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7月 2, 2026  · 模試・塾テキスト解説

2026.6.27実施 サピックス小6組分けテスト 国語読解問題解説

【2026年度 サピックス7月度組分けテスト・6年 国語】大問3・大問4 徹底解説
2026年度 サピックス 7月度組分けテスト(6年)

国語 大問3・大問4 徹底解説

読解2題の読み方と全設問の解き方

2026年度のサピックス7月度組分けテスト(6年)国語から、読解の大問2題を取り上げて解説します。大問1(漢字)・大問2(慣用句・語句)は本記事の対象外とし、配点の大きい大問3の論説文大問4の物語文にしぼって、文章の読み方・設問の考え方・解答の根拠を一つずつ整理していきます。

今回の2題は、テーマも文種もまったく異なります。大問3は「障害者とどう向き合うか」を問う社会派の論説文、大問4は転校した親友との再会をめぐる思春期の揺れる心情を描いた物語文です。人物相関図・心情変化表・対比構造図・段落構成図もつけましたので、復習の手がかりにしてください。

この記事の使い方 各設問の「模範解答」を緑のボックスで示し、そのあとになぜその答えになるのかを根拠とともに説明しています。答え合わせだけでなく、「本文のどこを見れば解けたのか」を確認する読み方をおすすめします。

大問3論説文の読解

出典
好井裕明『他者を感じる社会学 ──差別から考える』
ちくまプリマー新書/筑摩書房(2020年) 第6章「障害から日常を見直す」より

どんな文章か(要約)

筆者は、テレビで紹介されるパラスポーツの番組を入り口に、私たち健常者が障害者とどう向き合うべきかを考えていきます。ブラインド・サッカーや、義足を使う自転車競技を例に、パラスポーツは「健常」のスポーツをただ手加減したものではなく、障害のある人のために新しく考え出された、独自(オリジナル)のスポーツだと述べます。

さらに筆者は、パラアスリートの活躍を「すごい」と驚く気持ちの奥にひそむ「できる・できないで人を評価する能力主義的な見方」の“危うさ”を指摘します。そのうえで、能力の有無で人を測るのではなく、さまざまな「差異」をもつ人が、その存在ごと尊重される社会を目指すべきだ、という主張へとつなげていきます。

筆者の主張(結論) 「できる/できない」という能力主義の物差しで障害者を測るのではなく、言葉にならない思いにも敬意を払い、人はその存在だけで意味を持つ(=周囲に影響を与えられる「できる」存在だ)と理解すること。それが、差別や排除のない社会づくりの出発点になる。

文章の骨組み(段落構成図)

この文章は「具体例 → 問題提起 → 主張」という論説文の王道の流れで組み立てられています。パラスポーツの具体例で読者を引き込み、その裏にある「能力主義の危うさ」を示し、最後に筆者の主張へと着地します。

段落構成図|好井裕明『他者を感じる社会学』(大問3)
序論 問題提起
テレビのパラスポーツ番組を見て「いろいろと気づかされる」。パラスポーツとは本当はどんなスポーツなのか、という問いを立てる。
本論① 具体例
ブラインド・サッカー=視覚障害者のためのオリジナルなスポーツ。選手は視覚以外の感覚・これまでの体験・訓練で高度なプレーをする。
本論② 具体例・対比
障害者の自転車競技=義足の技術と一体化した独自の競技。健常者の「車いす体験」コメントは一面的・皮相的だと批判。
転換 “危うさ”の指摘
「できる・できない」で人を見る能力主義的な見方の危うさに気づく。「できる」障害者を認めることは、裏返せば「できない」障害者を見下すことにつながりかねない。
結論 筆者の主張
能力の有無で評価するのをやめ、言葉にならない思いにも敬意を払う。人はその存在だけで意味を持つと理解することが、差異を認め合う社会づくりにつながる。

いちばんの読みどころ(対比構造図)

論説文を読むコツは、「筆者が何と何を対比させているか」をつかむことです。この文章の中心にあるのは、次の二つの見方の対比です。ここを押さえると、問七・問八がぐっと解きやすくなります。

対比構造図|能力主義の見方 vs 筆者の目指す見方(大問3)
能力主義的な見方
(筆者が“危うい”と感じるもの)
  • 人を「できるか・できないか」で評価する
  • パラアスリートの「できる」姿に驚き、存在を認める
  • 裏返せば「できない」障害者を無意識に見下す
  • 「健常」のスポーツを大前提にしてしまう
VS
筆者が目指す見方
(結論・主張)
  • 「できる・できない」の物差しを超える
  • パラスポーツは「健常」と並び立つ独自のスポーツ
  • 重い障害があっても、人は他者に意味を伝え、影響を与えられる「できる」存在
  • 言葉にならない思いにも敬意と尊敬を払う
筆者の立場 → 能力の有無で人を測らず、「差異」をもつ存在をそのまま尊重する社会づくりへ

おさえておきたい重要語句

パラスポーツ ── 障害のある人が行うスポーツ。本文では「健常者のスポーツを手加減したもの」ではなく、独自に考え出されたものだと説明される。
ブラインド・サッカー ── 視覚障害者のためのサッカー。音の出るボールなどを使い、視覚以外の感覚を駆使してプレーする。
能力主義 ── 人を「能力の有無・高さ」で評価しようとする考え方。本文の中心的なキーワード。
一面的・皮相的(ひそうてき) ── 物事の一つの面や表面だけをとらえた、浅い見方のこと。
ノーマライゼーション ── 障害のある人もない人も、分けへだてなくともに暮らせる社会を目指す考え方。
差異(さい) ── ちがい。本文では、人それぞれがもつ多様なちがいを指す。

設問解説

問一空欄補充(接続語)記号
空欄A〜Cにあてはまる接続語を選ぶ問題(ア そして/イ しかし/ウ つまり/エ たとえば)。
模範解答A…イ(しかし) B…ウ(つまり) C…ア(そして)

接続語は前後の文の関係で決めます。Aは前の内容と逆の方向へ話が進むので逆接の「しかし」。Bは前の内容を言いかえ・まとめているので「つまり」。Cは前の内容に付け加えて話を進めるので「そして」。エ「たとえば」は具体例を挙げる合図ですが、今回の空欄はいずれも具体例導入の位置ではありません。

問二漢字の意味・用法記号
──線a「契機」b「詳細」c「観戦」の漢字と、同じ意味で使われている熟語をア〜ウから選ぶ問題。
模範解答a…ア(転機) b…ウ(委細) c…イ(観測)
  • a「契機」の「機」はきっかけ・おりの意味。同じ意味は「転機」(ア)。イ機械=からくり、ウ機密=重要な秘密、で意味が異なります。
  • b「詳細」の「細」はこまかい・くわしいの意味。「委細(いさい)」(ウ)=くわしい事情、が同じ。ア細流は「ほそい」、イ細菌は生物の名称です。
  • c「観戦」の「観」は見る(見物・観察する)の意味。「観測」(イ)が同じ。ア観念=考え、ウ外観=見た目・ようす、と用法が異なります。
問三本文中からのぬき出し25〜30字
筆者はパラスポーツをどのようなスポーツだと考えているか。「スポーツ」につながるように、25字以上30字以内で探し、はじめとおわりの5字をぬき出す。
模範解答「健常」の 〜 リジナルな

ぬき出しは①内容の見当をつける→②本文の場所を特定する→③字数で確定するの3ステップで解きます。

①まず本文でパラスポーツを説明している部分を探します。2ページには「ブラインド・サッカーとは…視覚障害者のためのオリジナルなスポーツ」とありますが、これはブラインド・サッカーという一例の説明。設問は「パラスポーツ全体」を問うているので、②視覚障害に限定せず、パラスポーツ全体をまとめている一文(3ページ)を選びます。③そこにある「『健常』のスポーツと並び立つ、全く異質でオリジナルな(スポーツ)」が字数(25〜30字)に合い、はじめ5字「『健常』の」、おわり5字「リジナルな」となります。

解き方のポイント「具体例」ではなく「まとめの一文」を選ぶのがカギ。設問が全体(パラスポーツ)を問うているのに、一例(ブラインド・サッカー)の説明をぬき出さないよう注意します。
問四理由の選択記号
──線②「選手たちは、なんなくボールをあやつるし、見事にキーパーをはずしてシュートを決める」のはなぜか。
模範解答

本文からは、視覚障害のある選手たちが①視覚以外の感覚②これまで生きてきた体験をもとに無意識のうちに周囲を判断していること、そして③そうした動きや判断はトレーニングを通してさらに研ぎ澄まされていることが読み取れます。この「体験・感覚」+「訓練」の両方をふくむのが選択肢ウです。

まぎらわしい選択肢に注意「視覚以外の感覚を使う」ことだけに触れて、訓練(トレーニング)の積み重ねに触れていない選択肢は不十分。また、ルールや道具の工夫(=競技の作られ方)を理由にしたものは、「選手個人がなぜできるのか」という問いとズレます。
問五内容説明の選択記号
──線③「いかに一面的で皮相的であるか」とは、どのようなところが「一面的で皮相的」なのか。
模範解答

問四で確認したとおり、選手たちは日々のトレーニングでプレーを磨いており、その努力の過程は「健常」のアスリートと同じです。ところが健常者は「車いすの操作はむずかしかったが、おもしろかった」と、ほんの少し体験しただけでパラスポーツを理解したつもりになってしまう。つまり、共通点である「選手の努力」には気づかず、目立つ特徴的な部分だけを見て分かった気になっている——これが「一面的で皮相的」の中身です。この内容に合うのがエです。

問六空欄補充(内容)記号
──線④の〔  〕にあてはまる内容を選ぶ問題。
模範解答

空欄をふくむ一文の頭にある「この競技」は、直前の障害者が行う自転車競技を指します。本文にはその競技が「義足が体にぴったり合うよう改良され」「両膝と義足が一体化して力が最高に発揮される」と説明され、さらに「『健常』の人の自転車競技と同じではなく」と続きます。つまり空欄には、①義足の技術に支えられているという要素と、②健常者の競技とは異なる独自(オリジナル)のものという要素の両方が必要です。この二つをふくむのがイ「義足などの技術が溶け合った独自の(スポーツ)」です。

解き方のポイント問三でぬき出した「オリジナルなスポーツ」と同じ発想。「独自・オリジナル」というキーワードが入っているかを選択肢チェックの軸にすると迷いません。
問七「危うさ」の内容と理由記号(2問)
──線⑤「私は、そこに『危うさ』を感じます」について、(1)何に危うさを感じているか (2)なぜ危ういと言えるのか。
模範解答(1)…エ (2)…ウ

「危うさ」の直前にある「できるかできないか」という能力主義的な見方がカギです。パラアスリートの「できる」姿を見て驚き、その存在を認める——これは裏を返せば、ふだんは障害者を「できない」存在だと無意識に思い込んでいるということ。

(1)だからこそ筆者は、健常者が能力のない(と判断した)障害者を無意識に見下し、差別してしまうおそれを「危うい」と感じています(エ)。(2)そして、「できる」障害者だけを認めるということは、「できない」障害者には認める価値がないと切り捨てることにつながる——だから危うい、という理由になります(ウ)。

問八記述(主張の理解)記述・13点
──線⑥「多様な障害を持つ人々や高齢者などさまざまな『差異』をもつ存在が、差別や排除などを受けず、暮らせるような社会づくり」のために必要なことは何か、説明する。
模範解答社会の中で生きづらさを抱える人たちの言葉にならない思いに敬意を払い、彼らが周囲に影響を与えることのできる存在であると理解することで、能力の有無で評価する価値観を変えていくということ。

記述は結論から逆算して組み立てます。設問が求めるゴールは「差異をもつ人が差別されずに暮らせる社会づくりに必要なこと」。線⑥以降を読むと、二つの手がかりが見つかります。

  • 手がかり①:「知的障害者の無言の願望や自己決定の表現」に対する理解と尊敬が大切だとある(=言葉にならない思いへの敬意)。
  • 手がかり②:重い障害があっても、その人は他者にさまざまな意味を伝え、影響を与えることができている=「できる」存在だとある。

この二つを、問七で確認した「能力主義(できる・できないで測る見方)」と正反対の方向としてまとめると、模範解答のように「①思いに敬意を払い、②存在の価値を認めることで、③能力主義の価値観を変えていく」という三つの要素がそろいます。

記述の三要素①言葉にならない思いへの敬意 ②周囲に影響を与えられる「できる」存在だという理解 ③能力の有無で評価する価値観の転換。この3点を入れると得点が安定します。

大問4物語文の読解

出典
眞島めいり『文通小説』
講談社「文学の扉」(2023年)

どんな話か(あらすじ)

中学三年生の「わたし(ちさと)」は、中学二年の終わりに転校していった親友の貴緒(きお)と文通を続けています。今回、ちさとは貴緒と約束して、貴緒の住む街まで会いに行くことになりました。会えるのが楽しみで、電車が完全に止まる前に立ち上がってしまうほどです。

ところが再会した貴緒は、長かった髪をばっさり切っていて、しかもそれを事前に知らせてくれていませんでした。カフェで話すうちに、貴緒が美術部に入り、部員の家に呼んでもらえるほど新しい生活を楽しんでいることがわかってきます。ちさとは平気なふりをしながらも、しだいに嫉妬(しっと)と寂しさをおさえきれなくなり、つい貴緒に強くあたってしまいます。

別れ際、ちさとは充実した貴緒に「裏切られた」ように感じ、心の中で貴緒を突き放そうとします。けれども、そんな身勝手な自分の顔が電車の窓に映ったのを見て、ぞっとするのでした。

この物語の主題 大好きな親友の「変化」と「充実」を目の前にして生まれる、喜び・嫉妬・寂しさ・自己嫌悪が入りまじった思春期の複雑な心。相手を大切に思うからこそ苦しくなり、そんな自分の醜さにも気づいてしまう——ちさとの揺れる心情を丁寧に追うことが読解のカギです。

登場人物と人物像

ちさと(わたし) ── 語り手。中学三年生。転校した親友・貴緒を強く慕っており、再会を心待ちにしていた。まっすぐで思いが深いぶん、嫉妬や寂しさに揺れやすい。
貴緒(きお) ── ちさとの親友。中二の終わりに転校。今回ちさとが会いに行く相手。髪をばっさり切り、新しい学校では美術部に入って充実している。皮肉の交じる話し方や、くすぐったがるような笑い方が「貴緒らしさ」。
坂原(さかはら)さん ── ちさとの現在のクラスメイト。ちさとが「今のクラスには坂原さんがいるし」と自分に言い聞かせる相手。
むうこ ── ちさとの去年のクラスメイト。「いざとなれば、むうこだって……」と、貴緒の代わりにできる存在として思い浮かべられる。
美術部の友達(部員) ── 貴緒を家に呼んでくれる新しい友達。直接は登場しないが、ちさとの嫉妬の引き金になる。
人物相関図|眞島めいり『文通小説』(大問4)
貴緒
転校した親友/髪を切り美術部で充実
ちさと
語り手・中3/貴緒を慕う
部員
貴緒を家に呼ぶ新しい友達
ちさと貴緒親友。会うのを心待ちにする強い思い
貴緒ちさと転校で離れた。今は新生活が充実
ちさと部員嫉妬(自分は家に呼ばれなかった)
ちさと坂原さん・むうこ今/去年のクラスメイト(心の言い訳の相手)
主人公
親友(中心人物)
嫉妬の対象

ちさとの心情変化表

この物語は、ちさとの気持ちがプラスからマイナスへと大きく傾いていくのが読みどころです。特に「動揺を隠す」場面や「裏切られたつらさと自己嫌悪が混ざる」場面(=±の混在)は、入試でねらわれやすい重要ポイントです。

心情変化表|ちさとの気持ちの流れ(大問4)
場面
出来事・きっかけ
±
心情(本文の手がかり)
対応設問
再会前(電車)
電車が完全に止まる前に立ち上がってしまう
会えるのが待ちきれない高揚→ 貴緒に会うのを心から楽しみにしている
問七
再会・髪型
貴緒が髪をばっさり切っていた。事前に知らされていなかった
予想外の驚き+教えてくれなかった不満→ つい非難するような声を出す
問二
カフェで会話
皮肉の交じる話し方、くすぐったがる笑い方など貴緒らしい仕草に触れる
久しぶりに貴緒としゃべれている喜び・実感→ 「貴緒だ、わたし今、貴緒としゃべってるんだ」
問三
美術部の話
貴緒が美術部入部や部員宅に招かれることを「さらりと」明かす
±
内心は動揺しつつ、平然を装う→ 「まばたき一回」で受け止め、自然にふるまう
問四
強くあたる
自分は家に呼ばれなかったのに、新しい友達は呼ばれている
嫉妬・許せない気持ち→ 「いいじゃん、貴緒のうちに呼んでもらえて」と皮肉
問五
謝られた後
貴緒が「ごめん」と謝る。ちさとは謝りそびれ、わだかまりが残る
申し訳なさ・後ろめたさ・打開できないやりきれなさ→ くずれていくシフォンケーキが心情を映す
問六
別れ際・窓
充実した貴緒に「裏切られた」と感じ、突き放そうと考える
±
裏切られたつらさ+そんな身勝手な自分への恐怖→ 窓に映る自分の顔にぞっとする
問八
+プラス心情
-マイナス心情
±混在(★特に重要)

場面の変化

場面は「電車 → カフェ → 駅・モノレール(別れ)」と移り変わります。会えて嬉しい気持ちで始まった一日が、貴緒の充実ぶりに触れるにつれてこじれていく——その流れをつかんでおきましょう。

場面構成|一日の流れ(大問4)
1
電車の中(再会前):貴緒の街へ向かう。会うのが楽しみで待ちきれない。
2
再会・カフェ:髪型の変化に驚く → 会話で貴緒らしさを感じる → 美術部や新しい友達の話に動揺。+と-が交錯
3
強くあたる〜わだかまり:嫉妬から皮肉を言い、気まずさが残る。
4
駅・別れ際(モノレール):貴緒を突き放そうと考え、そんな自分にぞっとする。-(+自己嫌悪)

比喩・情景描写とその読み取り

この物語では、景色や食べものの描写が、そのままちさとの心を映す鏡になっています。物語文では「情景描写=人物の心情のたとえ」として読むのが基本です。

★ 注目したい比喩・情景描写
  • 「ソースがじゅわじゅわと奥まで滲んでいって、柔らかくやわらかくくずれていくシフォンケーキ」… 一方的に感情的になってしまった申し訳なさ、わだかまりを打開できないやりきれなさなど、くずれていくちさとの心を重ねた描写(問六の根拠)。
  • 「濃い灰色の空から、ぽつぽつと雨粒が落ちだした」「雨が強くなってきた」… こじれていく気持ちや沈む心と重なる雨の描写
  • 「窓に映った自分の顔」… 貴緒を突き放そうとする醜い自分を、客観的に突きつける鏡としての役割(問八の根拠)。

おさえておきたい重要語句

切羽(せっぱ) ── 刀の鍔(つば)に接する金具。「切羽詰まる」=どうにもならないほど追い詰められる、の語源。(問一)
鎬(しのぎ)を削る ── 激しく争うこと。「鎬」は刀の刃と峰の間の高くなった部分。(問一)
鍔迫り合い(つばぜりあい) ── 刀の鍔を押し合うことから、接近した激しい競り合いのこと。(問一)
非難する ── 相手の欠点や過ちを責めとがめること。
皮肉 ── 遠回しに、あてこするように相手を批判すること。「いいじゃん、呼んでもらえて」も皮肉の一例。
近況(きんきょう)報告 ── 最近の自分のようすを相手に伝えること。

設問解説

問一語句(刀に由来することば)漢字・ひらがな
(1)空欄Aには刀が由来のことばが入る(漢字二字)。(2)刀が由来の慣用句の空欄をひらがな一字で。
模範解答(1)…切羽(せっぱ) (2)1…しのぎ 2…つば

いずれも刀にまつわることばです。(1)追い詰められた状態を表す「切羽詰まる」の切羽。(2)は「しのぎを削る(=激しく争う)」「つばぜり合い(=接近した激しい競り合い)」。武器の部位が、そのまま「激しさ」を表す慣用句になっている点がおもしろいところです。

問二理由の説明記号
──線①「つい非難するような声を出してしまった」のはなぜか。
模範解答

非難する声のきっかけは、直前にあるとおり貴緒の「髪型がすっかり変わっていた」ことです。「……えっ? なんで?」「教えてくれたらよかったのに」という反応から、ちさとにとって髪を切ったことはまったく予想していなかった事実であり、しかも事前に知らせてもらえなかったことへの不満が、思わず声になってあふれ出たのだと読み取れます。この「予想外+報告がなかった不満」を正しくとらえた選択肢がエです。

問三心情の説明記号
──線②「貴緒だ、わたし今、貴緒としゃべってるんだ」とあるが、このときの気持ちは。
模範解答

直前には「ときどき皮肉の交じる話し方。くすぐったがるような笑い方」とあります。これは貴緒らしい仕草そのもの。久しぶりにその「貴緒らしさ」を目の当たりにして、ちさとは今こうして貴緒と本当にしゃべれているという喜びと実感をかみしめています。この喜びを的確に表したのがイです。

問四心情・様子の説明記号
──線③「まばたき一回で、それを受け止める」とあるが、このときのちさとの様子は。
模範解答

貴緒が美術部に入ったことが「さらりと明かされる。このごく短い時間に、ふたつめのニュース」とあります。貴緒には些細なことでも、ちさとにとっては今まで知らされていなかった重大な事実で、内心は動揺しています。それでも直後には「今度の部は自由に描けるの?」とごく自然に会話を続けています。つまり──線③は、動揺を「まばたき一回」だけでのみこみ、平然を装おうとする様子。これを表すのがウです。

問五心情の説明記号
──線④「いいじゃん、貴緒のうちに呼んでもらえて」と言ったときの気持ちは。
模範解答

この一言の背景には、はっきりとした嫉妬があります。ちさとは「まるまる二年間も一緒に過ごしたのに……貴緒の家にあげてもらえなかった」「今日だって……うちにおいでよなんてひとことも言ってくれない」と感じています。自分は一度も呼んでもらえなかったのに、新しい学校の子は呼んでもらえている——それが許せず、皮肉のかたちで貴緒に強くあたってしまったのです。この嫉妬をとらえたのがアです。

問六情景描写の効果記号
──線⑤「ソースがじゅわじゅわと奥まで滲んでいって、柔らかくやわらかくくずれていく」の効果として、ふさわしくないものを選ぶ。
模範解答

強くあたったちさとに、貴緒は「……ごめん」と謝ります。ちさとも謝ろうと口を開いた——そのタイミングで店員がデザートを運んできて、言いそびれてしまう。そして「しばらく無言で……シフォンケーキに夢中になったふりをした」とあり、二人の間にはわだかまりが残ります。

「くずれていくシフォンケーキ」の描写は、一方的に感情的になってしまった申し訳なさ・後ろめたさ・わだかまりを打開できないやりきれなさという、ちさとのマイナスの心情を強調するものです。これと合わない(=ふさわしくない)選択肢がイになります。

解き方のポイント「ふさわしくないものを選ぶ」タイプは、本文の心情(マイナス)と食いちがう選択肢を探すのがコツ。プラスの解釈になっているものや、本文にない内容を足したものが「誤り」になりやすいです。
問七本文中からのぬき出しはじめの5字
貴緒と会うのを楽しみにしているちさとの気持ちが、行動に表れている一文をぬき出し、はじめの5字を答える。
模範解答完全に止ま

「気持ちが行動に表れている一文」という条件がヒントです。貴緒と会う前の電車の場面に、「(電車が)完全に止まるのが待ちきれなくて立ちあがったら……」という一文があります。電車が止まるのも待てないほど、会うのを楽しみにしている——気持ちがそのまま体の動きになっている一文です。はじめの5字は「完全に止ま」。

問八記述(心情の説明)記述・14点
──線⑦「そう考えた自分の顔が窓に映ってぞっとした」とあるが、このときのちさとの気持ちを説明する。
模範解答新しい学校で充実している貴緒の様子を見て友情が裏切られたように感じ、そのつらい気持ちをまぎらわせるために貴緒を突き放すようなことを考える身勝手な自分を恐ろしく思っている。

まず「そう考えた」の中身を確認します。直前でちさとは、心の中で「いいよ、もう別に。今のクラスには坂原さんがいるし。いざとなれば、むうこだって……」と、貴緒を突き放そうとしています。

会えるのを心待ちにしていたのに、実際に会った貴緒は美術部で友達もでき、とても充実していました。そのため、ちさとは「裏切られた」ように感じ、そのつらさをまぎらわせようと貴緒を切り捨てる考えにいたります。ところが、窓に映った自分の顔を見た瞬間、そんな身勝手で醜い自分を客観的に突きつけられ、「ぞっと」してしまうのです。

記述の三要素①貴緒の充実ぶりに裏切られたように感じるつらさ ②つらさをまぎらわすため貴緒を突き放そうとする身勝手さ ③そんな自分に気づいて恐ろしくなる気持ち。この流れを因果でつなぐと満点解答になります。
問九生徒の意見(正誤の判断)記号
この文章を読んだ生徒五人の意見のうち、本文の解釈として「ふさわしくないもの」を一つ選ぶ。
模範解答

本文には「こんなとき、たとえば手を握ったりぎゅっとハグしたり……でも貴緒とわたしは、今までそんなふうにしてこなかったし、今もしない」とあります。つまり、二人はもともと別れ際にそういう触れ合いをしない関係だと読み取れます。したがって、それを根拠に「貴緒はちさととの別れを悲しんでいない」と解釈するのは行き過ぎで、本文からはそう言い切れません。この点が誤っているウが、「ふさわしくないもの」の答えになります。

注意「触れ合いをしなかった」=「悲しんでいない」ではありません。本文の記述から言えること・言えないことを区別するのが、この手の設問の急所です。

まとめの一言

今回の2題は、「他者をどう理解するか」という点で実は根っこがつながっています。大問3は社会の中の他者(障害のある人)を、大問4はいちばん身近な他者(親友)を、それぞれどう受けとめるかを問う文章でした。

論説文は「筆者が何と何を対比しているか」、物語文は「気持ちがどこでプラスからマイナスへ動いたか」。この二つの軸を意識するだけで、読解は驚くほど安定します。今日の復習では、ぜひ本文のどの一文が解答の根拠になったのかを指でたどりながら、もう一度読み返してみてください。