一大決心で塾に入ってみたものの、何か月たっても期待していたほど成績が上がらない、
思ったほどフォローしてくれない、そもそも子どもと先生の相性が悪いような気がする・・・
等々の不満が出てくるケースは珍しくありません。そこでよくご相談いただくのが「転塾」です。
私はこの業界で20年近く教室運営に携わってきましたので
転塾で出て行かれる方とも転塾で入ってこられる方とも毎年大勢ご相談してきました。
そんな中で「うまくいく転塾」と「失敗する転塾」の差はどこにあるのか、
私の経験の中からご紹介してきたいと思います。
本記事は以下のような方にお役立ていただける内容です。
入塾してみたものの期待通りに成果が出ない場合、環境を変えてみたいという意識はどうしても
付きまといますね。特にお知り合いで別の塾に通っている子の成績が上がっていたり、
手厚いフォローがあるような話を聞いたり、別の塾の先生が素晴らしいといううわさを聞いたり、、、
とにかく保護者には見えづらいサービスなのでどうしても隣の芝は青く見えてしまします。
ただし、慎重に判断しないと転塾先でも不満を抱えまた転塾・・・といった
「転塾ジプシー」状態になってしまうリスクがあります。
環境を変えることは確かにプラスに働く可能性はありますが、リスクが非常に大きいことは認識して
慎重に検討する必要があります。
転塾にはメリットとデメリットがあります。青く見えた隣の芝が実は塗料で上塗りされていただけ
だった、、、なんてこともこの業界では起こり得ます。
転塾で失敗しないためにはデメリットにもしっかり目を向けて、慎重に検討を重ねる必要があります。
・入塾するまでわからなかった塾の内情を通塾経験を経て十分に理解したはずなので2回目の塾選びはその点を十分に吟味して塾選びができる。前回の失敗から学びを得たより適切なお子さんに合った塾選びができる。
・お子さんの意識の変化に期待ができる。今までは環境のせいにして努力から逃げていたいた部分があるとするならば、環境を変えたことで言い訳せずに勉強せざるを得ない状況をつくることができる。
・塾によって学習進度・速度やカリキュラム順が異なっているためカリキュラムギャップに苦しむ可能性がある。
・すべての人間関係がリセットされてしまうため、質問、相談などを気兼ねなくできる人間関係を一から構築し直さなければならなくなる。入試までの残り時間によってはそういった関係を作れないまま入試に突入する可能性も。
・入塾金、教材費などを再度支払う必要が出る。タイミングによっては月謝も前の塾の分の請求と二重になってしまうことも。
・個人に依存した転塾はキケン。「前の塾のあの先生が嫌い。新しい塾のこの先生はすごくいい。」と感じていたとしても大手の場合は特に人事異動などで受験まで担当できる保証はなし。「人」の要素だけで転塾すると後に後悔する可能性も。
失敗しない転塾の条件があります。それは現状の不満が仕組み上で解消されること。
例えば、
・クラスの人数が多すぎて質問ができないから少人数制の塾に移る
・カリキュラムが早すぎてついていけない(あるいは遅すぎて余裕がありすぎる)のでゆったりとしたペースのカリキュラムの塾に移る
・テキストの内容が難しすぎる、量が多すぎる(or 易しすぎる、少なすぎる)ため消化不良を起こしているため難易度、量のレベルのあった塾に移る
こういった、客観的にシステムが異なる塾に移るのであれば、新たな環境でお子さんにあった指導が見つかる可能性があります。
一方でお子さんの主観(クラスの雰囲気、先生との相性が合う・合わないなど)での判断は非常に大きなリスクを伴うと理解しましょう。
子どもの主観は非常に不安定。人との関係は特にそうです。
時とともに変化していくものですし、その人自体も異動やらクラス替えやらで変わってしまう。
そういった根拠で転塾というリスクを冒しても結局、転塾先でいつ変化してしまうかわからない
不安定な要因に依存することになってしまいます。
「人」の面で例外は、明らかに問題あるような講師(指導力不足、暴言を吐く、態度が悪いなど)にあたってしまった場合。こういう講師は最近減ってきましたが、0ではありません。
「人」に起因した転塾は理想ではありませんが、担当講師があまりに常識から外れる場合には保護者さんが直接塾に問い合わせるなど確認が必要。リスクはありますが、場合によっては塾を変える判断も必要になるでしょう。
転塾の条件
人、クラスの雰囲気などといった主観的な要素だけを変更する転塾はNG。
主観的な観点からの不満は転塾先でも起きる可能性があることを考える。
転塾するなら、教材・カリキュラム・指導形態・システムなど客観的条件を
切り替えることを前提とする。
指導形態や教材、その他システムや制度が同じようなタイプの塾への転塾はそこにいる「人」に依存した転塾になるため長い目ではリスクを多く伴うことになります。
したがって、転塾する場合は今現状の塾のタイプを見極め、それとは違ったタイプの塾でお子さん合う塾を探すべきです。
では塾にはどんなタイプが存在するのでしょうか。
集団指導専門、個別指導専門、そして集団・個別併設塾が存在します。
集団、個別のメリット・デメリットは言い尽くされているのでここでは触れませんが、
お子さんがどちらに合うのかは両方の授業を経験して初めて気が付く部分かもしれません。
集団と個別が併設されている塾ですと、先々まで切り替えがスムーズにいくため安心感がありますね。
クラス人数が20名を超えるようだと塾としては「大人数」の部類に入ります。
一方で「少人数制指導」を謳う塾は多くありますが、「少人数」の定義も大変あいまいで
20名弱の場合もあれば10名未満一クラス指導をで行っている場合もあります。
私の経験上では一人ひとりの理解度確認や宿題チェック、過去問添削などを丁寧に行う
いわゆる「少人数制指導」のメリットを最大化するには1クラス10名程度が理想です。
20名超の大人数クラスでうまくいっていない場合はこのような少人数クラスを経験させると
良い結果につながる可能性があります。
家庭学習(宿題等)への関わりの強さで、「自立促進タイプ」か「めんどうみタイプ」かが
判断できます。これはお子さんや保護者さんにとっては非常に大きなポイントでしょう。
親子で学習計画を立てて、さらに保護者の学習サポートを求められるような各家庭の自主性のもと
家庭学習学習を進めるよう求められる塾と、一人ひとりの習熟度に合わせて丁寧にご家庭に連絡し、
対応方法を協議したり、提案したり、場合によっては理解が浅ければ補習をしてくれたり、と
寄り添って指導を受けられる塾とがあります。
前者は流れに追従できないと毎月月謝を払うだけで授業の理解度0の完全な「お客さん」状態に陥りやすく
なります。一方で後者はおいていかれる心配はないが個別指導と同様にマイペースになりすぎる
リスクがあります。こちらも両方を経験してみて、お子さんがどんなタイプの塾で学習しているときが
一番目が輝いているのかをよく吟味する必要があります。
大手は安定感や情報力で優位ですが、講師個人でカリキュラムや教材を選択できる範囲が狭かったり、集団だと個々に合わせた指導を提供しづらいなど柔軟性に欠ける傾向にあります。
また、これは企業方針にもよりますが大手塾の一部は現場の先生自身が営業担当のような位置づけになっていることもあり、様々な講座を一つでも多く販売しないといけないというノルマに追われている可能性も。
その点、中小・個人塾はお子さんに合わせて指導内容を柔軟に選択出来たり、サラリーマン気質がないので、とにかく生徒さん第一で熱い指導をしてくれるところが多いです。
ただ、塾長個人の想いが強く運営に反映されますので塾長の価値観がご家庭の考えと合うのかどうかは十分に確認が必要。
多くの個人塾は経営状況は不透明なので、環境・設備への投資が安定的に行われているか(環境・設備がボロボロで老朽化したままになっていないか)、講師の人数はどれぐらいいるのか(一人で全教科指導、などはかなりリスク。その方が体調崩されたらすべて止まります・・)などは確認しておいた方が良いでしょう。
ここまでの話と矛盾するようですが、転塾先を決める際に最後に必ず確認いただきたいのが
教室責任者の人柄や講師の言動など。
転塾先を選ぶときに最初の基準としては「システム」「仕組み」が現在通う塾と異なる塾にするべきであることは確かなのですが、結局人が合わないと何も機能しないのも事実。
「人」は不安定な要素ではありますが、塾選びの最低要件でもあります。
お子さんが担当講師とうまくやっていけそうか、質問・相談はできそうか、保護者さんの価値観は尊重してもらえそうか、など十分に確認しておきましょう。
ベストは新学年への進級時です。小学生は2月、中学生は塾によって異なりますが2~4月です。
前述のリスクのうち、カリキュラムギャップや教材の二重購入などのリスクを回避できます。
それ以外だと各講習(春期講習3~4月 夏期講習7~8月 冬期講習12~1月)の時期がいいです。
理由としてこれら季節講習の期間は前学期の復習を行うことが多く、カリキュラムギャップが埋まりやすい点が挙げられます。教材も講習用に短期完結型の教材を販売されますので無駄がありません。
多くの塾では季節講習ごとに体験を受け付けていますので講習授業の体験をしてみて転塾を判断するのが良いでしょう。
転塾をきまったら元の塾に知らせる必要があります。
多くの塾では辞めるという報告をすると引き止め工作に走りますが、基本的に転塾先が決まっているばあいには引き止めることはありません。
まずは「○○塾へ行くことが決まったのでこちらを辞めたいと思います」とはっきり伝えましょう。
その際ケンカ別れにならないよう気を付けてください。
ここまでたまった不満を一気にぶつけてやろう、という気持ちもわからないでもないですが、あまりメリットがありません。
塾の仕組みがうちの子に合わなかったので残念だが違った仕組みで勉強させたいということを伝えて気持ちよくお別れできるように心がけましょう。
お子さんに対しては元の塾が「合わなかった」ということを強調しておきましょう。
①元の塾がダメな塾だった
②元の塾についていけないあなたがダメだった
という言い方は良くありません。負の感情を残さないことがポイントです。
①の場合は他責思考が身につきます。新しい塾でもうまくいかないと環境のせいにしてしまう可能性があります。②の場合は自信を失う可能性があります。自分は前の塾についていけない落ちこぼれだ、という思いが自信を失わせ、やる気を低下させる可能性もあります。
塾がこれだけたくさん存在するということはそれだけ様々な指導の提供方法があり、それぞれお子さんごとに適性があるのだということをよく理解させることが大切でしょう。
ここまでいかがだったでしょうか?
今の塾にどうしても解消できない不満をお持ちである場合、
転塾をお子さんの前向きなステップアップととらえて新たなスタートを検討しましょう。
ただし、お子さんの主観や噂話、感情に起因する転塾はできるだけ避ける。
客観的に指導システムが今の塾と異なっており、現在解決できていない問題が解決できそうな
環境を選ぶことが非常に重要。
是非、ご参考になさってください。
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