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2026.1.22実施 渋谷教育学園幕張中 一次 国語 徹底解説

2026年1月22日(木)に実施された渋谷教育学園幕張中学校 一次入学試験の国語(50分)を、全問解説します。大問は二つです。大問一は難波優輝さんの論説文『物語化批判の哲学〈わたしの人生〉を遊びなおすために』(講談社現代新書)、大問二は北村薫さんの小説『夜の蝉』(東京創元社)の一節です。設問は、大問一が問一〜問八の8問(答えを書く欄は11)、大問二が問一〜問九の9問(答えを書く欄は12)で、答えを書く欄は全部で23あります。記述は3問(大問一の問五、大問二の問七・問八)で、残りは記号選択と、漢字の書き取り・読みです。同じ学校の2020年度から2025年度と比べると、文章の組み合わせと設問数は例年どおりで、違うのは記述が3問と少ないことです(2020年度から2025年度は毎年4〜5問)。この記事では、論説文の流れと、小説の姉妹の関係と「私」の心の動きを図解と図解動画で整理してから、一問ずつ、何を答える問いか、本文の根拠、選択肢の切り方、記述の組み立てを示します。記事中の解答は、学校の公式解答ではなく、解答例です。

渋谷教育学園幕張 2026 一次 国語 全問解説のYouTube動画
YouTubeの全問解説動画(約18分)
大問一『物語化批判の哲学』と大問二『夜の蝉』の記述3問・記号選択・漢字を、図解アニメと先生の声で一問ずつ解説し、例年との違いも整理しています。
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例年との比較(2020年度から2025年度と比べて)

2026年度は例年どおりなのか、違うのか。同じ学校の2020年度から2025年度の国語と、答えの形(記号だけ・短い語句・文章)を数えて比べました。

  • 例年どおりの点:文章は毎年2つで、論説系の文章と小説の組み合わせです。設問数(問一・問二…と数える親設問)は、2020年度から2025年度が15〜21問で、2026年度の17問も同じ範囲に入ります。
  • 違う点(記述):記述は、2020年度が4問、2021年度が4問、2022年度が5問、2023年度が4問、2024年度が5問、2025年度が4問で、毎年4〜5問でした。2026年度は3問で、比べた7年度のなかで最も少なくなりました。
  • 違う点(記号選択):記号選択の設問は、2020年度から2024年度が8問、2025年度が14問、2026年度が12問です。2025年度、2026年度と、記号選択が多い年が2年続いています(2022年度は8問のほかに、短い語句で答える設問が4問あります)。

注:2020年度から2025年度の数は、解答の答えの形から数えた値で、問題の原本での再確認は終わっていません。2年度の動きを、今後も続く傾向とは言い切れません。

出題構成と講評

  • 大問は二つです。大問一は論説(難波優輝『物語化批判の哲学〈わたしの人生〉を遊びなおすために』講談社現代新書・2025年7月刊)、大問二は小説(北村薫『夜の蝉』東京創元社・1990年刊)です。大問一の本文には「(中略1)」「(中略2)」があり、問題の都合で途中が省かれています。大問二の冒頭には、場面を説明するリード文がついています。
  • 答えを書く欄は23です。大問一は、問一が漢字3つ(a・b・c)、問二が(1)(2)、問三〜問八が1欄ずつで11欄。大問二は、問一が漢字3つ(a・b・c)、問二が1欄、問三が(ii)(iii)、問四〜問九が1欄ずつで12欄です。
  • 記述は3問、記号選択は14欄、漢字は6つです。記述は大問一の問五と、大問二の問七・問八です。記号選択は、大問一の問二(1)(2)・問三・問四・問六・問七・問八(2つ選ぶ)、大問二の問二・問三(ii)(iii)・問四・問五・問六・問九です。漢字は、大問ごとの問一に3つずつあり、書き取りと読みが混ざっています。
  • 字数の指定はありません。問題冊子の注意書きに「記述は解答欄内に収めてください。一行の欄に二行以上書いた場合は、無効とします」とあります。解答用紙は縦書きで、記述の欄は、大問一の問五と大問二の問七が縦3行、大問二の問八が縦2行です。解答例の長さは83字(大問一 問五)、94字(大問二 問七)、69字(大問二 問八)です。
  • 問われ方の特徴(2026年度)。大問一は、問二で「見立て」と「メタファー(隠喩)」という言葉の使い方を確かめ、問三〜問七で線部ごとに「何を言っているか」「なぜそう言えるか」を選び、問五で「何を際立たせ、何を隠すか」を自分の言葉で書かせました。大問二は、線部の行動や気持ちの「理由」を選ぶ問題(問四・問五・問六)と、気持ちを説明する問題(問九)が中心で、記述は、姉の変化(問七)と、「私」の気づき(問八)の2問でした。
  • 記述の書き出しや終わり方が、設問で指定されています。大問一の問五は「このメタファーは」と主語を書いてよいこと、大問二の問八は「〜のではないかということ」に続けて書くことが、設問で示されています。指定の形に合わせて書き始め、書き終える必要があります。
  • 本文の読み方も問われます。大問一の問五は、「(中略1)より前の内容をふまえて」書くという条件がついています。後ろの「ハック」や「ルールの改変」の話を入れると、条件から外れます。大問二の問八は、線部の比喩「手袋」と「鎧」が、それぞれどちらの側にあるのかを読みとって書きます。
  • 50分で、問題冊子は25ページまであります(14ページは白紙です)。大問一の本文は冊子の1〜6ページ、大問二の本文は15〜21ページです。論説文は、段落ごとに「何を言っているか」を一言でメモしながら読むと、設問に戻りやすくなります。
この回のポイント
二つの文章は、「ものの見方」という点で響き合っていると読めます。大問一の筆者は、「人生はゲームである」というメタファー(隠喩)は、人生の何かを際立たせる一方で、何かを隠してしまうと考えます。大問二の「私」は、姉に庇ってもらっても温かさを感じられなかったのは、姉の手に硝子の手袋があったからではなく、自分の心に硝子の鎧があったからではないか、と気づきます。どちらも、見る側がもっているものの見方が、見えるものを決めてしまう、という話です。記述でも、問五は「際立たせる」と「隠す」の対、問八は「手袋」と「鎧」の対を、それぞれ本文の言葉で言いかえて書きます。

大問一 論説 難波優輝『物語化批判の哲学』

文章の概要

文章の主題は、「人生はゲームである」という言い方(メタファー)が、わたしたちの人生の見方を、どのように決めてしまうかです。冒頭で筆者は、「人生はゲームである」という見立てが、『リアル人生ゲーム完全攻略本』のような自己啓発本や、哲学の議論の中でも、あちこちで目にされていると書きます。そして、ゲームの美学を研究する松永伸司さんの言葉として、「ゲームが人生をシミュレートするのではない、人生がゲームをシミュレートするのだ」を引きます(線部①)。

筆者はこの言葉を、オスカー・ワイルドの警句「芸術が人生を模倣するのではない、人生が芸術を模倣するのだ」と重ねて説明します。芸術によって、現実を見る見方が作り出される。同じことはゲームにも言えて、わたしたちは「無理ゲー」「ガチャ」「MP」「フラグ」といったゲームメカニクス(ゲームのシステム)を指す言葉を使って、現実を理解することがよくある、というのです。

次に筆者は、「人生を『攻略』すべき対象とみなす」というメタファーを取り上げます。人生の各段階は「ステージ」、成長して先へ進むための条件は「クリア条件」、失敗は「ゲームオーバー」です。この見方では、人生の問題は数値にできると考えられ、SNSのフォロワー数、学力は偏差値、仕事の能力は業績指標(KPI)で表されます。複雑な人間関係や社会の問題も、ステータス画面に圧縮され、パラメータを上げれば解決できるように見えます。行為のゴールは「ステージをクリアする」ことに置かれ、受験なら合格、仕事なら昇進、SNSならフォロワー数の増加という、分かりやすい「結果」を目指す点で共通します。結果を重んじる考え方が強まるほど、「ミッションクリア」自体が至上命題になっていきます(線部②)。

しかし筆者は、本当にいいことばかりなのかと問います。メタファーは、特定の側面を強調して見通しを与えてくれる一方で、特定の側面を削ぎ落とすことなしには使えません。では、「人生はゲームである」というメタファーは何を際立たせ、何を隠すのか(線部③)。筆者は、人生をまるごと「攻略可能なゲーム」と捉えることが、人々の思考や行動をどう決めて、何を見落とさせるのかを問いたい、と言います。

その答えの一つが、「数値化されない困難や、定義しづらい幸福、あるいは失敗がもたらす学びなど」、攻略というメタファーでは取りこぼしてしまう価値です。また、ゲームにハマっている人が「ゲームは遊びじゃない」と言うのは、ともすればおかしな物言いですが(線部④)、ゲームが「よりうまくやれ=よりうまく攻略せよ」というプレッシャーを与えがちなことの証拠でもある、と筆者は書きます。

(中略1)のあと、筆者は「ハック」を取り上げます。ゲームのような人生で「攻略」する方法として、「ハック」(仕組みの裏をかく工夫)が語られます。その背後にあるのは、「定められたルールをいかに効率的に突破するか」という発想です(線部⑤)。けれども、一部の人がルールをハックすればするほど、社会全体では不平等が拡大し、ゲームそのものが成立しなくなるおそれがあります。さらに、「人生はゲームである」というメタファーは、社会制度や道徳的規範といったルールを、変更できない「前提」にしてしまいます。(中略2)のあと、筆者は、ゲームそのものを自らデザインする立場にも目を向けよう、と結論を述べます。誰もが利益を得られるように、壊れたルールを自分たちで直し、よりよいルールを提案し合う。この「ゲームデザインの構え」が、メタファーの悪さを正すうえで有効だ、というのが筆者の主張です。

論の流れ

図1は、本文の流れを、問題番号とあわせて整理したものです。★の段階が、線部のある場所です。

図1 2026年度 渋谷教育学園幕張中学校 一次 大問一 論の流れ
導入 「人生はゲームである」という見立てが、あちこちで目にされる。松永伸司「人生がゲームをシミュレートするのだ」(★線部① 問三)
▼
ワイルドの警句と同じ型。ゲームによって、現実を見る見方が作り出される。「無理ゲー」「ガチャ」「MP」「フラグ」などの用語で現実を理解する
▼
「攻略」のメタファー ステージ・クリア条件・ゲームオーバー。人生の問題を数値にする(パラメータ化・ステータス画面)。目指すのは分かりやすい「結果」
▼
結果主義的な思考が強まり、「ミッションクリア」自体が至上命題になる(★線部② 問四)
▼
メタファーは、何かを際立たせ、何かを隠す。「人生はゲームである」は、何を際立たせ、何を隠すのか(★線部③ 問五)
際立たせる 人生をうまく攻略すべきだという考え。「ゲームは遊びじゃない」(★線部④ 問六)
隠す 数値化されない困難、定義しづらい幸福、失敗がもたらす学びなどの価値
▼
(中略1)のあと 「ハック」。定められたルールをいかに効率的に突破するか(★線部⑤ 問七)。一部の人のハックで、不平等が広がる
▼
「人生はゲームである」は、ルールを変更不可能な「前提」にしてしまう。ルールを攻略する発想しか出てこない
▼
結論 ゲームそのものを自らデザインする立場にも目を向ける。誰もが利益を得られるよう、ルールを自分たちで直す「ゲームデザインの構え」(問八)
図解動画① 大問一 「人生はゲーム」というメタファー(約32秒・音声つき)

動画のステータス画面の数字は、メタファーを説明するための例で、実際のデータではありません。この文章は、「メタファーは常に何かを際立たせ、何かを隠す」という考え方を軸に、人生を「攻略」の対象として見ることの、よい点と問題点を順に見せていきます。問二でメタファーという言葉を確かめ、問三・問四で「人生がゲームをシミュレートする」と「ミッションクリア自体が至上命題」の意味を選び、問五で「際立たせるもの」と「隠すもの」を書き、問六・問七で、筆者が「おかしな物言い」と言う理由と、「ルールを突破する」発想しか出てこない理由を選び、問八で本文全体の理解を確かめます。

「攻略」のメタファーが、際立たせるもの・隠すもの

問五の答えの中心になるのが、図2の対比です。本文には、「メタファーは常に何かを際立たせ、何かを隠す」とあります。筆者は、この考え方を、チェスの語彙で戦争を描く例(マックス・ブラック)でも示しています。チェスの言葉で戦争を描くと、戦闘が緊張感のある形で組織された面が強調される一方で、戦争特有の心情を揺り動かす側面は排除される、というものです。「人生はゲームである」も、同じように、何かを見せて、何かを隠します。

図2 2026年度 渋谷教育学園幕張中学校 一次 大問一 「人生はゲームである」が際立たせるもの・隠すもの
際立たせるもの
人生は「攻略」すべき対象。ステージ、クリア条件、ゲームオーバー
数値化・パラメータ化。ステータス画面に圧縮して、数値を上げれば解決
合格、昇進、フォロワー数の増加など、分かりやすい「結果」。「よりうまくやれ」
VS
隠すもの
数値化されない困難
定義しづらい幸福
失敗がもたらす学び
問五の答えの形 このメタファーは(際立たせるもの)を際立たせるが、(隠すもの)の価値を隠してしまう。
図解動画② 大問一 際立たせるもの・隠すもの、そしてルールを変える(約34秒・音声つき)

右側の「隠すもの」は、本文では(中略1)の直前の段落にまとめて書かれています。図2の左右を一文でつなぐのが、問五の記述です。

問一 漢字(a・b・c)漢字・読み

設問 線部(a)「ケイク」、(b)「削」、(c)「ショウサ」のカタカナを漢字に、漢字をひらがなに直しなさい。

何を答える問いか (a)と(c)は書き取り、(b)は読みです。いずれも、文の流れから意味を決めて、漢字を選びます。

解答例(a) 警句 (b) そ (c) 証左

(a) ケイク 警句

文は、「オスカー・ワイルドの有名な(a)ケイクとして、『芸術が人生を模倣するのではない、人生が芸術を模倣するのだ』というものがある」です。短い言葉で、物事の真理を鋭く言い当てる言葉のことを、「警句」と言います。「警」は、「警告」「警察」の「警」と同じ字で、「敬」の下に「言」と書きます。「句」は、短い一まとまりの言葉です。「軽苦」「景区」のような書きまちがいに注意しましょう。

(b) 削 そ

文は、「特定の側面を(b)削ぎ落とすことなしにはメタファーを使うことはできない」です。「削」は、「削減」のように「サク」と読むほか、訓読みでは「けずる」と「そぐ」があります。ここは、解答用紙に送りがなの「ぎ」があらかじめ印刷されているので、書くのは「そ」だけです。「削ぎ落とす」は、不要な部分を切り取って、落とすことです。「けず」と書いてしまうと、送りがなの「ぎ」とつながりません。

(c) ショウサ 証左

文は、「ゲームというものが『よりうまくやれ=よりうまく攻略せよ』というプレッシャーをプレイヤーにいつのまにか与えがちであることとの(c)ショウサでもある」です。「証左」は、証拠、あかしという意味です。「証」は「証明」の「証」、「左」は「右左」の「左」です。「証査」「照左」のように、別の字を当てないようにしましょう。

問二 語句 (1)「見立て」の具体例/(2)「メタファー」を使った例文記号選択

設問 (1) 波線部(X)「見立て」とあるが、その具体例として適当でないものを選びなさい。(2) 波線部(Y)「メタファー」を使った例文として、最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか (1)は「見立て」という言葉の意味、(2)は「メタファー(隠喩)」という言葉の意味を、例で確かめる問題です。(1)は「適当でないもの」を選ぶので、正解は、見立てに当たらない例です。ふだん使う言葉の意味を、例で見分ける力が問われています。

(1)の考え方 「見立て」は、あるものを、別のものになぞらえて見ること 本文では、「人生はゲームである」という見立てがそこここで目にされる、と使われています。人生を、ゲームになぞらえて見る、ということです。この意味で、四つの選択肢を見ます。

  • ア 日本庭園の「枯山水」 白い砂の文様を川の流れに、岩を浮かぶ島に見立てています。見立ての例です。
  • イ 茶道で、冬に椿を生ける 花入れに椿を生けるのは、季節感を演出するためです。何かを別のものになぞらえているわけではないので、見立てではありません。これが正解(適当でないもの)です。
  • ウ 古典の和歌 梅の花を雪に、紅葉を錦に見立てています。見立ての例です。
  • エ 落語 扇子を箸に、釣り竿に見立てて、食べたり釣ったりする真似をします。見立ての例です。
解答例 (1)イ

(2)の考え方 「メタファー」は、「ようだ」などを使わずに、ほかのものにたとえる比喩(隠喩) 注にも「メタファー……隠喩。暗喩」とあります。「ようだ」「みたいだ」を使うたとえは「直喩」と言い、区別します。

  • ア しめ縄飾りを火にくべると、ぱちぱちと燃える音がした 音を、まねた言葉(擬音語)で表しているだけで、何かにたとえていません。
  • イ 騒がしい様子は、まるでバーゲンセールのようであった 「まるで〜のようだ」を使っているので、直喩です。メタファー(隠喩)ではありません。いちばん紛らわしい誤りです。
  • ウ 最近では頭に霜を置いている 白髪を、霜にたとえています。「ようだ」を使わずに言い切っているので、メタファー(隠喩)です。これが正解です。
  • エ 歩道でスマホを見ながら自転車に乗っていたら、パトカーに呼び止められた 実際に起きた出来事の説明で、たとえではありません。
解答例 (2)ウ

問三 線部①「人生がゲームをシミュレートする」の具体例記号選択

設問 線部①「人生がゲームをシミュレートする」の具体例として、最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 線部①は、松永伸司さんの言葉の一部で、「ゲームが人生をシミュレートするのではない、人生がゲームをシミュレートするのだ」と続きます。この言葉が、本文でどう言いかえられているかを見つけて、それに当てはまる例を選びます。

本文の根拠 直後の段落に、ワイルドの警句「芸術が人生を模倣するのではない、人生が芸術を模倣するのだ」が引かれ、続けて、こう言いかえられています。「むしろ、芸術によって現実が、より慎重な言い方をすれば、現実を見る見方が作り出されるのである。これと同じことはゲームにも言えるだろう」。そして、「わたしたちは、『無理ゲー』『ガチャ』『MP』『フラグ』といったゲームメカニクスを指す用語を使って現実を理解することがしばしばある」と書かれています。

つまり、線部①は、ゲームの用語やしくみによって、現実を見る見方が作り出されるということです。ゲームが人生に似ている、のではありません。人生(現実)の見え方が、ゲームの言葉で決まっていく、という向きです。

選択肢の検討

  • ア 各「ステージ」をクリアしていく人生と同様に、ゲームの中でも一つの人格や目標を持つようになる 向きが逆です。「人生と同様に、ゲームの中でも」は、人生に似たものがゲームの中にある、という話です。
  • イ 「親ガチャ」という言葉を知ることによって、親との不和に対しても結局は「運」だという視点が生まれるようになる ゲームの用語(ガチャ)を知ることで、現実(親との関係)に新しい見方が生まれています。「見方が作り出される」という説明にそのまま当てはまります。これが正解です。本文の説明では、ガチャは「偶然によって左右され、かつその内容に価値の差がある」ものとされていて、親ガチャという言い方は、これを親との関係に当てはめたものです。
  • ウ 部活動と勉強を両立することを「無理ゲー」だと日常会話で使うことで、より的確に状況を把握できるようになる ゲーム用語で現実を言い表しているので、紛らわしい選択肢です。ただ、「状況を把握できる」は、すでにある状況を言い当てる、という説明です。見方が新たに作り出される、という点が、イほど読み取れません。
  • エ 思わせぶりな仕草を「フラグ」だと捉えたり、キャラクターを現実にいる人に投影したりして、ゲームと現実を混同する 本文は、ゲームの用語を使って現実を「理解する」と言っていて、ゲームと現実を「混同する」とは言っていません。
  • オ 自分の状況を「MP」が足りないと表現することで、ゲーム用語が分かる人だけに共有できる合図を送って楽しむ 仲間うちの合図を楽しむ話で、現実を見る見方が作り出される話ではありません。
解答例イ

問四 線部②「ミッションクリア」自体が至上命題になるのはなぜか記号選択

設問 線部②「人生というゲームにおいて『ミッションクリア』自体が至上命題になる」のはなぜか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 線部②の理由を、本文の因果の流れから選びます。線部の直前に「言い換えれば」とあるので、その前の内容が、線部②の理由になっています。

本文の根拠 線部②のすぐ前に、「こうした結果主義的な思考が強まるほど、『他者との比較に勝つ』『社会的に高い地位に到達する』といった行為が重視されやすくなる」とあります。この「こうした結果主義的な思考」は、その前の段落までを受けています。「攻略」のメタファーのもとでは、人生の諸問題が数値化できる、と考えられます。「パラメータ化」は、複雑な人間関係や社会構造の問題を、ステータス画面に圧縮することで、「問題を解決する」とは、パラメータを上げて敵を倒す・クリアすることになります。行為のゴールは「ステージをクリアする」ことに置かれ、受験なら合格、仕事なら昇進という、分かりやすい「結果」を目指す点で共通する、と書かれています。

流れをまとめると、「攻略」のメタファーが、問題を数字で表現して単純にする→はっきりとした「結果」を出すことが目標になる→結果を重んじる考え方が強まる→「ミッションクリア」自体が至上命題になる、です。

選択肢の検討

  • ア パラメータ化によって結果主義に陥ると、分かりやすい結果を出すことのほかには、楽しみを見出せなくなってしまう 本文は逆のことを書いています。「スキルアップそれ自体を楽しめるようにもなる」とあり、楽しめなくなる、とは言っていません。
  • イ 課題をクリアして新たなステージに進むことに固執するあまり、失敗はすべてゲームオーバーになると恐れるようになる 「失敗すれば『ゲームオーバー』」という言葉は本文にありますが、至上命題になる理由の説明ではありません。
  • ウ RPG的な流れを人生に投影すると、解決すべきミッションや倒すべき敵を自らの生活に意図的に見出そうとしてしまう 「意図的に見出そうとする」は、本文にありません。
  • エ 人生を攻略すべきというメタファーは、問題を数字で表現して単純化し、はっきりとした結果を出すことだけを目的とする 上の因果の流れに合っています。これが正解です。
  • オ 本来はゲームにも多様な選択肢とゴールがあるが、ステータス画面に数値化されると値を上げることだけに集中してしまう 「本来はゲームにも多様な選択肢とゴールがある」は、本文にありません。ここで問われているのは、人生を攻略すべきというメタファーの話です。
解答例エ

問五 このメタファーは何を際立たせ、何を隠すのか記述(縦3行)

設問 線部③「『人生はゲームである』というメタファーは何を際立たせ、何を隠すのだろうか」とあるが、筆者はこのメタファーが何を際立たせ、何を隠すと考えているのか。本文の(中略1)より前の内容をふまえて説明しなさい。なお、主語は「このメタファーは」と書いてよい。

何を答える問いか 線部③は、筆者が自分に向けた問いかけで、その答えは本文の中にあります。答えるのは、際立たせるものと隠すものの二つです。条件が二つあります。一つは、「(中略1)より前の内容をふまえる」こと。後ろの「ハック」や「ルールの改変」の話は、入れません。もう一つは、主語を「このメタファーは」としてよいことで、「際立たせる」と「隠す」の両方に、同じ主語をかけて書けます。

答えの組み立て 隠すものを一言で決めて、答えの最後に置く 「何を隠すのか」という内容を、まず一言で決めてから書き始めます。この問いの一言は、「数値化されない困難や定義しづらい幸福、失敗がもたらす学びなどの価値を隠してしまう」です。この一言を答えの最後(文末)に置き、その前に、「このメタファーは人生をうまく攻略すべきだという考えを際立たせるが」と、際立たせるものを並べます。「際立たせるが、隠してしまう」と対にすることで、線部③の問いにそのまま答える形になります。

本文の根拠 際立たせるもの 線部③までの流れでは、「攻略」のメタファーは、人生を「攻略」すべき対象とみなし、結果を目指すことを重んじる考え方として説明されてきました。本文には、ゲームというものが「よりうまくやれ=よりうまく攻略せよ」というプレッシャーを与えがちなこと、人生をゲームとして捉える人々は、その命令を自分と他人に命じがちなこと、SNSや自己啓発本では「まだまだ人生には攻略の余地がある」「もっとレベルアップできる」というメッセージが流通していることが書かれています。ここから、このメタファーが際立たせるのは、「人生をうまく攻略すべきだ」という考えだと言えます。

本文の根拠 隠すもの その直後に、はっきりと答えが書かれています。「しかし、現実の人生はそれほど単純ではない。数値化されない困難や、定義しづらい幸福、あるいは失敗がもたらす学びなど、攻略というメタファーでは取りこぼしてしまう価値が数多く潜んでいる」。これが、隠されるものです。数値にできないもの、はっきり定義しづらいもの、うまくいかなかったことの中にある価値、の三つがあげられています。

「(中略1)より前」の意味 (中略1)のあとには、「ハック」「チート」や、「ルールを変更不可能な前提としてしまう」といった話が続きます。これも「人生はゲームである」というメタファーの問題点ですが、設問は(中略1)より前の内容をふまえるよう指定しています。答えを選ぶ範囲は、「攻略」のメタファーがなぜ「結果」に偏るのか、から、取りこぼされる価値までです。

解答に入れる要素
① 際立たせるもの 人生をうまく攻略すべきだという考え
② 隠すもの(三つの例) 数値化されない困難、定義しづらい幸福、失敗がもたらす学び
③ 理由の一言(答えの最後に置く) それらの「価値」を隠してしまう
書く順番は、①→②→③です。主語は「このメタファーは」です。
解答例(83字)このメタファーは人生をうまく攻略すべきだという考えを際立たせるが、現実の人生にある、数値化されない困難や定義しづらい幸福、失敗がもたらす学びなどの価値を隠してしまう。

解答例の組み立て 解答例は、「このメタファーは〜を際立たせるが、〜を隠してしまう」という一文です。「が」の前が際立たせるもの、後ろが隠すものです。隠すものは、三つの例を「など」でまとめ、「価値」と言いかえて、文末に置いています。「際立たせる」と「隠す」という、設問の二つの言葉に、そのまま対応した形です。

失点しやすい書き方

  • 隠すものを書かない 「このメタファーは人生を攻略すべきだという考えを際立たせる」だけでは、問いの半分にしか答えていません。
  • 隠すものの代わりに、筆者の評価を書く 「攻略という考え方は悪い」「ゲームのように見てはいけない」は、隠されるものではありません。隠されるのは「何か」を、本文の言葉で答えます。
  • 隠すものを一つだけ書く 本文は、「数値化されない困難」「定義しづらい幸福」「失敗がもたらす学び」の三つを並べて、「など」と続けています。解答例も三つを入れて、「価値」でまとめています。
  • (中略1)より後の内容を書く ハックによって不平等が拡大することや、ルールを変更不可能な前提としてしまうこと、は条件から外れます。
  • 際立たせるものを「人生をゲームのように楽しめる」にする 本文で際立たせられるのは、人生を「攻略」すべき対象とし、「よりうまくやれ」「結果を出せ」と求める見方です。「楽しめる」という方向ではありません。
  • 結論の一言で終わらない 「数値化されない困難や定義しづらい幸福を取りこぼす」のように、並べて終わると、「何を」「どうする」の答えが弱くなります。最後は、「〜の価値を隠してしまう」と、隠されるものの一言で結びます。

問六 線部④「ともすればおかしな物言い」と筆者が言うのはなぜか記号選択

設問 線部④「ともすればおかしな物言い」と筆者が言っているのはなぜか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 「おかしな物言い」とは、どの言葉のことか。その言葉が、なぜ「おかしい」のか。この二つを、線部④の前後から読みとります。

本文の根拠 線部④の前の文に、「ゲームにハマっているゲームプレイヤーは、しばしば『ゲームは遊びじゃない』という」とあります。線部④の「おかしな物言い」は、この「ゲームは遊びじゃない」を指します。線部④の後ろでは、「ゲームというものが『よりうまくやれ=よりうまく攻略せよ』というプレッシャーをプレイヤーにいつのまにか与えがちであることとの証左でもある」と続きます。

ゲームは、本来、楽しむための遊びです。それなのに、熱中している人が「ゲームは遊びじゃない」と言う。言っている内容が、ゲームの本来の姿と食い違っています。これが「おかしな物言い」です。そして筆者は、そう言ってしまうのは、ゲームが「うまく攻略せよ」というプレッシャーを与えがちだからだ、と続けています。

選択肢の検討

  • ア 筆者はゲームを低俗なものと考えており、高尚な思想を持つべき人生においてゲームを真剣にやるのは間違いだと考えている 筆者がゲームを低俗と考えている、という記述はありません。
  • イ ゲームはそもそも楽しむための遊びにも関わらず、ゲームに熱中して傾倒しているあまり、矛盾した表現になってしまっている 「遊び」であるはずのゲームについて「遊びじゃない」と言うのは、矛盾です。これが正解です。
  • ウ 人生というゲームをこそ「ガチ」でやりこんで攻略していく必要があるのに、単なるゲームを「ガチ」でやりこむのはおかしい 筆者は、人生を「ガチ」で攻略する必要がある、とは言っていません。むしろ、その考え方の問題点を述べている文章です。
  • エ 筆者は人生をゲームとして捉えることに疑問を抱いており、その原因となる、ゲームに「ハマる」こと自体を問題視している 筆者が疑問を持つのは、人生を攻略すべき対象とする見方です。ゲームに「ハマる」こと自体を問題視してはいません。
  • オ ゲームはその成り立ちからしてもともと遊びではなく、予想問題として解きながら人生を学んでいくための、重要な手段である ゲームの成り立ちの説明は、本文にありません。
解答例イ

問七 「定められたルールをいかに効率的に突破するか」という発想しか出てこないのはなぜか記号選択

設問 線部⑤「『定められたルールをいかに効率的に突破するか』という発想」とあるが、人生をゲームとして見るとそのような発想しか出てこないのはなぜか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 「そのような発想しか出てこない」のは、なぜか。「しか」と言っているので、ほかの発想が出てこない理由を探します。ほかの発想とは、何でしょうか。それは、ルールを「突破する」のではなく、ルールそのものを問い直したり、変えたりする発想です。

本文の根拠 (中略1)のあとの段落に、答えがあります。「ここで重要なのは、『人生はゲームである』というメタファーは、社会制度や経済制度、道徳的規範といったルールを変更不可能な『前提』としてしまうという点だ」。続けて、「『ルールの改変』はゲームのメタファー中に埋めこまれづらく、それゆえに、多くのゲーム的主体は、ゲームのルールを攻略する、適応する、うまくやる、という発想しか出てこない」とあります。そして、「けれども本来は、『ゲームそのものを新しく作り変える』ことや、『既存のゲームのルールを大胆に変更してしまう』行為も可能なはずだ」と書かれています。

つながりをまとめると、「人生はゲームである」というメタファーに囚われる→ルールを変更不可能な前提としてしまう→ルールを変える発想が出てこない→ルールを攻略する発想しか出てこない、です。本来は、ルールを変えることもできるのに、その可能性が見えなくなる、というのが筆者の指摘です。

選択肢の検討

  • ア 人生というゲームの参加者はコマを円滑に進めてステージをクリアすることに満足感を得ており、全員がルールを守り、突破することを目指すことによって、ゲームそのものを成立させる必要がある 本文は、一部の人がルールをハックすると、ゲームそのものが成立しなくなる、という問題を述べています。「全員がルールを守る」という話はありません。
  • イ 攻略という比喩を通して現実を見ると、「チート」だけでなく「ハック」も使うことで、自分たちだけが有利になる方法を求めたくなる 「ルールを効率的に突破する」発想の中身(ハック)の説明で、「ほかの発想が出てこない理由」ではありません。
  • ウ ルールを問い直したり再設計したりすることも本当は可能なのに、人生というゲームを攻略するというメタファーに囚われてしまい、制度や規範は変更不可能だと思い込んでしまう 上の流れそのものです。これが正解です。
  • エ 本来のゲームには独自ルールを創造し、新たなゲームを生み出す文化が存在するが、そのような創造性はゲームのメタファーに埋め込まれておらず、人々のゲームそのものへの理解が誤っている 「本来のゲームには独自ルールを創造する文化がある」と、「ゲームそのものへの理解が誤っている」は、本文にありません。
  • オ 社会全体として不平等が拡大してしまうとしても、ルールを改変することは不可能であるため、個人としては既存のルールの中でゲームに適応して攻略を目指すしかない 本文は、ルールを改変することは「可能なはずだ」と言っています。「不可能」は、逆の内容です。
解答例ウ

問八 本文の内容と合致するものを二つ選ぶ記号選択(2つ)

設問 次の選択肢の中から、本文の内容と合致するものを二つ選びなさい。

何を答える問いか 六つの選択肢のうち、本文に書かれていることと合うものを二つ選びます。選択肢の一部分だけが合っていても、ほかの部分に本文にない内容が混ざっていれば、合致しません。選択肢の中の言葉を、本文の言葉と一つずつ照らしていきます。

合致するもの ア 「人生というゲームにただ受動的に参加して、自分たちだけが速くステージをクリアすることを目指すのではなく、時にはそのルール自体を疑い、多くの人の賛同が得られるよう主体的に作り直すことも検討してみなくてはならない」。結論の段落に、「重要なのは、ゲームそのものを自らデザインする立ち位置にも目を向けることだ。自分だけが利益を得るのではなく、誰もが利益を得られるように、すでに壊れていて、ハックされてしまうようなルールを、自分たちで直すという意識である」とあります。また、「よりよいルールを提案し合うプロセスが不可欠となる」とも書かれています。アの内容と合っています。

合致するもの オ 「ゲームの攻略というメタファーにより、他者との競争が煽られる傾向が強まっているため、様々な考えを取り入れ、協力しながらみんなで楽しめるゲームやルール設計を、社会でのアイディアとして持たねばならない」。結果主義的な思考が強まるほど、「他者との比較に勝つ」「社会的に高い地位に到達する」といった行為が重視されやすくなる、という本文の指摘に、オは対応しています。そのうえで、結論では、「自分の視野を広げ、複数の立場や価値観を考慮したうえで、よりよいルールを提案し合う」こと、「全体のプレイ経験の楽しさを高めるようなアップデート」を行うこと、「よりよい設計へと更新可能だという発想を持つこと」が示されています。オの内容と合っています。

合致しないもの

  • イ 人々は与えられたミッションをクリアするために効率ばかり求めてしまっているが、多くの人が成功や成長を目指す社会にするためには、時には無駄や失敗を面白がる感性も大切にしてバランスを取らなくてはならない 筆者は、成長を求めない者は落伍者とみなされる風潮を、問題にしています。「多くの人が成功や成長を目指す社会にするため」に「無駄や失敗を面白がる感性」が必要だ、という主張はありません。
  • ウ 人生をゲームと捉える人々は、うまく「ハック」することで社会の不平等が進むことを隠してきたが、多くの人がその致命的な「バグ」に気づきながら見過ごしてきたため、ルールを改善して不平等を解消しなくてはならない 「隠してきた」「気づきながら見過ごしてきた」という記述は、本文にありません。「バグ」や「グリッチ」は、ゲームにそれらがあれば改善する、という文脈で出てきます。
  • エ 人生というゲームを攻略して結果にこだわることで、辛い挫折を乗り越えたあとにも成功するような物語があることを見落としてしまうため、自分の視野を広げて、よりよい人生のデザインを考えていかなくてはならない 「辛い挫折を乗り越えたあとにも成功するような物語」は、本文にありません。見落とされるものとして本文があげるのは、数値化されない困難、定義しづらい幸福、失敗がもたらす学びです。
  • カ ゲームは人生を豊かに彩る一つの遊びとして純粋に楽しむ一方で、人生もゲームをシミュレートすることで、ゴールを設定して将来のために戦略的に生きるのではなく、今この瞬間を大切に生きていかなくてはならない 「今この瞬間を大切に生きる」という主張は、本文にありません。
解答例ア・オ

選び方のコツ 選択肢は、本文にない言葉を言い換えて引っ掛けようとします。本文の内容とズレたもの、論理がつながらないものを消します。この問題の誤りの選択肢にも、本文にない言葉(「隠してきた」「気づきながら見過ごしてきた」「辛い挫折を乗り越えたあと」「今この瞬間」)や、本文と逆の向きの内容が混ざっていました。

語句メモ(大問一)

  • 見立て(みたて) あるものを、別のものになぞらえて見ること。
  • メタファー 隠喩。暗喩。「ようだ」などを使わずに、ほかのものにたとえること。注にも示されています。
  • 直喩(ちょくゆ) 「ようだ」「みたいだ」などを使ってたとえること。「バーゲンセールのようだ」は直喩です。
  • シミュレート 真似をすること。コンピュータを使って模擬実験をすること。注にあります。
  • 警句(けいく) 短い言葉で、物事の真理を鋭く言い当てた言葉。
  • ゲームメカニクス 本文では、ビデオゲームにおけるゲームのシステムの総称、とされています。
  • パラメータ化 ゲームのキャラクターの能力を、数字で示すこと。注にあります。
  • ステータス画面 ゲームにおいて、キャラクターの職業や能力値などを示す画面のこと。注にあります。
  • インフルエンサー SNS等で世間に大きな影響力を持つ人のこと。注にあります。
  • 至上命題(しじょうめいだい) 何よりも優先して取り組まなければならない課題。
  • 削ぎ落とす(そぎおとす) 不要な部分を、切り取って、落とすこと。
  • 証左(しょうさ) あかし。証拠。
  • ハック 本文では、もともとコンピュータ業界の専門用語で、既存のシステムやプログラムの内部を工夫して、想定外の動きをさせること。転じて、既存の常識や仕組みをうまくかいくぐる、手際よく効率的に解決する、という意味でも使われます。
  • チート 本文では、ライフハックや仕事術の文脈でも用いられるが、本来は不正行為や規約違反を意味する言葉、とされています。
  • バグ・グリッチ バグは、コンピュータのプログラムの誤り。グリッチは、機械のシステムにおける一時的な障害。どちらも注にあります。

大問二 小説 北村薫『夜の蝉』

文章の概要

語り手の「私」は大学生です。姉に誘われて、新潟県の弥彦へ姉妹旅行にやって来ました。リード文によると、幼い頃の姉は気性が激しく、「私」に対して意地悪になることもあったため、「私」は今でも姉に少し緊張感を抱いています。旅先で「私」は、姉に、ある時期から態度を変えたきっかけを尋ねましたが、姉は照れくさがって、はっきりとは答えませんでした。出題されたのは、その続きの場面です。

朝食はバイキングで、時間も自由です。二人は弥彦神社に行くことにします。姉は飾り気のない藍色のTシャツを着て、化粧もしていません。「私」は、それがまた嬉しいような清々しさだと感じます。公園に入ると鳥が鳴き、姉が「サンコウチョウだ」と言います。鳴く声が「月、日、星」と聞こえるから、「三つの光の鳥」。感心した「私」は、「よく知ってるね」と言いかけて、はっと口をつぐみます(線部①)。「私」は五合庵へ行こうとして良寛様について予習をしてきましたが、姉も同じように調べたのか、あるいは前にも来たことがあるのか、と考えたからです。「本来なら姉の隣には別の人がいる筈だったのではないか」とも思いますが、それは表に出すことではない、と心にしまいます。

二人は、赤い橋を渡り、杉の木立に囲まれた神域に入って、弥彦神社の本殿の前で祈ります。そのころ、まだ朝なのに、蝉の声が聞こえています。「私」が「……蝉」とつぶやき、「夜の蝉のことね」と続けると、姉は柔らかく微笑んで、「そう」と答えます。ここから、小学校にも行かない頃の「私」の回想になります。母がわずかの間、家を空けた夜、「私」は姉と二人きりになることが辛くて、八畳の寝室に逃げ込みました。そこへ開いていた窓から、大きな油蝉が飛び込んできます。蝉は部屋じゅうを飛び回り、柱にとまって、凄まじい声で鳴き出しました。恐怖で動けなくなった「私」の後ろから、姉が覗き込んで、「どうしたの」と言います。「私は瞬間に縛られた糸が解けたように、泣きながら姉の胸にしがみついていた」(線部②)。

現在に戻り、姉が語ります。「たった一人の妹なんだから大事にしてやれ」と言われても、自分の気持ちをどうにもできなかった。「一言でいえば、憎らしくてたまらなかった」。しかし、あのとき、「わたし達が同じ血を持った姉妹なんだって、理屈でなく分かった」。そして、「それから、わたしは変わった」(線部④)。姉は、「あんたは二十になった。だけど、今でもそういう風にわたしのことを呼ぶだろう」と言い、「多分、三十になっても、五十になっても、そうだよ」と続けます。「私」は、「大きなものに見詰められているような気になって、震え」ます(線部③)。

最後に、広い中庭の反対側で、老人が子供たちと竹とんぼをしています。姉は「行って来る」と立ち上がり、老人のところへ向かいます。「私」は、その背中を見ながら、姉が自分を庇ってくれたことが何度もあったのに、「硝子の手袋をした手で撫でられているような思い」を拭いきれなかったことを思い出します。そして、「手袋が姉の手にあったのではなく、私の心に硝子の鎧があったのではないか」と気づきます(線部⑤)。老人の竹とんぼは、水色の空へ高く高く飛び、姉は輝くような無心の笑みを天に向けます。そのとき、「私」の心は奔流のように激しく姉に向かい、「……おねえちゃん」と小さくつぶやきます(線部⑥)。

登場人物

登場するのは、語り手の「私」と姉の二人が中心です。回想の中に、幼い頃の二人が出てきます。竹とんぼの場面では、老人と子供たちが登場します。

図3 2026年度 渋谷教育学園幕張中学校 一次 大問二 人物相関図
私
語り手(一人称)・大学生(二十歳)
姉の5歳下。今でも姉に少し緊張感がある
姉
「私」の5歳上。藍色のTシャツ、化粧なし
幼い頃は気性が激しく、意地悪になることもあった
幼い頃の私と姉
回想の場面(「私」は小学校にも行かない頃)
蝉の夜に、二人の関係が変わる
老人
中庭で子供たちと竹とんぼをする
昔の職人風の恰好。姉と「十年の知己」のように話す
私→姉今でも少し緊張感。幼い頃は二人きりになるのが辛く、暴君を見るような目で見ていた
姉→私(幼い頃)憎らしくてたまらなかった(やきもち)。「大事にしてやれ」と言われても、気持ちをどうにもできなかった
姉→私(蝉の夜のあと)同じ血を持った姉妹だと理屈でなく分かり、変わった。目立たないように庇ってくれた
私→姉(最後)心が奔流のように姉へ向かい、「……おねえちゃん」とつぶやく
姉=老人竹とんぼを見て、無邪気な好奇心で話し込み、顔を見合わせて破顔する
図解動画③ 大問二 姉妹と、朝の弥彦神社(約31秒・音声つき)

設問の中心になるのは、二人の関係が、蝉の夜を境に変わる、という点です。幼い頃の「私」は、姉と二人きりになることを辛いと感じ、姉は、妹を憎らしいと思っていました。その二人が、蝉の夜の出来事を通して、今は旅に出る姉妹になっています。問四以降は、その変化を、一つずつ読みとる問題です。

場面の流れ

この小説は、現在の場面の途中に、回想が入る形です。図4で、時間の流れを見ておきます。

図4 2026年度 渋谷教育学園幕張中学校 一次 大問二 場面構成図
現在 1
朝の公園。姉が「サンコウチョウだ」と言う問四(線部①)
「私」は、姉の隣にいる筈だった「別の人」を思い、口をつぐむ
▼
現在 2
弥彦神社で祈る。まだ朝なのに蝉の声が聞こえる
「私」が「夜の蝉のことね」と言い、姉は「そう」と答える
▼
回想
小学校にも行かない頃の夜。八畳間に油蝉が飛び込んでくる問五(線部②)
姉が覗き込み、「私」は泣きながら姉の胸にしがみつく
▼
現在 3
姉の語り。「憎らしくてたまらなかった」「同じ血を持った姉妹」問六(線部③)・問七(線部④)
▼
現在 4
竹とんぼの老人のもとへ向かう姉の背中。「硝子の手袋」と「硝子の鎧」問八(線部⑤)
姉の無心の笑み。「……おねえちゃん」問九(線部⑥)

「私」の心の動きと設問

「私」の心の動きは、「姉への距離(緊張)」が、ほどけていく流れとして読むと、設問がひと続きになります。

図5 2026年度 渋谷教育学園幕張中学校 一次 大問二 「私」の心の動きと設問
1
朝の公園 サンコウチョウ
姉が鳥の名前と、その名の由来を言う。「私」は感心して、言いかける
私 ± 感心し、「よく知ってるね」と言いかけて、はっと口をつぐむ。姉の隣にいる筈だった「別の人」を思い、触れないことにする(★線部①)
対応する設問:問四
2
弥彦神社 蝉の声
祈ったあと、長椅子で、蝉の声を聞く。「私」が「……蝉」「夜の蝉のことね」と言うと、姉は微笑んで「そう」と答える
私 ± 鮮やかに記憶がよみがえる
対応する設問:問五の前提(回想への入り口)
3
回想 姉と二人きりが辛かった頃
暴君を見るような目で姉を見ていた。八畳間へ逃げ、油蝉が飛び込んでくる
幼い私 - 恐慌状態。「世界を破壊するもの」に思える。毛筋ほども動けない
対応する設問:問五の根拠
4
姉が覗き込む
「どうしたの」。姉の大きな瞳がいっそう大きくなる
幼い私 + 縛られた糸が解けたように、泣きながら姉の胸にしがみつく(★線部②)
対応する設問:問五
5
現在 姉の語り
「憎らしくてたまらなかった」「同じ血を持った姉妹だと、理屈でなく分かった」。何度も呼ばれた「おねえちゃん」は、今でも変わらない
私 ± 大きなものに見詰められているような気になって、震える(★線部③)。姉は「それから、わたしは変わった」(★線部④)
対応する設問:問六・問七
6
竹とんぼ 姉が老人のもとへ向かう
姉が庇ってくれたことが何度もあった。それでも「硝子の手袋をした手で撫でられているような思い」が消えなかった
私 + 「手袋が姉の手にあったのではなく、私の心に硝子の鎧があったのではないか」と気づく(★線部⑤)
対応する設問:問八
7
水色の空へ飛ぶ竹とんぼ
姉は、輝くような無心の笑みを天に向ける
私 + 心が奔流のように激しく姉に向かい、「……おねえちゃん」とつぶやく(★線部⑥)
対応する設問:問九
図解動画④ 大問二 蝉の夜から、「おねえちゃん」まで(約38秒・音声つき)

図5の★の場面が、六つの線部です。線部①は朝の公園、線部②は回想の中、線部③④は現在の姉の語り、線部⑤⑥は竹とんぼの場面にあります。「私」と姉のあいだの距離が、少しずつ縮まっていく過程が、そのまま設問になっています。

問一 漢字(a・b・c)漢字・読み

設問 線部(a)「清々」、(b)「イギョウ」、(c)「知己」の、カタカナを漢字に、漢字をひらがなに直しなさい。

何を答える問いか (a)と(c)は読み、(b)は書き取りです。いずれも、文の意味から、どの言葉かを決めます。

解答例(a) すがすが (b) 異形 (c) ちき

(a) 清々 すがすが

文は、「それがまた嬉しいような(a)清々しさだった」です。解答用紙には「しさ」があらかじめ印刷されているので、書くのは「すがすが」だけです。「清々しい」は、さわやかで、気持ちがよい様子を言います。同じ字の「清々」でも、「清々する」と使うときは「せいせい」と読みます。送りがなが「しい」「しさ」のときは、「すがすが」と読む、と覚えましょう。

(b) イギョウ 異形

文は、「部屋に満ちたのは間違いなく、(b)イギョウの恐怖だった」です。「異形」は、普通とは異なる、異様な形や姿のことです。夜の寝室に、突然、大きな蝉が飛び込んできて、凄まじい声で鳴く。その、あり得ない光景の恐ろしさを表します。「偉業」(すぐれた仕事)のような、同じ音の別の言葉と取りちがえないようにしましょう。

(c) 知己 ちき

文は、「二人は十年の(c)知己のように話し始めた」です。「知己」は、自分のことをよく分かってくれている人、親しい友人のことです。「十年の知己のように」は、十年来の友人のように、という意味で、初めて会った姉と老人が、すぐに打ち解けたことを表しています。「知」を「ち」、「己」を「き」と読みます。

問二 「五合庵」から連想される俳人記号選択

設問 波線部(i)「五合庵」とは江戸時代の僧侶である良寛が住んでいた質素な小屋のことであるが、この良寛が敬愛した俳人で、旅の途中でこの地に立ち寄り、「荒海や佐渡に横たふ天の川」という句を残した人物は誰か。次から選びなさい。ア 与謝蕪村 イ 正岡子規 ウ 松尾芭蕉 エ 小林一茶 オ 高浜虚子

何を答える問いか 作者の知識を問う問題です。本文の内容を読み取る問題ではなく、句から作者が分かるかどうかです。「荒海や佐渡に横たふ天の川」は、松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅で詠んだ句です。日本海の荒海の向こうに佐渡島があり、その上に、天の川が横たわっている、という情景を詠んでいます。

ほかの選択肢の代表句 選択肢の俳人は、有名な句とセットで覚えると、取りちがえにくくなります。

  • ア 与謝蕪村 「菜の花や月は東に日は西に」
  • イ 正岡子規 「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」
  • ウ 松尾芭蕉 「荒海や佐渡に横たふ天の川」「古池や蛙飛びこむ水の音」。これが正解です。
  • エ 小林一茶 「やせ蛙まけるな一茶これにあり」
  • オ 高浜虚子 「遠山に日の当たりたる枯野かな」
解答例ウ

問三 「笑いさざめき」「破顔し」の様子記号選択

設問 波線部(ii)「笑いさざめき」、(iii)「破顔し」とは、それぞれどのような様子を表現しているか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 語句の意味を、文脈にも合わせて選びます。

(ii)「笑いさざめき」 文は、「笑いさざめきながら来る小学生はラジオ体操の帰りのようだ」です。「さざめく」は、にぎやかに声を立てることです。「笑いさざめく」で、大勢でにぎやかに笑う、という意味になります。ラジオ体操の帰りの小学生たちが、わいわいと笑いながら歩いてくる様子です。

  • ア 耳障りな笑い声を立てる様子 悪い意味はありません。
  • イ 元気に笑い転げる様子 「笑い転げる」は、ひっくり返るほど笑う、という意味で、言いすぎです。
  • ウ 穏やかに微笑みあう様子 「さざめく」は、静かではありません。
  • エ 大勢でにぎやかに笑う様子 これが正解です。
  • オ 笑いあったり静かになったりする様子 「さざめき」に、静かになる意味はありません。

(iii)「破顔し」 文は、「老人と姉は顔を見合わせ破顔し、二人で子供に何かいった」です。「破顔」は、顔がほころぶことで、「破顔一笑」のように、にっこりと笑う様子を表します。子供が退屈して、老人の腰をつついたので、二人が顔を見合わせて、にっこり笑った場面です。

  • ア 表情を崩しうなずく様子 「破顔」に、うなずくという意味はありません。
  • イ 顔をほころばせる様子 これが正解です。
  • ウ 眉をひそめる様子 笑顔とは逆の表情です。
  • エ 顔を赤くする様子 顔色の話です。
  • オ 目を見開く様子 おどろきの表情で、笑いとは別です。
解答例(ii) エ (iii) イ

問四 線部①「いいかけて、私ははっと口をつぐんだ」のはなぜか記号選択

設問 線部①「いいかけて、私ははっと口をつぐんだ」とあるが、なぜこのような態度をとったのか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 「私」が、何を言いかけて、何を思って、やめたのか。線部①の前後から読みとります。

本文の根拠 線部①の前に、姉が「サンコウチョウだ」と教えてくれる場面があります。「私」は、「感心した。洒落たネーミングではないか。土地では有名な鳥なのだろう」と思い、「よく知ってるね」と言いかけて、口をつぐみます。線部①のあとに、その理由が書かれています。「どうして姉は知っているのか。私は五合庵に行こうとして良寛様について《予習》した。姉もまたこの土地について関心を持って調べたか、あるいは——前にも来たことがあるかの、どちらかではないか」。そして、「いきなり旅に誘われて、本来なら姉の隣には別の人がいる筈だったのではないか、と思わなかったわけではない。ただそれは表に出すことではない」と続きます。

つまり、姉がこの土地に詳しいのは、前にも別の人と来たことがあるからではないか、と「私」は思い当たります。そして、それを口に出すのは、姉の事情に触れることなので、ひかえたのです。

選択肢の検討

  • ア 姉がこの土地に詳しい理由を知りたくなったが、推測できることを改めて問う必要はないと思い直した 「問う必要はない」という理由ではありません。「ただそれは表に出すことではない」とあるように、姉の事情に触れかねないので、ひかえています。
  • イ 姉がもともとは別の人とこの土地に来るつもりで準備していた可能性に思い当たり、姉の事情を気遣った 上の根拠に合っています。これが正解です。
  • ウ 姉が旅先の情報に詳しいことに言及しようとした瞬間、誰かの身代わりに誘われたことに気づき失望した 「私」は、可能性として思い当たっただけです。「気づき失望した」とは書かれていません。
  • エ 姉が本来は別の誰かと旅するつもりだったことを疑い気分を害したが、それを指摘して雰囲気を悪くしないため 「私」は、気分を害してはいません。姉を気遣っています。
  • オ 旅先の土地に明るい姉の博識さに感心したが、そのことを妹の立場から褒めて姉の不興を買うことを避ける 感心したのは本文のとおりですが、口をつぐんだ理由は、褒めると不興を買うからではありません。「不興を買う」という内容は、本文にありません。
解答例イ

問五 線部②「縛られた糸が解けたように、泣きながら姉の胸にしがみついていた」のはなぜか記号選択

設問 線部②「私は瞬間に縛られた糸が解けたように、泣きながら姉の胸にしがみついていた」とあるが、なぜこのような行動をとったのか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 回想の中の幼い「私」が、なぜ、姉にしがみついたのかを選びます。ポイントは、二つです。幼い「私」にとって姉はどんな相手だったか(普段の関係)。そして、そのとき何が起きていたか(状況)。この二つを、ともにふまえた選択肢が正解です。

本文の根拠 普段の関係 回想の前に、「正直にいえば、その頃の私は姉と二人きりになることが辛かった。幼い身では体力の違いはどうすることも出来ない。そういう時の私は、きっと犠牲の生き物が暴君を見るような目になっていたことだろう」とあります。幼い「私」にとって、姉は、心を許せる存在ではありませんでした。

本文の根拠 状況 夜の寝室に、窓から大きな油蝉が飛び込んできます。襖や蛍光灯にぶつかりながら飛び回り、柱にとまって、凄まじい声で鳴き出します。「威圧するような声で蝉が鳴く」「子供の私が安住していた確かな秩序を、世界を破壊するものに思えた」「部屋に満ちたのは間違いなく、異形の恐怖だった」。動けなくなった「私」の後ろから、姉が、大きな瞳をいっそう大きくして覗き込み、「どうしたの」と言います。その瞬間、「私」は、縛られていた糸が解けたように、姉の胸にしがみつきます。

普段は心を許せない相手でも、日常が脅かされる恐怖と緊張の中で、いちばん身近にいた年上の人間が、頼りにできる相手になった。それが、線部②の理由です。

選択肢の検討

  • ア 姉とけんかをして寝室へ逃げ出したが、そこで蝉を目の当たりにし、「私」よりも強い姉に蝉を退治してもらえれば安心できる日常が取り戻せると考えた 「しがみつく」のは、考えた末の行動ではなく、「瞬間に」起きたことです。また、「けんか」とは書かれておらず、「何事かがあって」逃げて来たとあるだけです。
  • イ 本心では暴君のような姉に近づきたくはなかったが、…姉への恐怖をこらえて頼るしかなかった 「恐怖をこらえて」という描写はありません。糸が解けるように、一気にしがみついています。
  • ウ 日頃は家族にそっけない態度をとる姉が、妹を大事にしなさいという大人の言いつけを守り、…守るために来てくれたことがわかって安心し、思い切り甘えたかった 姉が「そっけない態度」をとっていたことや、「大人の言いつけを守り」来てくれたことは、回想の中に書かれていません。「大事にしてやれ」と言われていたことは、あとで姉が語る内容です。
  • エ 感情の起伏の激しい姉を普段は恐れて敬遠していたが、…姉が心配してすぐに来てくれたことが理解でき、姉に申し訳なくなった 「申し訳なくなった」は、本文にありません。「私」は、恐怖の中で、姉にしがみついただけです。
  • オ 幼い「私」にとっての姉は心を許せる存在ではなかったが、夜の寝室に蝉が侵入して鳴くという、日常が脅かされる恐怖と緊張の中で、身近な年上の人間である姉は頼りにできる相手であった 上の根拠のとおりです。これが正解です。
解答例オ

問六 線部③「大きなものに見詰められているような気になって、震えた」のはなぜか記号選択

設問 線部③「私は大きなものに見詰められているような気になって、震えた」とあるが、なぜそのような気になったのか。最も適当なものを選びなさい。

何を答える問いか 「大きなもの」とは、何か。それに「見詰められている」とは、どういうことか。そして、なぜ「震えた」のか。線部③の直前の、姉の言葉から読みとります。

本文の根拠 姉は、蝉の夜に「私」が何度も同じ叫び声(「おねえちゃん」)を上げたことを話します。そして、こう言います。「それだよ。それを何度も繰り返したの。たまらないよ、こっちは。あんたは二十になった。だけど、今でもそういう風にわたしのことを呼ぶだろう。そりゃあ人前だったら、《姉》とか《姉さん》とかいうだろうけど、差し向かいになったら子供の頃と同じ。多分、三十になっても、五十になっても、そうだよ」。

この言葉は、「私」が二十歳になった今の呼び方だけでなく、三十歳、五十歳になった先の呼び方まで、見通しています。「私」は、自分では気づいていなかった自分の姿を、姉に言い当てられました。しかも、その先の長い時間まで見通すような視点で、です。自分の見ている範囲を超えた、大きな視点から見られているような気がして、「私」は震えたのです。

選択肢の検討

  • ア 姉妹が幼かった過去から共に年老いる未来に至る、時間の果てしなさを感じた 姉の言葉が、過去から未来までを含むのは確かですが、「果てしなさを感じた」という感想ではありません。線部③は、「大きなものに見詰められている」と、見られる側から書かれています。
  • イ 話をする姉が、神に授けられた言葉を伝えるようなおごそかな態度だった 姉は、「こだわりのない口調で」話しています。おごそかな態度ではありません。
  • ウ 「私」のものの見方を超える、全体を見通すような視点を姉から与えられた 上の根拠のとおりです。これが正解です。
  • エ 年上であるがゆえに、博学さにかけては、「私」よりも姉が勝っていると実感した 博学さの話ではありません。
  • オ 過去の対立にこだわりを持たない姉の態度が、頑な「私」よりも立派だった 「頑な」な「私」という描写は、この場面にありません。姉の態度の立派さに、震えたのでもありません。
解答例ウ

問七 線部④「それから、わたしは変わった」とは、どのように変わったのか記述(縦3行)

設問 線部④「それから、わたしは変わった」とあるが、どのように変わったのか。その理由も含めて説明しなさい。

何を答える問いか 答えるのは二つです。どのように変わったのか(変化の中身)と、その理由です。線部④の「わたし」は、語り手の「私」ではなく、姉です。変わったのは姉で、「それから」の「それ」は、蝉の夜の出来事を指します。文末は「〜ようになった。」です。

答えの組み立て 変化の中身を一言で決めて、答えの最後に置く まず、姉が「どのように変わったのか」を、一言で決めてから書き始めます。この問いの一言は、「姉として妹を守ろうと思うようになった」です。この一言を答えの最後に置き、その前に、変わる前の気持ちときっかけ、そこで気づいたこと(理由)を並べます。

本文の根拠 変わる前の姉 姉は、こう語っています。「それまでにもね、たった一人の妹なんだから大事にしてやれ、とか、そういった類いのことは嫌になるほど聞かされて来たし、理屈では勿論分かっていたわ。でも、わたしは自分の気持ちをどうすることも出来なかったの。一言でいえば、憎らしくてたまらなかったの。やきもちよ」。「大事にしなさい」という理屈は分かっていても、妹が憎らしかった。これが、変わる前の姉です。

本文の根拠 きっかけと理由 続けて姉は、「でも、あの時に、わたし達が同じ血を持った姉妹なんだって、理屈でなく分かったの」と言います。「あの時」とは、蝉の夜です。蝉におびえた「私」は、姉に泣きながらしがみつき、何度も「おねえちゃん」と叫びました。その姿を見て、姉は、憎らしいと思っていた妹が、自分と同じ血を持つ姉妹なのだと、頭の理屈ではなく、実感として分かったのです。「理屈では分かっていた」が、「理屈でなく分かった」に変わった、という対に注目しましょう。

本文の根拠 変化の中身 その後に、「それから、わたしは変わった。あんたに対してどうこうっていうより先に、自分が変わったんだよ」とあります。姉は、「人間が生きて行くってことは、いろんな立場を生きて行くってことだろう。拘わりとか役割とか、そういったことを理屈でなく感じる瞬間て必ず来るものだと思うよ」とも言います。姉は、自分が姉という立場にあることを、理屈でなく感じたのです。その変化は、竹とんぼの場面の「姉が目立たないような形で私を庇ってくれることが何度もあった」という「私」の回想にも表れています。ここから、変化の中身は、姉として妹を守ろうと思うようになったことだと言えます。

解答に入れる要素
① 変わる前の気持ちときっかけ 憎らしかった妹が、蝉におびえて「おねえちゃん」と何度も呼びながら、自分の胸にしがみついた
② 理由(気づき) 自分達は同じ血を持った姉妹なのだと、理屈でなく分かった
③ 変化の一言(答えの最後に置く) 姉として妹を守ろうと思うようになった
書く順番は、①→②→③です。
解答例(94字)憎らしかった妹が蝉におびえて「おねえちゃん」と何度も呼びながら自分の胸にしがみついたことによって、自分達は同じ血を持った姉妹なのだと理屈でなく分かり、姉として妹を守ろうと思うようになった。

解答例の組み立て 解答例は、「〜ことによって、〜と理屈でなく分かり、〜ようになった」という形です。「ことによって」で、きっかけと変化をつなぎ、「分かり」で気づきを挟み、変化の一言を文末に置いています。「どのように変わったのか」と「その理由」の二つが、一文の中に順番に入っています。

失点しやすい書き方

  • 変化の中身を書かない 「蝉におびえた妹がしがみついてきたから」だけでは、理由だけで、「どのように変わったのか」が答えられていません。
  • 「優しくなった」とだけ書く 変化の中身が広すぎます。本文の「いろんな立場を生きて行く」「役割」から、姉という立場で妹を守る、という中身まで書きます。
  • 「憎らしかった」を書かない 変わる前の気持ちがないと、「変わった」という落差が伝わりません。
  • 「血がつながっているから」だけを理由にする 本文では、「理屈では分かっていた」ことが、あのとき「理屈でなく分かった」のです。実感として分かった、という点を落とさないようにします。
  • 主語を取りちがえる 「私が姉を頼りにするようになった」のように、変わったのを「私」にしてしまう誤りです。変わったのは、姉です。

問八 線部⑤「手袋が姉の手にあったのではなく、私の心に硝子の鎧があったのではないか」で、「私」は何に気づいたのか記述(縦2行)

設問 線部⑤「手袋が姉の手にあったのではなく、私の心に硝子の鎧があったのではないか」とあるが、ここで「私」はどのようなことに気づいたのか。「〜のではないかということ。」に続くように説明しなさい。

何を答える問いか 線部⑤の比喩を、本文の出来事に言いかえて、「私」の気づきを書く問題です。条件は、「〜のではないかということ」に続けて書くことです。この形に合わせて、書き出しから文末まで組み立てます。

本文の根拠 「硝子の手袋」の話 線部⑤の直前に、「私」の回想が書かれています。「背は遠ざかったが、その一歩ごとに姉が私に近付いて来るような気がした。姉が目立たないような形で私を庇ってくれることが何度もあった。だが私は、それこそ理屈では感謝しなければいけないと分かりながら、何故か硝子の手袋をした手で撫でられているような思いを拭いきれなかった」。姉は、何度も「私」を庇ってくれました。「私」は、理屈では感謝しなければいけないと分かっていました。それでも、姉の手に温かさを感じられず、硝子の手袋をした手で撫でられているように感じていたのです。

比喩を言いかえる 手袋と鎧 手袋をした手で撫でられると、手の温もりが直接は伝わってきません。つまり、「硝子の手袋」は、姉の温かさが伝わってこない、という感覚を表しています。それまでの「私」には、手袋が、姉の手のほうにあるように感じられていました。ところが、線部⑤で「私」は、「手袋が姉の手にあったのではなく」、原因は、自分の側にあったのではないか、と考え直します。それが、「私の心に硝子の鎧があった」です。鎧は、身を守るために、体をおおうものです。「私」が、自分の心を、姉に対して閉ざしていた、ということです。

答えの組み立て 気づきの中身を一言で決めて、答えの最後に置く 気づきの一言は、「自分が姉に対して心を閉ざしていたせいだった」です。この一言を、「〜のではないかということ」に続く部分に置き、前に、「姉が自分を庇ってくれても、姉の心の温かさを感じることができなかったのは」と、何についての気づきかを書きます。

解答に入れる要素
① 出来事(硝子の手袋) 姉が自分を庇ってくれても、姉の心の温かさを感じることができなかった
② 原因(硝子の鎧・気づきの一言) 自分が姉に対して心を閉ざしていたせいだった
書く順番は、①→②です。文末は「〜のではないかということ。」です。
解答例(69字)姉が自分を庇ってくれても、姉の心の温かさを感じることができなかったのは、自分が姉に対して心を閉ざしていたせいだったのではないかということ。

解答例の組み立て 解答例は、「〜のは、〜せいだったのではないかということ」という形です。前半が、線部⑤の前に書かれていた出来事(硝子の手袋)、後半が、線部⑤で気づいた原因(硝子の鎧)です。「手袋」は姉の側、「鎧」は「私」の側、という対が、そのまま、前半と後半の言いかえになっています。

失点しやすい書き方

  • 手袋と鎧の側を取りちがえる 手袋が姉の手にあった、と読んでしまうと、「私」の気づきと反対になります。手袋は姉の側にはなく、鎧は「私」の心にあります。
  • 「自分が心を閉ざしていた」だけで、前半を書かない 何に対する気づきなのかが分かりません。「姉が庇ってくれても温かさを感じられなかった」ことを、先に書きます。
  • 「姉を誤解していた」と書く 誤解ではなく、「私」の心が閉ざされていた、ということです。「心を閉ざしていた」という言葉で書きます。
  • 比喩のまま書く 「手袋ではなく鎧があった」のように、比喩を言いかえずに写すだけでは、説明になりません。
  • 指定の文末に合わせない 「〜のではないかということ。」に続けて書く指定です。「〜と気づいた。」で終えると、条件から外れます。

問九 線部⑥「……おねえちゃん」に込められた「私」の心情として適当でないもの記号選択

設問 線部⑥「……おねえちゃん」というつぶやきに込められた「私」の心情の説明として適当でないものを、一つ選びなさい。

何を答える問いか 「適当でないもの」を選ぶ問題です。四つは本文に合う心情で、一つだけ、本文に合わない心情が混ざっています。線部⑥の直前の場面と、これまでの「私」の心の動きに照らして、合わないものを一つ探します。

本文の根拠 線部⑥の直前は、「老人と姉が顔を見合わせて破顔し」、老人が構えた竹とんぼが、「水色の空を目指し、高く高く、飛んだ」場面です。「上がれ上がれと祈るかのように手は胸の前で合わされ、髪は藍色のTシャツの背で揺れた。姉は輝くような無心の笑みを天に向けた」。そして、「その時、私の心は奔流のように激しく姉に向かった」とあります。姉は、老人と話すときも、「無邪気な好奇心を体全体に漲らせ」ていました。「私」は、そこに、自然で無邪気な姉の姿を見ています。

選択肢の検討

  • ア 姉が「おねえちゃん」の呼び名にふさわしい思慮深さを持っていたことに圧倒され、尊敬する気持ちがあふれている 本文に「思慮深さ」という言葉はなく、描かれているのは、姉の無邪気さです。「圧倒され」「尊敬する」という心情も、本文にありません。これが、適当でないものです。
  • イ 「私」と「おねえちゃん」と呼んでいる姉とが、姉妹という深い結びつきにあるという事実を心の底からかみしめている 姉が語った、「あんたはわたしをそう呼び、わたしはそう呼ばれる」という、姉妹の結びつきに合っています。
  • ウ 「私」の内心とは無関係に、「おねえちゃん」の立場から「私」を見守ってくれていた姉への感謝がこみ上げている 姉が、目立たないように何度も庇ってくれていたことに、気づいた「私」の心情に合っています。
  • エ 姉に対して長年抱いていたわだかまりから解き放たれ、「おねえちゃん」と親しみを込めて呼びかけたくなっている 線部⑤で、心の鎧に気づいたあとの心情です。線部⑥の直前に「心は奔流のように激しく姉に向かった」とあることにも、合っています。
  • オ 天に昇る竹とんぼを見送る姉の笑顔のまぶしさに、「おねえちゃん」の自然な無邪気さを見出したような気がしている 「輝くような無心の笑み」に合っています。
解答例ア

語句メモ(大問二)

  • 弥彦神社(やひこじんじゃ) 新潟県の弥彦山の麓にある神社。注にあります。
  • 五合庵(ごごあん) 江戸時代の僧侶、良寛が住んでいた質素な小屋。設問文にあります。
  • 亭々(ていてい)たる 高くそびえたつ様子。注にあります。
  • 勾欄(こうらん) 建物の縁や橋などの、手すり。「勾欄つきの縁をめぐらした大きな建物」で、本殿の姿を表しています。
  • 鬱蒼(うっそう) 樹木が、こんもりと茂っている様子。
  • 蜩(ひぐらし) 夕方などに、寂しい声で鳴く蝉。
  • 油蝉(あぶらぜみ) 夏に、にぎやかに鳴く、大きな蝉。
  • 恐慌状態(きょうこうじょうたい) 恐れて慌て、取り乱した状態。
  • 威圧(いあつ) 力や勢いで、相手を押さえつけること。
  • 安住(あんじゅう) 安心して、落ち着いて暮らすこと。
  • 異形(いぎょう) 普通とは違う、異様な形や姿。
  • 暴君(ぼうくん) 乱暴で、人々を苦しめる君主。「犠牲の生き物が暴君を見るような目」は、逆らえない相手をおそれる目です。
  • 拘わり(かかわり) 本文のルビは「かか」。つながりや関係のこと。「拘わりとか役割とか」と使われています。
  • 知己(ちき) 自分のことをよく分かってくれる人。親しい友人。
  • 破顔(はがん) 顔をほころばせて、にっこり笑うこと。
  • 奔流(ほんりゅう) 激しい勢いで流れる水。「心は奔流のように激しく姉に向かった」は、気持ちが一気にあふれた様子です。
  • 庇う(かばう) 害や攻撃が及ばないように、守ること。
  • 漲る(みなぎる) 力や気持ちが、体いっぱいにあふれること。

解答例一覧

解答は、学校の公式解答ではなく、解答例です。

  • 大問一 問一 (a) 警句 (b) そ (c) 証左
  • 大問一 問二 (1) イ (2) ウ
  • 大問一 問三 イ
  • 大問一 問四 エ
  • 大問一 問五 このメタファーは人生をうまく攻略すべきだという考えを際立たせるが、現実の人生にある、数値化されない困難や定義しづらい幸福、失敗がもたらす学びなどの価値を隠してしまう。
  • 大問一 問六 イ
  • 大問一 問七 ウ
  • 大問一 問八 ア・オ
  • 大問二 問一 (a) すがすが (b) 異形 (c) ちき
  • 大問二 問二 ウ
  • 大問二 問三 (ii) エ (iii) イ
  • 大問二 問四 イ
  • 大問二 問五 オ
  • 大問二 問六 ウ
  • 大問二 問七 憎らしかった妹が蝉におびえて「おねえちゃん」と何度も呼びながら自分の胸にしがみついたことによって、自分達は同じ血を持った姉妹なのだと理屈でなく分かり、姉として妹を守ろうと思うようになった。
  • 大問二 問八 姉が自分を庇ってくれても、姉の心の温かさを感じることができなかったのは、自分が姉に対して心を閉ざしていたせいだったのではないかということ。
  • 大問二 問九 ア

渋谷教育学園幕張の国語で身につけたい力・家庭での練習

2026年度の出題から言えることを、三つにまとめます。

  • 対になった言葉や比喩を、本文の言葉に置きかえる力 大問一の問二は、「見立て」と「メタファー(隠喩)」、そして「直喩」を区別する問題でした。問五は「際立たせる」と「隠す」の対を、大問二の問八は「手袋」と「鎧」の対を、本文の出来事に置きかえて書く問題です。
    家庭での練習:「AではなくB」の形の比喩を一つ選び、「何を何にたとえているか」「Aはだれの側、Bはだれの側か」を一文で書きます。たとえば、「手袋が姉の手にあったのではなく、私の心に硝子の鎧があった」なら、「原因は姉の側ではなく、自分の側にあった」となります。
  • 記述を、結論の一言から組み立てる力 記述3問は、どれも、結論を一言で決めて、答えの最後に置く形で書けました。問五は「価値を隠してしまう」、問七は「姉として妹を守ろうと思うようになった」、問八は「自分が姉に対して心を閉ざしていたせいだったのではないかということ」です。前に、きっかけや状況を並べます。
    家庭での練習:記述は、書く前に、まず「結論の一言」を決めて、紙の端に書きます。それを答えの最後に置き、そのあと保護者の方が「きっかけは?」「どうしてそう言えるの?」と質問して、前半の状況が入っているかを一緒に確かめます。入っていない要素は、本文のどこに書いてあるかを探して書き足します。
  • 選択肢を、本文の言葉と一つずつ照らして切る力 大問一の問四・問六・問七・問八と、大問二の問四・問五・問六は、理由や内容を選ぶ問題でした。選択肢は、本文にない言葉を言い換えて引っ掛けようとします。誤りの選択肢には、本文にない言葉(「楽しみを見出せなくなる」「申し訳なくなった」「身代わりに誘われたことに気づき」)や、本文と逆の内容(ルールの改変は「不可能」)が混ざっていました。
    家庭での練習:選択肢を一つずつ、本文の内容とズレていないか、論理がつながるかを確かめます。ズレたもの、つながらないものは消します。「一部だけ合っている」選択肢ほど、残りの部分を本文で確かめるようにします。

漢字は、各大問の問一に3つずつでした。警句、証左、異形のように、意味を一言で説明できるようにしておくと、同じ読みの別の言葉と取りちがえにくくなります。

まとめ

2026年度の渋谷教育学園幕張中学校 一次の国語は、答えを書く欄が23あり、記述は3問でした。大問一では、「人生はゲームである」というメタファーが、人生の何を際立たせ、何を隠すのかを、見立て・隠喩・直喩の区別から入って、本文の流れに沿って読みました。大問二では、「私」が姉に対して感じていた緊張が、蝉の夜の回想を通して、「硝子の鎧」への気づきと、「……おねえちゃん」というつぶやきにたどり着くまでを、選択肢と、二つの記述で追いました。二つの文章は、どちらも、見る側がもっているものの見方が、見えるものを決めてしまう、という点で響き合っていました。

記述は、結論を一言で決めて、答えの最後に置き、前にきっかけや状況を並べる。選択肢は、本文にない言葉を言い換えて引っ掛けようとするので、本文の内容とズレたもの、論理がつながらないものを消す。対になった比喩や言葉は、本文の言葉に置きかえて説明する。この三つを意識して、本文の根拠から自分の言葉で書く練習を重ねていきましょう。