しい自分へ変わる
大問四 中山聖子「この手はいつか」
出典と登場人物
物語文の読解です。出典は中山聖子『この手はいつか』(文研出版)。語り手は小学5年生の時田真潮(ましお)。母と福岡のアパートで二人暮らしをしています。母は生活のために働きづめで、真潮は心細さを抱えています。この物語は、母を思う真潮の気持ちと、祖父から学ぶ「怒りの活かし方」が軸になっています。
問一 傍線部の理由(5点)+抜き出し(4点)
(1)傍線①「それはちがう」の「それ」は、直前のセリフ——「弟のきよしはアメリカの病院に勤めていて歩いては行けないのに、母はそれが理解できなくなった」という吉田さん(おばあさんの娘)の判断を指します。真潮はそうではなく、「おばあさんは心の奥では息子が海の向こうにいるとわかっていて、それでも会いたいのだ」と考えた——だからウが正解。(2)その判断の根拠が分かる一続きの二文のはじめ5字なので、「会いたい人に会えないことがどんなにさびしいか〜」を抜き出します。
問二 空欄補充(語句、各2点)
選択肢はア「いじらしく」イ「照れくさく」ウ「かわいそうに」エ「おっくうに」オ「もの寂しく」カ「ほがらかに」。その場面の真潮の気持ちに合う言葉を選びます。場面の空気を手がかりに、近い意味の語にまどわされないことが大切です。
問三 出来事の並べ替え(6点)
傍線③「真潮を助けたんは、椋木さんだぞ」について、椋木さんが助けた経緯を順に並べます。倒れた真潮を発見(ウ)→ あわてて救急車を呼ぶ(カ)→ 母に電話がつながらず緊急連絡先の祖父宅へ連絡(イ)→ 祖父に椋木さんからの電話がつながる(ア)→ 病院に母が来ていた(エ)→ 祖父の到着が最後(オ)。本文の行数(70〜83行め)をたどると、時間の前後関係が確定できます。
問四 心情の理由(5点)
傍線③のあと、病院に駆けつけた母が「また泣いた」一番の理由を選びます。母は「自分じゃだめなんかもしれん、真潮をちゃんと育てられんかもしれん」と弱音をもらします。仕事と家庭の板挟みのなかで、息子を育てる自信を失ったことが涙の理由——だからエが正解。アの「祖父に一喝されたから」泣いたわけではなく、イの「情けない姿を見せまいと気づかった」のは祖父のほうなので誤りです。
問五 記述(10点)+抜き出し(4点)
傍線④「ぼくは自分が泣いていることに初めて気づいた」について、(1)真潮が泣いた理由を60字以内で説明し、(2)同じ理由で泣いたセリフのはじめ5字を抜き出します。
問六 傍線部の解釈(5点)
傍線⑤「怒りをそのままぶつけるなんて、もったいない」と同じ意味の返事を選びます。おじいちゃんは、怒りを「形に変える」「エネルギーにする」と語ります。怒りは創造や挑戦の力に活用できるのに、そのままぶつけてしまうのは惜しい——この趣旨に合うアが正解。怒りそのものを否定しているのではなく、使い方を説いている点をおさえます。
問七 心情の変化(5点)
傍線⑥「研修に行った」を聞き直す場面です。真潮は、母が生活のために正社員を目指して研修に行き、情けない姿を見せまいとしていたのだと理解します。母を心配する気持ちがほどけて安心し、「初めてただのお茶をおいしいと思った」——この落ち着きと安らぎを表すエが正解です。
問八 人物像(6点)
真潮は、感情的になると抑えがきかない一面を持ちつつも、おばあさんの寂しさや母のつらさ、生き物の気持ちまで察することができます。周囲の人や生き物の立場・心情をよく理解できる、思いやりのある人物——これを表すウが正解です。
今回の組分けテスト・学習のまとめ
第3回組分けは、抽象度の高い論説文(大問三)と感情の機微を読む物語文(大問四)という、6年生の夏に向けた実戦的な構成でした。点差がつくのは、やはり配点の大きい記述と抜き出しです。次の3点を復習の軸にしてください。
- 論説文は「主張の骨組み」を一文でつかむ… 大問三は、二つの具体例(息子の話・刑務所の話)がすべて「言葉が古い自分を溶かす」という一つの主張につながっていました。話題が変わっても、筆者の言いたいことは一つです。
- 記述は逆順思考で組み立てる… 「結論→根拠→対比軸」の順に頭の中で材料をそろえ、書くときは「対比軸→根拠→結論」で並べる。大問三問五・大問四問五の記述は、この型で安定して得点できます。
- 抜き出しは3ステップで確実に… ①内容の見当をつける→②場所を特定する→③字数で確定する。特に「はじめの五字」「はじめと終わり」は、字数を数えてから解答欄に書く習慣を。
語句・接続語・指示語といった知識問題は、確実に取れば読解の失点を補う土台になります。逆接(しかし)・例示(例えば)・順接(だから)など、接続語が文章のどの向きを示すかを意識して読み直すと、論説文の理解がぐっと深まります。
