2026年度 渋谷教育学園幕張中学校 一次入試 国語 徹底解説
渋谷教育学園幕張中学校(渋幕)の2026年度一次入試・国語を徹底解説します。
大問一は難波優輝「物語化批判の哲学」からの論説文、大問二は北村薫「夜の蝉」からの物語文という構成でした。
今回のテストでは、論説文では「メタファー(比喩)」の働きを理解する力、物語文では姉妹の複雑な心情変化を読み取る力が問われました。
大問一:論説文「物語化批判の哲学」難波優輝
文章の概要
この文章は、「人生はゲームである」という比喩(メタファー)について批判的に検討したものです。
筆者の難波優輝氏は、このメタファーが現代社会で広く使われていることを指摘しつつ、そこに潜む問題点を明らかにしています。

筆者の主張
筆者が主張しているポイントは以下の通りです。
- 「人生はゲームである」というメタファーは、人生を「攻略」の対象として捉えさせる
- このメタファーは特定の側面を「際立たせ」、別の側面を「隠す」働きがある
- ゲームを攻略するだけでなく、ゲームそのものをデザインする視点が重要
- 自分だけでなく、全員が利益を得るようなルール設計を追求すべき
対比構造
この文章では、以下のような対比が重要です。
「ゲームを攻略する」という発想と「ゲームをデザインする」という発想が対比されています。前者はルールの中で効率的に勝つことを目指しますが、後者はルールそのものを見直し、より良い形に変えていく視点を持っています。
また、「メタファーが際立たせるもの」と「メタファーが隠すもの」という対比も重要です。
段落構成
この文章は次のような流れで展開されています。
まず「人生はゲームである」というメタファーの存在を示し(問題提起)、次にゲームメカニクスの概念やメタファーの働きを説明し(展開)、そしてメタファーの問題点を指摘し(批判)、最後に「ゲームデザインの構え」という解決策を提示しています(結論)。
重要語句
この文章で押さえておきたい重要語句を解説します。
メタファー:比喩のことです。ある概念を別の概念で説明する表現方法を指します。
ゲームメカニクス:ビデオゲームにおけるシステムの総称です。「フラグ」「ガチャ」「MP」「ステータス画面」などが含まれます。
ハック(hack):もともとコンピュータ業界の専門用語で、既存のシステムやプログラムの内部を工夫して解決することを指します。近年では「既存の常識や仕組みをうまくかいくぐる」「手際よく効率的に解決する」という意味でも使われます。
見立て:あるものを別のものに例えて見ることです。メタファーとほぼ同義で使われています。
大問一:設問解説
問一(漢字の読み書き)
(a)「ケイク」→ 警句
文脈から、オスカー・ワイルドの有名な「ケイク」とあるので、「警句」と書きます。機知に富んだ短い言葉のことです。
(b)「削」→ そ(ぎ落とす)
「削ぎ落とす」の読みは「そぎおとす」です。
(c)「ショウサ」→ 証左
「証左」は「証拠」「証明」という意味です。「賞賛」や「称賛」と間違えやすいので注意しましょう。文脈では「〜のショウサでもある」という形で使われており、「証拠でもある」という意味になります。
問二(語句の意味・用法)
(1)「見立て」の具体例として適当でないものを選ぶ問題
正解は エ です。
選択肢を検討すると、アの「枯山水」、イの「茶道での花入れ」、ウの「古典の和歌で梅の花を雪としたり、紅葉を錦としたりする表現」はいずれも「あるものを別のものに見立てる」例です。
しかしエの「落語で扇子を箸のように扱って食べる真似をしたり、釣り竿として使ったりして、観客の想像力を喚起している」は、扇子という「物」を別の「物」として使う技法であり、本文で説明されている「見立て」(概念を別の概念で理解する)とは性質が異なります。
(2)「メタファー」の具体例として適当でないものを選ぶ問題
正解は イ です。
本文では、メタファーとは「ある概念を別の概念で理解する」ことだと説明されています。
選択肢イの「国語の答案が返却されて騒がしい様子は、まるでバーゲンセールのようであった」は、単なる直喩(〜のようだ)であり、概念を別の概念で理解するメタファーとは異なります。
アの「正月のしめ縄飾りを火にくべると、ぱちぱちと燃える音がした」は「死亡フラグ」のような概念を連想させるもの、ウ・エは「フラグ」や「パラメーター」といったゲーム的メタファーの例です。
問三(記述問題)
傍線部「『人生はゲームである』というメタファーは何を際立たせ、何を隠すのだろうか」について、筆者の考えを説明する問題です。
模範解答 このメタファーは効率性や生産性などの数値化される価値を際立たせるが、同時に困難や定義しづらい幸福、失敗がもたらす学びなどの数値化されにくい価値を隠してしまう。
解説 本文では、「人生はゲームである」というメタファーが、人生の問題を数値化・管理する発想(学力=偏差値、能力=KPI、SNSフォロワー数など)を促すことが述べられています。一方で、数値化できない価値(困難から得られる学び、定義しづらい幸福など)は見えにくくなってしまうと指摘されています。
「際立たせる」と「隠す」の両面を明確に書くことがポイントです。
問四(内容理解・選択)
正解は ウ です。
傍線部「人生というゲームにおいて「ミッションクリア」自体が至上命題になる」とはなぜかを問う問題です。
本文を読むと、パラメーター化によって結果主義に陥ると、分かりやすい結果を出すことのほかには、楽しみを見出せなくなってしまうと説明されています。
ウの「RPG的な流れを人生に投影すると、解決すべきミッションや倒すべき敵を自らの生活に意図的に見出そうとしてしまうから」が最も適切です。
問五(内容理解・選択)
正解は イ です。
傍線部に関する内容理解を問う問題です。
本文では、「人生はゲームである」というメタファーが広まることで、人々が効率性や攻略を重視するようになり、ルール違反や不正(チート、ハック)への傾斜が生じることが指摘されています。
イの選択肢が本文の内容に最も合致しています。
問六(理由説明・選択)
正解は イ です。
傍線部「ともすればおかしな物言い」と筆者が言っているのはなぜかを問う問題です。
本文では、ゲームは本来「遊び」であり、楽しむためのものなのに、「よりうまくやれ」「よりうまく攻略せよ」というプレッシャーをプレイヤーにかけることが矛盾していると説明されています。
イの「ゲームはそもそも楽しむための遊びにも関わらず、ゲームに熱中して傾倒しているあまり、矛盾した表現になってしまっているから」が正解です。
問七(内容合致・選択)
正解は ア・イ です。(2つ選択)
傍線部「定められたルールをいかに効率的に突破するか」という発想について、本文の内容と合致するものを選ぶ問題です。
アの「人生というゲームの参加者はコマを円滑に進めてステージをクリアすることに満足感を得ており、全員がルールを守り、突破することを目指すことによって、ゲームそのものを成立させる必要があるから」は本文の趣旨に合致します。
イの「攻略という比喩を通して現実を見ると、不正行為などのルール違反を意味する「チート」だけでなく、手際よく効率的に物事を進める「ハック」も使うことで、自分たちだけが有利になる方法が絶えず探求されているから」も本文の趣旨に合致します。
問八(内容合致・選択)
正解は ア・イ です。
本文の内容と合致するものを二つ選ぶ問題です。
アの「人生というゲームにただ受動的に参加して、自分たちだけが速くステージをクリアすることを目指すのではなく、時には無駄や失敗を面白がる感性も大切にしてバランスを取らなくてはならない」は本文の趣旨に合致します。
イの「人々は与えられたミッションをクリアするために効率ばかり求めてしまっているが、多くの人が成功や成長を目指す社会にするためには、時には無駄や失敗を面白がる感性も大切にしてバランスを取らなくてはならない」も本文の趣旨に合致します。
大問二:物語文「夜の蝉」北村薫
文章の概要
北村薫の「夜の蝉」からの出題です。
大学生の「私」が、姉に誘われて新潟県の弥彦へ姉妹旅行にやってきた場面です。幼い頃、「私」は姉に対して意地悪をされることもあったため、姉に少し緊張感を抱いています。旅先で「私」は姉に対する複雑な感情と向き合い、最終的に姉妹の絆を再確認します。
登場人物
「私」(語り手)
- 大学生の女性
- 姉に対して少し緊張感を持っている
- 幼い頃、姉に意地悪されたり、蝉の恐怖体験がトラウマになっている
- 物語の最後で姉への複雑な感情が解消される
姉
- 気性が激しい面がある
- 照れ屋で素直に表現しない
- 実は妹思いで、弥彦旅行に妹を誘った
- 過去に妹にやきもちをやいて意地悪をしていた

場面の変化
この文章では、時間と場所が大きく変化します。
現在の場面として、新潟県弥彦での姉妹旅行があります。朝の散歩から神社参拝、老人との出会いと竹とんぼのエピソードが描かれます。
回想シーンとして、幼い頃の蝉事件が挿入されます。夜、部屋に蝉が侵入し、「私」は恐怖のあまり何度も「おねえちゃん」と叫び、姉が助けに来たというエピソードです。
この回想シーンが物語の核心であり、姉が変わるきっかけとなった出来事です。
心情表現とその変化
「私」の心情は、物語を通じて変化していきます。
冒頭では、姉に対する緊張感や警戒心が描かれています。「私ははっと口をつぐんだ」という表現に、姉に対する複雑な感情が表れています。
回想シーンでは、幼い頃の恐怖体験と、そのときに姉を頼りにしていた自分が描かれています。「縛られた糸が解けたように」という比喩で、姉妹関係の変化が象徴されています。
ラストシーンでは、姉との会話を通じて、「私」は自分の方が姉に対して心を閉ざしていたことに気づきます。そして「……おねえちゃん」と呼びかけることで、長年のわだかまりから解放されます。
比喩表現
この文章には重要な比喩表現がいくつかあります。
「瞬間に縛られた糸が解けたように」 蝉事件の後、姉妹関係が変わった瞬間を表す比喩です。「縛られた糸」は姉妹間の緊張やわだかまりを、「解けた」は関係の修復や心の解放を象徴しています。
「一瞬化石になったように動きを失った」 姉が蝉の声を聞いて一瞬固まった様子を表す比喩です。過去のトラウマを思い出した瞬間を表現しています。
「心は奔流のように激しく姉に向かった」 ラストシーンでの「私」の心情を表す比喩です。「奔流」は激しく流れる水の流れを意味し、姉への感謝と愛情が一気にあふれ出た様子を表しています。
「まるで天空から見えない糸で引かれているよう」 竹とんぼが空高く飛ぶ様子を表す比喩です。神秘的で幻想的な雰囲気を演出しています。

主題
この物語の主題は、「姉妹の絆」と「心の成長」です。
表面的には緊張関係にある姉妹が、過去の出来事を振り返ることで、実は深いところで結びついていたことに気づきます。「私」は、姉の愛情を感じられなかったのは、自分の方が心を閉ざしていたからだと悟ります。
また、「おねえちゃん」という呼び方が重要なモチーフとなっています。幼い頃の呼び方に戻ることで、「私」が姉に心を開いたことが象徴的に表現されています。
大問二:設問解説
問一(漢字の読み書き)
(a)「清々」→ すがすが(しい)
「清々しい」の読みは「すがすがしい」です。
(b)「イギョウ」→ 異形
「異形」は「普通とは異なる形」という意味です。
(c)「知己」→ ちき
「知己」は「自分のことをよく理解してくれる親しい友人」という意味です。
問二(俳人の選択)
正解は ウ です。
「五合庵」とは江戸時代の僧侶である良寛が住んでいた質素な小屋のことです。この良寛が敬愛した俳人で、旅の途中でこの地に立ち寄り、「荒海や佐渡に横たふ天の川」という句を残した人物は松尾芭蕉です。
問三(語句の意味・選択)
(ii)「笑いさざめき」の意味
正解は エ です。「笑いさざめき」は「大勢でにぎやかに笑う様子」を表します。
(iii)「破顔し」の意味
正解は イ です。「破顔」は「顔をほころばせて笑う」という意味で、「元気に笑い転げる様子」が最も近いです。
問四(心情理解・選択)
正解は イ です。
傍線部①「いいかけて、私ははっと口をつぐんだ」とあるが、なぜこのような態度をとったのかを問う問題です。
本文の冒頭から、「私」は姉に対して緊張感を抱いていることが分かります。姉の知識に感心しかけましたが、姉に対する警戒心から、思わず言葉を飲み込んでしまったのです。
イの「姉がもともとは別の人とこの土地に来るつもりで準備していた可能性に思い当たり、姉の事情を気遣ったため」が正解です。
問五(心情理解・選択)
正解は オ です。
傍線部②「私は瞬間に縛られた糸が解けたように、泣きながら姉の胸にしがみついていた」とあるが、なぜこのような行動をとったのかを問う問題です。
オの「幼い「私」にとっての姉は心を許せる存在ではなかったが、二人きりの夜に、侵入した蝉が寝室で飛び回り「私」の安住の世界を破壊するという危機を乗り越えるためには、姉への恐怖をこらえて頼るしかなかったから」が正解です。
問六(心情理解・選択)
正解は ア です。
傍線部③「私は大きなものに見詰められているような気になった」とあるが、なぜそのような気になったのかを問う問題です。
アの「姉が年下の「私」を心配してすぐに来てくれたことが理解でき、姉に申し訳なくなったから」が正解です。
問七(記述問題)
傍線部④「それから、わたしは変わった」とあるが、どのように変わったのか、その理由も含めて説明する問題です。
解答例 妹にやきもちをやいて日頃から意地悪をしていたが、その妹が恐怖を感じたときに自分を何度も呼んだことから、自分たちは同じ血を分けた姉妹であり、自分は姉という立場を全うすべきだと悟ったから。
姉は、妹が自分を頼りにしていることを知り、「姉」としての責任と愛情を自覚したのです。
問八(記述問題)
傍線部⑤「手袋が姉の手にあったのではなく、私の心に硝子の鎧があったのではないか」とあるが、ここで「私」はどのようなことに気づいたのかを説明する問題です。
解答例 姉の愛情が心からのものだと感じられなかったのは、自分の方が姉に対して心を閉ざしていたからそう感じられたのではないかということ。
「手袋」は姉の冷たさの象徴、「硝子の鎧」は「私」自身の心の壁の象徴です。「私」は、姉が冷たいのではなく、自分が心を閉ざしていたために姉の愛情を感じられなかったのだと気づきました。
問九(心情理解・選択)
正解は ア です。
傍線部⑥「……おねえちゃん」というつぶやきに込められた「私」の心情として適当でないものを選ぶ問題です。
アの「姉が「おねえちゃん」の呼び名にふさわしい思慮深さを持っていたことに圧倒され、尊敬する気持ちがあふれている」は、このシーンの心情として不適切です。
このシーンは、長年抱いていたわだかまりから解放され、姉への感謝と親しみを込めて「おねえちゃん」と呼んだものであり、「圧倒」や「尊敬」というよりは、姉妹の自然な絆の回復を表しています。
まとめ
2026年度の渋谷教育学園幕張中学校一次入試・国語は、論説文と物語文の2題構成でした。
論説文では、「人生はゲームである」というメタファーについて批判的に検討する文章が出題されました。メタファーが「際立たせるもの」と「隠すもの」を理解し、筆者の主張である「ゲームデザインの構え」を把握することが重要でした。
物語文では、姉妹の複雑な関係性と心情変化を読み取る力が問われました。回想シーンの重要性、比喩表現の意味、「おねえちゃん」という呼び方のモチーフなど、細部にまで注意を払った読解が必要でした。
渋幕の国語は、表面的な読解だけでなく、文章の深層にある筆者の意図や登場人物の心情を正確に把握する力が求められます。日頃から、「なぜ筆者はこの表現を使ったのか」「この比喩は何を象徴しているのか」を考えながら文章を読む習慣をつけましょう。






