YS中学受験国語力研究室 中学受験国語専門の家庭教師|個別指導・個人契約・オンライン全国対応
9月 3, 2026  · 模試・塾テキスト解説

2026.8.30実施 四谷大塚 小5 第5回公開組分けテスト 国語 徹底解説

2026年8月30日(日)に実施された四谷大塚 5年生 第5回公開組分けテストの国語を、YS中学受験国語力研究室が全問解説します。大問3は瀧羽麻子さんの「こんぺいとう」(『さよなら校長先生』PHP研究所所収)からの物語文、大問4は稲垣栄洋さんの『オスとメスはどちらが得か?』(祥伝社)からの説明文でした。「友達が遠くへ行ってしまったようでさみしい」という小学三年生の気持ちと、「人間はなぜこんなに長く子育てをするのか」という生物学の問い。夏休み明けの組分けにふさわしい、読みごたえのある二題です。正答率のデータもあわせて、どこで差がついたのかを見ていきます。

出題構成と全体講評

  • 試験時間は40分、150点満点。大問1が漢字の書き取り(10問・各1点)、大問2が語句・文法・敬語(25点)、大問3が物語文(58点)、大問4が説明文(57点)という、組分けテストの定型構成です。
  • 大問3の物語文は、スイミングスクールで出会った友達ミチルが選手コースに移り、取り残されたように感じる涼花の物語です。設問は九問。記述は「なぜ心がけていたのか」を四十字以内で書く問七(12点)で、正答率は23.3パーセントにとどまりました。
  • 大問4の説明文は、哺乳類の「知能」と「子育て」の関係を論じた文章です。設問は八問。記述は「子育ての期間がとても長い」理由を四十五字以内で書く問六(12点)で、正答率は33.9パーセントでした。
  • 知識問題では、漢字の「沿革」が正答率13.7パーセントと今回最難関。大問2の品詞の識別も、副詞・助詞・助動詞の三問がいずれも20パーセント前後と、大きく点が割れました。
  • 読解の選択問題は全体に取り組みやすく、大問3の問二・問四は80パーセントを超えています。差がついたのは、語句の意味(大問3問一・34.9パーセント)、説明文の要点をつかむ問題(大問4問五・42.4パーセント)、そして二つの記述です。
今回のポイント知識で落とすか、記述で取るか。読解の記号選択は正答率60パーセント以上のものが多く、点差が開きやすかったのは漢字・品詞と二つの記述でした。復習の優先順位もこの三か所からです。

大問1・2 漢字と語句 まずはここを落とさない

大問1 漢字の書き取り(各1点・全10問)

出題された十語は次のとおりです。かっこ内は正答率です。

  • 1 余地(34.6) この計画は再考のヨチがある
  • 2 予測(70.6) 天候のヨソクがつかない
  • 3 導く(75.9) 名監督がチームを優勝にミチビク
  • 4 燃やす(77.3) キャンプでたきぎをモヤス
  • 5 備える(67.8) シェルターを造り、大地震にソナエル
  • 6 発揮(61.9) 練習の成果を本番でハッキする
  • 7 遺伝(65.8) 犬の毛の色はイデンによって決まることが多い
  • 8 沿革(13.7) 通っている学校のエンカクを知る
  • 9 供給(46.0) 人口減で労働力のキョウキュウが衰える
  • 10 穀物(55.3) コクモツの中で米の生産量が最も多い

「沿革」は、ものごとの移り変わりや歴史のことです。学校案内やパンフレットの「沿革」のページで目にする語で、五年生には難しかったと思います。「余地」も「再考の余地」「疑う余地がない」という言い回しごと覚えておきたい語です。「供給」は「需要と供給」でセットにして、「共給」「供級」と書かないように注意しましょう。

大問2 語句・文法・敬語(問一〜三・五 各2点、問四 各1点)

問一は四字熟語の選択です。「暴走族を一網打尽にした」「終始一貫して無実を主張した」「何度も自問自答した」。「一網打尽」は一度に全員をつかまえること、「終始一貫」は最初から最後まで態度が変わらないこと。文脈から選べる問題で、1と3は正答率が87パーセントを超えました。2の「終始一貫」は61.8パーセントとやや低めでした。選択肢には「公平無私」「油断大敵」も並んでいるので、意味を正確に区別できたかどうかで差がついたと考えられます。

問二はことわざの漢字一字。「角を矯めて牛を殺す」「絵に描いた餅」「水清ければ魚住まず」。「角を矯めて牛を殺す」は、小さな欠点を直そうとして全体をだめにしてしまうという意味で、設問文の「欠点ばかり注意すると選手は萎縮して」という説明とぴったり合います。ここは64.1パーセントとやや低めでした。

問三は対義語。「客観」の対義語は「主観」、「本音」の対義語は「建前」です。「建前」は正答率30.7パーセントでした。「本音と建前」という言い回しで覚えていないと出てこない語です。送りがなを付けずに「建前」と書く形もあわせて確認しておきましょう。

問四は品詞の識別です。「とつぜん、背の高い見知らぬ少年に、声をかけられた。」という一文から五か所を問いました。

  • ①とつぜん → 副詞(正答率22.3)
  • ②高い → 形容詞(49.8)
  • ③に → 助詞(19.1)
  • ④かけ → 動詞(55.6)
  • ⑤られ → 助動詞(21.7)

五年生の夏の時点では、品詞はまだ習いたてです。「とつぜん」のように用言をくわしくする語が副詞であること、「に」のような付属語で活用しないものが助詞、「られ」のように付属語で活用するものが助動詞であること。この三つの区別が今回いちばん点の割れたところでした。予習シリーズの文法の回に戻って、「自立語か付属語か」「活用するかしないか」の二段階で判断する練習をしておきましょう。

問五は敬語です。「王様が夕食を食べる」を五字で「めしあがる」、「展覧会で先生の作品を見る」を六字で「はいけんする」。前者は尊敬語、後者は謙譲語です。どちらも70パーセント台で、よくできていました。

大問2 解答問一 1 エ 2 カ 3 ウ / 問二 1 牛 2 絵 3 水 / 問三 1 主観 2 建前 / 問四 ① オ ② ウ ③ ケ ④ ア ⑤ コ / 問五 1 めしあがる 2 はいけんする

大問3 物語文 瀧羽麻子「こんぺいとう」

あらすじ 選手コースに移った友達と、観客席に残った自分

主人公の涼花は小学三年生。スイミングスクールに入り、同じ時期に水泳を始めたミチルと友達になりました。しかしミチルには才能があり、選手コースに移ることになります。

前半は、ミチルが初めて出場した競技会の場面です。涼花は観客席から声を嗄らして声援を送り、ミチルは背泳ぎで三位に入賞します。試合の後、ひとことお祝いを言いたくて出口で待っていた涼花の前に、選手コースの仲間やコーチ、保護者たちの「にぎやかな輪」が現れます。ミチルは涼花に気づいて小さく手を振ってくれましたが、隣の女子に「あの子は誰」というように値踏みされ、涼花の足はとまります。厳しい練習をともに乗り越えてきた仲間たちの輪に、ただ観ていただけの自分が割りこんでいいのだろうか。写真撮影が始まると、涼花はそっとその場を離れました。

後半は、ミチルが次の大会に出場する日です。涼花は応援に行かず、おばあちゃん(シズエさん)の喫茶店で、おばあちゃんが教師をしていたころからの友人、正子さんと会っています。時計を気にしている涼花に、正子さんは「今日ほかになにか用事があったんじゃない?」と声をかけます。涼花はぽつりぽつりと友達のことを話し、正子さんに「さみしいね」と言い当てられます。さみしいなんて、がんばっているミチルに対して言ってはいけない。そう思っていた涼花に、正子さんは「涼花ちゃんがどう感じるかは、涼花ちゃんの自由よ」と語り、自分もシズエさんが教師を辞めたときさみしかったと打ち明けます。

五十年たった今も友達でいる二人の話を聞いたあと、正子さんは涼花に、こんぺいとうの小瓶を二つ渡します。「あなたと、そのお友達に」。涼花は、来週のレッスンでミチルに渡そう、次の試合はいつあるのか聞いてみよう、と思います。左右の手に持った小瓶の中で、色とりどりの星がきらきらと揺れました。

図1 大問3 人物相関図
涼花
主人公・小学三年生
スイミングスクールの一般コース
ミチル
涼花の友達・才能があり選手コースへ
ひかえめで恥ずかしがり
シズエさん(おばあちゃん)
喫茶店を営む・元教師
まじめで優しい
正子さん
シズエさんの五十年来の友人
涼花の気持ちを言い当てる
涼花ミチル応援したい。でも仲間の輪に入れずさみしい
ミチル涼花気づいて小さく手を振る
正子さん涼花「さみしいね」と言い当て、気持ちは自由だと教える
正子さんシズエさん教師を辞めることに反対した。今も友達
シズエさん正子さんひきとめてもらえてうれしかった
正子さん涼花とミチルこんぺいとうの小瓶を二つ贈る

この物語の仕掛けは、「涼花とミチル」の関係に「正子さんとシズエさん」の関係が重ねられているところにあります。正子さんは、教師を辞めるシズエさんを「もったいない」とひきとめ、追い詰めてしまったかもしれないと今も気にしています。それでも五十年、友達でいる。この話を聞いたから、涼花は「進む道が違ってもミチルと友達でいられる」と思えたのです。問九はここを読み取る問題でした。

図2 大問3 涼花の心情の流れ

-=否定的な心情 / ±=動揺・転換点 / +=肯定的な心情

1
競技会・観客席
声を嗄らして声援を送る。ミチルは背泳ぎで三位に入賞
+ いっしょうけんめい応援しよう
対応する設問:問二
2
体育館の出口
選手コースの仲間やコーチの輪の中にいるミチル。値踏みするように見られ、駆け寄ろうとした足がとまる。写真撮影が始まり、そっとその場を離れる
- ミチルが遠くにいってしまったようでさみしい
対応する設問:問三・問四
3
喫茶店・正子さんと二人きり
大会に出ているミチルが気になって時計を見てしまう。「今日ほかに用事があったんじゃない?」と聞かれ、ぎくりとする
- 気持ちを言い当てられたような気がしてどきりとする
対応する設問:問五
4
「さみしいね、それは」
クロールで水をかくみたいに、ひとことずつ話す。正子さんに「さみしいね」と言われて驚く。さみしいなんて口にしてはいけないと思っていた
± 言い当てられた安心と、ミチルに申し訳ない気持ち
対応する設問:問六・問七
5
「さみしい、です」
口に出したら体から力が抜ける。正子さんは「どう感じるかは涼花ちゃんの自由」と言い、シズエさんとの五十年の話をする
+ 感じることを許してもらえた。二人の友情に感嘆する
対応する設問:問八
6
こんぺいとうの小瓶
「あなたと、そのお友達に」。来週ミチルに渡そう、次の試合はいつか聞いてみようと思う。色とりどりの星がきらきらと揺れる
+ 道が違ってもミチルとは友達でいられるという希望
対応する設問:問九

問一 「かしましく」の意味正答率 34.9

「かしましく」の言い切りの形は「かしましい」で、話し声がやかましい、さわがしいという意味です。直後に「お喋りしながら現れた」とあるので、声の様子を表す言葉だと文脈からも推測できます。選択肢の「楽しそうに」「真剣に」「小さな声で」はいずれも声や態度に関わる言葉なので、語の意味を知らないと文脈だけでは決めきれません。今回の読解問題でいちばん正答率の低かった一問でした。漢字では「姦しい」と書きます。

解答

問二 傍線部①「涼花は競技会を見にいった」ときの気持ち正答率 82.1

傍線部の直後に「涼花は観客席から声を嗄らして声援を送った」(4行め)とあります。声が嗄れるほど大きな声で応援した、ということです。このあと涼花はさみしい思いをしますが、この時点では純粋に「いっしょうけんめい応援しよう」という気持ちで会場に来ています。アの「うらやましい」、イの「さみしい」は後の場面の心情を先取りした誤りです。

解答

問三 傍線部② ミチルの性格が表れた一文を二つ抜き出す正答率 60.7

「ミチルもひかえめな笑みを浮かべている」から、ミチルが「ひかえめで恥ずかしがり」であることがわかります。この性格が表れた一文を、本文の別の場所から二つ探します。ヒントは「ひかえめ」「恥ずかしがり」につながる動作です。

  • 「注目を浴びたミチルはもじもじしている。」(17・18行め) ほめられて照れている
  • 「涼花に気づき、小さく手を振ってくれた。」(29行め) 大きく手を振らない、ひかえめな反応

「一文」を抜き出すので、句点の直後から次の句点までの範囲を確認し、はじめの五字だけを答えます。「注目を浴び」「涼花に気づ」です。

解答注目を浴び / 涼花に気づ(順不同)

問四 傍線部③「涼花はそっとその場を離れた」ときの気持ち正答率 87.1

涼花は「ひとことお祝いを言いたくて」(6行め)出口で待っていました。ところが目の前に現れたのは、ミチルを囲む選手コースの仲間たちの輪です。「ミチルを取り囲んでいるのは、厳しい練習をともに乗り越えてきた仲間たちだ。ただ観ていただけの涼花が、のこのこ割りこんでいいんだろうか」(34〜36行め)という思いが、涼花の足をとめます。ミチルには別の場所に新しい仲間ができ、自分から遠くへいってしまったように感じている。これがエです。

アは「ミチルに気づいてもらえなくて」が誤り。ミチルは涼花に気づいて手を振っています。イの「腹立たしい」は隣の女子に対する一瞬の「むっと」であって、この場を離れる理由ではありません。ウの「ほっとしている」も本文にない感情です。

解答

問五 傍線部④「涼花はぎくりとした」理由正答率 60.2

「ぎくりとする」は、思いがけないことにどきっとする、という意味です。涼花は大会に出ているミチルのことが気になって、喫茶店にいても「時計を気にして」(50行め)いました。そこへ正子さんから「今日はなにか他に用事があったんじゃない?」(46・47行め)と言われた。自分の気持ちを言い当てられたような気がしたから、どきりとしたのです。

アの「責められている」、ウの「無理してここに来た」、エの「たいくつして」は、いずれもこのときの涼花の状況に合いません。傍線部の後の「もしや、時計を気にしているのを見られていたのだろうか」という一文が根拠になります。

解答

問六 傍線部⑤「クロールで水をかくみたいに」が表す様子正答率 56.6

この表現は、涼花が「友達が」「水泳の、選手で」「今日も、大会に出てて。だけど、わたし、応援に……」と、ひとことずつ区切りながら話していく様子を、クロールで一かきずつ水をかいて前に進む姿にたとえたものです。言葉にしにくい自分の思いを、それでも伝えようと、いっしょうけんめい話している。これがエです。

アの「すらすら」は正反対です。イの「話すべきかどうか迷いながら」も、ウの「聞き取りやすいようにゆっくり」も、たとえの意味からずれます。「クロールで水をかく」というたとえは、後の「前へ前へ、ぐんぐん泳いでいこうとしている友達」(80行め)という表現とも響き合っていて、水泳の物語ならではの比喩になっています。

解答

問七 記述 傍線部⑥「そう口走ってしまわないように涼花は心がけていた」のはなぜか(四十字以内・12点)正答率 23.3

まず「そう」の指す内容を確定します。傍線部の前に「さみしいなんて、〜口にすべきではない言葉でもあった」(72〜74行め)、後に「さみしいなんて、言っちゃいけない」(79行め)とあることから、「そう」は「さみしい」という言葉です。

次に、なぜ言ってはいけないと思っていたのか。「あの子は一生懸命、頑張っているのに。毎日努力を重ねているミチルにふさわしいのは、〜前向きな言葉だ」「前へ前へ、ぐんぐん泳いでいこうとしている友達の足をひっぱるようなまねはしたくない」(79〜81行め)が根拠です。答案には次の二つを入れます。

  • ミチルが努力している(がんばっている)ということ
  • さみしいという言葉が、そのミチルの足をひっぱることになるということ

「さみしいと言いたくなかったから」だけでは理由になっていません。「ミチルのため」であることが伝わる書き方が必要です。四十字以内という短い字数なので、「がんばっている」と「足をひっぱりたくない」の二点にしぼって書きます。

解答例努力を重ねるミチルの足を、さみしいという言葉でひっぱりたくなかったから。(36字)

問八 傍線部⑦「シズエさんは優しい」と正子さんが言った理由(空欄補充・各4点)正答率 A 61.5 / B 63.2

説明文は「シズエさんが考え抜いて決めた、仕事を辞めるということに自分が(A)したにもかかわらず、(B)と受けとめているから」です。Aは正子さんの行動、Bはシズエさんの受けとめ方を、それぞれ本文から抜き出します。

  • A(二字) 「仕事を辞めたいとおばあちゃんから相談され、正子さんは反対した」(102・103行め) → 反対
  • B(十五字) 「でもおばあちゃんは、ひきとめてもらえてうれしかった、って」(110行め) → ひきとめてもらえてうれしかった

正子さんは「かえって追い詰めちゃったのかも」と反省しているのに、シズエさんはそれを「うれしかった」と受けとめている。だから「優しいわね。相変わらず」なのです。字数がぴったり十五字になることを確認して答えます。

解答A 反対 / B ひきとめてもらえてうれしかった

問九 傍線部⑧「色とりどりの星がきらきらと揺れた」が表す気持ち正答率 71.3

物語の最後の一文は、情景描写を通して登場人物の心情を表す定番の形です。ここで問われているのは、涼花がどんな気持ちでこの小瓶を見ているかです。

直前の「来週のレッスンのときに、ミチルに渡そう。ついでに、次の試合はいつあるのか聞いてみよう」に注目します。ミチルが遠くにいってしまったようでもやもやしていた涼花が、自分からミチルに関わろうとしている。この変化を生んだのは、進む道が違ってもずっと友達でいる正子さんとシズエさんの話でした。「たとえ進む道が違っても、ミチルとはずっと友達でいられるはずだ」という希望が、きらきらと揺れる星に重ねられています。

アの「もっと上手くなってほしい」、ウの「自分もミチルに追いつけるよう努力しよう」は、涼花が水泳の実力を問題にしていない以上、合いません。エの「祖母にとっての正子さんのような親友ができる」は、涼花にはすでにミチルという友達がいるので誤りです。

解答

大問4 説明文 稲垣栄洋『オスとメスはどちらが得か?』

本文の骨格 知能を武器にする生き物は、なぜ子育てに時間をかけるのか

筆者はまず、「知能」に頼る哺乳類にとって、子育てとは子どもを保護してエサを与えるだけでなく、「質の高い情報」を与えることだと述べます。その情報を得る手段は二つ。「親から教わること」と「遊び」です。カバの父親が「口の大きさで競い合う」というルールを教える例、ゴリラの子どもが父親のそばで遊びながらルールを覚える例、そして哺乳類の子どもが好奇心に満ちて遊びを通じて成功体験や失敗体験を重ねる例が並びます。

次に筆者は、コンピュータのOS(オペレーティングシステム)のたとえを持ち出します。人間の脳が「知能」を働かせるために必要なOSは、国語や算数ではない。人間も動物の一員であり、もっとも不可欠な情報は自然からしか得られない。だから、学習するために必要な知能を働かせるうえでもっとも大切なのは、子どもたちが自然のなかで遊ぶことだ、と主張します。

最後に、人間の子育て期間がなぜこれほど長いのかを説明します。人間は未熟な状態で生まれますが、パンダやカンガルーのように未熟に生まれても早く育つ動物もいる。人間が「ゆっくりと育つ」のは、学ぶことが多いからあえて発育を遅らせるという戦略なのです。そして、この「子育てによって知能を発達させる」戦略を支えたのが、「一夫一妻制」を基礎とした「家族」だった、と結びます。

図3 大問4 段落構成図
序論1〜5行め 話題の提示
「知能」に頼る哺乳類にとって、子育てとは「質の高い情報」を与えること
本論16〜21行め 情報を得る手段その1=親から教わる
カバの父親がルールを教える/ゴリラは父親のそばで遊びながら覚える/父親のサポートで母親が質の高い子育てをする
本論222〜38行め 情報を得る手段その2=遊び
じゃれあい・小動物をいたぶる・木を揺らす。成功体験と失敗体験で情報を集める。大人に守られているからこそ体験できる
本論339〜73行め 知能のOSは自然からしか得られない
人間は高度な知能を求められるが、知能の基本的しくみは二億年変わらない。OSは国語や算数ではなく、自然のなかで遊ぶこと
本論474〜110行め 人間の子育て期間はなぜ長いか
未熟に生まれるから、だけでは説明できない(パンダ・カンガルーは早く育つ)。学ぶことが多いから、あえて発育を遅らせる戦略
結論111〜114行め
知能を武器にするために子育ては不可欠。その戦略を支えたのが「一夫一妻制」を基礎とした「家族」
図4 大問4 対比構造図 早く育つ動物と、ゆっくり育つ人間
パンダ・カンガルー
未熟(パンダは150グラム、カンガルーは1グラム) 小さく産んで早く育てる。3年、あるいは1年以内に親離れ 妊娠期間を短くして母親の負担を減らす
VS
人間
未熟(歩くのに1年、話すのに2〜3年) 生まれたあとも、親離れまでに長い時間。大学卒業までなら20年以上 学ぶことが多いので、あえて発育を遅らせる
「未熟に生まれる」だけでは長い子育ての理由にならない。「ゆっくりと育つ」こと自体が、知能を武器にする人間の戦略である

問一 空欄A・Bに入る接続語正答率 A 60.0 / B 62.6

Aの直後は「人間の脳が『知能』という機能を活用するために必要なOSはどのようにして作られるのか。また、〜不可欠な情報とは何か」という問いかけです。話題を切り替えて新しい問いを立てているので、転換の「それでは」が入ります。

Bの直前は「未熟な赤ちゃんを産んでも、独り立ちまでの期間は長くなるわけではない」、直後は「人間は生まれたあとも、親離れするまでに長い時間を必要とする」。前後が逆の内容なので、逆接の「しかし」です。

解答A ア / B エ

問二 この文章全体の話題正答率 59.4

文章の一行めは「『知能』に頼る哺乳類にとって、『子育て』は〜」です。書き出しで、この文章が「知能」と「子育て」の関係を説明するものだと宣言しています。さらに最後の段落でも「『子育てによって知能を発達させる』という戦略」とまとめられています。「子育て」という言葉を軸にしているエが正解です。

アの「人間が特に高い知能をもつなぞ」、イの「さまざまな親子関係のありかた」は部分的な話題にすぎません。ウの「知能を武器とする意義」は、文章が論じているのが「意義」ではなく「そのための子育て」である点で、ずれています。

解答

問三 傍線部①「質の高い情報を与えなければならない」 カバの場合正答率 1 76.7 / 2 65.8

カバの例は6〜14行めにあります。「口の大きさで競い合うというカバの社会のルールは、教えなければ子どもにはわからない。このルールを教えるのは、父親の役割である」。だれが与えるのかは「父親」、どのような情報を与えるのかは「口の大きさで競い合うというカバの社会のルール」(二十二字)で、はじめの五字は「口の大きさ」です。

2は「二十二字で探し」という条件があるので、「カバの社会のルール」だけでは足りません。「口の大きさで競い合うという」まで含めて二十二字になることを数えてから答えます。

解答1 父親 / 2 口の大きさ

問四 空欄Xに入る言葉正答率 56.9

空欄Xを含む文は「哺乳類の子どもにとって、『遊ぶこと』は(X)なのである」で、本論2のまとめにあたります。哺乳類の子どもは「知能」を使うために多くの情報を得る必要があり、その手段が「親から教わること」と「遊び」でした。遊びによって「たくさんの体験をし、たくさんの情報を仕入れておこうとしている」(34・35行め)のです。つまり、遊ぶことは生きるための知恵を「学ぶこと」だ、というエが正解です。

アは「知能を使いこなして情報を得る」が本文と逆です。情報を得るのは知能を使うためです。イの「大人のまね」は遊びの一例であって、遊びそのものの説明ではありません。ウは「親から教わるより重要」という比較を本文がしていないので誤りです。

解答

問五 傍線部②「人間の脳が『知能』を活用するために必要なOSはどのようにして作られるのか」の説明正答率 42.4

読解問題の中で二番めに正答率が低かった問題です。傍線部の後の説明を読み取ります。「人間がどんなに進歩をしても、動物の一員であることに変わりはない」(55行め)、「もっとも不可欠な情報は、自然からしか得られない」(57・58行め)、「もっとも大切なことは、子どもたちが自然のなかで遊ぶことである」(68・69行め)。人間も動物の一種で、知能の基本的なしくみは大昔から変わっていないから、他の動物と同じように自然から情報を得ることが最も大切だ。これがウです。

アは「コンピュータなど最先端の技術を活用して学ぶ」が本文にありません。イは「さまざまな知識や社会ルールを学ぶことが大切」という内容自体は本文にありますが、傍線部の「OS」の説明ではありません。エは「国語や算数といった教科を学ぶことはそれほど重要ではない」が言いすぎです。筆者は「言語や文字も必要だし、算数も学ばなければならない」とはっきり書いています。筆者は教科の勉強を否定しているのではなく、その土台になるOSの話をしている。ここを取り違えるとエを選んでしまいます。

解答

問六 記述 傍線部③「子育ての期間がとても長い」理由(四十五字以内・「学ぶ」または「学び」を使う・12点)正答率 33.9

理由は本文に二段階で書かれています。

  • 「この理由のひとつは、人間が未熟な状態で生まれてくることにある」(93・94行め)
  • 「人間は生まれたあとも、親離れするまでに長い時間を必要とする」(105・106行め)。その理由が「生きていくために学ぶことが多い。そのために、あえて発育を遅くして、すぐに大人にならないのだ」(108〜110行め)

「未熟な状態で生まれる」だけを書いた答案は不十分です。筆者自身が「しかし、未熟な状態で生まれたあとに早く成長すればよい話だ」とパンダやカンガルーの例で反論しているからです。核心は後半の「学ぶことが多いから、あえて発育を遅らせている」にあります。指定語の「学ぶ」を使いながら、「未熟に生まれる」「学ぶことが多い」「あえて発育を遅らせる」の三点をまとめます。

解答例人間は未熟な状態で生まれるうえ、生きるために学ぶことが多く、あえて発育を遅らせているから。(45字)

問七 傍線部④ 筆者は人間が何を作り出したと考えているか(十七字抜き出し)正答率 43.2

傍線部の後に「この『子育てによって知能を発達させる』という戦略に重要だったのが、『一夫一妻制』を基礎とした『家族』であったと考えられている」(113・114行め)とあります。人間が作り出したものは「『一夫一妻制』を基礎とした『家族』」で、かぎかっこを含めてちょうど十七字です。はじめの五字は「「一夫一妻」となります。

正答率は43.2パーセントでした。抜き出し問題では、かぎかっこも読点も一字として数えるのが原則です。「一夫一妻制」から数え始めると十七字に届かないので、字数が合わないときは記号を数え忘れていないか確かめてください。

解答「一夫一妻

問八 内容正誤(各2点)正答率 ア 38.5 / イ 86.3 / ウ 72.6 / エ 60.5

  • ア × 「多くの哺乳類は、父親が子どもを教育し社会のルールを教え」が誤り。本文には「直接、子どもを育てている哺乳類の父親は少ない」(17・18行め)とあります。カバやゴリラは例外的な例として挙げられているのです。正答率38.5パーセントと、四つの中でいちばん低い選択肢でした。
  • イ ○ 哺乳類の子どもは「親から教わること」と「遊び」の二つの手段で情報を得る、という本論1・2の内容そのままです。
  • ウ × 知能を働かせる土台となる「もっとも不可欠な情報は、自然からしか得られない」(57・58行め)のであって、「学校の勉強やコンピュータなどの機械からも得られる」とは述べられていません。
  • エ × 「そのぶん人間は子どもに愛情を注いで熱心に子育てをする」は本文にない内容です。人間の子育てが長いのは愛情の話ではなく、学ぶことが多いという戦略の話です。
解答ア × / イ ○ / ウ × / エ ×

二つの文章が響き合うところ

大問3は「友達が遠くへ行ってしまった」と感じる小学三年生の物語、大問4は「人間はなぜ長く子育てをするのか」を論じた説明文です。まったく別の文章に見えますが、どちらも「時間をかけること」を肯定しています。

正子さんは、五十年たった今も、教師を辞めたシズエさんと友達でいます。「お互い違う道に歩んで、ご無沙汰してた時期もあった」けれど、それでも続いている。涼花がミチルとの関係に希望を持てたのは、友情が「今すぐ、同じ場所で」でなくてもよいと知ったからです。

稲垣さんの文章も、人間が「ゆっくりと育つ」ことを戦略として肯定します。早く大人になるより、たくさん遊び、たくさん学ぶ時間をもつことが、知能を武器にする人間にとって不可欠だという主張です。

五年生の夏、成績や組分けで友達との差を感じるお子さんもいるかもしれません。二つの文章は、遠回りに見える時間にこそ意味があると教えてくれます。読み終えたあとに、親子でそんな話をしてみてください。

この回から持ち帰るべき3つのこと

  • 正答率の低かった知識問題から復習する 沿革(13.7)、建前(30.7)、副詞(22.3)・助詞(19.1)・助動詞(21.7)の区別。読解の記号選択より、知識問題のほうが大きく点の割れた回でした。品詞は「自立語か付属語か」「活用するかしないか」の二段階で判定する練習を、予習シリーズの文法の回に戻ってやり直しましょう。
  • 記述は「なぜ」に対して「相手のため」まで書く 大問3問七で「さみしいと言いたくなかったから」と書いた答案は、理由の半分しか書けていません。だれのために、何をさけたかったのか。この一段を足すだけで得点が変わります。大問4問六も同じで、「未熟に生まれるから」で止めず、筆者が本当に言いたい「学ぶことが多いから発育を遅らせる」まで届かせる必要があります。
  • 抜き出しは記号まで数える 大問4問七は、かぎかっこを含めて十七字でした。字数指定の抜き出しでは、かぎかっこ・読点・句点もすべて一字です。「数えたらぴったり合う」ことを確かめてから答えを書く習慣をつけておきましょう。

中学受験の国語でお悩みではありませんか?

記事の内容や指導へのご質問、学習相談など、どんなことでもお気軽にどうぞ。

お問い合わせはこちら