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【書評】入試前日に入試問題盗み見る?究極の問いに受験の意味を見出させる本『なぜ中学受験するのか?』

教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏の新刊『なぜ中学受験するのか?』を読みました。

なかなか示唆に富んだ内容で、この手の受験本の中では「私立中受験を目指す意義」について

かなり深く考察されており素晴らしい内容でした。

私自身20年間この業界で中学受験に関わってきましたが、あらためて「なぜ中学受験をするのか」

振り返って原点から考え直す貴重な機会をいただけました。

是非多くの方にもお読みいただきたいと思いましたので、今回はこちらをご紹介します。

著者紹介【おおたとしまさ氏】

おおたとしまさ氏

・東京出身 麻布中高を卒業。麻布で過ごした6年間で自身の教育観が育ったと語る。

・教育ジャーナリストとして著書50冊以上。名門校紹介、学習塾や受験生活のドキュメント、受験生を持つ保護者へのアドバイスなど、中学受験を題材としつつテーマは様々。

・ご自身のお子さんとの時間を大切に住むためにリクルートを脱サラして独立。

ネットの教育関連の記事で著者の名前を目にされる方も多いのではないでしょうか。

私も過去におおた氏のネット記事はよく目にしていましたが、

本書で初めて書籍を通して読みました。私立校や受験生とその家族への確かな

取材を基にした情報と受験システム、受験生とその家族のありようそのものへの

深い洞察に基づいた内容です。なにより受験生を抱える保護者を心から応援する、

親愛の情をお持ちなのだろうと文面から強く感じ取れます。

こんな人に読んでほしい~本書をおススメしたい方~

本書は以下のような方には強くおススメします!

中学受験に迷いのあるすべての保護者

これから中学受験を目指すべきかどうか迷っている保護者の方

  「中学受験はウチの子に合うのか」、「中学受験の負担とどのように折り合いをつけていけ

 ばいいのか」「そもそも中学受験をするメリットはどのようなものがあるのか」などの疑問が

 本書を通じて解消できます。

現在、中学受験を目指して勉強中のお子さんを持つ保護者の方

  「塾に通い始めてみたものの、成績が上がらないし、本人のやる気も出ない」「本当に行きたい

 (行かせたい)と思える志望校が見つからない」「親子ともに精神的負担が大きすぎて続けられるの

  か不安」など、行き詰まりを感じているご家庭にはぜひとも参考にしていただきたい内容が

  多く含まれています。

中学受験を勧めるすべての事業者(学校・塾・その他)の方

 中学受験を通じて子どもたちにどのように語り掛け勉強させるべきか、

 中学受験を家庭で支える保護者をどのように導いていけばよいか、

 どのような過程に中学受験を勧め、どのような家庭に勧めるべきではないのか、 

 受験に悩む子ども、保護者にどのように接するべきか、合否が出た後にどんなかかわり方を

 するべきかなど、指導にあたって根本を見つめなおすにあたって役立つ内容です。

 中学受験に関わる多方面の事業者の方にも少なからず参考にしていただけると思います。

「なぜ中学受験するのか?」要点

中学受験を目指す意味について4つの視点で解説しています。

印象に残ったフレーズや内容だけご紹介しておきます。

中高一貫教育の意味

・筑駒は「ドラゴン桜」ではない。筑駒で大学入試テクニックを教えているわけではない。

・東大への近道は学校へ行かないこと。通信に通って鉄緑会カリキュラムをこなせばよい。

・中高一貫校で”いい大学”にいけるのはおまけ。

・高校入試は世界的に見ても珍しい。14歳という反抗期。無為に過ごすことも必要。

・一貫校はゆとり教育。思春期を入試に左右されず過ごせる。

私学に通う意味

・教科書の知識は無味乾燥のフリーズドライ。専門教員がそれを解凍し生きた知識とする。

・私学には「ハビトゥス」がある。芸事の師匠に荷物持ちが長期間一緒にいると

 そぶりや口癖が似てくる。ハビトゥスとはそのようなもの。

・私学は教員異動が少なく、ハビトゥスが受け継がれる。建学の精神の軸がぶれない。

・私学に行くということは世の中の損得勘定に左右されない特異なハビトゥスを吸収しに行くということ。

・私学で教えるのは大学入試テクニック、就職後に生きるスキルなどではない。何を美しいと感じるか。

塾で学ぶ意味

・非認知能力の向上。毎日計画的に努力を重ねること。偏差値には表れない果実。

・中学受験ではメリトクラシー(功績主義)に陥りやすいので注意。

・中学入試受験者数は増えているものの学校数が増えているので競争はむしろ緩和。現在は1校以上の合格率100%の全入時代。

・未知の問題に接して狼狽しない、根気よく課題に向き合う、創意工夫と試行錯誤、などのスキル

・失敗の乗り越えてその過程で何かを得る。大冒険の物語と似ている。

親子で取り組む意味

・勉強は塾が教え、人生は親が教える

・入試前日に極秘で問題を入手して問題を見るか?という荒唐無稽な想像から教訓を得る。

・悪魔の誘惑に打ち勝って自分の正しさを信じられたら未来が拓ける。

・誘惑に負ければ3年間の努力を貶めることになる。

・義を見てせざるは勇無きなり。親子で「義」や「勇」について話し合う機会を持つ。

・睡眠時間を削ってまで上のクラスを目指すべきか。通うつもりのない学校を受けることは正義なのか。

・目の前の損得勘定を超えた価値を教えるのが親。

・我が子の合格校を親が誇るようになると危険。東大に落ちたとたんに口を利かなくなる親もいる。

・迷ったら引き算。子どもの眼を見れば正解がわかる。

・何度も落とし穴から這い上がった経験が「この子は大丈夫」という信頼につながる。少々の反抗期でもおおらかに見ていられる。

まとめ

多くの迷える中学受験生や受験生を支える大人たちに勇気と希望を与えてくれる

素晴らしい内容だと感じました。

私自身も「正しく子どもが育つ中学受験」を推し進めていく覚悟を新たにしました。

最後に印象深いフレーズを本書より引用します。

「私たちは経済を回すために生まれてきたわけではない。大事なのは、何に喜びを感じて生きるのかを自分で決めること。」

「なぜ中学受験するのか?」おおたとしまさ

中学受験に関わる皆さんのお役に立てれば幸いです。

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